好きを教えて

秋臣

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サシ飲み

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「こっちが休み取れって言ったのに、時間割かせてすまなかった」
深町さんからこの日しか時間が取れないので、申し訳ないが伺ってもよろしいでしょうか? と予約の依頼があった。
「いえ、気にしないでください」
「どこ行ってたんだっけ?」
「カナダです」
「海外か、いいところ行ったな」
「カナダ行ったことありますか?」
「ねえな」
ふっ

今日は観音様のメンテナンスと称して予約している。
これも見上さんの策略だ。
既に時間料金はいただいている。
手を加えるところはないのでチェックのみ。
それでもメンテナンスの体で施術というチェックをすれば更に施術料金を上乗せできる。
見上さんはそういう人だ。 
既にいただいているので今日は結構ですと断ったのだが、 
「それはそれ、これはこれだ」
と支払いをした。

予約が入った時に深町さんにお願いをした。
見上さんの予約に関してなにかあれば深町さんに連絡することになっている。

「見上さんの予約を延長することは可能ですか?」
「どういうことでしょうか?」
深町さんが訝しげな声色になる。
「土産に酒を買ったので、礼を兼ねて一杯どうかなと思いまして……」
ダメか。
「無理ですよね……はは」
「なんとかします」
「え?」
「なんとかします」
「あ……すみません、よろしくお願いします」
「はい」

さっき深町さんに、
「こじ開けました」
と言われた。
「無理言ってすみません……」
「いえ」

そんなやり取りが深町さんとあった。
なにをしに来たのかわからないくらいの短時間で帰ろうとする見上さんに声をかける。

「見上さん」
「ん?」
「家に寄って行きませんか?」
「家?」
「土産あるんです」
「そうなのか? 悪いな、気を遣わせて。深町、受け取っておいてくれ」
「いや、そうじゃなくて……」
「?」
「家で飲みませんか?」
「頼ちゃんからの誘いを断るのは忍びないが、悪い、予定があるんだ」
「ありません」
深町さんが即座に答える。
「あ?」
「この後の予定はありません」
「いや、あるだろ?」
「ありません」
「……深町、お前なにをした?」
「なにもしてません、予定がなくなっただけのことです」
ふっ
「予定はないんだな」
「ありません」
「だそうだ、頼ちゃん」
「一杯付き合ってもらえますか」
「美味い酒飲ませてくれ」


見上さんを自宅へ招く。
長年通ってくれているが、自宅へ招くの初めてだった。
深町さんは玄関の外にいると言う。
リビングへどうぞと言ったのだが、玄関前にいますと外へ出てしまった。
「意外と質素だな」
「男二人なんで飾りっけがなくて」
「坊主がいるからもっと賑やかな感じを想像してたよ」
「こんなもんですよ」

「これ飲みませんか?」
俺はウイスキーを手にした。
「美味いか?」
「カナダでいろいろ飲みましたが、これが一番美味かったです」
「ふっ じゃあもらうよ」
「はい」
グラスを用意し、
「割りますか?」
と聞くと、
「いや、ロックでいい」」
と答える。
氷の入ったグラスにウイスキーを注ぐ。
綺麗な琥珀色だ。
「じゃ、乾杯」
「乾杯」
グラスを合わせる。

見上さんは一気に煽る。
強いのか?
「美味いなあ」
「そうなんです、これ美味いんですよ」
「カナダはアイスワインのイメージだったな」
「それもありますよ」
「へえ」
「でもちゃんぽんしない方がいいです」
「悪酔いするからか?」
「いえ、単純に口の中がくそ不味いんです」
「あはははは!」

紙袋を二つ見上さんの前に置く。
「アイスワインと今飲んでるウイスキーが入ってます」
「ん? 二つ?」
「一つは深町さんのです」
「気を遣わんでいいぞ」
「たまにはいいじゃないですか」
「これはなんだ? ドリームキャッチャーか?」
くくく。
「なんだよ」
「それ才からです。カナダのお守り、お土産と言ったらそれだって」
「いやあ、これ俺にか?」
「深町さんにもです」
「悪夢を祓っていい夢が見られるようにだろ? ヤクザ自体が悪夢だろ」
見上さんが苦笑してる。
その様子が面白くて笑ってしまう。
「お守りとして持っててもらいたいそうです。
色や形、お二人の分を散々悩んで決めてました。貰ってやってください」
「坊主はどこまでいっても坊主だな」
「はい」

「残りの休みはどうするんだ? まだあるだろ?」
「才が大学卒業する年に店が15周年になるんです」
「もうそんなになるのか」
「はい、そのための準備を少しずつ始めようかと思ってます」
「10周年の時はカードだったか?」
「はい、お客さんに入れた図案の写真をカードにしました」
「俺は冊子みたいなの貰ったぞ?」
「見上さんのが大作だったからです。カード一枚じゃ収まらなかった」
「今度はなにするんだ?」
「まだちゃんと決めたわけではないですが、少し楽しめるようなことを考えてます」
「そうか、楽しみにしてる」
「はい、期待に添えるよう頑張ります」

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