溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~

弓はあと

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職探し

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 * * * * *


「……と、いうわけなのよ」
「大変だったなぁ、センティア」

 ここはギルドの職業案内所内にある面談室。

 目の前に座る短い黒髪の美丈夫――私の幼馴染のリストが苦笑している。
 そんな表情をしていても、周りの女性たちからチラチラ熱のこもった視線を送られるくらい彼は見た目がいい。

 みんなに見られているけれど、今リストと私は室内にふたりきり。
 ギルドの面談室は防音、でも男女ふたりきりで面談をしても安全なように壁の一部がガラス張りになっている。

 女性たちがリストに向ける熱い視線と、私へ向ける嫉妬の視線が痛くてなんだか居たたまれない。

 リストには婚約者どころか恋人さえいないから、狙っている女性がたくさんいると思う。

 そういえば学園に通っていた頃からモテていたのに、子爵家の次男だから手に職をつけるまでは婚約とか結婚とか考えられない、と公言していたっけ。

「それでギルドへ職探しに来たわけか」

 職探しに来たら、仕事でギルドを訪れていたリストに会って。
 詳しく話を聞かせてと言われ、今こうして面談室にいる。

「そうなの、住むところも無いから、できれば住み込みで働けるといいんだけど……」

 まさかお父様が、ジラーニ様がおっしゃった事を真に受けて本当に私を勘当するとは思わなかった。
 亡くなったお母様のようにお金の使い方について口を出すようになってきた私の事が疎ましかったのかもしれない。

 「妹を苛めるような者を家に置いておけない、お前は成績だけは良く手先もまぁまぁ器用だから市井におりても働き口ぐらいあるだろう」と言って私を家から追い出した。

 シクスセブ侯爵家とつながりが持てれば、結婚するのは娘のどちらでも構わなかったみたい。
 それはシクスセブ侯爵も同じ。
 婚約者がアムエッタに変わってもフォーファイ伯爵家を継げる旨を伝えると、すんなり受け入れたらしい。
 息子が爵位を得られれば結婚するのがフォーファイ伯爵家の娘の、どの娘でも問題ないのだろう。

「センティアは、魔法石の扱いが得意だったよな?」
「魔法石……そうね、学園での成績は良かったわ」

 学園では、魔法石について学ぶ授業があった。
 父が言うように、学園で一位二位を争うくらい成績だけは良かった私。
 ちなみに一位二位を争っていた相手は、今目の前にいる幼馴染のリスト。

 人間の感情は目に見えないけれど、空気と同じように私たちの周りに存在している。

 空中を漂う人間の感情が、長い年月で石化したものが魔法石。
 洞窟や山奥にある泉のそばなどで見つける事ができる。

 石化する前の元々の感情によって、魔法石の色は違う。
 そして元々の感情と同じ感情に触れると、魔法石はエネルギーを放出するのだ。
 そのエネルギーを利用する形で、昔から様々な魔道具が作られている。 

「それならうちの工房を手伝わないか? もちろん報酬は出すし、工房の二階に部屋があるから寝泊りしてもらってもいい」
「ワンツスリ子爵家の? 確か生活に必要な魔道具を作る工房よね?」

 リストのお母様と亡くなった私の実の母は仲が良かったので、ワンツスリ子爵家の運営する工房にも何度かお邪魔したことがある。
 その工房で作られる調理器具をはじめとした魔道具は質が良く、デザインもオシャレなので大人気だ。

「ぁー、いま職人を探しているのは、そっちじゃなくて第二工房の仕事なんだ。引き受けてもらえるなら詳しく話すけど、どうする?」

 うーん、仕事内容が分からないのに引き受けるかどうか返事をしないといけないのかぁ……。

 仕事を紹介しているのが他の人なら、信用できないから絶対に断る案件。
 でもリストが紹介してくれる仕事なら、引き受けても大丈夫なはず。
 それに住む所が得られるのもありがたいし。

「リスト、私その仕事を引き受けたい。仕事内容を教えてもらっても、いい?」

 嬉しそうにリストが微笑んだ瞬間、リストを見つめていた女性たちの表情が変わった。
 聞こえなくても、部屋の外で歓声があがっているのが分かる。

「秘密厳守の仕事になるけど、センティアなら大丈夫だよな」 

 防音だから声の大きさを気にする必要は無いのに。
 なぜか潜められたリストの声に、思わずドキッとした。





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