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第二章
第30話「炎の前哨」
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地鳴りが近づいていた。
黒旗の群れが地平を覆い、帝国軍の戦列が波のように押し寄せてくる。朝日を背に受け、槍の穂先が金色に光っていた。
「来るぞ! 盾を構えろ!」
セリナの声が戦列を貫き、兵たちは震える腕を必死に持ち上げる。鎧と鎧が打ち合わさる音が、心臓の鼓動と重なった。
リシアは前列に立ち、二本の剣を腰から抜いた。
右手の直剣は、鍛冶師が彼女のために打ったもの。軽く、鋭い。
左手の短剣は、初陣で拾い、折れた刃を修復したもの。鋭さは失われても、心を繋ぐ証そのものだった。
(これが……私の剣。怖くても、もう退かない)
胸の奥でベルナルトの低い声が響く。
『焦るな。力に頼るな。呼吸と足さばきで流せ。わしと稽古したことを思い出せ』
「うん……!」
矢を放つ合図が鳴り響く。
空が黒い雨に覆われ、王国兵たちは一斉に盾を掲げた。金属音が連なり、火花と破片が散る。
その防壁の隙間から、リシアは前を見据えた。
黒衣の将が、朝の靄を裂いて姿を現す。
長い黒髪を揺らし、白い肌に冷たい眼差しを宿すカサンドラ。
その背後に翻る黒旗が、兵たちの心を凍らせた。
カサンドラは馬を止め、悠然と歩み出る。
長剣を抜き放ち、刃を横に構えて笑った。
「ふふ……前の戦いから、少しは形になったか。だが――所詮は小娘。どこまで耐えられるか、見物だわ」
兵たちの間にまた恐怖の波が走る。
リシアは胸の奥の震えを押さえ、静かに一歩前へ。
「……私が行く!」
その声にセリナが振り返る。
「リシア……!」
「私の剣を、ここで試す。もう、誰かに守られてばかりじゃいられない」
青と金に揺れる瞳を見て、セリナは短く息を呑み、やがて頷いた。
「いいだろう。だが忘れるな、私たちも共に戦う」
「……はい」
リシアは二本の剣を交差させ、地を蹴った。
新しい直剣が白光を放ち、短剣が影のように寄り添う。
『行け、リシア。これはお前の剣の戦いだ』
「一緒に――!」
刹那、カサンドラが滑るように踏み込む。
黒衣が炎のように舞い、長剣が凶星のごとく振り下ろされる。
リシアはその刃を受け止め、火花が朝の空気を裂いた。
炎のような前哨戦が、ついに始まった。
黒旗の群れが地平を覆い、帝国軍の戦列が波のように押し寄せてくる。朝日を背に受け、槍の穂先が金色に光っていた。
「来るぞ! 盾を構えろ!」
セリナの声が戦列を貫き、兵たちは震える腕を必死に持ち上げる。鎧と鎧が打ち合わさる音が、心臓の鼓動と重なった。
リシアは前列に立ち、二本の剣を腰から抜いた。
右手の直剣は、鍛冶師が彼女のために打ったもの。軽く、鋭い。
左手の短剣は、初陣で拾い、折れた刃を修復したもの。鋭さは失われても、心を繋ぐ証そのものだった。
(これが……私の剣。怖くても、もう退かない)
胸の奥でベルナルトの低い声が響く。
『焦るな。力に頼るな。呼吸と足さばきで流せ。わしと稽古したことを思い出せ』
「うん……!」
矢を放つ合図が鳴り響く。
空が黒い雨に覆われ、王国兵たちは一斉に盾を掲げた。金属音が連なり、火花と破片が散る。
その防壁の隙間から、リシアは前を見据えた。
黒衣の将が、朝の靄を裂いて姿を現す。
長い黒髪を揺らし、白い肌に冷たい眼差しを宿すカサンドラ。
その背後に翻る黒旗が、兵たちの心を凍らせた。
カサンドラは馬を止め、悠然と歩み出る。
長剣を抜き放ち、刃を横に構えて笑った。
「ふふ……前の戦いから、少しは形になったか。だが――所詮は小娘。どこまで耐えられるか、見物だわ」
兵たちの間にまた恐怖の波が走る。
リシアは胸の奥の震えを押さえ、静かに一歩前へ。
「……私が行く!」
その声にセリナが振り返る。
「リシア……!」
「私の剣を、ここで試す。もう、誰かに守られてばかりじゃいられない」
青と金に揺れる瞳を見て、セリナは短く息を呑み、やがて頷いた。
「いいだろう。だが忘れるな、私たちも共に戦う」
「……はい」
リシアは二本の剣を交差させ、地を蹴った。
新しい直剣が白光を放ち、短剣が影のように寄り添う。
『行け、リシア。これはお前の剣の戦いだ』
「一緒に――!」
刹那、カサンドラが滑るように踏み込む。
黒衣が炎のように舞い、長剣が凶星のごとく振り下ろされる。
リシアはその刃を受け止め、火花が朝の空気を裂いた。
炎のような前哨戦が、ついに始まった。
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