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やっぱりいい人
しおりを挟むフォッグ様の財布紛失事件から1か月くらい経った。
今日はミチェーリ様の部屋で、ネージュ様、フォッグ様、マリベルさんと僕の四人で話し合い。
ミチェーリ様は、ベビーベッドで寝ている。
僕が四人分のお茶を淹れて、テーブルに用意した。
今回の話題は、今度ネージュ様がシュトルム王太子殿下と共に出席される公務の予定について。
「祭典がありミチェーリをおいて一泊の予定で出かけなければならないけれど、できればマリベルも私と一緒に来て欲しくて。だからミチェーリのお世話はふたりにお願いしたいと思っているの」
ネージュ様の言葉を聞いたフォッグ様が、ドンとご自分の胸を叩いた。
「お任せくださいネージュ妃殿下。お留守の間、責任を持ってミチェーリ様をお預かりいたします」
「そう言ってもらえると心強いわ」
人前で見せるのに相応しい笑顔で、ネージュ様が微笑んだ。
僕にクラウド様とレイン様の事を聞いてくる時の悪戯っぽい笑顔とは、もちろん違う表情。
フォッグ様はネージュ様へ熱心に質問している。
当日お世話係としての役目を無事に果たすために、色々と確認しておきたいと思ったのだろう。
「そのご公務には他にどなたがご一緒に行かれるのですか?」
「そうね……主なところでは宰相と宰相補佐、それに騎士団長も。副団長は残るわね。あとは……」
僕は貴族じゃないから、今ネージュ様があげた中で知っているのは宰相のクラウド様と騎士団長のレイン様のおふたりだけだった。
そうか、おふたりも一緒に出かけてしまうのか……。
一泊っておっしゃっていたし、僕はあの広いベッドでひとりで寝る事になる。
そんなのは初めてだ。少し……いや、かなり寂しい。
ぁ、でも普段は夜、ミチェーリ様のお部屋にいるのはマリベルさんだけど今回はネージュ様と一緒にでかけるからいなくなってしまう。
という事は、僕とフォッグ様が交替でミチェーリ様のお部屋に泊まることになるのかな。
「当日はミチェーリ様のお世話を一緒にがんばろうな、デュオン」
「は、はい」
まさかこんな風に、フォッグ様から名前を呼ばれ一緒にがんばろうと言われるなんて……。
きっとあの財布紛失事件の時に、何かしら思うところがあったのだろう。
一方的に僕を疑った事とか、悪かったと思ってくれているのかもしれない。
仕事にも前向きだし、フォッグ様、根はやっぱりいい人なのかも……。
ふと、みんなのお茶のカップが空になっている事に気が付いた。
「ぁ、お茶のおかわりを淹れてきますね」
「ありがとう、デュオン」
ネージュ様の返事があったのですぐに席を立とうとしたら、フォッグ様が声を上げた。
「では僕が淹れてきますよ」
「ありがとう、でもね、実はもうお腹がいっぱいで。お茶は淹れなくて大丈夫よ」
申し訳なさそうにネージュ様が微笑む。
そうか、さっき「ありがとう、デュオン」と言われたから慌てて席を立とうとしてしまったけれど、本当はネージュ様「ありがとう、デュオン、でもね……」と続けたかったんだ。
「茶器は私が片付けますね。フォッグ様はどうぞご自分のお部屋で休憩なさってください。デュオン様は引き続きこの部屋で、ミチェーリ様のお世話をお願いいたします」
話し合いは済んでいたため、マリベルさんの言葉でフォッグ様は退室された。
僕はミチェーリ様が起きた時に備えて、着替えの準備をする。
着替えの準備を終えると、ネージュ様はマリベルさんの淹れたお茶を飲んでいるところだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【お知らせ】
急に場面が変わるため、作者にしては珍しく事前の告知です。
次回、短めですがR18シーンになります。
閲覧の際は周囲にご注意くださいませ。
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