転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ

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9 騎士レオさんのお住まい拝見

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ふぁー顎が外れそうなほど大きなあくびをして目を擦る。

眠れないまま朝が来て、レオさんが仕事に行き、結論として今までのところは腕と脚いれかえとか首ねじ切り遊びイベントは起こらなかった。

※※※

昨夜まんじりと眠れずに過ごしていればぐぐぐっと大きくなりかけた身体。僕あわててドールハウスの外に飛び出したんだ。んで着地したとたん着せてもらってたピンクのドレスがぱーん!した。

(え?)

そりゃまぁ親指サイズのお洋服だし、薄っぺらい身体とはいえ普通のお嬢さんサイズの僕が収まるわけがない。
でもこれは今まで白いドレスのときにはなかった出来事で僕は動揺した。視線を下ろすと僕のミニミーを包む白い下着にガッツポーズ!!

(セーフ!!セーフ!!)

野球の審判のように手を横にふってはっと気づく。慌てて周りを確認して誰もいないことにホッとした。

(良かった誰もいない。パンツが無事ということは)

つまり最初から僕が身につけていた白いドレスと白い下着なら身体の伸縮にあわせてくれるってことなのだろうと僕は納得した。

(魔法使い様々ってことか)

部屋の様子から見るとどうやらここは応接室みたいで、ここにはカウチソファーとその前に置かれたローテーブルがあり、ガラスで出来たハイキャビネットにはお酒とグラスが置いてあった。

(ふーん、暮らしぶりは悪くなさそう)

この世界の価値観とかわからないけど、やっぱり騎士さんは国に雇われてる高給取りなんだろうなぁ。と思いながらローテーブルの前でドールハウスを眺める。外から見ても屋根とか壁とかちゃんと手をかけて作られている上等なものだ。前世の記憶によればこういうのって結構お値段が張るんだよねぇ。やっぱり騎士さんさては高給取りだな?

「あ、ドレス」

僕の着ていた白いドレスがドールハウスの横に置いてあったのを見つけて手に取る。

(?)

かすかに香った何かを確認するために顔を寄せるとふんわり香る沈丁花の香りにこのドレスが洗濯されたのだと気づく。普段は身につけているからあまり気にしてなかったけどこのドレスだって結構いい生地を使っていると思う。記憶喪失になる前の僕もいいとこの坊っちゃんだったのかな?っていいとこの坊っちゃんが男の娘って、こと?むむむ?

まぁいい、良家の子息としては男の娘の方がパンイチ全裸少年より百倍ましだと思うんだ。まずは着るものをと思うけど目についたのはこの白いドレスとドールハウスの中にあるドレス達。

(さすがに、着れないし、しょうがないな)

小さすぎるドレスの代わりにソファーにかかっている白いカバーを手に取り身体に巻き付ける。古代ローマのトガみたいになってまぁまぁの出来。パンイチ不審者からの脱却を果たした僕はこっそりとお家探検を始めた。

(明日の朝子どもたちに引き渡されるなら、脱出経路を確認しておくべきだよね)

まぁそうなれば死亡間違いなしだけどね。暗い気持ちでゆっくりとドアを回した僕は仄暗い廊下に一歩踏み出し、そしてすぐにこのお家がお庭付の平屋2LDKということが判明した。

応接間を出て廊下向かいの部屋をこっそりと覗けばそこには寝室で、ダブルベッドで一人眠るレオさんがいた。寝返りをうって深く眠る様子を確認し、またこっそりと廊下に戻る。

(抜き足差し足忍び足っと)

廊下の先にはダイニングルームとリビングルーム、小さなキッチンがあってそれだけ。
どうやら家族らしき人もいない。

(一人暮らしってことかな?)

キッチンの様子から見て自炊もあまりしてないみたいで少しの果物と硬いパンを食卓にみつけた。

(ふむふむ、やっぱりご飯は西洋風なんだな)

魔法使いの館でも思ったけど、ここは西洋風の世界で、和風な食材は無いみたい。無いならば作ろう!というナーロッパの主人公と違って僕にはそこまでの情熱も知識もないから、今生はきっと醤油も味噌も知らないまま生きていくんだろうと思う。

(しょうがないけど、ケチャップとマヨくらいは作ろうかな)

将来的に日本風洋食が食べれれば御の字だ、と思いながらこっそりキッチンで食料を漁って応接間に戻った僕は身体が小さくなったので似たようなピンクのドレスをクローゼットから引っ張り出して着た。もちろんビリビリに破けたドレスは証拠隠滅にベッドの下に押し込んでの偽装工作も忘れなかったよ。

ただでさえ魔法使いの家で見つけた小さな生きてる人形ってだけで怪しいのに真夜中に人間サイズになります、なんてどこの妖怪?って思われちゃうからね。
僕なら怖くて箱に詰めて海まで届く大きな川に流しちゃうよ。

(どんぶらこっこどんぶらこっこってね。オノマトペだっけ?)

そんなことを考えながらベッドでうたた寝てたら騎士さんが朝の挨拶をしにきた。
もちろん寝たふりで無視してたんだけど、そっとおふとんを撫でると「家政婦があとから来るがきにしないでいいからな」といって「行ってきます」と出かけてしまった。

一人きりになった家はしんと静かで僕は寝不足を解消すべく惰眠を貪ったのだった。




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