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6巻
6-2
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一緒に行く子達が口々にそう言います。
僕も乗せてもらいたいな。みんなでお願いしたら乗せてくれるかも。そんなお話をしていたら、もう僕達の住んでいる森の外に出ました。やっぱり小鳥さんは速いです。
『みんな、いい? ここからは人が多いから気付かれないようにね』
『うん‼』
森を出る少し前から、人の姿がチラホラ見えていたんだけど、今はかなりの人達がいます。見つかったらどんなことをされるか分からないから気を付けないと。
さぁ、どんどん進もう! ペガサス様手伝ってくれるかな? それで森が元に戻ったら、みんなでキノコパーティーがしたいなぁ。
*********
今僕達は、みんなでキノコのご飯を食べています。
ベルに呼ばれてご飯を食べる部屋に来た時、ご飯を食べる部屋の前と廊下は、とってもいい匂いがしていて、みんなで勢いよく部屋の中に入りました。
ドラック達はジャンプして椅子に座って、ポッケはホミュちゃんに運んでもらって、テーブルに着きます。
僕も急いでニッカに抱っこしてもらって席に座ったよ。
「にょおぉぉぉ‼」
テーブルの上には、キノコの料理がいっぱいでした。
キノコをそのまま焼いた物、キノコがいっぱいのスープに、スパゲッティー。野菜と一緒に炒めてあったり、お肉料理の上にキノコがたっぷり載っていたりする物や、グラタンみたいな料理もありました。
僕が席に着くと僕達の前に、僕でも食べられる料理が運ばれてきたよ。
僕の前にはおうどんみたいな物に、キノコが細かく切って載っけてある物が来ました。
それからマッシュルームみたいなキノコが焼いてあるやつがドンッ‼ とお皿の上に載っていたよ。とっても大きくて、僕の手よりも大きいんだ。
今は、そのキノコうどんを食べているところです。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
「フッ」
ん? 今誰か笑った? 僕は部屋の中をキョロキョロ見ます。
みんなキノコのご飯を食べて笑顔だけど、声出して笑っている人はいません。
僕はまたうどんを食べ始めます。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
「フッ、ハハハハハッ‼」
パパが大きな声を出して笑い始めました。笑っていたのはパパだったみたい。なんで笑っているの? 僕はパパをじっと見ます。
「ジョーディ、それにみんなも、なんでいちいち、にょこにょこ言ってからご飯を食べるんだ?」
ん? なんのこと? 僕が首をかしげていると、お兄ちゃんが、僕達はご飯食べる前に「にょこにょこ」って言ってからご飯を食べているって教えてくれました。
本当? いつも通りにご飯食べていると思うんだけど。みんなでお互いを見た後、みんなでまた食べ始めます。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
バッ‼ みんなで顔を見合わせます。本当に言っていたよ。あれぇ、なんでだろう?
「ふふ、とても美味しいご飯に、この頃ジョーディやみんなはキノコのお話ばかりしていたから、いっぱいのキノコを見て楽しくて、自然と言葉に出ちゃうのかしら」
ママは笑いながらそう言ってました。
僕達はそれからもどんどんご飯を食べていきます。僕がキノコおうどんを食べ終わる頃には、「にょこにょこ」は言わなくなっていました。
続いてマッシュルームです。僕が食べようとしているのに気付いたニッカが、マッシュルームをナイフでひと口サイズに切ってくれました。それを僕はフォークで刺して、あむっ‼
おおお、美味しい‼ 口に入れた瞬間、サイダーみたいにシュワワワワってなって、その後三回噛んだだけで、キノコは消えちゃいました。地球ではこんなキノコ食べたことなかったよ!
ドラック達もシュワシュワのキノコを食べてビックリしたみたい。手でお皿を軽くパシパシ叩いたり、地面をパシパシしっぽで叩いたりしています。すぐに食べ終わっておかわりしていました。
僕はそんなにいっぱい食べられないから、目の前のマッシュルームを大切に食べます。
このキノコ、貰ったキノコの中にまだあるかな? また今度食べたいんだけど。
僕達はどんどんご飯を食べて、残さず全部食べることができました。う~ん、明日も美味しいキノコご飯かな?
次の日、パパとお兄ちゃんと、それから魔獣達みんなで、お庭を綺麗にしてくれるおじさん達が、いつも集まっている小さな小屋の所まで行きました。
昨日約束した、肥料作りの見学をするためです。
小屋は家の裏に二つあるんだ。お庭を綺麗にするための道具がしまってある小屋と、それから種や家で飼っている魔獣達の餌をしまってある小屋ね。
そこに行ったら、餌をしまってある小屋の前に、軍手をしたおじさん達が集まっていました。地面にはシートが敷いてあって、大きなカゴも置いてあります。
『あっ、みんなあそこにいるんだな』
ミルクがそう言って、サウキー達が集まっていて、葉っぱをモグモグしている所を指さしました。
ミルクがグッシーから飛び降りて、一番小さい子サウキーの所に向かいます。
その子は、この前生まれた子サウキーです。
あのね、お家で飼っているサウキーは、ミルク以外女の子ばっかりだったんだけど、その子は久しぶりの男の子です。ミルクがお世話しているんだよ。
サウキーは女の子の方が、男の子よりも二倍くらい大きいんだ。だから一緒に跳ねたり、遊んだりすると、時々蹴飛ばされちゃうみたい。それを避ける方法を教えるって、ミルクが力強く言っていました。
「おはようございます、ラディス様、マイケル様、ジョーディ様」
僕達に気付いたおじさんが挨拶をしてくれました。
「サンクス、おはよう。どうだ?」
おじさんの名前はサンクスさんっていうみたいです。
「今、さらっと見ただけですが、思っていたよりも多くできそうです」
僕達はグッシーから降りて、シートの上に座ります。
グッシーとビッキーは僕達が降りたとたん、若いお兄さんにお野菜をねだりに行っちゃったよ。
「では始めますね。最初に、腐っているキノコとボロボロのキノコを分けます」
サンクスさん達はシートの上に、キノコの入っているカゴをひっくり返していきます。それから腐っているキノコや、ボロボロのキノコを木の箱の中に入れていきました。
少ししてお兄ちゃんが僕もやるって、お手伝いを始めます。
それを見てドラック達が僕達もやるって言って、お兄ちゃんの真似をしてキノコを分け始めました。
僕もやろう‼ 僕は腐っているキノコをポイッてして、大丈夫なやつは僕の横に置きます。
「なんだジョーディ、ダメだぞ邪魔しちゃ」
「パパ、ジョーディはちゃんとキノコを分けてるよ。ほら」
お兄ちゃんが、僕がひょいって向こうに投げた、腐ってるキノコを指さします。
「ん? ……本当だな、ちゃんと分けられてる。ジョーディ、ちゃんと分かるのか?」
「パパ、ジョーディはちゃんと僕達のことを見てるんだよ。一緒に遊んでる時も、僕の真似するんだから。積み木の四角と三角を分けるとか。同じ模様のカードを集めるとか。パパ、この頃僕達と遊んでくれないから知らないんだ」
「そ、そうか。うん、ジョーディ、そのまま続けていいぞ」
パパは何か寂しそうな顔して黙っちゃいました。どうしたの?
