17 / 38
第3章 警告と覚醒
5話 毎晩繰り返される夢と男の子の幽霊
夢を見ても、起きた時にはその夢の内容を忘れていることが多いでしょう? 私も時々夢は見るけれど、その内容をほとんど覚えていないし。あとは、たとえ夢を見ていたとしても、見ていたという自覚さえ、ない場合もあるだろうし。
だけど、神谷のおばちゃんのことがあってから、内容は覚えていないけれど、夢を見ていたと、はっきり自覚しながら起きる、というのを私は毎朝繰り返すようになったんだ。
今までに、こんな毎日、夢を見たことがなかった私。というか、研究、研究の日々で、研究に没頭しすぎて、疲れてぐっすりということが多く、夢なんて見る暇もなかった感じだしね。
だから、なんでこんなふうに、毎日夢を見るようになったんだろう? と、夢を見始めたことを不思議に思っていたの。
ただ……。それだけじゃ終わらないっていうのが、今の私には通常通りというか。
次に変化が起きたのは、所長とのことがあってからだった。所長に初めて直談判に行った日、そして所長のことを、注意して観察するようになってから。今度は起きた時に、しっかりと夢の内容を覚えている夢を、毎日見るようになったんだ。
しかもその夢の内容が、問題というか、なんというか。現実で起きていることの続きという感じの、なんとも言えない夢で……。
夢の始まりは、私がいつも使っている研究室からで。研究室で、ハッと目を覚ますところから始まるの。
それで、研究をしている間に、いつの間にか寝てしまったのかと、慌てて周りを見渡すんだけど。
何故か研究室には私だけしかいなくて、他の誰も見当たらず、研究室はシーンと静まり返っているんだ。しかも、研究室の電気は全て消えているし、廊下の電気までも消えていてね。
それで、様子を知ろうと窓に近づく夢の中の私。そうして外を見れば、あいかわらずの霧で、空の色はいまいちよく分からなかったけれど、それでも、もう夜だと分かるくらいには外は暗くて。急いで時計を確認すると、時計の針は19時30分を示していたんだ。
研究中に寝てしまった私をそのままに、みんな仕事を終わらせて、部屋に戻ってしまったの? もう、起こしてくれれば良いのにと、ブツブツ文句を言いながら。慌てて自分のデスクの上を簡単に片付けると、とりあえず研究室から出る夢の中の私。
だけど、隣の宮本さんの班が使っている研究室の前を通っても、そのまた隣の研究室の前を通っても、本当に誰もいなくて。それどころか、他の部屋、廊下、どこを見ても、誰1人として見ることはなく。
いくら仕事の時間が終わっているからって、さすがにこの時間に、誰とも会わないなんてことはあり得ない。
しかも、研究室と同じで、他の部屋も廊下も、全て電気は消えていて。それこそ、1つの明かりもついていないんだから、研究所の中は真っ暗になりそうなものなのに。何故か研究所の中を、しっかりと見ることができているの。
ここでおかしいと思った夢の中の私は、荷物を持ったまま、研究所内を調べることにするんだ。
みんなが居そうな場所を順番に確認して回って行く。まずは他の研究室に会議室、それから、研究に必要な道具がしまってある倉庫部屋に、資料室と図書館も回ったよ。ただ、やっぱり誰も見つけることはできなくて。
次に向かったのは、研究関係以外で人がたくさん集まっている、食堂とプレイルーム。
だけど、いつも誰かしら食事をしている食堂にも。片付けても誰かが遊び道具を出しっぱなしにして、散らかっていることが多いプレイルームにも、他同様、誰もいなくて……。
仕方なく、次に向かった場所は、宿泊棟だった。
1階ずつ廊下を確認したあと、ちょっと歩いてみて、部屋に誰かいないか、様子を伺うの。でも、どの部屋からも、人の気配はまったくしないし。なんだったら、いつもの夜中よりも静まり返っているんだ。
それと、宮本さんの部屋へ行った時は、一応部屋のドアを叩き、宮本さんを呼んでみたけれど、やっぱり反応なしだったよ。
それで夢の中の私は、さらに別の場所を探そうとするんだ。ただ、ここで不思議なことが起こるの。
ここまでは、夢の中の私は、自分の意思でどこへ向かうと決めていたけれど。いや、夢の中の自分だから、本当に自分の意思で動いているのかは怪しいけど。毎回同じ順路で、他の人を探しているし。
でも、みんなを探す場所は、まだまだあるはずなのに。ほら、大浴場とか医療室と休憩室とか。それなのに、みんなを探しているはずの私は、ある場所へ向かうんだ。一体どこへ向かうのか?
