ゆらり、揺れる

秋臣

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アドバイス

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翌日、退社後に丹羽が買い物に付き合ってくれた。
必要なものをメモしてきてくれているが、
「何でも自分の好きなものでいいんですよ」
とまた言っている。
「そう言うなよ、丹羽が着ていたウエアみたいなのがいい」
「そうですか?
んーTシャツは体に沿うようなピッタリしたものは嫌ですか?」
「この腹じゃなあ……」
ふっ……
お前笑っただろ?
「それじゃ、あまりピタピタなのは避けましょうか。でもゆとりがありすぎても動きづらいので程々にピタピタにしましょう」
そう言って何着か持ってくる。
その中から好みの色を選ぶ。

「下はどうします?
俺はハーフパンツにレギンスです」
「レギンスってなんだ?」
「ピタピタのアンダーウェアです」
「それ履かないといけないのか?」
「いえ、ただハーフパンツだけよりレギンス合わせた方が好みだってだけですね」
「任せる」
「丸投げですね」
「わからないんだから仕方ないだろ?」
やれやれと言いながらもハーフパンツとレギンスも選んでくれる。
それと靴下やタオルも見繕ってくれた。

「着替え用に何着かあった方がいいと思います」
「そうだな、2着じゃ少ないか?」
「最初はそれでいいと思います。
万が一、すぐにやめてしまった時のことを考えると必要最低限の枚数にしておいた方が無難です」
ごもっともだ。

「あとはシューズですね」
「あ、そうか靴も必要なんだな」
「そうです、大事ですよ」
軽い靴がいいのかな、ランニング用とかでいいのか?
「ランニング用でも大丈夫です。
フィットネスシューズもありますよ」
そんなに細分化されてるのか。
「軽くて柔らかいから運動しやすいですよ」
そう言われて何足か履き比べてみる。
履いてないみたいに軽い。
「これいいな」
「それにしましょう」

一通り買って店を出ると、
「ウエアとタオルは洗濯しないといけないから仕方ないですけど、シューズは毎回持ち帰るの面倒じゃないですか」
「確かに」
「ジムで個人ロッカーを借りられるんです。あのジムだと月額1,000円で借りられます」
「丹羽は借りてるのか?」
「はい。シューズとトレーニングの後にシャワーを浴びるのでボディソープとシャンプーのセットとドライヤーを入れてあります」
「なるほどなあ」
「俺と一緒に来る時は俺のドライヤーを使えばいいですよ。シャンプーセットは合う合わないがあるので別途用意した方がいいと思います」
「いいのか?」
「早々にやめちゃうかもしれないし」
「そんなにやめそうか?」
「危なそうですけど、沢渡さん指導上手いから頑張りましょう」
「頑張ってみるよ」
「その意気です」


丹羽はその足でジムに向かうという。
「今日もやるのか?」
「いえ、今日はやりません。
係ちょ……秋本さんのシューズだけでも俺のロッカーに入れておこうかと」
「え、いいよ、ロッカー借りるよ」
「そうですか、それじゃ受付で借りてきましょうか」
「うん」
受付でロッカーを契約したいと申し出るとすぐに手続きをしてくれて鍵を渡してくれた。
「ロッカー使用料は毎月の会費と共に引き落としになります」
「はい、お願いします」

「必要なものは揃ったので、来週から本格的に始めましょう」
「そうだな」
「土日でやる気どこかに落としてこないでくださいね」
「俺、そんなに意志弱そう?」
「仕事では絶対そんな風には感じないんですけど、どうもこっちは危なそうな気配がします」
「頑張るつもりなんだけど」
「いっそのことみんなに宣言しちゃえばいいんじゃないですか?ダイエット始めまーす! って」
「嫌だよ、そんな恥ずかしいことできるか!」
「それならこっそりジム通いして、『係長、最近かっこよくなってない?』とか言わせちゃいましょうよ」
「ふっ」
「これで行きましょう」
「絶対人に話すなよ」
「大丈夫ですよ、こう見えて俺口堅いですから」
「本当か?」
「ぽよぽよの腹をバッキバキにしちゃいましょうね」
「ぽよぽよって言うな」
「あははー」
絶対人に言うなよ。

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