でもパパが続けていいって言ったから、僕はそのままキノコの仕分けを手伝いしたよ。
全部のキノコを分けると、サンクスさん達が、ボロボロのキノコだけをシートの上にまた出して、土や白い粉とか、茶色い粉とか、色々な粉をバシャッと、ボロボロのキノコの上にかけました。
「マイケル様、ジョーディ様、さぁ、どんどん混ぜちゃってください。混ぜ終わったら、この木の箱に入れて、そのまま保管します。少し待てば肥料の出来上がりですよ」
お兄ちゃんが粉のことを聞いたら、魚の骨を乾燥させたやつと、魔獣さんの骨を乾燥させたやつ、後は肥料に必要な粉の何種類かだって教えてくれました。
どんどん粉とキノコを混ぜて、スコップで箱に入れていきます。
全部入れ終わったらサンクスさん達が箱の蓋を閉めて、これで肥料作りは終了です。
「手伝っていただき、ありがとうございました。肥料が出来たらお知らせしますね」
サンクスさん達はそう言って小屋の中に入って行きます。
僕達はパパに魔法でお水を出してもらって手を洗ってから、ミルク達の方に遊びに行きました。
そしてサウキー達と畑で遊んだ後は、今度は玄関前で遊ぶことにしました。
お野菜をねだるグッシー達を無理やり引っ張って玄関の方へ向かいます。
僕がキノコを見つけたんだってみんなに言ったら、すぐに見に行くことに。
グッシー達の相手をしていたお兄さんがホッとした顔をしていたよ。
玄関着いてから少し遅れて、サウキー達も僕達の後ろからついてきました。
みんなが揃ったら、玄関の端っこへ行きました。確かこの辺にあったよね? あっ! あった‼
傘の上の部分と、下の部分だけ黒くて、他の傘の部分と柄が真っ白な、可愛いキノコが生えていました。大きさは、僕の手よりも少し大きいくらいです。
パパが僕達の後ろから覗いてきながら、これはダメなキノコだなって言いました。
このキノコは毒キノコじゃないんだけど、触るとちょっと手が痒くなるんだって。
それに毒はないんだけど、とってもとっても不味くて、誰も食べないみたいです。苦いんだって。
真っ白でとっても綺麗なキノコなのにね。でも、このキノコにそっくりな、食べられるキノコもあるみたいです。見分けるのが難しいんだって。
僕は触るのを諦めました。そしたらサウキー達が、いつも遊んでいる所にもキノコが生えているって教えてくれて、そこに移動することに。
向かおうとしたんだけど、グッシーがチラチラ、キノコの方を見て歩くから、なかなか進んでくれません。あんなにいっぱい野菜を食べたのに、まだ食べたいの?
サウキー達の遊び場所に着いたら、僕達はグッシーから降りて、サウキーの後について歩きます。グッシーとビッキーは、その場に座ってまったりしていました。
『おい、さっきはどうしたんだ? 食べるつもりだったのか?』
『いや、そうではない。あのキノコ、匂いがまったくしていなかったよな?』
『……そういえばそうだな。確かに匂いがしなかったような』
『あのキノコ。昔、我が見た物と同じ物かもしれん』
グッシーとビッキーはそんなことを喋っています。
「ちー‼」
僕は面白いキノコを見つけたから、まったりし始めたグッシー達を呼びました。
グッシー達はのそのそ歩いて近づいてきます。
僕はグッシー達が来てから、まん丸で明るい紫色のキノコを軽く押しました。するとキノコの傘のてっぺんから、丸い輪っかの小さな煙が出たんだ。
何回押しても煙が出るんだよ。キノコから煙が出るなんて面白いね。確か地球にもそんなキノコがあったような?
このキノコも毒キノコじゃないけど、不味くて食べられないみたい。でも、触っても痒くなったり、具合が悪くなったりしないから、遊ぶのは大丈夫。
ドラック達もヒョイッてキノコを触ります。キノコの前にみんなで並んで順番にポンポンポン。
サウキー達が遊んでいる場所には、他にもたくさんのキノコが生えていました。みんな食べられないキノコだったけど。
ベルが僕達を迎えに来るまで、僕達はずっとキノコで遊んでいました。呼ばれて玄関まで戻ったら、グッシーがまたあの真っ白いキノコをじっと見ています。
……グッシー、そんなにその白いキノコ食べたいの?