それは、所長室だった。必ず、宮本さんの部屋に行ったあと、所長室へ来るの。
事件が起きてからは、所長に直談判しにくる人たちが、所長室の前に集まっていることが多かったから。夢の中とはいえ、絶対にいないってことはないだろうけど。
でも、その人たちも、夕食時には来ている人は少なくて。だからさっき19時30分という時間的に、所長室なんて、最後に確認すればいいはずなのに。何故か夢の中の私は、必ず所長室へいくんだ。
そうして所長室の前に着くと、必ず所長室のドアの鍵が、カチャリと音を立てて開き。私は躊躇なく、そのドアを開けて中に入るんだ。
ただ、所長室にも、現実では部屋に居ることが多い所長も、課長も、やっぱり誰もいなくて、電気も消えていてね。
そして、ここでも特に何かがあるわけでもなく、夢の中の私は、もうここに用はないと、そのまますぐに、部屋を出ようとするんだ。
だけど、ドアの方へ振り向こうとした瞬間、あることに気づくの。それは、所長がいつも座っている机から見て左側。そこに、もう1つドアがあったんだ。
ただ、これが本当に所長室にあるドアなのか、それとも夢だから存在しているのか、それは分からない。所長室に入ったのは、あの直談判の時だけで、その時は中をじっくり確認する余裕なんてなかったからね。
でも、夢の中の私は、そのドアの向こうを確かめようとドアに近づき、ドアノブを回してみるんだ。でも、鍵がかかっていて、ドアを開ける事ができず。
しかたなく廊下に出て、左の部屋を確認してみれば、その部屋は立ち入り禁止の部屋で。どうも、所長室の中のドアは、この立ち入り禁止の部屋へ繋がっているらしい。
まぁ、だからなんなのかと言われてしまうとね。それ以上は調べることはできなかったし、夢の中の私自身も、それ以上確かめようとはせず。そのあとはまた、別の場所を探し始めてね。
そうして探し始めてから、感覚では1時間くらいかな。夢の中の私は、いろいろな場所を探し回ったけれど、結局、誰も見つけることができないまま、最後の場所へと辿り着くの。
と、これがまた不思議で。最後に訪れる場所も所長室と同じように、いつも必ず同じ場所に向かうようになっていて。そこがどこかと言えば、私が1番よく訪れる、中庭を見渡せるあの廊下なんだ。そしてその廊下で、夢の中の私はようやく、ある人物を見つけることができるの。
だけどそれは、宮本さんでも、他の研究員でも、所長や課長でもなくて、まったくの予想外の人物。そう、私が研究所へ来たその日に目撃し、後に噂にもなった、あの男の子の幽霊なんだ。
そして男の子の幽霊は、最初は下を向いた状態で、廊下の真ん中にぽつんと立っているんだけど。私が足を止めるとすぐに顔を上げ、私を射抜くような鋭い視線で睨みつけ。そのあと、必ず私に向かって、何かを言ってきて。
ただ、何を言っているのか、声はまったく聞こえず。私自身も、声を出そうとするんだけど、口は動かすことはできても、喉が詰まってしまったみたいに声を発することはできず。毎回、そんな音のない会話が数分続くんだ。
そうして、そんななんとも言えない時間がやっと終わったと思ったら。その後もやっぱり毎回同じで。
男の子の幽霊はあれだけ私を睨んでいたのに、スッと私から目を離し。まずは、所長室と研究室のある方を見てから、その次に中庭を見つめて。最後に私に向き直ると、もう1度ジロリと私を睨んだあと、また聞き取れない声で何かを言いながら、どんどん消え始めてるの。
そして、男の子が消えるとほぼ同時に、私も夢から覚める。……と、こんな不思議な、そしてちょっと怖い夢を、毎日見るようになったんだ。
どうしてあの男の子の幽霊が、私の夢に出てくるのか。いろいろなことがありすぎて、それから男の子の幽霊を意識しすぎたせいで、それに関係する夢を見るようになってしまったとか?
