7 / 13
ほしいのは全部
しおりを挟む
リヒトが部屋に戻るとゲオハルトは部屋の外に続くテラスにいた。
どうやら侍従が屋敷に彼のものを取りに行ったのが間に合ったようだ。辺境伯として相応しい落ち着いた上着とズボンは彼の明るい焦げ茶の髪色に似合っていた。
ゲオハルトは物思いにふけっているのかテラスの柵に斜めに腰かけて遠くを見ている。さみしげな横顔に私がそばにいて差し上げますわ。というご令嬢の一人や二人いたのではとリヒトは思うが、まぁゲオハルトがその気にならなかったのは幸いだった。
(さてと、初恋の人をしあわせにしなくては)
リヒトの昨夜からの行いが一般的には初恋の人をしあわせにする振る舞いからは遥かに遠いということには本人は気づいていない。
テラスへの扉を開くとゲオハルトは一瞬虚につかれていたがすぐにリヒトへと怒気のこもった視線を向けてきた。
「ゲオハルト身体の具合はどうかな?歩くのに支障はないのか?」
リヒトがにこやかに微笑みながらそばに寄り腰を撫でるとゲオハルトの肩がはねた。
「あの程度なんてことはありません」
ぶっきらぼうに吐き捨てられた言葉だったがリヒトから顔を背けるゲオハルトの表情を見てリヒトは心の中で喝采をあげた。
「食事はとったか?」
更に距離をつめ耳元でささやくと今度はビクリと腰が跳ねる。
「いただきました」
相変わらずリヒトの方を見ないがゲオハルトの耳が赤く染まっているのを見てリヒトの心は満たされた。
(羞恥心。わるくない)
「じゃあ中に戻ろう。書類にサインをしてほしい」
リヒトはひらりと左手に持った書類をみせた。
「これは?」
「婚姻誓約書」
その言葉に流石にゲオハルトがリヒトを見た。
理解し難いと顔に書いてある。
「といいたいけれど愛人契約書だ。君の立場の保証だよ」
さらに狂人を見る目をむけられたのでリヒトはニヤリと笑った。いたずらは成功だ。
「冗談だ。私との雇用契約書だ」
まだ納得の行かない顔でゲオハルトはリヒトを見つめている。
「悪いが辺境伯としての肩書は私がいただくことになったからな。お前には私の補佐として働いてもらう。報酬面に関しては変化はない。王族をお前の下に置くわけには行かないのであくまで形式的なものだ。共にこの素晴らしい王国をささえていこうな」
リヒトが言葉を重ねる度にゲオハルトの顔色が悪くなった。
「期限は?」
「期限?そんなものはないが?」
「昨日のような振る舞いをしておいて私を側に置く?屈辱を晴らすために殺されるとは思わないのですか?」
「思わないな。私はお前が思うよりお前のことを知っている。昨晩でもっとよく知れた。私なしでは生きていけなくなるのはすぐだと思うがどうだろうか?」
「……」
顔を伏せたゲオハルトは沈黙を守った。
「それとも、もう、そうなっているのかな?」
「……」
リヒトが正面に回り込みゲオハルトの顔を覗き込む。
「言葉に出来ないなら身体に聞くまでだ」
リヒトは柵に両手を付きゲオハルトが抜け出せないように閉じ込めた。
ゲオハルトがやっと顔を上げたが背の高さがほぼ変わらないので自然と二人の目線があう。
「なぜ、私なんですか?」
「初恋の人だからだよ」
「私は男です」
「椅子や机じゃないのだから構わないと父は言っていた」
「子は産めません」
「生まれたほうが面倒になる」
「貴方には他の人が相応しい」
「それは私が決めることだな」
「好きな人がおります」
「でも身体は私を受け入れているようだが」
リヒトはゲオハルトの足の間に己の足を割り込ませた。彼の性器がリヒトの腰にあたる。しっかりと立ち上がったそれは隠すことの出来ない興奮を示していた。
「恥じることはないさ。身体から始まる恋もある。お前が恋しい人を忘れるときまで抱いてやる。心配するな」
支配者の瞳がゲオハルトを見据えていた。
どうやら侍従が屋敷に彼のものを取りに行ったのが間に合ったようだ。辺境伯として相応しい落ち着いた上着とズボンは彼の明るい焦げ茶の髪色に似合っていた。
ゲオハルトは物思いにふけっているのかテラスの柵に斜めに腰かけて遠くを見ている。さみしげな横顔に私がそばにいて差し上げますわ。というご令嬢の一人や二人いたのではとリヒトは思うが、まぁゲオハルトがその気にならなかったのは幸いだった。
(さてと、初恋の人をしあわせにしなくては)
リヒトの昨夜からの行いが一般的には初恋の人をしあわせにする振る舞いからは遥かに遠いということには本人は気づいていない。
テラスへの扉を開くとゲオハルトは一瞬虚につかれていたがすぐにリヒトへと怒気のこもった視線を向けてきた。
「ゲオハルト身体の具合はどうかな?歩くのに支障はないのか?」
リヒトがにこやかに微笑みながらそばに寄り腰を撫でるとゲオハルトの肩がはねた。
「あの程度なんてことはありません」
ぶっきらぼうに吐き捨てられた言葉だったがリヒトから顔を背けるゲオハルトの表情を見てリヒトは心の中で喝采をあげた。
「食事はとったか?」
更に距離をつめ耳元でささやくと今度はビクリと腰が跳ねる。
「いただきました」
相変わらずリヒトの方を見ないがゲオハルトの耳が赤く染まっているのを見てリヒトの心は満たされた。
(羞恥心。わるくない)
「じゃあ中に戻ろう。書類にサインをしてほしい」
