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悪癖
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珀次との付き合いが始まった。
今までと同じ、一緒に過ごしているだけ。
周りの友達に隠していたわけではないが、わざわざ話すこともなかった。
なんとなくうっすら悟ってたみたいだけど。
変わったのは珀次だった。
急にデレた。
こんなに甘えたでデレる奴だったのかってくらい二人の時は特に甘えたがる。
「お前、自分の部屋帰らないの?
「ん?」
珀次はずっと俺の部屋に入り浸っていて、滅多に自分の部屋に帰らない。
「たまには一人にさせてくれよ」
「なんで? 俺といてよ」
「はああ……」
「俺、こっちに引っ越していい?」
「は?」
「いいよね?」
「やだよ、俺、一人になる時間欲しい」
「一人でなにすんの? 俺いなくてなにすんの? 女連れ込むの? 浮気すんの?」
「そうかもね」
そう言って揶揄うと、
「碧斗は俺のだから誰にも渡さない」
と妬く。
素直に妬いてくれる珀次が好きだった。
俺に夢中になってる珀次が好きだった。
求められていることが堪らなく嬉しかった。
料理はいつまで経っても上達しないし、
洗濯させると色移りさせるし、畳むのも下手くそ。
片付けが苦手ですぐ散らかすけど、突然スイッチ入ってめちゃくちゃ綺麗に片付けて得意げにドヤる。
ダメなところもあるけどそれさえも好きとしか思えなかった。
でも一つだけ揉める原因になることがあった。
珀次の唯一と言っていい欠点だ。
珀次は人懐こい。
俺と初めて会った時もそうだったが、人に対して壁がない。
要するに人見知りしない。
誰とでもすぐ仲良くなる。
俺は人見知りではないが、珀次ほど社交的ではないから、そんな珀次を羨ましくも誇らしくも思っていた。
そこまでは微笑ましいで済んでいたのだが、酒を大っぴらに飲めるようになると、それが悪癖へと変わっていった。
飲んで打ち解けると誰彼構わず部屋へ招く。
俺の部屋に。
夜中にドアをドンドン叩き、
「碧斗~開けて~終電逃したあ~」
と喚くので、近所迷惑だ! とドアを開けると知らない顔が数人いる。
は?
「誰?」
「ん? 飲み屋で知り合った」
「帰れよ」
「終電ないもん」
「なんで俺がお前の尻拭いしなきゃならないんだよ」
「今日だけだから! 朝までだから!」
と強引に部屋に入る。
皆、酒が入ってるからそのノリで赤の他人の俺の部屋で寛ぐ。
うるさいし寝られないし、そもそもなんで知らないやつを部屋に入れなきゃならないんだよ。
腹が立って寝られない。
これが多い時には月に何度もある。
翌朝、そいつらを部屋から追い出す。
珀次は、
「碧斗、ごめんね」
と体を触りながら甘える。
またかよ……
こういう時、すぐセックスに持ち込もうとする。
それでなあなあにするのがなにより嫌だった。
「これで何度目だよ! 今度やったら許さないって俺言ったよな!?」
「言った。だからごめんね、碧斗ごめんね」
いつもなら絆されるお前の甘えたも、この時ばかりはイラつくだけだった。
イラついてはいても珀次は飲んで知り合った奴らに手を出したり体の関係を持ったりすることは絶対なかった。
そこだけは信じられた。
でも……
「限界、無理」
「え? 限界って? 無理って?」
泣きそうな顔して珀次が縋る。
「別れたい」
「嫌だ! 俺別れたくない!」
「それなら約束守ってくれよ! 飲みに行くなとも誰とも親しくなるなとも俺言ってないよな?
ただここに連れ込むなってだけのことがなんでできないんだよ!
お前の道楽に俺を巻き込まないでくれよ!」
「碧斗いないと俺無理……別れるなんて言わないでくれよ……」
縋る珀次が俺にキスする。
顔を背けるが強引にキスする。
「碧斗、好き、離れないで……」
腹が立つのに、そんな珀次をまだかわいいと思ってしまう。
結局セックスに持ち込まれる。
満足そうに俺の隣で寝る珀次にため息が出る。
俺のバカさにもため息が出る。
それでもやはり珀次のことが好きだから別れはしなかった。
俺が大人になればいいと思ってた。
今までと同じ、一緒に過ごしているだけ。
周りの友達に隠していたわけではないが、わざわざ話すこともなかった。
なんとなくうっすら悟ってたみたいだけど。
変わったのは珀次だった。
急にデレた。
こんなに甘えたでデレる奴だったのかってくらい二人の時は特に甘えたがる。
「お前、自分の部屋帰らないの?