それにしてもだよ? たまには他の夢を見たっていいはずなのに、毎回同じ夢を見るなんておかしいでしょう?
と、こんな感じで、ただでさえ研究所に漂う最悪な空気や、私たちの話を聞こうとしない所長や課長たちへのイライラ。それから悪天候のせいで身動きが取れず、外とも連絡が取れない閉塞感。
そういった、いろいろな問題が重なって、ただでさえストレスを感じていたのに。この夢を見るようになって、それでさらに精神が削られてしまって。私は、頭痛薬を飲む回数が、かなり増えてしまったんだ。
それでも、日々は続いていく。今日も所長の、あいかわらずノイズ混じりの定期放送が流れてきた。
いや、ノイズは最初の頃よりもさらに酷くなっていて。今ではもう、私は半分以上、何を言っているのか聞き取れなくなってしまったんだ。でもそれなのに、『研究を続けろ』という言葉だけは、なぜか毎回はっきり聞こえるんだから、本当に嫌になる。
放送でまで強調しなくてもいいのにと、心の中で文句を言い、どうにもならない気持ちのまま午前の研究を終わらせた私。この後はいつも通り、蕾に元気づけてもらおうと、中庭へ行こうとして研究室を出たよ。
だけどその時、不意に誰かに見られているような気がして、私は思わず足を止めて後ろを振り返ったんだ。でも、そこには誰もいなくて。
「気のせい? うーん、見られてる気がしたんだけどなぁ」
私は少し気になって、視線を感じた方へ行って確かめてみる。でもやっぱり、そこには誰もいなくて。結局、おかしいなと思いながらも、私はそのまま中庭へ向かうことにしたんだ。
そして、中庭の見える廊下まで来ると、蕾はどうしているかなと気になり、私は外に出る前に、窓から中庭をチラッと見てみることに。すると……。
私の目に、ある驚きの物が飛び込んできたんだ。
だけど、神谷のおばちゃんのことがあってから、内容は覚えていないけれど、夢を見ていたと、はっきり自覚しながら起きる、というのを私は毎朝繰り返すようになったんだ。
今までに、こんな毎日、夢を見たことがなかった私。というか、研究、研究の日々で、研究に没頭しすぎて、疲れてぐっすりということが多く、夢なんて見る暇もなかった感じだしね。
だから、なんでこんなふうに、毎日夢を見るようになったんだろう? と、夢を見始めたことを不思議に思っていたの。
ただ……。それだけじゃ終わらないっていうのが、今の私には通常通りというか。
次に変化が起きたのは、所長とのことがあってからだった。所長に初めて直談判に行った日、そして所長のことを、注意して観察するようになってから。今度は起きた時に、しっかりと夢の内容を覚えている夢を、毎日見るようになったんだ。
しかもその夢の内容が、問題というか、なんというか。現実で起きていることの続きという感じの、なんとも言えない夢で……。
夢の始まりは、私がいつも使っている研究室からで。研究室で、ハッと目を覚ますところから始まるの。
それで、研究をしている間に、いつの間にか寝てしまったのかと、慌てて周りを見渡すんだけど。
何故か研究室には私だけしかいなくて、他の誰も見当たらず、研究室はシーンと静まり返っているんだ。しかも、研究室の電気は全て消えているし、廊下の電気までも消えていてね。
それで、様子を知ろうと窓に近づく夢の中の私。そうして外を見れば、あいかわらずの霧で、空の色はいまいちよく分からなかったけれど、それでも、もう夜だと分かるくらいには外は暗くて。急いで時計を確認すると、時計の針は19時30分を示していたんだ。
研究中に寝てしまった私をそのままに、みんな仕事を終わらせて、部屋に戻ってしまったの? もう、起こしてくれれば良いのにと、ブツブツ文句を言いながら。慌てて自分のデスクの上を簡単に片付けると、とりあえず研究室から出る夢の中の私。
だけど、隣の宮本さんの班が使っている研究室の前を通っても、そのまた隣の研究室の前を通っても、本当に誰もいなくて。それどころか、他の部屋、廊下、どこを見ても、誰1人として見ることはなく。
いくら仕事の時間が終わっているからって、さすがにこの時間に、誰とも会わないなんてことはあり得ない。