*********
『クルドお兄ちゃん見た⁉』
『うん! しっかり見たよ!』
『あれ、アンデッドだよね』
『なんの魔獣がアンデッドになっちゃったのかな?』
『それよりも早く行かなきゃ! 僕達だけじゃ、もしアンデッドに襲われたら逃げられないよ』
『さぁ、みんな。しっかり前を向いて。ちゃんと僕についてきて。ここまで来れば、ペガサス様の所までもう少しだよ!』
2章 街に現れたアンデッド
キノコさんの肥料やキノコさんで遊んで一週間が経ちました。
でも昨日くらいから、急に僕達が住んでいるフローティーの街がザワザワし始めて、僕達が出ていいのはお庭までで、街の広場やお店には行けなくなっちゃいました。
ちょっと離れた森で、怖い魔獣が現れたんだって。
一か所目はパパのパパ、サイラスじぃじの住んでいる街と、僕の住んでいる街のちょうど真ん中にある森。もう一か所は、まだ僕が行ったことがない、街からは二日くらいにある森らしいです。
鳥の魔獣のスーがじぃじからのお手紙を持ってきてくれて、それと同じ頃に、僕が行ったことのない森の近くにある街からも、お手紙が届きました。どっちも怖い魔獣が現れたって内容だったよ。
パパもママ達も、お手紙を読んだ時、とっても怖い顔をしたんだ。パパはレスターにすぐに騎士を集めさせて、ギルドにも連絡しろって言ってました。それからすぐにパパはじぃじに手紙を書いて、スーはじぃじの所へ帰ることに。
手紙が書き終わるまで少ししか経っていなかったけど、スー、少しはお休みできたかな? 僕はちょっと心配です。
「すー、きちょねぇ‼」
『うん! 気を付けて帰るよ! また今度ゆっくり遊びに来るからね!』
僕が「気を付けてね」って言うと、スーは元気そうにそう言って飛んでいきました。
現れたのがどんな魔獣かは教えてもらえなかったけど、一緒に話を聞いていたグッシー達がとっても怖い顔をしていたから、本当にとっても怖い魔獣なんだと思います。
パパ達はそれから大忙し。今パパ達は、ちょっと遠くの森まで騎士のアドニスさん達を連れて行っていて、ママは街を囲んでいる壁が壊れていないか、壊れそうになっていないか確認しています。
グッシーやビッキーは、空から街の様子や森や林の様子を見て、ギルドの人達や騎士さん達も、街の周りの森へ調査しているんだ。
僕達はパパ達が森に行ってから、自分達の部屋で寝ないで、一階のお部屋で寝ています。
あと、サウキー達がミルクに、子サウキーを僕達と一緒にいさせてってお願いしてきました。
子サウキーはまだ小さいです。もしお家からも避難することになった時に、逃げ遅れたら大変だからね。だから今、子サウキーは僕達といつも一緒にいます。
そんな毎日だったんだけど、でも楽しいこともありました。キノコさん肥料が出来ましたって、サンクスさんが呼びに来てくれたんだ。
今のバタバタが終わったら、この肥料を使って、お花を植えたり、お野菜の種をまいたりするらしいです。その時にまた呼んでもらうお約束をしました。早くバタバタが終わって、パパ達が早く帰ってきてくれるといいなぁ。
*********
私――ラディスは今、私達の街から約二日の距離にある街へと来ていた。
「リック、遅くなってすまない」
「いや、私の方こそ。来てくれてありがとう」
「それで状況は?」
街の名前はチャーネル。そしてこの街を治めているのがリックの一族だ。
三日前、父さんの手紙とほぼ同時に届いたリックからの手紙。まさか内容がほとんど同じだとは思わなかった。どちらの手紙にもアンデッドが出たと書いてあったのだ。
アンデッド。それは魔獣や人間が闇の魔力をまとい、自分の意思を失って動いている存在。
どうしてそのようなことが起こるか、明確な答えは分かっていないが、一つだけ分かっていることがある。それはとてつもなく強い存在だということだ。
前回、ワイバーンのアンデッドが出た時は、一瞬にして一つの森と、二つの街がなくなってしまった。
「今回ワイルドベアーのアンデッドが三体出た」
「三体⁉ そんなに出たのか?」
「ただ、サイズはそこまで大きくなく、攻撃もなんとか防げるほどだと」
私達が玄関ホールで軽くそんな話をしていると、階段から足音が聞こえてきた。
「すぐに出発じゃ‼」
そう言いながら階段を下りてくる人物は、リックの父のコットン殿だ。
コットン殿は私の父さんと同世代で、父さんが若い頃は、よくつるんで森に魔獣を狩りに行ったり、お酒を飲んだりした、かなりいい関係だったと聞いている。
「父上、まさか行くつもりですか」
「当たり前だろう。この街の危機に動かないバカがどこにいる。この街は私達の街だ。消されてたまるか」
慌ててリックがコットン殿を止める。私はそんなコットン殿に近づき挨拶をする。
だが、私の挨拶を「おう!」の一言で流して、またすぐに外へと出て行こうとした。
「父上、ラディスが騎士と魔法師を連れてきてくれました。これからどう森に入るか決めます。それまでは勝手に森には行かないでください‼」
リックがなんとかコットン殿を止め、その後客間に移動し、これからのことについて話し始めることになった。
私がここへ着く少し前に、なぜかアンデッドが退却し、戦闘が一時止まったらしい。
アンデッドが退くということに違和感を覚え、そんなことがあるのかと聞けば、突然攻撃を止め、森の奥へと姿を消したという。
後を追おうとしたが、騎士と冒険者達がアンデッドの姿を見失ったことから、一時撤退となった。