「ん?」
珀次はずっと俺の部屋に入り浸っていて、滅多に自分の部屋に帰らない。
「たまには一人にさせてくれよ」
「なんで? 俺といてよ」
「はああ……」
「俺、こっちに引っ越していい?」
「は?」
「いいよね?」
「やだよ、俺、一人になる時間欲しい」
「一人でなにすんの? 俺いなくてなにすんの? 女連れ込むの? 浮気すんの?」
「そうかもね」
そう言って揶揄うと、
「碧斗は俺のだから誰にも渡さない」
と妬く。
素直に妬いてくれる珀次が好きだった。
俺に夢中になってる珀次が好きだった。
求められていることが堪らなく嬉しかった。
料理はいつまで経っても上達しないし、
洗濯させると色移りさせるし、畳むのも下手くそ。
片付けが苦手ですぐ散らかすけど、突然スイッチ入ってめちゃくちゃ綺麗に片付けて得意げにドヤる。
ダメなところもあるけどそれさえも好きとしか思えなかった。
でも一つだけ揉める原因になることがあった。
珀次の唯一と言っていい欠点だ。
珀次は人懐こい。
俺と初めて会った時もそうだったが、人に対して壁がない。
要するに人見知りしない。
誰とでもすぐ仲良くなる。
俺は人見知りではないが、珀次ほど社交的ではないから、そんな珀次を羨ましくも誇らしくも思っていた。
そこまでは微笑ましいで済んでいたのだが、酒を大っぴらに飲めるようになると、それが悪癖へと変わっていった。
飲んで打ち解けると誰彼構わず部屋へ招く。
俺の部屋に。
夜中にドアをドンドン叩き、
「碧斗~開けて~終電逃したあ~」
と喚くので、近所迷惑だ! とドアを開けると知らない顔が数人いる。
は?
「誰?」
「ん? 飲み屋で知り合った」
「帰れよ」
「終電ないもん」
「なんで俺がお前の尻拭いしなきゃならないんだよ」
「今日だけだから! 朝までだから!」
と強引に部屋に入る。
皆、酒が入ってるからそのノリで赤の他人の俺の部屋で寛ぐ。
うるさいし寝られないし、そもそもなんで知らないやつを部屋に入れなきゃならないんだよ。
腹が立って寝られない。
これが多い時には月に何度もある。
翌朝、そいつらを部屋から追い出す。
珀次は、
「碧斗、ごめんね」
と体を触りながら甘える。
またかよ……
こういう時、すぐセックスに持ち込もうとする。
それでなあなあにするのがなにより嫌だった。
「これで何度目だよ! 今度やったら許さないって俺言ったよな!?」
「言った。だからごめんね、碧斗ごめんね」
いつもなら絆されるお前の甘えたも、この時ばかりはイラつくだけだった。
イラついてはいても珀次は飲んで知り合った奴らに手を出したり体の関係を持ったりすることは絶対なかった。
そこだけは信じられた。
でも……
「限界、無理」
「え? 限界って? 無理って?」
泣きそうな顔して珀次が縋る。
「別れたい」
「嫌だ! 俺別れたくない!」
「それなら約束守ってくれよ! 飲みに行くなとも誰とも親しくなるなとも俺言ってないよな?
ただここに連れ込むなってだけのことがなんでできないんだよ!
お前の道楽に俺を巻き込まないでくれよ!」
「碧斗いないと俺無理……別れるなんて言わないでくれよ……」
縋る珀次が俺にキスする。
顔を背けるが強引にキスする。
「碧斗、好き、離れないで……」
腹が立つのに、そんな珀次をまだかわいいと思ってしまう。
結局セックスに持ち込まれる。
満足そうに俺の隣で寝る珀次にため息が出る。
俺のバカさにもため息が出る。
それでもやはり珀次のことが好きだから別れはしなかった。
俺が大人になればいいと思ってた。
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