しかも、研究室と同じで、他の部屋も廊下も、全て電気は消えていて。それこそ、1つの明かりもついていないんだから、研究所の中は真っ暗になりそうなものなのに。何故か研究所の中を、しっかりと見ることができているの。
ここでおかしいと思った夢の中の私は、荷物を持ったまま、研究所内を調べることにするんだ。
みんなが居そうな場所を順番に確認して回って行く。まずは他の研究室に会議室、それから、研究に必要な道具がしまってある倉庫部屋に、資料室と図書館も回ったよ。ただ、やっぱり誰も見つけることはできなくて。
次に向かったのは、研究関係以外で人がたくさん集まっている、食堂とプレイルーム。
だけど、いつも誰かしら食事をしている食堂にも。片付けても誰かが遊び道具を出しっぱなしにして、散らかっていることが多いプレイルームにも、他同様、誰もいなくて……。
仕方なく、次に向かった場所は、宿泊棟だった。
1階ずつ廊下を確認したあと、ちょっと歩いてみて、部屋に誰かいないか、様子を伺うの。でも、どの部屋からも、人の気配はまったくしないし。なんだったら、いつもの夜中よりも静まり返っているんだ。
それと、宮本さんの部屋へ行った時は、一応部屋のドアを叩き、宮本さんを呼んでみたけれど、やっぱり反応なしだったよ。
それで夢の中の私は、さらに別の場所を探そうとするんだ。ただ、ここで不思議なことが起こるの。
ここまでは、夢の中の私は、自分の意思でどこへ向かうと決めていたけれど。いや、夢の中の自分だから、本当に自分の意思で動いているのかは怪しいけど。毎回同じ順路で、他の人を探しているし。
でも、みんなを探す場所は、まだまだあるはずなのに。ほら、大浴場とか医療室と休憩室とか。それなのに、みんなを探しているはずの私は、ある場所へ向かうんだ。一体どこへ向かうのか?
それは、所長室だった。必ず、宮本さんの部屋に行ったあと、所長室へ来るの。
事件が起きてからは、所長に直談判しにくる人たちが、所長室の前に集まっていることが多かったから。夢の中とはいえ、絶対にいないってことはないだろうけど。
でも、その人たちも、夕食時には来ている人は少なくて。だからさっき19時30分という時間的に、所長室なんて、最後に確認すればいいはずなのに。何故か夢の中の私は、必ず所長室へいくんだ。
そうして所長室の前に着くと、必ず所長室のドアの鍵が、カチャリと音を立てて開き。私は躊躇なく、そのドアを開けて中に入るんだ。
ただ、所長室にも、現実では部屋に居ることが多い所長も、課長も、やっぱり誰もいなくて、電気も消えていてね。
そして、ここでも特に何かがあるわけでもなく、夢の中の私は、もうここに用はないと、そのまますぐに、部屋を出ようとするんだ。
だけど、ドアの方へ振り向こうとした瞬間、あることに気づくの。それは、所長がいつも座っている机から見て左側。そこに、もう1つドアがあったんだ。
ただ、これが本当に所長室にあるドアなのか、それとも夢だから存在しているのか、それは分からない。所長室に入ったのは、あの直談判の時だけで、その時は中をじっくり確認する余裕なんてなかったからね。
でも、夢の中の私は、そのドアの向こうを確かめようとドアに近づき、ドアノブを回してみるんだ。でも、鍵がかかっていて、ドアを開ける事ができず。
しかたなく廊下に出て、左の部屋を確認してみれば、その部屋は立ち入り禁止の部屋で。どうも、所長室の中のドアは、この立ち入り禁止の部屋へ繋がっているらしい。
まぁ、だからなんなのかと言われてしまうとね。それ以上は調べることはできなかったし、夢の中の私自身も、それ以上確かめようとはせず。そのあとはまた、別の場所を探し始めてね。
そうして探し始めてから、感覚では1時間くらいかな。夢の中の私は、いろいろな場所を探し回ったけれど、結局、誰も見つけることができないまま、最後の場所へと辿り着くの。
と、これがまた不思議で。最後に訪れる場所も所長室と同じように、いつも必ず同じ場所に向かうようになっていて。そこがどこかと言えば、私が1番よく訪れる、中庭を見渡せるあの廊下なんだ。そしてその廊下で、夢の中の私はようやく、ある人物を見つけることができるの。
