ゆらり、揺れる

秋臣

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ジム

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退社後、丹羽とジムに向かう。
本当に駅前だった。
「ここです」
ドアを開けるとたくさんのトレーニングマシンがずらりと並んでいる。

沢渡さわたりさん!」
丹羽が誰かに声をかける。
「ああ、丹羽くん、こんばんは」
「こんばんは、今日は上司を連れてきました。係長の秋本さんです」
「こんばんは、トレーナーの沢渡と申します」
服の上からも筋肉がわかるくらい鍛え上げられた体だが、その笑顔は人懐こくて親近感が湧く。
「秋本と申します」
「沢渡さん、係長、ジムを見学したいそうです」
「そうですか、是非!」
「丹羽、係長はやめてくれ」
「あ、すみません、癖で。
俺着替えてきますね」

何をどう見学すればいいのだろうか。
スーツ姿の俺は浮きまくっている。

「ジムに興味がお有りですか?」
沢渡さんが問う。
「最近少し太りまして……特にこの腹を何とかしたくて……」
思わず腹をさすってしまう。
「唐突に失礼ですが、身長、体重、それと差し支えなければ年齢を伺ってもよろしいでしょうか?」
「構いません。身長は176cm、体重は……73㎏……年齢は33歳です」
「お若く見えますね、20代だと思いました。私と一つ違いだとは思わなかったです」
「えっ!?」
一つ違いということは……
「私は32歳です」
と沢渡さんが教えてくれる。

嘘だろ?
どう見ても由尭くんと同じくらいにしか見えない……
「お若く見えるのは沢渡さんの方ですよ、驚きました」
「ありがとうございます、若く見えるのが嬉しいのは歳の証拠ですよね」
と悪戯っぽく笑う。

ふっ
確かに。

「計算してみたのですが、BMI値……肥満度を測るものなのですが、これが23.89くらいですね」
「それは良くないということですか?」
「いえ、そんなことはありません。
標準値ですし肥満でもありません。
ただ本人からすると若干体が重いと感じてくる体重ではあるかなというところですね」
やっぱりそうか……
「ちなみにこの身長の適正体重は68㎏くらいですね」
5㎏オーバー……

「何とかなりますか?」
「もちろんです。目標によってメニューは変わってきますが、どんな体になりたいとか目標はありますか?」
「そうですね、とりあえず腹の肉を落としたいのと、全体的にぼやっとしてるので引き締めたいです」
「なるほど。可能ですよ」
にっこり微笑む。

なんと心強いことか…
今の俺には沢渡さんが救世主のように見える。

「係ちょ……秋本さん、どうですか?見学できました?」
丹羽が着替えて戻ってきた。
「うん、沢渡さんに話を聞いてもらったよ。贅肉を落とすことはできるって」
「じゃあ一緒に通いましょうよ、ね?」
紹介ポイントがチラついている丹羽が必死に勧誘する。
「それじゃポイント付与に貢献してやるよ」
「マジですか? やった!」
「丹羽くん、紹介ポイント目当てなの?」
沢渡さんがやり取りを見て笑ってる。
「あとちょっとでストレッチポールもらえるんですよ」
「あれ結構ポイント必要だもんね」
「そうそう」
「でも大歓迎ですよ。紹介ですと入会金無料になります」
それはいいな。
「全然運動していないんですが大丈夫でしょうか?」
「ゆっくり時間をかけて取り組みましょう。秋本さん用のメニューを作ります。
あ、私が担当してもよろしいですか?」
「はい、もちろんです」
「少しだけ情報をください。どこをゴールにしますか? どのくらいの期間でそこに辿り着きたいですか?」
「うーん、ゴールは体が引き締まるまで。
期間は決めないでやります」
「わかりました。それでは入会手続きをさせていただきます」
「はい」

こうして俺はジムに通うことにした。

手続きをしてから気づいた。
運動できるような服を持っていないことに。
マシンを使ってトレーニングしている丹羽に聞く。
「運動するにはどういう服を着ればいいんだ?」
「何でもいいんですよ、自分が動きやすければ」
そうざっくり言われてもなあ。
「俺、そういう服持ってなくて」
「それなら俺と買いに行きますか?」
「いいのか?」
「駅前のデパートでもスポーツ用品店でも買えますよ」
それなら行きやすいな。
「頼めるか?」
「お安いご用です。早速明日の帰りにでも行きましょうか」

丹羽におんぶに抱っこになってしまった。

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