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しおりを挟む成瀬君の用意してくれたスープとサラダとトーストを食べて、今はリビングのソファで並んで座って一緒に食後のコーヒータイム。
なんて幸せな土曜日の朝の時間。この幸せな思い出を胸に、連休明けの火曜日からは仕事を頑張ろう。
「桜井、今日この後買い物に行かないか? パジャマとか、あと着替えも何着か、俺の家に置いておいた方がいいだろ?」
「ううん、行けない。私、クリーニングの服が仕上がったらすぐに帰るね」
成瀬君の笑顔がカチッと固まったような気がした。
「誰かと約束がある、とか?」
ん? 成瀬君の声、いつもより少し低い?
私は、三人姉弟の長女。私立大学薬学部四年の妹と、高校三年生の弟がいる。
妹の通っている大学は私大の中では学費が安い方らしいけれど、それでも薬学部の授業料はかなりの金額。
そして弟は受験生。
実家は貧しくはないけれど、裕福でもない。
だから私は毎月それなりの金額を実家に仕送りしている。
今の会社は優良企業でお給料もいいけれど、仕送りをしたいから無駄遣いはできない。
成瀬君とお付き合いしても平日は仕事だからお泊りすることはないだろうし、今回のように大雨のハプニングもなかなか無いと思うから、着替えは週末たまに来る時にその都度持ってくればいいと思う。
それに、誰かとの約束は無いけれど、急遽行かなければならない所ができてしまった。
さっきシャワーを浴びた時、自分の身体の異常に気付いたから。
「病院に行こうと思って。土曜日の午前中なら診察してもらえると思うから」
成瀬君が眉を寄せ、まるでどこかが痛そうな表情をした。
「病院って、具合いでも悪いのか? それなら俺も一緒に行く」
「なんかね、さっきシャワー浴びた時に気がついたんだけど、全身に赤く湿疹ができてたの。特に胸のあたりと内腿が酷くて。痛みとかは無いんだけど」
あれ? 成瀬君、顔が赤い?
あ、頭押さえて俯いた。頭痛??
熱ある? 成瀬君の方こそ病院に行った方がいいかも。
「桜井、それなら原因に心当たりがあるけど、病院には行かなくて大丈夫だよ。数日で治るし。俺が付き添って病院に行ったら、看護師さんに揶揄われそうでちょっと恥ずかしいかも」
原因に心当たり?
揶揄われそうで恥ずかしい?
…………
…………
あ、もしかして!
実はベッドにダニがいたとか? ダニのアレルギー症状についてはよく知らないけど。
成瀬君は今は耐性ができているから、何ともないのかもしれない。
うん、それは確かに恥ずかしいかも。
特に成瀬君は、ダニなんて家にいなそうなイケメンさんだもの。
「ごめんな、桜井の白い肌、赤くしちゃって」
「ううん、大丈夫。なんか成瀬君の感じで原因もわかったから、とりあえず病院には行かないでおく」
今のところ赤いだけで痛くも痒くもないし。
「原因がわかって、引いたよな。寝ている間に……ごめん。俺の事、嫌いになった?」
寝ている間にダニのアレルギー症状がでちゃうのは個人差もあるだろうし、ベッドにダニがいたからって成瀬君のせいじゃない。
それに今までが完璧すぎる成瀬君だもの、家にダニがいるくらいの欠点があったっていいと思う。
「こんな事で嫌いになったりしないよ。むしろ成瀬君の意外な一面を知れて嬉しい」
突然ソファに押し倒されてキスをされた。さっきまで飲んでいたコーヒーの香りがする。
唇を離した成瀬君は、私が着ている成瀬君のTシャツを捲った。
シャワーを浴びた後につけたブラが丸見えになってしまう。
「ど、どうしたの、成瀬君!?」
「また桜井のこと食べたくなった」
「え、食べ、たァッ!?」
チュゥゥ、とブラからはみ出た乳房を思いきり吸われた。
なんだか凄く恥ずかしい。
ダニの話から、どうしてこんな展開になってしまったのだろう?
「桜井の肌、美味しい。もっと食べたい」
少し位置を変えてまた強く乳房を吸われ、ン、と思わず声が漏れる。
顔を上げた成瀬君が、スルリと私の内腿を撫でた。
「桜井、ここも、食べていい?」
食べ、る……?
あ!
「成瀬君、私、なるべく早く帰らないと」
確か今日の午前中に届くように、実家で作っている野菜を送ってくれているはず。
葉物野菜もあると思うから、再配達を頼むにしてもなるべく早い方がいい。
そう告げたら、成瀬君は自分の膝の上に私を座らせ、ぎゅぅと抱きしめた。
私の首に顔をうずめているので、表情は見えない。
「このままずっと帰したくないけど……野菜を腐らせたりしたら、桜井の両親に嫌われちゃうよな……」
小さく呟くとまた私の身体を、ぎゅぎゅぅと抱きしめる。
「桜井、明日はプレゼン準備の休出に備えてお互い予定を入れてなかっただろ。デートしよう」
成瀬君とデート!?
嬉しい、けど……普段の地味な私で行ったら、きっとタレントとマネージャーにしか見えないよね。
どうしよう!? どうしたらいいの!?
朝から会おうと言う成瀬君を宥めて、夕方からのデートにしてもらった。
月曜日が祝日で仕事が休みだからと説得すると、渋々了承してくれた成瀬君。
もしかしたら成瀬君は、早く会って早く帰りたかったのかもしれないけれど。
ごめんね、人生で初めてのデートなので服とか一から準備が必要なの。
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