だけどそれは、宮本さんでも、他の研究員でも、所長や課長でもなくて、まったくの予想外の人物。そう、私が研究所へ来たその日に目撃し、後に噂にもなった、あの男の子の幽霊なんだ。
そして男の子の幽霊は、最初は下を向いた状態で、廊下の真ん中にぽつんと立っているんだけど。私が足を止めるとすぐに顔を上げ、私を射抜くような鋭い視線で睨みつけ。そのあと、必ず私に向かって、何かを言ってきて。
ただ、何を言っているのか、声はまったく聞こえず。私自身も、声を出そうとするんだけど、口は動かすことはできても、喉が詰まってしまったみたいに声を発することはできず。毎回、そんな音のない会話が数分続くんだ。
そうして、そんななんとも言えない時間がやっと終わったと思ったら。その後もやっぱり毎回同じで。
男の子の幽霊はあれだけ私を睨んでいたのに、スッと私から目を離し。まずは、所長室と研究室のある方を見てから、その次に中庭を見つめて。最後に私に向き直ると、もう1度ジロリと私を睨んだあと、また聞き取れない声で何かを言いながら、どんどん消え始めてるの。
そして、男の子が消えるとほぼ同時に、私も夢から覚める。……と、こんな不思議な、そしてちょっと怖い夢を、毎日見るようになったんだ。
どうしてあの男の子の幽霊が、私の夢に出てくるのか。いろいろなことがありすぎて、それから男の子の幽霊を意識しすぎたせいで、それに関係する夢を見るようになってしまったとか?
それにしてもだよ? たまには他の夢を見たっていいはずなのに、毎回同じ夢を見るなんておかしいでしょう?
と、こんな感じで、ただでさえ研究所に漂う最悪な空気や、私たちの話を聞こうとしない所長や課長たちへのイライラ。それから悪天候のせいで身動きが取れず、外とも連絡が取れない閉塞感。
そういった、いろいろな問題が重なって、ただでさえストレスを感じていたのに。この夢を見るようになって、それでさらに精神が削られてしまって。私は、頭痛薬を飲む回数が、かなり増えてしまったんだ。
それでも、日々は続いていく。今日も所長の、あいかわらずノイズ混じりの定期放送が流れてきた。
いや、ノイズは最初の頃よりもさらに酷くなっていて。今ではもう、私は半分以上、何を言っているのか聞き取れなくなってしまったんだ。でもそれなのに、『研究を続けろ』という言葉だけは、なぜか毎回はっきり聞こえるんだから、本当に嫌になる。
放送でまで強調しなくてもいいのにと、心の中で文句を言い、どうにもならない気持ちのまま午前の研究を終わらせた私。この後はいつも通り、蕾に元気づけてもらおうと、中庭へ行こうとして研究室を出たよ。
だけどその時、不意に誰かに見られているような気がして、私は思わず足を止めて後ろを振り返ったんだ。でも、そこには誰もいなくて。
「気のせい? うーん、見られてる気がしたんだけどなぁ」
私は少し気になって、視線を感じた方へ行って確かめてみる。でもやっぱり、そこには誰もいなくて。結局、おかしいなと思いながらも、私はそのまま中庭へ向かうことにしたんだ。
そして、中庭の見える廊下まで来ると、蕾はどうしているかなと気になり、私は外に出る前に、窓から中庭をチラッと見てみることに。すると……。
私の目に、ある驚きの物が飛び込んできたんだ。
あなたにおすすめの小説
はい。【完結済み】
液体猫
ホラー
⚠️表紙はフォロワー様に頂きました。
静岡県のとある町には黄色い公衆電話がある。その電話はこちらから掛けることが出来ないという、不思議なものだった。
ある日、大雨の中で迎えの車を待っていた巻科優斗(まきしなゆうと)は、とある噂を思い出していた。
《駅にある、黄色い公衆電話を取り、名乗ると死ぬ。「はい」と答えても、すべてが終わる》という噂だった。
信じていたものが嘘となり、日常が闇へと落ちていく。公衆電話という身近にありながら、今は懐かしさのあるものを中心に、何もかもが崩れ落ちていく。
*冒頭にファンアート画像貼ってあります(^-^)
ミステリー強めな軽いホラーとなっています。ジャンルはミステリーの方がよかったかも??