リヒトはひらりと左手に持った書類をみせた。
「これは?」
「婚姻誓約書」
その言葉に流石にゲオハルトがリヒトを見た。
理解し難いと顔に書いてある。
「といいたいけれど愛人契約書だ。君の立場の保証だよ」
さらに狂人を見る目をむけられたのでリヒトはニヤリと笑った。いたずらは成功だ。
「冗談だ。私との雇用契約書だ」
まだ納得の行かない顔でゲオハルトはリヒトを見つめている。
「悪いが辺境伯としての肩書は私がいただくことになったからな。お前には私の補佐として働いてもらう。報酬面に関しては変化はない。王族をお前の下に置くわけには行かないのであくまで形式的なものだ。共にこの素晴らしい王国をささえていこうな」
リヒトが言葉を重ねる度にゲオハルトの顔色が悪くなった。
「期限は?」
「期限?そんなものはないが?」
「昨日のような振る舞いをしておいて私を側に置く?屈辱を晴らすために殺されるとは思わないのですか?」
「思わないな。私はお前が思うよりお前のことを知っている。昨晩でもっとよく知れた。私なしでは生きていけなくなるのはすぐだと思うがどうだろうか?」
「……」
顔を伏せたゲオハルトは沈黙を守った。
「それとも、もう、そうなっているのかな?」
「……」
リヒトが正面に回り込みゲオハルトの顔を覗き込む。
「言葉に出来ないなら身体に聞くまでだ」
リヒトは柵に両手を付きゲオハルトが抜け出せないように閉じ込めた。
ゲオハルトがやっと顔を上げたが背の高さがほぼ変わらないので自然と二人の目線があう。
「なぜ、私なんですか?」
「初恋の人だからだよ」
「私は男です」
「椅子や机じゃないのだから構わないと父は言っていた」
「子は産めません」
「生まれたほうが面倒になる」
「貴方には他の人が相応しい」
「それは私が決めることだな」
「好きな人がおります」
「でも身体は私を受け入れているようだが」
リヒトはゲオハルトの足の間に己の足を割り込ませた。彼の性器がリヒトの腰にあたる。しっかりと立ち上がったそれは隠すことの出来ない興奮を示していた。
「恥じることはないさ。身体から始まる恋もある。お前が恋しい人を忘れるときまで抱いてやる。心配するな」
支配者の瞳がゲオハルトを見据えていた。
62
あなたにおすすめの小説
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った
しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー?
という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡
短編コメディです
オメガ公子とアルファ王子の初恋婚姻譚
須宮りんこ
BL
ノアメット公国の公子であるユーリアスは、二十三歳のオメガだ。大寒波に襲われ、復興の途にある祖国のためにシャムスバハル王国のアルファ王子・アディムと政略結婚をする。
この結婚に気持ちはいらないとアディムに宣言するユーリアスだが、あるときアディムの初恋の相手が自分であることを知る。子どもっぽいところがありつつも、単身シャムスバハルへと嫁いだ自分を気遣ってくれるアディム。そんな夫にユーリアスは徐々に惹かれていくが――。
かわいい王子の残像
芽吹鹿
BL
王子の家庭教師を務めるアリア・マキュベリー男爵の思い出語り。天使のようにかわいい幼い王子が成長するにつれて立派な男になっていく。その育成に10年間を尽くして貢献した家庭教師が、最終的に主に押し倒されちゃう話。
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
忠犬だったはずの後輩が、独占欲を隠さなくなった
ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)
「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」
退職する直前に爪痕を残していった元後輩ワンコは、再会後独占欲を隠さなくて…
商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。
そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。
その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げた。
2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず…
後半甘々です。
すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。
前世で恋人だった騎士様の愛がこんなに重いなんて知りませんでした
よしゆき
BL
前世で恋人だった相手を現世で見つける。しかし前世では女だったが、男に生まれ変わってしまった。平凡な自分では釣り合わない。前世はただの思い出として、諦めようとするけれど……。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる