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第3章 警告と覚醒
2話 引きずり込まれる恐怖と、生気を失っている者たち
その日の夜、ある部屋で、1人の女性が急いで荷造りをしていた。食事担当の神谷だ。神谷は周りを気にしながら、
「早く、早く」
と言いながら、必要最低限の物を雑にカバンに入れている。
が、慌てているせいか、時々カバンから荷物がこぼれ落ち、そのたびに拾い直すため、余計に時間を取られていた。
しかし、なんとかカバンに荷物を詰め込み終わると。カバンをほとんど閉めないまま、急いで部屋から飛び出し、周囲を執拗に気にしながら、中央の玄関を目指して、小走りで向かい始める。
「早く逃げなきゃ。こんなところには、1秒だっていられないわ……」
震える声が、誰もいない廊下に虚しく響く。それもそのはず、時刻は深夜2時。ほとんどの研究員と関係者は寝ている時間だ。
こんな時間に研究所を出ようとするなど、普通ではない。しかも外は、いつものように深い霧に包まれているのにだ。
が、それでも。それでも神谷にとっては、この研究所にいるよりはましだった。
昼間、瞳とあの蕾に触れた瞬間、神谷を襲った不吉な感覚。脳裏に浮かんだ最悪な光景。あれは、とても現実とは思えなかった。しかし、そう思いたい気持ちとは裏腹に、あれは間違いなく本当に起きたことなのだと、否応なしに突きつけられてしまい。
「早く、早く行かなくちゃ……ああ、恐ろしい」
神谷は何度もそう呟き、中央玄関へと続く長い廊下を急ぐ。
だが、慌てていて必要以上に早歩きになっていたせいか、途中で息が切れ、思わず立ち止まってしまう。
急いでいたものの、仕方なくその場で呼吸を整える神谷。数分後、ようやく落ち着いたところで、彼女は顔を上げた。
「ふぅ。よし。さあ、行きましょう」
そう言って再び進もうとする神谷。と、その時だった。真横に不穏な気配を感じ、ゆっくりと顔をそちらへ向ける。
そこにあったのは、大きな姿見だった。
この姿見は、よく皆に使われているため、とても綺麗に手入れをされており、暗がりでもしっかりと神谷を映し出していた。
「……ひどい顔色。でも、ここを出てゆっくり休んだら、いつもの自分にすぐに戻れる。そう、全ては嘘なんだから」
神谷は自分にそう言い聞かせ、歩き出そうとした。が、次の瞬間、鏡の中の自分の輪郭が、ぐにゃりと蠢き出す。そして数秒後、そこに映し出されていた神谷の姿は、生きた人間のものではなかった。
顔の右半分はどろどろと腐り落ち、頬骨が青白く覗いていて、眼球は濁り、首筋には紫黒い斑点が浮かび上がっている。
顔だけではない。体も顔と同じように、腐敗し、服までもが全体的に酷く焦げ、ボロボロの状態で、見るに堪えない姿になっていた。
神谷は震える手で、自らの肌に触れる。すると鏡の中のそれも、少しも違わない動きで、同じように腐った肌に触れた。
そこにあったのは、普段と変わらない服を着た、いつもより少し色の悪い肌をしている自分の姿。しかしすぐに、身体中から焦げ臭い匂いと、鼻を刺す腐臭が込み上げてきて……。
神谷は再び鏡を見る。そこに映し出されていたのは、さらに酷くなった自分の姿だった。そう、もはや救いようのない、自分の死体の姿……。
その瞬間、
「ああ……あああ……あああああああああああああっ!!」
真夜中の静寂を切り裂くような神谷の絶叫が、廊下に響き渡った。
************************
「ああ……あああ……あああああああああああああっ!!」
突然の絶叫に、私は飛び起きると、すぐに廊下へ出た。でも、部屋から出てきたのは私だけで、他の人たちはまったく出てくる気配がなくて。あまりにも静かだから、気のせいだったのかと思い、私は部屋へ戻ろうとしたよ。だけど……。
「あああああああっ!!」
再び叫び声が聞こえて、私は声を頼りに廊下を走り始める。これだけ大きな叫び声なのに、どうして誰も部屋から出てこないの? 誰かが大変な目に遭っているかもしれないって、気にならないの!? と思いながら。
そうして、中央の玄関に続く廊下まで来た時だった。私はそれを見て愕然とし、思わず足を止めてしまったんだ。私が見たもの、それは……。
廊下の壁には、大きな姿見がかかってるんだけど、その前でありえないくらい発狂している、神谷のおばちゃんの姿だった。まさか今の叫び声が、おばちゃんのものだったなんて。
ただ、最初は驚いたものの、早く神谷のおばちゃんを落ち着かせないと思い直し、私は急いで声をかけようとする。けれど、次に起きた出来事に、私はまたその場に立ち尽くしてしまったんだ。
廊下の奥、おばちゃんの向こうに、突如暗闇が広がると。その暗闇から、消えたはずの山田さんと川島さん、それから私たちと同じ研究服を着ているけれど、見たことがない人たちが数人現れ。
そして最後に、私がここへきて最初に見た、そして噂の的になった、あの男の子の幽霊までもが現れたの。
その姿は皆、顔色は青白くて生気がなく、目元は窪んでいて、どす黒く見え。何というか、日本の映画やドラマに出てくるような幽霊の姿にそっくりだったよ。
そんな山田さんたちの姿に、驚き尻餅をつく神谷のおばちゃん。でも、驚きは、これだけじゃ終わらなかった。
神谷のおばちゃんが尻餅をついてすぐ、誰も少しも動いていないのに、何か見えない力? によって、おばちゃんが暗闇に引っ張られ始めたんだ。
「嫌、嫌よ! 助けて、瞳さん!!」
神谷のおばちゃんが、必死に私の方へ手を伸ばし、助けを求めてくる。
だけど私は、目の前で起きている、あまりにも非現実的な光景に、まるで金縛りにあったかのように、その場から動けなくなってしまって。
その間にも、止まることなくズルズルと、どんどん暗闇の方へと、引きずられて行く神谷のおばちゃん。
「瞳さん!!」
と、神谷のおばちゃんに、今までで1番大きな声で名前を呼ばれて。私は、ハッ!! とし、ようやく我に返って、
「待って! おばちゃん!」
そう叫び、急いでおばちゃんを追いかけたんだ、でも……、
「ぎゃあぁぁぁっ!!」
……動いたのが遅すぎた。
あと数歩の所まで近づいたものの、その時には神谷のおばちゃんの体が半分以上、暗闇に入ってしまっていて。私は届かないとわかっていても、手を伸ばしたんだけど。次の瞬間、神谷のおばちゃんは断末魔を残し、暗闇の中へと完全に消えてしまったんだ。
考えが追いつかず、その場にただ立つことしかできない私。
すると、そんな私を見ながら、神谷のおばちゃんに続き、山田さんや川島さん、そして他の研究員たちも、ゾロゾロと暗闇に入り始め、そのままみんなも消えてしまったの。そうして、その場に残されたのは、私とあの男の子の幽霊だけになったんだ。
お互いを見つめたまま、どちらも少しも、その場を動かず。あれだけ騒がしかったのに、今は何の音も聞こえない。そんな時間が、数分続いた。
と、急に、それまで無表情だった男の子が、悔しさと憎しみが入り混じったような鋭い視線で、私を睨みつけてきて。私はそれにドキッとして、思わず身構えた。また何か起きる? と思ったから。
でも、そんな私の考えとは裏腹に、男の子は私を睨むこと以外何もせず、ただ時間だけが過ぎて……。
すると、男の子がまた動いた。男の子は私を睨んだまま振り返り、そのまま暗闇へと近づいて行く。そして山田さんたちと同じように、暗闇へ入ると、音もなく暗闇に消えて行ったんだ。
そして、それとともに暗闇も消えて、廊下はいつも通りの廊下に戻ったの。
「早く、早く」
と言いながら、必要最低限の物を雑にカバンに入れている。
が、慌てているせいか、時々カバンから荷物がこぼれ落ち、そのたびに拾い直すため、余計に時間を取られていた。
しかし、なんとかカバンに荷物を詰め込み終わると。カバンをほとんど閉めないまま、急いで部屋から飛び出し、周囲を執拗に気にしながら、中央の玄関を目指して、小走りで向かい始める。
「早く逃げなきゃ。こんなところには、1秒だっていられないわ……」
震える声が、誰もいない廊下に虚しく響く。それもそのはず、時刻は深夜2時。ほとんどの研究員と関係者は寝ている時間だ。
こんな時間に研究所を出ようとするなど、普通ではない。しかも外は、いつものように深い霧に包まれているのにだ。
が、それでも。それでも神谷にとっては、この研究所にいるよりはましだった。
昼間、瞳とあの蕾に触れた瞬間、神谷を襲った不吉な感覚。脳裏に浮かんだ最悪な光景。あれは、とても現実とは思えなかった。しかし、そう思いたい気持ちとは裏腹に、あれは間違いなく本当に起きたことなのだと、否応なしに突きつけられてしまい。
「早く、早く行かなくちゃ……ああ、恐ろしい」
神谷は何度もそう呟き、中央玄関へと続く長い廊下を急ぐ。
だが、慌てていて必要以上に早歩きになっていたせいか、途中で息が切れ、思わず立ち止まってしまう。
急いでいたものの、仕方なくその場で呼吸を整える神谷。数分後、ようやく落ち着いたところで、彼女は顔を上げた。
「ふぅ。よし。さあ、行きましょう」
そう言って再び進もうとする神谷。と、その時だった。真横に不穏な気配を感じ、ゆっくりと顔をそちらへ向ける。
そこにあったのは、大きな姿見だった。
この姿見は、よく皆に使われているため、とても綺麗に手入れをされており、暗がりでもしっかりと神谷を映し出していた。
「……ひどい顔色。でも、ここを出てゆっくり休んだら、いつもの自分にすぐに戻れる。そう、全ては嘘なんだから」
神谷は自分にそう言い聞かせ、歩き出そうとした。が、次の瞬間、鏡の中の自分の輪郭が、ぐにゃりと蠢き出す。そして数秒後、そこに映し出されていた神谷の姿は、生きた人間のものではなかった。
顔の右半分はどろどろと腐り落ち、頬骨が青白く覗いていて、眼球は濁り、首筋には紫黒い斑点が浮かび上がっている。
顔だけではない。体も顔と同じように、腐敗し、服までもが全体的に酷く焦げ、ボロボロの状態で、見るに堪えない姿になっていた。
神谷は震える手で、自らの肌に触れる。すると鏡の中のそれも、少しも違わない動きで、同じように腐った肌に触れた。
そこにあったのは、普段と変わらない服を着た、いつもより少し色の悪い肌をしている自分の姿。しかしすぐに、身体中から焦げ臭い匂いと、鼻を刺す腐臭が込み上げてきて……。
神谷は再び鏡を見る。そこに映し出されていたのは、さらに酷くなった自分の姿だった。そう、もはや救いようのない、自分の死体の姿……。
その瞬間、
「ああ……あああ……あああああああああああああっ!!」
真夜中の静寂を切り裂くような神谷の絶叫が、廊下に響き渡った。
************************
「ああ……あああ……あああああああああああああっ!!」
突然の絶叫に、私は飛び起きると、すぐに廊下へ出た。でも、部屋から出てきたのは私だけで、他の人たちはまったく出てくる気配がなくて。あまりにも静かだから、気のせいだったのかと思い、私は部屋へ戻ろうとしたよ。だけど……。
「あああああああっ!!」
再び叫び声が聞こえて、私は声を頼りに廊下を走り始める。これだけ大きな叫び声なのに、どうして誰も部屋から出てこないの? 誰かが大変な目に遭っているかもしれないって、気にならないの!? と思いながら。
そうして、中央の玄関に続く廊下まで来た時だった。私はそれを見て愕然とし、思わず足を止めてしまったんだ。私が見たもの、それは……。
廊下の壁には、大きな姿見がかかってるんだけど、その前でありえないくらい発狂している、神谷のおばちゃんの姿だった。まさか今の叫び声が、おばちゃんのものだったなんて。
ただ、最初は驚いたものの、早く神谷のおばちゃんを落ち着かせないと思い直し、私は急いで声をかけようとする。けれど、次に起きた出来事に、私はまたその場に立ち尽くしてしまったんだ。
廊下の奥、おばちゃんの向こうに、突如暗闇が広がると。その暗闇から、消えたはずの山田さんと川島さん、それから私たちと同じ研究服を着ているけれど、見たことがない人たちが数人現れ。
そして最後に、私がここへきて最初に見た、そして噂の的になった、あの男の子の幽霊までもが現れたの。
その姿は皆、顔色は青白くて生気がなく、目元は窪んでいて、どす黒く見え。何というか、日本の映画やドラマに出てくるような幽霊の姿にそっくりだったよ。
そんな山田さんたちの姿に、驚き尻餅をつく神谷のおばちゃん。でも、驚きは、これだけじゃ終わらなかった。
神谷のおばちゃんが尻餅をついてすぐ、誰も少しも動いていないのに、何か見えない力? によって、おばちゃんが暗闇に引っ張られ始めたんだ。
「嫌、嫌よ! 助けて、瞳さん!!」
神谷のおばちゃんが、必死に私の方へ手を伸ばし、助けを求めてくる。
だけど私は、目の前で起きている、あまりにも非現実的な光景に、まるで金縛りにあったかのように、その場から動けなくなってしまって。
その間にも、止まることなくズルズルと、どんどん暗闇の方へと、引きずられて行く神谷のおばちゃん。
「瞳さん!!」
と、神谷のおばちゃんに、今までで1番大きな声で名前を呼ばれて。私は、ハッ!! とし、ようやく我に返って、
「待って! おばちゃん!」
そう叫び、急いでおばちゃんを追いかけたんだ、でも……、
「ぎゃあぁぁぁっ!!」
……動いたのが遅すぎた。
あと数歩の所まで近づいたものの、その時には神谷のおばちゃんの体が半分以上、暗闇に入ってしまっていて。私は届かないとわかっていても、手を伸ばしたんだけど。次の瞬間、神谷のおばちゃんは断末魔を残し、暗闇の中へと完全に消えてしまったんだ。
考えが追いつかず、その場にただ立つことしかできない私。
すると、そんな私を見ながら、神谷のおばちゃんに続き、山田さんや川島さん、そして他の研究員たちも、ゾロゾロと暗闇に入り始め、そのままみんなも消えてしまったの。そうして、その場に残されたのは、私とあの男の子の幽霊だけになったんだ。
お互いを見つめたまま、どちらも少しも、その場を動かず。あれだけ騒がしかったのに、今は何の音も聞こえない。そんな時間が、数分続いた。
と、急に、それまで無表情だった男の子が、悔しさと憎しみが入り混じったような鋭い視線で、私を睨みつけてきて。私はそれにドキッとして、思わず身構えた。また何か起きる? と思ったから。
でも、そんな私の考えとは裏腹に、男の子は私を睨むこと以外何もせず、ただ時間だけが過ぎて……。
すると、男の子がまた動いた。男の子は私を睨んだまま振り返り、そのまま暗闇へと近づいて行く。そして山田さんたちと同じように、暗闇へ入ると、音もなく暗闇に消えて行ったんだ。
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