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サリスの奥の手

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結局、神盾は、エルセリアに頼み込んでノイスの部屋に運んでもらった。

ノイスはエルセリアに頭を下げて感謝し、はっきりとこう言った。

「いや、今回は不覚を取りました。お強い。最近、王宮勤めで体がなまってしまったので錆を落とす必要があるようです。子供と思って、軽く見たこと、お許しください。しかし、この男サリスは、」

そこでサリスをビシっと指差した。

「王宮筆頭魔術師として実力も十分な男、エルセリア様をきっと満足させましょうぞ!」

やめてくれ、と心からサリスは思った。泣きそうになったが、なんとか堪えた。こいつどうしてハードルを高くあげるんだ、とサリスは叫び出したかった。

「私が、体の錆を落としたら、ぜひ、また再戦してください!王様にもその旨お伝えし、修行してまいりまする。」

「いや、勝負は時の運です。しかし、それよりさらにお強くなるというのでしたら、本当に楽しみです。」

その目を見て、サリスはゾクっとした。あ、こいつヤバイ奴だ。いや、すぐ分かったよ。そうサリスはダラダラと冷や汗をかいた。

「それでは、サリス殿、あとはおまかせ申す!御免!」

サリスは腹が立ったが、さすがノイス、再戦のために修行するとはすごい男だと感嘆していた。こうなったら、なんとか、この小娘を満足させなくては・・・・。そのためには、禁じ手も使うしかない。サリスは思った。

その晩、サリスは、歴代の王宮魔術師が何かあった時のための王宮の防衛のために力を込め続けた魔石を飲み込んだ。その瞬間、彼の体に往年の力が、いや、それ以上の力が戻った。しかし、バレては困る。彼は、手元にあった仮面を手に取った。その仮面は、呪いの仮面で、一旦つけたら、魔力を10倍にするが、寿命を半分にするというものであった。しかし、魔石を飲んだ彼の体は既に、全盛期以上に若返っている。そのため、仮面をつけても消費される寿命など皆無に等しい。これが、彼の奥の手、いわば禁じ手であった。

しかし、そこで、彼は、やめるつもりはなかった。まず、200枚ほど身代わりの護符を身につけた。これで、直撃があっても、護符が代わりに受けてくれる。師匠と挑んだ黒竜退治の時でさえ50枚で望んで、その10枚ほどを消費したに過ぎなかった。1枚で家が買えるというわれる身代わりの護符であるが、そこは王宮筆頭魔術師、王宮の全ての王族のための護符にアクセスできるのだ。なあに、たとえ50枚消費してもまだまだのこりはたくさんある、そう彼はほくそ笑んだ。

更に、自分に有利になるように練習場の空間に転移場を数多く設けた。ほ戊、全てのエリアをカバーするようにだ。しかも、それでは止まらなかった。空間を3次元的に使えるように上空20mまでカバーした。最後の手段は、上空から隕石魔法を放つつもりだった。

普通は、転移には、たとえ短距離であったとしても溜めが必要だが、こうすることで、思考の速度と同じ速度で転移が可能になるのだ。

これさえやらば、魔王ですら、いや、神ですら倒せるであろう。サリスは確信していた。
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