無名の剣霊

松川よづく

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プロローグ.神の領域に立つ者

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────無名の剣霊。


 その名を知らぬ者はいない。

 かつて、討伐不可能とされたSSS級の怪物を傷一つ追わず討伐したという伝説の男。

 人類の危機を救った。その功績は大きく、民は安堵しその地を治めていた王は恩賞を渡したいと直ちに男を王城へと迎え入れろと命じた。

 しかし、男はSSS級の怪物を倒すといつのまにか姿をくらましていたため見つかることは叶わなかった。

 但し、幸か不幸か男とSSS級の怪物との戦いを近くで呆然と見ていた者がいた。

 その者たちはその場に出会えたことに身体を歓喜で震わせながら口を揃えてこう言った。


 『俺たちが見たこともないような力でSSS級魔物を圧倒していた』と。


 それは昔から言われ続けており、以前その男の戦う姿を見た者は男の使う力に見惚れ、型がないことが信じられないほどの無駄のない剣さばきに感心し、その場に出くわせば皆が皆男の使う剣技を真似しようと盗もうと尽力したという。

 人は未知なるものを前にすれば好奇心が生まれ、その未知を欲してしまう生き物だ。

 そのため誰も聞いたことも見たこともない力と流技を使う男の技は、剣の道を行く者たちを魅了という名の渦に飲み込んでいった。

 しかし、何度試そうと剣を振っても誰もその謎の力や技を習得することは叶わなかった。

 熟練の剣士達人でさえ男の使う力を習得できない。
 それは当時剣の頂点に君臨していた剣士、ローデワイス・アリスも同様であった。

 その事実は全土を震撼させ、もしかすれば男の使う力は悪魔の所業なのではないかという噂が立つほどにまでに発展した。

 何百万人の剣士、そして最強の剣士が試しても男の剣技の欠片も真似ることができない。

 人間がどれだけ尽力しても使うことが叶わない剣技は最早異端。そう考える者が時間が進むとともに増えていった。

 それから数年後、男はSSS級の怪物の討伐以来表舞台から完全に姿を消してしまった。

 張本人がいなくなれば確証のない噂はどんどん拗れそして広まっていく。

 男は一体何者なのか、悪魔なのか、それとも人智を超えた力を持った神の使いなのか、様々な憶測が飛び交う中、剣士の頂に立つローデワイス・アリスはSSS級魔物を圧倒した男をこう呼んだ。

 誰もその正体を知らず、存在自体が幻であり人類の危機を救った英雄────


────無名の剣霊、と。
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