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大人の話
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日曜日、見上さんが施術に来た。
頼は、
「休みに来るなって言ってんのに」
と文句言うくせにちゃんと施術してあげてる。
文句を言われたからなのか、いつもよりほんの少しだけ早めに切り上げた見上さん。
「頼ちゃん、またな」
と帰っていく。
俺は外に先回りする。
深町さんが車の後部座席のドアを開け、見上さんが乗り込む。そこへ素早く潜り込み、俺も乗る……予定が深町さんに捕まった。
腕を捻り上げられる。
「痛い! 痛い!」
「え? 才くん?」
「坊主、お前なにしてんだ?」
俺が騒いだため、頼が店から顔を出す。
深町さんが何事もなかったかのように俺を隠し会釈をする。
「坊主、乗れ」
見上さんの指示で俺は深町さんに車の中に押し込まれた。
「ここだと頼さんが怪しむので移動します」
と深町さんは車を走らせた。
ほんの少し走ってスポーツセンターの駐車場に車を停める。
「坊主、なんの真似だ」
少し見上さんが怖い。この人がヤクザだったことを今更思い出す。
「騒ぎを起こすと俺は頼ちゃんの店を出禁にされちまう、面倒なことはやめてくれ」
ヤクザがどの口で……と思ったけど、きっと殺されるから言わないでおく。
「見上さんに聞きたいことがあります」
「俺に? 聞きたいこと?」
「はい」
「俺?」
「はい」
「なんだ、言ってみろ」
「見上さんはどんな時にモヤモヤしますか?」
「はあ?」
「モヤモヤする時ってどんな時?」
「坊主、お前なに言ってんだ?」
「教えて」
「なんで俺に聞くんだ? そういうのは友達に聞けばいいだろうよ」
「子どもの話じゃないんで」
深町さんが吹き出す。背中がヒクヒクしてる。
「うははは! 坊主、お前面白いこと言うな! 子どもの話じゃねえのか!」
「うん。だから見上さんに聞きたい」
「そうなあ、モヤモヤねえ」
窓の外をぼんやり見てる。
「若いのが面倒起こした時とか」
「うん」
「株価が下落した時とか」
「うん」
「いや、それはイライラだな、モヤモヤか」
「モヤモヤで」
「……惚れてる奴が俺以外の奴といる時とか」
「なんで? なんでそれでモヤモヤするの?」
「なんでってそりゃ嫉妬だろうよ」
嫉妬……
「嫉妬するの?」
「するだろ? 惚れてる奴が俺以外の奴に興味持ってるのは嫌だろう?」
え? 頼と京さんが一緒にいるのを見てモヤモヤするのは嫉妬なの?
嘘だ。
「嘘だ! 嫉妬なんかしてない!」
「知らねえよ! なんなんだ、お前は」
「だって……」
見上さんがため息をつく。
「もういいから言いたいこと全部言ってみろ」
「ある人とある人が一緒にいるのを見るとモヤモヤする」
「嫉妬じゃねえか」
「なんで? なんで俺が嫉妬するの?」
「そりゃあ、そいつに惚れてるからだろ?」
「俺好きなの?」
「知らねえって!」
深町さんが再起不能なくらいヒクヒクしてる、背中がずっと震えてる。
「見上さんはモヤモヤする時どうするの?」
「どうにかできるならするが、嫉妬はどうにもならねえな」
「ええ……」
「そこが難しいところよ、人の気持ちだけはどんなに金積もうが、どんなに想い続けようが、どうにもならねえ」
「そんなの辛いじゃん」
「それが恋だろ?」
「ヤクザも恋するの?」
ぶはっ!
深町さんが盛大に吹いて、
「深町っ!」
と見上さんに怒られて死んだ。
「ヤクザだろうが、坊主だろうが、恋することもあるだろうよ。
人を好きになるのは悪いことか?」
あ……また、この言葉……
「ううん、悪くない」
「だろ? モヤモヤすることもあるけど、その人といて嬉しいことや楽しいこともあるだろ?」
「うん」
「それが唯一嫉妬を忘れられる方法だろうな。嬉しい、楽しいで嫉妬を上回るしかねえな」
!!!!
答えが出た!!
「見上さん、凄い! ヤクザ凄い!」
パァーーーーッ!
