紙と雪

つれつれ日記太郎

文字の大きさ
1 / 1

おわり

しおりを挟む
いつもより眉間に皺が寄ってる。
それは気色の悪い違和感だった。

15歳の冬。高校受験まであとわずかなこの時期に友達の彼女のそんな部分に気を取られている場合ではない。

(模試の結果が悪かったのだろう)(雪も降ってるし寒さで体調を崩したのだろうか)(難しい問題を解いているのだろう)

くす玉から飛び出す紙吹雪のように疑問が頭に降ってくる。

いや、疑問ではない。
口実だ、彼女に話しかけるための。

『なんかこの部屋寒くない?』
気づいた時には口から出ていた。
『そう‥かな?』
『ほ、ほら雪も降ってるし‥』
戸惑いながらこちらを見る彼女の視線を逸らすように僕は窓の方を指さした。
やはり天気の話なんて無理があったようだ。サラリーマンの無難な会話じゃあるまいし。

『あ‥ホントだ‥』
『塾に来るまで気づかなかったの?』
『‥‥うん』
大雪という程ではないが気付かないなんて不自然なはずだった。

紙吹雪はまだ止まない。

『それにしてもみんな遅いね』
『‥なんか予定があるんだって』
『え?みんな?』
『ううん、隼人くんは』

紙吹雪はまだ止まない。

『隼人、推薦決まったみたいだし遊びに行ったのかな』
『そんなことない』
静かに発したはずの彼女の声が自習室に響いたように感じた。

すでに他の生徒は帰ったのか自習室には僕と彼女の二人だけだった。

だから、という訳ではないが僕はつい口に出してしまった。

『隼人とうまくいってないの?』

紙吹雪なんて最初からなかったんだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

カラフル

凛子
恋愛
いつも笑顔の同期のあいつ。

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

ヤクザは喋れない彼女に愛される

九竜ツバサ
恋愛
ヤクザが喋れない女と出会い、胃袋を掴まれ、恋に落ちる。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

処理中です...