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それなら俺たちの部屋にあるぞ
しおりを挟む……僕、部屋まちがえたかな?
「デュオ、行くぞ」
「ぇ、どこへ?」
思わず素の態度で返事をしてしまった。
でもレイン様はそんな事を気にする様子も無い。
「部屋の移動だ。向こうがひとり部屋を希望したからちょうどよかった」
向こうって、フォッグ様の事かな。
平民の僕との同室を、フォッグ様は嫌がっていた。
クラウド様との面談とかで、何か伝えたのかも。
そうか、フォッグ様は希望通りひとり部屋になるんだ。
よかった。
僕は平民だからひとり部屋にはならず他の使用人の誰かと一緒になると思うけど、おそらく誰と同部屋になってもフォッグ様とよりはずっといい。
「そうですか、では荷物をまとめてきます」
「それならもう、俺たちの部屋に運んであるぞ」
「ぇ……?」
俺たちの、部屋?
ピラ、とシャツのお腹のところを捲られた。
「痛そうだな」
レイン様が言ったのは、フォッグ様に蹴られてできた痣の事だろう。
前世で使っていた掛け布団みたいな綿入りの大きな布を、ふわっ、とレイン様が僕の背中にかけた。
その直後、僕の足が宙へ浮く。
気がつけばふわふわな布ごとレイン様に横抱きにされていた。
まるで物語のラストシーンに出てくる、騎士とお姫様のように。
レイン様は本当に騎士で、僕は平民男子でお姫様じゃないけど。
「デュオ、痛くないか?」
「痛くない、です」
柔らかい布団に包まれているから、蹴られたところも全然痛くない。
「そうか、よかった」
レイン様が微笑んだ、前世の怜とそっくりな、それでいてワイルドさが増した笑顔で。
横抱きのままレイン様に連れていかれたのは、最初にフォッグ様と過ごしていた部屋よりも上の階にあるかなり広い部屋。
フォッグ様との部屋だって凄く広かったのに。
そして部屋には、今まで一度も見たことがない大きさのベッドがあった。
大人でも、6人くらいは余裕で寝られそう。
もしかしたらそれ以上でも大丈夫かもしれない。
僕はそのベッドに、布団ごとそっとおろされた。
「デュオの荷物はここに置いてあるからな。部屋の中にある物は自由に使っていい。欲しい物があったら言ってくれ」
「ぁ、あの、どうして僕の荷物が、ここに?」
この部屋は広くて何人でも暮らせそうだけど、使われている調度品とかは僕でも分かるくらい高級な品。
使用人の共同部屋じゃないことは確かだと思う。
「この部屋がデュオの部屋だからだ。両隣に俺とクラウドの個室もあるが、今日からは俺たちもこの部屋で過ごす」
「ぇ、なぜ!?」
僕が驚いて声を上げるのと同時に、ガチャ、とドアが開き小さな容器を手にしたクラウド様が部屋へ入ってきた。
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