深町さんがヒクヒクし過ぎてハンドル抱えちゃったからクラクション鳴っちゃった。
「すwみwまwせwんw」
と特殊な笑い方をしてる。
見上さんも肩を震わせてる。
「坊主、お前は本当に変わんねえな」
と頭をポンポンする。
みんなポンポン好きなんだな。
「頼もよく頭ポンポンする」
「そうか!」
俺は車を降りる。
「見上さん、深町さん、ありがとうございました!」
頭を下げる。
「じゃあな、坊主」
俺は走り去る車に手を振った。
「才くん、いい子ですね」
「でかくなっても昔っからなんも変わらねえや」
「頼さんの育て方が良かったんですね」
「深町」
「はい」
「お前、坊主になにか吹き込んだか?」
「いえ、なにも……」
ふっ
「まあいい、いつも付き合わせて悪いな」
「いえ、楽しいです」
「そうか」
見上さんに聞いたら教えてくれた、解決した。見上さん凄い!
モヤモヤは嫉妬だって。
それはわかった。
嫉妬するのは好きだから。
それもわかった。
ということは俺は京さんが好きってことだ。
状況証拠的には完全にクロ。
でも物的証拠はないからシロ。
物的証拠……
好きを具現化することはできないから、自分の心の状態をそれとする。
それは俺が京さんに対してドキドキするかだ。
だって好きならドキドキするはず。
俺は京さんといると楽しいけどドキドキはしてない気がする。
そこが矛盾する。
おかしい、納得できない。
確かに嫉妬はしてるみたいなんだ。
頼と京さんが仲良くしてるとモヤるんだもん。
京さんに頼を取られちゃう!
じゃなくて、
頼に京さんを取られちゃう!
なんだ。
小さい頃は頼に近づく人みんな嫌だった。
頼を取らないで!って思ってた。
もちろん京さんにもそう思ってた。
今は逆になった。
あれ? やっぱりこれは好きってことなのかもしれない。
だから尚更ドキドキしてないのはおかしい。
ふむ。
…………!!
あ! わかった!
気づいちゃったかも!
俺、天才!
お母さん、やっぱり俺天才だった!
シチュエーションだ。
好奇心は止まらない。
頼は、
「休みに来るなって言ってんのに」
と文句言うくせにちゃんと施術してあげてる。
文句を言われたからなのか、いつもよりほんの少しだけ早めに切り上げた見上さん。
「頼ちゃん、またな」
と帰っていく。
俺は外に先回りする。
深町さんが車の後部座席のドアを開け、見上さんが乗り込む。そこへ素早く潜り込み、俺も乗る……予定が深町さんに捕まった。
腕を捻り上げられる。
「痛い! 痛い!」
「え? 才くん?」
「坊主、お前なにしてんだ?」
俺が騒いだため、頼が店から顔を出す。
深町さんが何事もなかったかのように俺を隠し会釈をする。
「坊主、乗れ」
見上さんの指示で俺は深町さんに車の中に押し込まれた。
「ここだと頼さんが怪しむので移動します」
と深町さんは車を走らせた。
ほんの少し走ってスポーツセンターの駐車場に車を停める。
「坊主、なんの真似だ」
少し見上さんが怖い。この人がヤクザだったことを今更思い出す。
「騒ぎを起こすと俺は頼ちゃんの店を出禁にされちまう、面倒なことはやめてくれ」
ヤクザがどの口で……と思ったけど、きっと殺されるから言わないでおく。
「見上さんに聞きたいことがあります」
「俺に? 聞きたいこと?」
「はい」
「俺?」
「はい」
「なんだ、言ってみろ」
「見上さんはどんな時にモヤモヤしますか?」
「はあ?」
「モヤモヤする時ってどんな時?」
「坊主、お前なに言ってんだ?」
「教えて」
「なんで俺に聞くんだ? そういうのは友達に聞けばいいだろうよ」
「子どもの話じゃないんで」
深町さんが吹き出す。背中がヒクヒクしてる。
「うははは! 坊主、お前面白いこと言うな! 子どもの話じゃねえのか!」
「うん。だから見上さんに聞きたい」
「そうなあ、モヤモヤねえ」
窓の外をぼんやり見てる。
「若いのが面倒起こした時とか」
「うん」
「株価が下落した時とか」
「うん」
「いや、それはイライラだな、モヤモヤか」
「モヤモヤで」
「……惚れてる奴が俺以外の奴といる時とか」
「なんで? なんでそれでモヤモヤするの?」
「なんでってそりゃ嫉妬だろうよ」
嫉妬……
「嫉妬するの?」
「するだろ? 惚れてる奴が俺以外の奴に興味持ってるのは嫌だろう?」
え? 頼と京さんが一緒にいるのを見てモヤモヤするのは嫉妬なの?