もちろん姿が見えなくなったからといって、何もしないわけではない。森を囲むように防衛線を引いたという。
「それにしても戦闘の最中に退くなど、今まででそんなことがあったか? アンデッドと戦闘が始まれば、どちらかがやられるまで、戦闘は続くものだろう」
「アンデッドのことは分からんことばかりじゃ。それよりも早くこれからのことについて決め、すぐに森へ出発じゃ‼」
そう息巻くコットン殿の姿勢は、父さんにそっくりだ。
話し合いの結果、私が連れてきた騎士達と魔法師達を半分防衛線に残し、私と騎士のアドニス達が森に入ることになった。
リックの方はリックとコットン殿に加え、先ほどの戦闘で戻ってきた騎士や冒険者達の中で、すでに回復が終わっている者達が一緒に森に入る。
私達は準備を整えると、すぐに森へ出発した。
が、私達の予想に反して、アンデッドとの戦闘が行われることはなかった。
森のかなり奥まで足を進めたのだが、どこにもアンデッドの姿がなかったのだ……
*********
それは突然でした。
他の街へ行っているパパ達と、空からの見回りをしていたビッキー以外、たまたまママとグッシーも、ドラックパパとドラッホパパも、報告のために、お家に戻ってきている時に、慌てた様子でビッキーが窓の所に飛んできて、こう言いました。
『まずいぞ! 二つ向こうの森から、奴らの気配がした! このままの行くと、街に来るぞ!』
『なんだと! ビッキー、すぐに行くぞ‼ 我は一応奴らの呪いの攻撃を、魔法で祓うことはできるが、これにはかなり時間がかかるからな。なるべく街へ来る前に止めなければ‼』
グッシーがそう言って、慌てて準備を始めます。
「ダッグ、ニッカ、あなた達は子供達とあの部屋へ。何かあれば教えた通り避難をお願いね」
ママが、ダッグとニッカにそう伝えます。
『ルリエット、我らは先に行く。あの感じからして、おそらく俺達だけで対応できるはずだ。だが一応、街の警備を万全にしておけ』
ビッキーにそう言われたママは、不安そうに聞き返します。
「あなた達だけで大丈夫なの?」
するとグッシーが胸を張って答えます。
『あれくらいのアンデッドならば、昔、何度か相手をしたことがある。だが、奴らにつられて、他にアンデッドが生まれても厄介だからな。なるべく早く始末したい。それに地上から来るお前達を待つよりも、我らで空から行った方が早いからな』
「分かったわ。グッシー、ビッキー、頼むわね」
グッシー達がニッと笑って飛んで行きました。どうもあの怖い魔獣が出ちゃったみたい。
その後、ママは街の壁の所に行くって言って、お部屋から出て行きました。
そして僕達は、魔獣が来た時に行くお部屋へ向かいます。
怖い魔獣……ビッキーはアンデッドって言っていたよね。どんな魔獣なんだろう?
家の中は、使用人さんやメイドさん、騎士さん達がバタバタしてました。
ニッカやダッグも、これからのお話をしながら忙しそうに歩いています。
二人に連れられて部屋に入ると、ニッカとダッグは僕とドラック、ドラッホにベッドの上にいろ、と言ってから、部屋の中全体の確認を始めました。ポッケとホミュちゃんは、僕のポケットの中に入っているよ。
それが終わると、ニッカはドアの方に、ダッグは窓の方に立って、見張りを始めます。
ドラックパパは街の裏の警戒に行ってくれていて、今はいません。なので今はドラッホパパがお部屋にいます。
もうアンデッドについて聞いても大丈夫かな? 僕達はベッドから下りて、お兄ちゃんが用意してくれた、僕達の遊び道具がたくさんある場所に行って、すぐに魔獣がいっぱい描いてある絵本をお兄ちゃんに渡します。
「にちゃ、ちゃ!」
「ジョーディ、なぁに?」
『マイケルお兄ちゃん、ジョーディはどんな魔獣が街に来てるのか、絵本に描いてある? って言ってるよ』
『僕達も名前は知ってるけど、見たことないんだ』
ドラックもドラッホも見たことがなかったんだね。それだけ珍しい魔獣なのかな?
「そっか。でもその絵本に載ってるかな? ベル、もっと詳しい本があったよね?」
「そうですね。確かあの本には分かりやすい説明と、絵が描いてあったはず。今持ってまいります」
ベルが本を取りに行ってくれている間に、お兄ちゃんが軽く説明してくれました。
アンデッドはどうやって生まれてくるか分からないんだけど、生きている魔獣さんも、死んでいる魔獣さんも、運が悪いとなっちゃうみたい。しかもとっても強いんだって。
すぐにベルが、厚い本を持って戻ってきました。それでページをめくって、そのまま本をお兄ちゃんに渡します。僕達はお兄ちゃんの周りに集まって、本を覗き込みました。
そこには何種類か絵が描いてあって、右には何か変な色をしていて、体の周りに黒いモヤモヤが描いてある魔獣さん達の絵、左には骸骨で、やっぱり黒いモヤモヤが描いてある魔獣さんの絵が描いてありました。
黒いモヤモヤは、アンデッドには必ずまとわり付いている、アンデッドの特徴らしいです。
その黒いモヤモヤは、アンデッドが使う魔法の源なんだって。
それに触っちゃうと、呪いにかかっちゃうかもしれないんだ。その呪いは特別な魔法じゃないと治せません。
それにね、弱い魔獣さんでもアンデッドになると、とっても強くなるんだって。
普通なら一人でも倒せる魔獣さんが、十人いないと倒せないくらい強くなっちゃうんだよ。
そんなにアンデッドって強いんだね。グッシーとビッキー、大丈夫かな?
