レベルが呪いでどんどん減っていったが、マイナスになった瞬間バグって最強になった

七瀬ななし

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おっさん最強

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「リシウスよ。あっぱれだ。この世の神の一柱である黒竜たるわしを倒すとはな。」

長い戦いの後、瀕死の黒竜はリシウスに話しかけた。

最後の言葉だと思いリシウスは神妙に聞いた。しかしそれがいけなかった。油断して全ての魔法防御をおろしてしまっていたリシウスに黒竜は最後の息で呪いをかけたのだった。

「神を殺したものには、呪いが齎される。これよりお前のレベルは少しづつ下がっていくであろう。」

その呪いを一身に受けたリシウスは、絶望した。解呪の方法が見つからなかったからである。王宮魔術師にまでさじを投げられてしまった。しかしリシウスは諦めずになんとか方法を模索していた。

黒竜との戦いで唯一生き残ったリシウスは、、それまで稼いだ富は、全てパーティーの仲間の家族と自分を育ててくれた孤児院に渡してしまった。彼の計算ではどうせ後2年でレベルがなくなってしまうことがわかったのだ。人は生まれた時にレベル0で生まれてくるが、生活していくうちに5歳くらいまでには誰でもレベル2には達するのだ。

リシウスはかつては英雄と呼ばれた存在だった。ただ、平民であったため、常に危険な任務につかされた。それでも、王国のために、王国が設置してくれた孤児院への恩を返すべくリシウスは、身を粉にして働いたのであった。

彼のレベルが呪いで下がり続けると知った貴族は手のひらを返したように彼を遠ざけた。あたかも、その呪いが、写るかのように、彼を忌み嫌った。

英雄と呼ばれるだけあって、彼のレベルは人類最高レベルで最初のうちこそ、重宝されて冒険者ギルドでもいい仕事を振ってもらったが、今では荷物持ちが精一杯であった。

そんな彼を見てあざ笑う人、そして、同情する人、忌み嫌う人など様々だった。

自分が頑張るのが嫌いな人間にとっては最後まで争う彼の姿は忌々しいものであった。

時々、彼が安い食堂で質素な食事をとっていると、落ちた英雄だの、あんな風に落ちぶれたくないねえ、などの声が聞こえた。彼は、しかし、そんなことはあまり気にしなかった。まだ希望があったからだ。しかし。

最近では、1日に1つレベルが落ちろるようになっている。そして、レベル0の日が訪れた。

彼は、後悔はしていない。ただ、運命に抗えなかったのが悔しかった。パーティーメンバーのためにも残りの日々を懸命に生き、みんなの分までいきたいと思った。それだけが心残りだった。

「それでは、おばさん、大変お世話になりました。部屋のものは使ってください。次の人にでもあげるか、必要なければ売ってください。」

お金を清算したリドリックは、涙を流す大家に、鍵を渡しながらそう言った。ここで死んで迷惑をかけるわけにはいかない。そして、死ぬのであれば、彼は、もうとうに場所を決めていたのだ。

彼のレベル0という体では、少し歩いただけでも疲れてしまう。何時間もかけながら、のろのろと、彼は、山に登った。そして、町が見渡せる高台に、寝そべると、もう空は満点の星であった。

天に星、そして、眼下に人々の営みである灯を見ながら、彼は、今までの人生を振り返った。いい人生であった。彼は、ゆっくりと目を閉じた。

次の日、彼は目を覚まして、しばらくは、どこにいるのかわからなかったが徐々に意識が覚醒するにつれて、混乱した。しかし、嫌な混乱ではなく、嬉しい混乱であった。レベルがマイナスになっても存在できるのだ。

彼は、自分を鑑定しようとしたが、すぐに、やめようとした。レベルが下がってからは鑑定も使えなくなっていたのだ。しかし、今度は、彼は今までになく詳細な鑑定結果を手に入れることになった。

リシウス
31歳
神族
レベル999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999fffffffffffffffffffffffffffffffffffffffff

どうやらバクって固定しているようだった。しかし、神族とは・・・・・・・。

その日、世界に新たな神が出現した。


地上にいるその神が何をなしたかは残念ながら記録には残っていない。これが、リシウスが望まなかったのか。神の機嫌を損ねたくないと感じた人々が彼の記録を消し去ったのかは定かではなかった。
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