誰にも見えない自分専用ダンジョンでレベル上げしてたら世界ランキングに入っていました

七瀬ななし

文字の大きさ
48 / 234

第四十八話 ベリーロールで人類の壁を壊す男

その日、鈴木努は暇だった。

講演会もない。

取材も断った。

ダンジョンも今日は軽め。

そこで陸上競技場の横を通りかかった時、ふと思った。

「……走り高跳びって、やったことないな」

軽い気持ちだった。

練習場。

バーが立っている。

高校生たちが順番に跳んでいた。

背面跳び。

いわゆるフォスベリー・フロップ。

現代高跳びの常識である。

努は見ながら首をかしげた。

「背中から落ちるの、怖くない?」

近くの記録員が答える。

「今はそれが主流です」

「へえ」

努は少し考えた。

「俺、背面跳びできないな」

「え?」

「じゃあ……ベリーロールか」

昭和の香りがした。

腹ばい気味にバーを越える古典技法。

今ではほぼ絶滅種である。

軽く助走。

踏み切り。

くるん。

2m30cm。

一発成功。

記録員のペンが止まった。

「……はい?」

高校生たちも固まった。

「今、見た?」

「ベリーロールで?」

「しかも初見で?」

記録員は駆け寄った。

「お願いです!」

「一度でいいから大会に出てください!」

「ま、いいけど」

返事が軽い。

数週間後。

地方陸上大会。

観客も少ない。

新聞記者もいない。

誰も高跳びに世界記録など期待していなかった。

エントリー表の片隅に、

鈴木努。

それだけだった。

試技開始。

2m10。

余裕。

2m20。

余裕。

2m30。

余裕。

2m40。

ざわつく。

2m45。

会場が集まり始める。

実況席も慌てた。

『えー、なんかすごい選手がいます』

『飛び方が昔です』

『でも高いです』

情報量が雑だった。

そしてバーは上がる。

3m00cm

人類未踏。

常識外。

誰も超えたことのない高さ。

普通なら冗談で置く数字だった。

努は助走位置へ下がる。

ニーが客席でつぶやく。

「なんで本気なんだい」

チーも呆れる。

「遊びって言ってたよね?」

助走。

加速。

踏み切り。

そして、

腹から巻き込むような軌道。

ベリーロール。

バーを越えた。

着地。

成功。

数秒、誰も理解できなかった。

その後、会場爆発。

「うおおおおお!!」

「三メートル!?」

「人類史変わった!」

「しかもベリーロール!?」

実況絶叫。

『世界新記録です!!』

『いや、人類新記録です!!』

『そして飛び方が古い!!』

その日の夜。

ニュースは持ち切りだった。

三メートルジャンパー誕生
なぜベリーロールなのか
現代技術を否定した男
背面跳び終了のお知らせ?