「ジョーディ、ビッキー達なら大丈夫だよ。とっても強いもん」
「そうですよ。ジョーディ様、絵をご覧ください。アンデッドは確かに強いですが、グッシー様よりも弱いアンデッドも多いのですよ」
お兄ちゃんとベルにそう言われて、僕は絵を確認します。
羊さん魔獣とか牛さん魔獣、他にもさっき話していた弱いアンデッドはグッシー達ならまとめて五匹は倒せるって。
「ね、だから大丈夫なんだよ」
僕は窓の方に高速ハイハイします。窓の所にいたダッグに抱っこしてもらって外を見ました。
グッシー達、怪我しないで戻ってきてね。僕達のこと守ってくれるのは嬉しいけど、でもグッシー達が痛い思いをするのはダメだからね。
僕も乗せてもらいたいな。みんなでお願いしたら乗せてくれるかも。そんなお話をしていたら、もう僕達の住んでいる森の外に出ました。やっぱり小鳥さんは速いです。
『みんな、いい? ここからは人が多いから気付かれないようにね』
『うん‼』
森を出る少し前から、人の姿がチラホラ見えていたんだけど、今はかなりの人達がいます。見つかったらどんなことをされるか分からないから気を付けないと。
さぁ、どんどん進もう! ペガサス様手伝ってくれるかな? それで森が元に戻ったら、みんなでキノコパーティーがしたいなぁ。
*********
今僕達は、みんなでキノコのご飯を食べています。
ベルに呼ばれてご飯を食べる部屋に来た時、ご飯を食べる部屋の前と廊下は、とってもいい匂いがしていて、みんなで勢いよく部屋の中に入りました。
ドラック達はジャンプして椅子に座って、ポッケはホミュちゃんに運んでもらって、テーブルに着きます。
僕も急いでニッカに抱っこしてもらって席に座ったよ。
「にょおぉぉぉ‼」
テーブルの上には、キノコの料理がいっぱいでした。
キノコをそのまま焼いた物、キノコがいっぱいのスープに、スパゲッティー。野菜と一緒に炒めてあったり、お肉料理の上にキノコがたっぷり載っていたりする物や、グラタンみたいな料理もありました。
僕が席に着くと僕達の前に、僕でも食べられる料理が運ばれてきたよ。
僕の前にはおうどんみたいな物に、キノコが細かく切って載っけてある物が来ました。
それからマッシュルームみたいなキノコが焼いてあるやつがドンッ‼ とお皿の上に載っていたよ。とっても大きくて、僕の手よりも大きいんだ。
今は、そのキノコうどんを食べているところです。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
「フッ」
ん? 今誰か笑った? 僕は部屋の中をキョロキョロ見ます。
みんなキノコのご飯を食べて笑顔だけど、声出して笑っている人はいません。
僕はまたうどんを食べ始めます。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
「フッ、ハハハハハッ‼」
パパが大きな声を出して笑い始めました。笑っていたのはパパだったみたい。なんで笑っているの? 僕はパパをじっと見ます。
「ジョーディ、それにみんなも、なんでいちいち、にょこにょこ言ってからご飯を食べるんだ?」
ん? なんのこと? 僕が首をかしげていると、お兄ちゃんが、僕達はご飯食べる前に「にょこにょこ」って言ってからご飯を食べているって教えてくれました。
本当? いつも通りにご飯食べていると思うんだけど。みんなでお互いを見た後、みんなでまた食べ始めます。
「にょこにょこ」
『『『にょこにょこ』』』
バッ‼ みんなで顔を見合わせます。本当に言っていたよ。あれぇ、なんでだろう?
「ふふ、とても美味しいご飯に、この頃ジョーディやみんなはキノコのお話ばかりしていたから、いっぱいのキノコを見て楽しくて、自然と言葉に出ちゃうのかしら」
ママは笑いながらそう言ってました。
僕達はそれからもどんどんご飯を食べていきます。僕がキノコおうどんを食べ終わる頃には、「にょこにょこ」は言わなくなっていました。
続いてマッシュルームです。僕が食べようとしているのに気付いたニッカが、マッシュルームをナイフでひと口サイズに切ってくれました。それを僕はフォークで刺して、あむっ‼
おおお、美味しい‼ 口に入れた瞬間、サイダーみたいにシュワワワワってなって、その後三回噛んだだけで、キノコは消えちゃいました。地球ではこんなキノコ食べたことなかったよ!
ドラック達もシュワシュワのキノコを食べてビックリしたみたい。手でお皿を軽くパシパシ叩いたり、地面をパシパシしっぽで叩いたりしています。すぐに食べ終わっておかわりしていました。
僕はそんなにいっぱい食べられないから、目の前のマッシュルームを大切に食べます。
このキノコ、貰ったキノコの中にまだあるかな? また今度食べたいんだけど。
僕達はどんどんご飯を食べて、残さず全部食べることができました。う~ん、明日も美味しいキノコご飯かな?
次の日、パパとお兄ちゃんと、それから魔獣達みんなで、お庭を綺麗にしてくれるおじさん達が、いつも集まっている小さな小屋の所まで行きました。
昨日約束した、肥料作りの見学をするためです。
小屋は家の裏に二つあるんだ。お庭を綺麗にするための道具がしまってある小屋と、それから種や家で飼っている魔獣達の餌をしまってある小屋ね。
そこに行ったら、餌をしまってある小屋の前に、軍手をしたおじさん達が集まっていました。地面にはシートが敷いてあって、大きなカゴも置いてあります。
『あっ、みんなあそこにいるんだな』
ミルクがそう言って、サウキー達が集まっていて、葉っぱをモグモグしている所を指さしました。
ミルクがグッシーから飛び降りて、一番小さい子サウキーの所に向かいます。
その子は、この前生まれた子サウキーです。
あのね、お家で飼っているサウキーは、ミルク以外女の子ばっかりだったんだけど、その子は久しぶりの男の子です。ミルクがお世話しているんだよ。
サウキーは女の子の方が、男の子よりも二倍くらい大きいんだ。だから一緒に跳ねたり、遊んだりすると、時々蹴飛ばされちゃうみたい。それを避ける方法を教えるって、ミルクが力強く言っていました。
「おはようございます、ラディス様、マイケル様、ジョーディ様」
僕達に気付いたおじさんが挨拶をしてくれました。
「サンクス、おはよう。どうだ?」
おじさんの名前はサンクスさんっていうみたいです。
「今、さらっと見ただけですが、思っていたよりも多くできそうです」
僕達はグッシーから降りて、シートの上に座ります。
グッシーとビッキーは僕達が降りたとたん、若いお兄さんにお野菜をねだりに行っちゃったよ。
「では始めますね。最初に、腐っているキノコとボロボロのキノコを分けます」
サンクスさん達はシートの上に、キノコの入っているカゴをひっくり返していきます。それから腐っているキノコや、ボロボロのキノコを木の箱の中に入れていきました。
少ししてお兄ちゃんが僕もやるって、お手伝いを始めます。
それを見てドラック達が僕達もやるって言って、お兄ちゃんの真似をしてキノコを分け始めました。
僕もやろう‼ 僕は腐っているキノコをポイッてして、大丈夫なやつは僕の横に置きます。
「なんだジョーディ、ダメだぞ邪魔しちゃ」
「パパ、ジョーディはちゃんとキノコを分けてるよ。ほら」
お兄ちゃんが、僕がひょいって向こうに投げた、腐ってるキノコを指さします。
「ん? ……本当だな、ちゃんと分けられてる。ジョーディ、ちゃんと分かるのか?」
「パパ、ジョーディはちゃんと僕達のことを見てるんだよ。一緒に遊んでる時も、僕の真似するんだから。積み木の四角と三角を分けるとか。同じ模様のカードを集めるとか。パパ、この頃僕達と遊んでくれないから知らないんだ」
「そ、そうか。うん、ジョーディ、そのまま続けていいぞ」
パパは何か寂しそうな顔して黙っちゃいました。どうしたの?
でもパパが続けていいって言ったから、僕はそのままキノコの仕分けを手伝いしたよ。
全部のキノコを分けると、サンクスさん達が、ボロボロのキノコだけをシートの上にまた出して、土や白い粉とか、茶色い粉とか、色々な粉をバシャッと、ボロボロのキノコの上にかけました。
「マイケル様、ジョーディ様、さぁ、どんどん混ぜちゃってください。混ぜ終わったら、この木の箱に入れて、そのまま保管します。少し待てば肥料の出来上がりですよ」
お兄ちゃんが粉のことを聞いたら、魚の骨を乾燥させたやつと、魔獣さんの骨を乾燥させたやつ、後は肥料に必要な粉の何種類かだって教えてくれました。
どんどん粉とキノコを混ぜて、スコップで箱に入れていきます。
全部入れ終わったらサンクスさん達が箱の蓋を閉めて、これで肥料作りは終了です。
「手伝っていただき、ありがとうございました。肥料が出来たらお知らせしますね」
サンクスさん達はそう言って小屋の中に入って行きます。
僕達はパパに魔法でお水を出してもらって手を洗ってから、ミルク達の方に遊びに行きました。
そしてサウキー達と畑で遊んだ後は、今度は玄関前で遊ぶことにしました。
お野菜をねだるグッシー達を無理やり引っ張って玄関の方へ向かいます。
僕がキノコを見つけたんだってみんなに言ったら、すぐに見に行くことに。
グッシー達の相手をしていたお兄さんがホッとした顔をしていたよ。
玄関着いてから少し遅れて、サウキー達も僕達の後ろからついてきました。
みんなが揃ったら、玄関の端っこへ行きました。確かこの辺にあったよね? あっ! あった‼
傘の上の部分と、下の部分だけ黒くて、他の傘の部分と柄が真っ白な、可愛いキノコが生えていました。大きさは、僕の手よりも少し大きいくらいです。
パパが僕達の後ろから覗いてきながら、これはダメなキノコだなって言いました。
このキノコは毒キノコじゃないんだけど、触るとちょっと手が痒くなるんだって。
それに毒はないんだけど、とってもとっても不味くて、誰も食べないみたいです。苦いんだって。
真っ白でとっても綺麗なキノコなのにね。でも、このキノコにそっくりな、食べられるキノコもあるみたいです。見分けるのが難しいんだって。
僕は触るのを諦めました。そしたらサウキー達が、いつも遊んでいる所にもキノコが生えているって教えてくれて、そこに移動することに。
向かおうとしたんだけど、グッシーがチラチラ、キノコの方を見て歩くから、なかなか進んでくれません。あんなにいっぱい野菜を食べたのに、まだ食べたいの?
サウキー達の遊び場所に着いたら、僕達はグッシーから降りて、サウキーの後について歩きます。グッシーとビッキーは、その場に座ってまったりしていました。
『おい、さっきはどうしたんだ? 食べるつもりだったのか?』
『いや、そうではない。あのキノコ、匂いがまったくしていなかったよな?』
『……そういえばそうだな。確かに匂いがしなかったような』
『あのキノコ。昔、我が見た物と同じ物かもしれん』
グッシーとビッキーはそんなことを喋っています。
「ちー‼」
僕は面白いキノコを見つけたから、まったりし始めたグッシー達を呼びました。
グッシー達はのそのそ歩いて近づいてきます。
僕はグッシー達が来てから、まん丸で明るい紫色のキノコを軽く押しました。するとキノコの傘のてっぺんから、丸い輪っかの小さな煙が出たんだ。
何回押しても煙が出るんだよ。キノコから煙が出るなんて面白いね。確か地球にもそんなキノコがあったような?
このキノコも毒キノコじゃないけど、不味くて食べられないみたい。でも、触っても痒くなったり、具合が悪くなったりしないから、遊ぶのは大丈夫。
ドラック達もヒョイッてキノコを触ります。キノコの前にみんなで並んで順番にポンポンポン。
サウキー達が遊んでいる場所には、他にもたくさんのキノコが生えていました。みんな食べられないキノコだったけど。
ベルが僕達を迎えに来るまで、僕達はずっとキノコで遊んでいました。呼ばれて玄関まで戻ったら、グッシーがまたあの真っ白いキノコをじっと見ています。
……グッシー、そんなにその白いキノコ食べたいの?
