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【おまけの話】浮気?
大切な人はメスフィだ、と伝えてくれたゴーシュ様は私にキスをしたあと真剣な表情で見つめてきた。
「メスフィ、好きだ。愛している」
私の目から涙が溢れ、ポロポロと零れ落ちていく。
そんな風に言ってもらえて嬉しい、だけど……。
「私もゴーシュ様のことを愛しています。でも好きだからこそ、怖いのです……」
そう告げた私の頬を伝う涙を、ゴーシュ様が指でそっと拭ってくれた。
「何が怖いんだ、メスフィ。教えてくれ」
「父もマクリ様も、メイドと浮気をしていました」
私を見つめているゴーシュ様の顔が、少し困ったような表情に変わる。
「その事がメスフィの気持ちと、どう関係するのだろうか?」
ゴーシュ様にそう尋ねられて思わずドレスの裾をキュッと握ってしまった。
こんな事を言ったら、ゴーシュ様を不快にさせてしまうかもしれない。
「無理に言わなくてもいいが、どんな事でも教えてくれると嬉しい」
ゴーシュ様はそう告げると、私の涙が止まるまで何も言わずに私の身体を抱きしめてくれていた。
冷酷無慈悲だと噂されているような方なのに、すごく優しい。
ゴーシュ様なら、私の悩みを怒ったりしないはず。
「好きだから怖いのです、ゴーシュ様もいつかメイドと浮気をしてしまうのだろうかと思って不安になります」
「そうか、不安に思ってしまうのか……。メイドと浮気をする俺は、メスフィにとって敵のようなものだな」
ゴーシュ様は顎に軽く握ったこぶしをあてて思案顔になっている。
少しすると、何か思いついたような表情で私の方を見た。
「敵が見えないと不安になる気持ちは少しだが分かる。そんな時は自分から攻めた方がいい」
ゴーシュ様は私の髪を優しく撫でながら言葉を続けた。
「だからメスフィ、不安を解消するために、いっそのこと俺が積極的にメイドと閨事をするのを許してくれないか?」
「え、メイドとの閨事を許す……?」
「ああ、そうだ。メスフィの許しを得たい」
ゴーシュ様がメイドと浮気をするなんて嫌だ。
でもゴーシュ様の願いなら叶えてあげたいと思ってしまう自分もいる。
私は唇を嚙みながら、コクリと頷いた。
夜を迎え、夫婦の寝室で立ったまま、アヴァンタント公爵邸内でよく見かけるメイドの白いエプロンがゴーシュ様の手によって脱がされていく。
パサ、と小さな音を立ててエプロンが床へ落ちるのを、私は視界の端で眺める事しかできない。
ゴーシュ様の逞しい腕が、メイド用の黒いワンピースの裾から差しこまれた。
「くッ、すまないメスフィ。俺は今までにないほど昂っている」
「ゴーシュ様……」
「自分と身分違いで結婚が難しいというメイドとの関係は、こんなにも高揚するのか」
黒いワンピースの中へ侵入したゴーシュ様の指が、ドロワーズに触れる。
少し乱暴な感じでドロワーズが脱がされて、床へと落とされた。
「許されない状況に興奮してしまう。メスフィに申し訳ない気持ちでいっぱいだ」
「私の事は気にせず……ゴーシュ様の好きなようになさっていただいて、大丈夫です」
「好きなようにと言われても、知識がなくてわからない。下着を脱がせたあとメイドとどんな行為をすればいいか、知っていたら教えてくれないか、メスフィ」
ゴーシュ様に問われ、マクリ様がしていた浮気の行為を必死に思い出す。
確かマクリ様が一番良さそうにしていたのは、メイドを言葉で辱めてからメイドの手首を縄で縛って拘束し、何かの道具を使って口を封じて行っていた時だ。
「まずは言葉でメイドを辱めてください」
「わかった」
浮気の時にマクリ様は立っているメイドを見ながら「服の上からでも乳首が勃っているのがわかるぞ。期待しているのか、この淫乱が」と罵っていた。
アヴァンタント公爵邸内で働くメイドが着ている黒いワンピースを見つめて、ゴーシュ様が口を開く。
「可愛いぞ」
その言葉を聞いて、前に閨で「可愛い」と言われた時の事を思い出し、私の視界が涙で滲む。
ゴーシュ様はメイドに向かって辱める言葉を伝える時まで優しすぎる。
「可愛いだなんて、おっしゃらないでください……」
いたたまれない気持ちになり黒いワンピースの裾を、きゅ、と握ると私の頬にゴーシュ様がキスをした。
「すまない。ドレス姿のメスフィも可愛いが、メイド服を着た姿も可愛いと思ってしまう。こんな浮気者の俺をどうか許してくれ」
これは浮気……なのだろうかと悩んでしまう。
湯浴みのあと私は黒の長袖ワンピースの上に、フリルのついた白いエプロンを着て、頭にブラウンのウィッグとホワイトブリムをつけた。
アヴァンタント公爵邸のメイドの格好をしているけれど中身は私で、寝室内にはゴーシュ様と私のふたりしかいない。
ゴーシュ様は自分を浮気者だと言うけれど、まったく違うと思う。
「次はどうすればいい?」
ゴーシュ様に問われて、ハッと我に返る。
「メイドの手を縄で拘束します」
「拘束……か。メイドにそうしたい気持ちも分かる」
「分かるのですか?」
意外な言葉に驚いて目を見開いてしまった。
ゴーシュ様にも、メイドを虐げたいという気持ちがあるなんて。
「メイドだったら、俺との結婚話は出なかったはずだ。メスフィが他の男へ嫁ぐなんて耐えられない、拘束し誰の目も届かない所へ閉じ込めてしまいたい」
獰猛な獣のようにギラッとした視線をゴーシュ様に向けられて、私の鼓動が速くなる。
「縄は……無いな。では、こうしてしまおう」
ゆっくりと、ベッドに押し倒された。
私へ覆い被さるような体勢になったゴーシュ様に、指と指を絡めるようにして両方の手をつながれてベッドに拘束される。
「次は何をすればいいんだ?」
低くて甘い声に耳元で囁かれ、私の心臓がドキッと音を立てて跳ねた。
「何かの道具を使って……口を塞ぎます。メイドの苦しむ様子がいいらしいのです」
「心得た。道具は無いが、なんとかしよう。苦しすぎたら目で訴えてくれ」
指を絡めてつないだ手に、きゅ、と少しだけ力が込められる。
「愛しているよ、メスフィ」
ゴーシュ様の口で私の唇が塞がれ、長くて深いキスをされた。
【完】
ここまで読んでくださった読者様に感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
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お気に入りと言っていただけて嬉しい♪
ふたりが幸せになれるかどうか、このあとの展開を見守ってくださいませ♪♪
子種はよく飛ぶのだな、、、
うん
飛びましたね( ꒪⌓꒪)
なんか、微笑ましいです。
童貞おじさま。
🌷︎様
感想ありがとうございます!
そうなんです、よく飛びました~☆彡
童貞おじさまの微笑ましいお話に、引き続きお付き合いいただけますと幸いです♪