競技関係者は頭を抱えた。

専門家A。

「空気抵抗的には不利です」

専門家B。

「理論上、背面跳びが優位です」

専門家C。

「でも飛んでます」

全員混乱した。

さらに子どもたちの間で異変が起きる。

学校の校庭。

みんな腹から飛ぶ。

ベリーロールブーム到来。

体育教師たちが悲鳴を上げた。

「マットを増やせ!」

「腰を打つな!」

「変な飛び方で世界記録を出すのはやめてください!」

なぜか鈴木が怒られた。

本人は納得いかなかった。

「え?勝手に真似しただけでは?」

「影響力ってそういうことだよ」

ニーが諭す。

チーも真顔だった。

「君、競技界の敵なの?」

「違う」

「でも毎回ルールとか常識壊してるよ」

「たまたまだ」

「毎回それ言うね」

その頃、世界ダンジョン協会では。

「匿名世界二位候補、鈴木努説は?」

「三メートル跳ぶ人間がダンジョン潜る必要あるか?」

「ないな」

また外した。

世界第二位は、

遊びで高跳びをして、

絶滅しかけた技術を世界最強メソッドに変えてしまった。
感想 13

あなたにおすすめの小説

会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった

小狐
ファンタジー
会社を理不尽にクビになった真壁遼(31歳)のスキルは、戦闘では役に立たないとされる【鑑定】だけ。 再就職までの生活費を稼ぐため、深夜ダンジョンで廃品回収の仕事を始めた彼は、そこで自分の【鑑定】がゴミとみなされた廃品の本当の価値を見抜くほどの性能を持っていることに気付く。それだけでなく、魔物の弱点や危険物の正体まで見抜けることにまで気付いてしまう。 探索者たちが捨てたガラクタは、真壁にとっては宝の山。 他者では見抜けない本当の価値を自分だけが見抜くことができる。 ひっそりと、だが実利だけは得るはずの真壁はとある配信事故をきっかけに、無名の『フードの男』として注目を集め始め………。 戦えない男が、見る目だけで生きていく話です。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

学習スキルしかない俺、見学だけで勇者を超えてしまう

七瀬ななし
ファンタジー
本作は、いわゆる「勇者召喚」に巻き込まれてしまったガリ勉高校生・大塚誠が、地味すぎるスキル「学習」を武器に、なぜか最強へと駆け上がっていく痛快(?)異世界成長譚である。剣聖や聖女、大魔導といった華やかなスキルを持つクラスメイトたちの中で、大塚に与えられたのは「ラーニングの下位互換」と馬鹿にされる「学習」。だが彼はめげない。むしろ得意分野である“見る・覚える・積み上げる”を徹底的に実行する。 王宮での教育では座学トップ、実技は見学オンリー。しかし、見ているだけでスキルを吸収し、しかもなぜかオリジナルを超えてしまうという謎仕様が発覚する。勇者や聖女の能力をこっそり獲得しつつも、目立つのが面倒なので黙秘。やがて「これ以上見ても学ぶものがない」と判断した彼は、あっさり城を出て自由行動へ。 道場で見学、ギルドで講習、珍品を売って資金確保。努力の方向性が若干ズレているようでいて、結果的に最適解を踏み抜く大塚。気づけば“誰よりも学び、誰よりも強くなる”という、とんでもないチートの持ち主に。しかし本人はあくまで「普通に勉強してるだけですけど?」というスタンスを崩さない。 地味・堅実・観察力の化身が、無自覚に世界のバランスを壊していく。これは、派手さゼロのはずが、なぜか最強になってしまう男の、ちょっとおかしな英雄譚である。 ※注意:この物語を読むと知能指数が下がる危険性があります。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

毎日スライム討伐していたらいつの間にか勇者になっていた

七瀬ななし
ファンタジー
主人公の高田馬彦は、高校時代から「高田の馬場」とからかわれてきた気弱な青年で、卒業後はハンターとなり、危険を避けてダンジョンの第一層だけでスライムを倒し続けるという地味な生活を送っている。彼の目的はただ一つ、毎日一万~二万円ほどの小金を稼ぎ、月二十万から三十万円程度の収入で静かに暮らすことである。月三万円の安アパートを「マンション」と呼び、回転寿司やハンバーガーをささやかな贅沢として楽しむ生活に、彼は心から満足していた。 しかしある日、長年にわたりスライムを倒し続けた結果、思いがけず「勇者」の称号を獲得してしまう。勇者は国家に保護され、年間一億円の保障を受ける特別な存在だが、同時に政府の管理下に置かれ、自由の少ない生活を送ることになる。目立つことを極端に嫌う馬彦にとって、それは最も避けたい事態だった。そこで彼は、これまで貯め込んできた膨大なスキルポイントをすべて「隠蔽」スキルに投入し、勇者の称号を徹底的に秘匿することを決意する。 こうして彼は表向きはFランクのまま、「スライムハンター」「スライムのお友達」と呼ばれる地味な存在として生活を続ける。しかし、世界を救う可能性を秘めた勇者が、ただ静かに小銭を稼いで生きようとすることで、周囲では少しずつ奇妙な出来事が起こり始める。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

【挿絵あり】聖輪女神教団の司祭

ドヨ破竹
ファンタジー
聖輪女神教団所属の一般出身司祭クロードの話 ※小説家になろう様でも掲載しています。