嘘だ。
「嘘だ! 嫉妬なんかしてない!」
「知らねえよ! なんなんだ、お前は」
「だって……」
見上さんがため息をつく。
「もういいから言いたいこと全部言ってみろ」
「ある人とある人が一緒にいるのを見るとモヤモヤする」
「嫉妬じゃねえか」
「なんで? なんで俺が嫉妬するの?」
「そりゃあ、そいつに惚れてるからだろ?」
「俺好きなの?」
「知らねえって!」
深町さんが再起不能なくらいヒクヒクしてる、背中がずっと震えてる。
「見上さんはモヤモヤする時どうするの?」
「どうにかできるならするが、嫉妬はどうにもならねえな」
「ええ……」
「そこが難しいところよ、人の気持ちだけはどんなに金積もうが、どんなに想い続けようが、どうにもならねえ」
「そんなの辛いじゃん」
「それが恋だろ?」
「ヤクザも恋するの?」
ぶはっ!
深町さんが盛大に吹いて、
「深町っ!」
と見上さんに怒られて死んだ。
「ヤクザだろうが、坊主だろうが、恋することもあるだろうよ。
人を好きになるのは悪いことか?」
あ……また、この言葉……
「ううん、悪くない」
「だろ? モヤモヤすることもあるけど、その人といて嬉しいことや楽しいこともあるだろ?」
「うん」
「それが唯一嫉妬を忘れられる方法だろうな。嬉しい、楽しいで嫉妬を上回るしかねえな」
!!!!
答えが出た!!
「見上さん、凄い! ヤクザ凄い!」
パァーーーーッ!
深町さんがヒクヒクし過ぎてハンドル抱えちゃったからクラクション鳴っちゃった。
「すwみwまwせwんw」
と特殊な笑い方をしてる。
見上さんも肩を震わせてる。
「坊主、お前は本当に変わんねえな」
と頭をポンポンする。
みんなポンポン好きなんだな。
「頼もよく頭ポンポンする」
「そうか!」
俺は車を降りる。
「見上さん、深町さん、ありがとうございました!」
頭を下げる。
「じゃあな、坊主」
俺は走り去る車に手を振った。
「才くん、いい子ですね」
「でかくなっても昔っからなんも変わらねえや」
「頼さんの育て方が良かったんですね」
「深町」
「はい」
「お前、坊主になにか吹き込んだか?」
「いえ、なにも……」
ふっ
「まあいい、いつも付き合わせて悪いな」
「いえ、楽しいです」
「そうか」
見上さんに聞いたら教えてくれた、解決した。見上さん凄い!
モヤモヤは嫉妬だって。
それはわかった。
嫉妬するのは好きだから。
それもわかった。
ということは俺は京さんが好きってことだ。
状況証拠的には完全にクロ。
でも物的証拠はないからシロ。
物的証拠……
好きを具現化することはできないから、自分の心の状態をそれとする。
それは俺が京さんに対してドキドキするかだ。
だって好きならドキドキするはず。
俺は京さんといると楽しいけどドキドキはしてない気がする。
そこが矛盾する。
おかしい、納得できない。
確かに嫉妬はしてるみたいなんだ。
頼と京さんが仲良くしてるとモヤるんだもん。
京さんに頼を取られちゃう!
じゃなくて、
頼に京さんを取られちゃう!
なんだ。
小さい頃は頼に近づく人みんな嫌だった。
頼を取らないで!って思ってた。
もちろん京さんにもそう思ってた。
今は逆になった。
あれ? やっぱりこれは好きってことなのかもしれない。
だから尚更ドキドキしてないのはおかしい。
ふむ。
…………!!
あ! わかった!
気づいちゃったかも!
俺、天才!
お母さん、やっぱり俺天才だった!
シチュエーションだ。
好奇心は止まらない。
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