溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~

弓はあと

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浮気防止パンツ①



 日が暮れて、外が薄暗くなった頃。
 今日もリストが第二工房へやって来た。

「センティア、今日も美味しかった。いつもありがとうな。これ、よかったら」

 ランチボックスと一緒に渡された紙袋の中を覗きこむ。

「わぁ、プリンだ嬉しい。わざわざありがとう。もうすぐ作業部屋の片付けも終わるから、リストも一緒に食べよう」
「ああ」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、儂の分は無いのかのぅ?」
「じいじいちゃんの分もあるよ。じいちゃんは今日いないの知ってるから買ってこなかったけど」

 三人分の紅茶を淹れて、プリンと一緒にテーブルへ並べる。

 お母様が亡くなってから、フォーファイ伯爵邸に住んでいた頃は妹のアムエッタにとられてばかりで食べられなかったけれど。
 リストのお弁当を作るようになって1か月、毎日リストが第一工房の仕事帰りにランチボックスと一緒におみやげを持って寄ってくれるから、プリンを何度も食べている。

 美味しくて幸せだけど太らないように気をつけなくっちゃ。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ここのところ毎日来とるのぅリスト坊。色々と仕事を抱えとるから、忙しいだろうに」

 そうよね、うっかりしていたけどお弁当って、作ってもらったら容器を戻しに来ないといけない。
 毎朝お弁当を受け取りに来るだけでも時間を使ってしまうのに。

「空になったランチボックスを毎日返しに来るのも大変よね。今度から使い捨てできる容器にしようか? そうすれば仕事帰りにわざわざここへ寄らなくてすむから」

「いや、別にいいよ。そんなに手間じゃないし。それに仕事が終わって女の人から食事に誘われた時、お弁当作ってくれた人に容器を返しにいきたいのでって言えばいいから、断りやすくて助かってる」

「そう? それならいいけど……」

 やっぱり手作りのお弁当って、女性よけには効果的なのかもしれない。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ところでリスト坊、前に言ってた試作品はできたかのぅ」
「作ってみたのはあるんだけど、この方向性でいいのか悩んでる」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、悩んどるなら、嬢ちゃんに見てもらえばええ」
「ぇ、リストの試作品を? 私が見てもいいならぜひ」

 今までは懐中時計以外、私もリストもお互いに作っている物を見せた事が無い。
 それどころか私はリストが何を作っているのかさえ知らなくて。
 師匠であるリストのひいお爺様だけが、リストの作っている物を知っている。

「あー、でもたぶんお蔵入りになるし、見せるほどのものじゃないよ」
「そうなの? せっかく考えたのにもったいない気がするけど」

 リストが考えて作ったものが、形にならないのは残念だわ。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、それなら改良できるか今から話し合えばええ」
「仕事が終わったところなのに、それだとセンティアに悪いだろ。いいよ、この件はもう」
「ううん、私の方は遅くなっても二階に帰ればいいだけだから、話し合うのは今からだって大丈夫よ」

 いつも親切にしてくれるリストのためなら、私にできる事はしてあげたい。

「……ありがとう、ならセンティアの言葉に甘えさせてもらおうかな」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、儂はもう帰るから、結果はまた明日にでも聞かせてもらえるかのぅ」
「ぇ、じいじいちゃんは見てくれないのか?」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、そろそろ儂がいなくても、二人だけで作れるようにならんと」

 リストのひいお爺様はもうすぐ引退する。
 そうしたら第二工房の職人はリストと私の二人だけ。
 確かにそろそろひいお爺様に頼るのは終わりにしないといけない時期。

 プリンを食べ終え、ひいお爺様が帰るのをリストと一緒に見送る。
 ふたりきりになった第二工房で、リストが作業台の上に試作品を置いた。

「センティア、これなんだけど……」

 ……パンツ、だわ。
 おそらく女性用。
 でも今このデザインのパンツを穿いている大人の女性は少ないのでは。

 カボチャの形をしたパンツ。

 お腹が冷えないように幼い子どもが穿くような感じ。
 大人の女性が穿くにはちょっと子どもっぽいというか……。

 今の流行りは布地が小さめでゴムを極力使わず、腰のところを紐で結ぶタイプの下着なのよね。

 このパンツがどう浮気防止につながるのかしら。
 ……ぁ、わかった。これはきっと手作りのお弁当と同じ原理だわ。

 今回は魔道具じゃないのね。

 これなら魔道具じゃなくても、浮気防止になる。
 こんなパンツを穿いている女性とは、浮気する気にならなそうだもの。





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