*********
『クルドお兄ちゃん見た⁉』
『うん! しっかり見たよ!』
『あれ、アンデッドだよね』
『なんの魔獣がアンデッドになっちゃったのかな?』
『それよりも早く行かなきゃ! 僕達だけじゃ、もしアンデッドに襲われたら逃げられないよ』
『さぁ、みんな。しっかり前を向いて。ちゃんと僕についてきて。ここまで来れば、ペガサス様の所までもう少しだよ!』
2章 街に現れたアンデッド
キノコさんの肥料やキノコさんで遊んで一週間が経ちました。
でも昨日くらいから、急に僕達が住んでいるフローティーの街がザワザワし始めて、僕達が出ていいのはお庭までで、街の広場やお店には行けなくなっちゃいました。
ちょっと離れた森で、怖い魔獣が現れたんだって。
一か所目はパパのパパ、サイラスじぃじの住んでいる街と、僕の住んでいる街のちょうど真ん中にある森。もう一か所は、まだ僕が行ったことがない、街からは二日くらいにある森らしいです。
鳥の魔獣のスーがじぃじからのお手紙を持ってきてくれて、それと同じ頃に、僕が行ったことのない森の近くにある街からも、お手紙が届きました。どっちも怖い魔獣が現れたって内容だったよ。
パパもママ達も、お手紙を読んだ時、とっても怖い顔をしたんだ。パパはレスターにすぐに騎士を集めさせて、ギルドにも連絡しろって言ってました。それからすぐにパパはじぃじに手紙を書いて、スーはじぃじの所へ帰ることに。
手紙が書き終わるまで少ししか経っていなかったけど、スー、少しはお休みできたかな? 僕はちょっと心配です。
「すー、きちょねぇ‼」
『うん! 気を付けて帰るよ! また今度ゆっくり遊びに来るからね!』
僕が「気を付けてね」って言うと、スーは元気そうにそう言って飛んでいきました。
現れたのがどんな魔獣かは教えてもらえなかったけど、一緒に話を聞いていたグッシー達がとっても怖い顔をしていたから、本当にとっても怖い魔獣なんだと思います。
パパ達はそれから大忙し。今パパ達は、ちょっと遠くの森まで騎士のアドニスさん達を連れて行っていて、ママは街を囲んでいる壁が壊れていないか、壊れそうになっていないか確認しています。
グッシーやビッキーは、空から街の様子や森や林の様子を見て、ギルドの人達や騎士さん達も、街の周りの森へ調査しているんだ。
僕達はパパ達が森に行ってから、自分達の部屋で寝ないで、一階のお部屋で寝ています。
あと、サウキー達がミルクに、子サウキーを僕達と一緒にいさせてってお願いしてきました。
子サウキーはまだ小さいです。もしお家からも避難することになった時に、逃げ遅れたら大変だからね。だから今、子サウキーは僕達といつも一緒にいます。
そんな毎日だったんだけど、でも楽しいこともありました。キノコさん肥料が出来ましたって、サンクスさんが呼びに来てくれたんだ。
今のバタバタが終わったら、この肥料を使って、お花を植えたり、お野菜の種をまいたりするらしいです。その時にまた呼んでもらうお約束をしました。早くバタバタが終わって、パパ達が早く帰ってきてくれるといいなぁ。
*********
私――ラディスは今、私達の街から約二日の距離にある街へと来ていた。
「リック、遅くなってすまない」
「いや、私の方こそ。来てくれてありがとう」
「それで状況は?」
街の名前はチャーネル。そしてこの街を治めているのがリックの一族だ。
三日前、父さんの手紙とほぼ同時に届いたリックからの手紙。まさか内容がほとんど同じだとは思わなかった。どちらの手紙にもアンデッドが出たと書いてあったのだ。
アンデッド。それは魔獣や人間が闇の魔力をまとい、自分の意思を失って動いている存在。
どうしてそのようなことが起こるか、明確な答えは分かっていないが、一つだけ分かっていることがある。それはとてつもなく強い存在だということだ。
前回、ワイバーンのアンデッドが出た時は、一瞬にして一つの森と、二つの街がなくなってしまった。
「今回ワイルドベアーのアンデッドが三体出た」
「三体⁉ そんなに出たのか?」
「ただ、サイズはそこまで大きくなく、攻撃もなんとか防げるほどだと」
私達が玄関ホールで軽くそんな話をしていると、階段から足音が聞こえてきた。
「すぐに出発じゃ‼」
そう言いながら階段を下りてくる人物は、リックの父のコットン殿だ。
コットン殿は私の父さんと同世代で、父さんが若い頃は、よくつるんで森に魔獣を狩りに行ったり、お酒を飲んだりした、かなりいい関係だったと聞いている。
「父上、まさか行くつもりですか」
「当たり前だろう。この街の危機に動かないバカがどこにいる。この街は私達の街だ。消されてたまるか」
慌ててリックがコットン殿を止める。私はそんなコットン殿に近づき挨拶をする。
だが、私の挨拶を「おう!」の一言で流して、またすぐに外へと出て行こうとした。
「父上、ラディスが騎士と魔法師を連れてきてくれました。これからどう森に入るか決めます。それまでは勝手に森には行かないでください‼」
リックがなんとかコットン殿を止め、その後客間に移動し、これからのことについて話し始めることになった。
私がここへ着く少し前に、なぜかアンデッドが退却し、戦闘が一時止まったらしい。
アンデッドが退くということに違和感を覚え、そんなことがあるのかと聞けば、突然攻撃を止め、森の奥へと姿を消したという。
後を追おうとしたが、騎士と冒険者達がアンデッドの姿を見失ったことから、一時撤退となった。
もちろん姿が見えなくなったからといって、何もしないわけではない。森を囲むように防衛線を引いたという。
「それにしても戦闘の最中に退くなど、今まででそんなことがあったか? アンデッドと戦闘が始まれば、どちらかがやられるまで、戦闘は続くものだろう」
「アンデッドのことは分からんことばかりじゃ。それよりも早くこれからのことについて決め、すぐに森へ出発じゃ‼」