「お前のカメラ、ずっと映ってるよ」〜ホラースポット配信者が気づいた時には、もう遅かった〜
まさき
ホラー
ホラースポット専門のYouTuber・桐島悠は、霊も怪異も一切信じない合理主義者だ。
ある廃病院での配信中、今まで感じたことのない「違和感」を覚えた。しかし撮影は無事終了。その後も普通に配信を続け、あの夜のことなど忘れかけていた頃——深夜、金縛りにあう。
疲れてるだけだ。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
記憶の空白。知らない足跡。動画に毎回映り込む、同じ女の姿。そして——「やっと、見つけた」という声。
カメラが映し続けていたのは、心霊スポットではなかった。もっとずっと、近いところにいるものだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】声が聴こえる
金浦桃多
ホラー
夏に始まった違和感は、秋に歪み、冬に侵食し、春に崩れた。
俺を追う「声」は増え続けるのに、
ただひとつ、どうしても聴こえない声があった。
ある男の四季の物語。全四話。
心霊タクシーでおかえりなさい
黄鱗きいろ
ホラー
十八歳の少女、凪は、
心霊タクシーの噂を頼りに片田舎のロータリーを訪れる。
そこで出会った心霊タクシーの運転手に
凪は札束を突きつけて頼み込んだ。
「お願いします。このお金で、行けるところまで私を連れて行ってください! 両親を探してるんです!」
おっさん運転手と訳あり少女の
優しくて少し哀しい心霊譚。
※他サイトにも掲載しています。
私がみた夢の話を誰かきいてくれませんか?※これはあくまでフィクションです。
芝 稍重
ホラー
私は子供の頃から夢日記を書いています。
この話には続きがありますが、ここでは書きません。この話でピンときた人は、コメント欄で知らせてほしいです。
(※このあらすじは、本文にでてくる「夢日記」投稿当時のものを復刻した内容です)
表紙はぱくたそのフリー写真です
腐った絵本
チャビューヘ
ホラー
幼少期に読んだ絵本が、心の中で腐っている。
トラウマに感染した物語が体を蝕む奇病「蔵書症」——その治療法はただ一つ、患者の内面世界に潜り、腐った物語を縫い直すこと。
だが、パステルカラーの絵本世界に待っているのは、笑顔で内臓を盛り付ける怪異と、逃げることしかできない絶望だった。
繕い手・糸守縁、31歳。他人の痛みに一切共感できない。だからこそ、トラウマに引きずり込まれずに物語を縫い直せる。
解き手・鉤谷棘、24歳。他人の痛みがすべて自分の体に来る。だからこそ、トラウマの核を一瞬で見抜ける。
共感しない女と、共感しすぎる男。正反対の二人が、壊れた物語を摘出する——グロゴアホラー×バディ探索×心理ドラマ。
「治してどうするの?」
腐った世界の片隅で、黒い影が嗤っている。
「最初から壊れた物語を与えれば、壊れたまま生きていける」
治す者は、自分自身を治せるのか。