そう息巻くコットン殿の姿勢は、父さんにそっくりだ。
話し合いの結果、私が連れてきた騎士達と魔法師達を半分防衛線に残し、私と騎士のアドニス達が森に入ることになった。
リックの方はリックとコットン殿に加え、先ほどの戦闘で戻ってきた騎士や冒険者達の中で、すでに回復が終わっている者達が一緒に森に入る。
私達は準備を整えると、すぐに森へ出発した。
が、私達の予想に反して、アンデッドとの戦闘が行われることはなかった。
森のかなり奥まで足を進めたのだが、どこにもアンデッドの姿がなかったのだ……
*********
それは突然でした。
他の街へ行っているパパ達と、空からの見回りをしていたビッキー以外、たまたまママとグッシーも、ドラックパパとドラッホパパも、報告のために、お家に戻ってきている時に、慌てた様子でビッキーが窓の所に飛んできて、こう言いました。
『まずいぞ! 二つ向こうの森から、奴らの気配がした! このままの行くと、街に来るぞ!』
『なんだと! ビッキー、すぐに行くぞ‼ 我は一応奴らの呪いの攻撃を、魔法で祓うことはできるが、これにはかなり時間がかかるからな。なるべく街へ来る前に止めなければ‼』
グッシーがそう言って、慌てて準備を始めます。
「ダッグ、ニッカ、あなた達は子供達とあの部屋へ。何かあれば教えた通り避難をお願いね」
ママが、ダッグとニッカにそう伝えます。
『ルリエット、我らは先に行く。あの感じからして、おそらく俺達だけで対応できるはずだ。だが一応、街の警備を万全にしておけ』
ビッキーにそう言われたママは、不安そうに聞き返します。
「あなた達だけで大丈夫なの?」
するとグッシーが胸を張って答えます。
『あれくらいのアンデッドならば、昔、何度か相手をしたことがある。だが、奴らにつられて、他にアンデッドが生まれても厄介だからな。なるべく早く始末したい。それに地上から来るお前達を待つよりも、我らで空から行った方が早いからな』
「分かったわ。グッシー、ビッキー、頼むわね」
グッシー達がニッと笑って飛んで行きました。どうもあの怖い魔獣が出ちゃったみたい。
その後、ママは街の壁の所に行くって言って、お部屋から出て行きました。
そして僕達は、魔獣が来た時に行くお部屋へ向かいます。
怖い魔獣……ビッキーはアンデッドって言っていたよね。どんな魔獣なんだろう?
家の中は、使用人さんやメイドさん、騎士さん達がバタバタしてました。
ニッカやダッグも、これからのお話をしながら忙しそうに歩いています。
二人に連れられて部屋に入ると、ニッカとダッグは僕とドラック、ドラッホにベッドの上にいろ、と言ってから、部屋の中全体の確認を始めました。ポッケとホミュちゃんは、僕のポケットの中に入っているよ。
それが終わると、ニッカはドアの方に、ダッグは窓の方に立って、見張りを始めます。
ドラックパパは街の裏の警戒に行ってくれていて、今はいません。なので今はドラッホパパがお部屋にいます。
もうアンデッドについて聞いても大丈夫かな? 僕達はベッドから下りて、お兄ちゃんが用意してくれた、僕達の遊び道具がたくさんある場所に行って、すぐに魔獣がいっぱい描いてある絵本をお兄ちゃんに渡します。
「にちゃ、ちゃ!」
「ジョーディ、なぁに?」
『マイケルお兄ちゃん、ジョーディはどんな魔獣が街に来てるのか、絵本に描いてある? って言ってるよ』
『僕達も名前は知ってるけど、見たことないんだ』
ドラックもドラッホも見たことがなかったんだね。それだけ珍しい魔獣なのかな?
「そっか。でもその絵本に載ってるかな? ベル、もっと詳しい本があったよね?」
「そうですね。確かあの本には分かりやすい説明と、絵が描いてあったはず。今持ってまいります」
ベルが本を取りに行ってくれている間に、お兄ちゃんが軽く説明してくれました。
アンデッドはどうやって生まれてくるか分からないんだけど、生きている魔獣さんも、死んでいる魔獣さんも、運が悪いとなっちゃうみたい。しかもとっても強いんだって。
すぐにベルが、厚い本を持って戻ってきました。それでページをめくって、そのまま本をお兄ちゃんに渡します。僕達はお兄ちゃんの周りに集まって、本を覗き込みました。
そこには何種類か絵が描いてあって、右には何か変な色をしていて、体の周りに黒いモヤモヤが描いてある魔獣さん達の絵、左には骸骨で、やっぱり黒いモヤモヤが描いてある魔獣さんの絵が描いてありました。
黒いモヤモヤは、アンデッドには必ずまとわり付いている、アンデッドの特徴らしいです。
その黒いモヤモヤは、アンデッドが使う魔法の源なんだって。
それに触っちゃうと、呪いにかかっちゃうかもしれないんだ。その呪いは特別な魔法じゃないと治せません。
それにね、弱い魔獣さんでもアンデッドになると、とっても強くなるんだって。
普通なら一人でも倒せる魔獣さんが、十人いないと倒せないくらい強くなっちゃうんだよ。
そんなにアンデッドって強いんだね。グッシーとビッキー、大丈夫かな?
「ジョーディ、ビッキー達なら大丈夫だよ。とっても強いもん」
「そうですよ。ジョーディ様、絵をご覧ください。アンデッドは確かに強いですが、グッシー様よりも弱いアンデッドも多いのですよ」
お兄ちゃんとベルにそう言われて、僕は絵を確認します。
羊さん魔獣とか牛さん魔獣、他にもさっき話していた弱いアンデッドはグッシー達ならまとめて五匹は倒せるって。
「ね、だから大丈夫なんだよ」
僕は窓の方に高速ハイハイします。窓の所にいたダッグに抱っこしてもらって外を見ました。
グッシー達、怪我しないで戻ってきてね。僕達のこと守ってくれるのは嬉しいけど、でもグッシー達が痛い思いをするのはダメだからね。
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