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5 固いイシを持って!
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ひんやりとした手が僕に触れている。あ、診察台だ。と僕は思う。その指先が頬から顎にかけて往復して、あーんしてって言われて口の中にまで触れられる。『ここかなここかな?』って先生が探るから『あいほこへす(はいそこです)』って痛いところを答えて。『また大きくなっちゃいましたね。手術は前と同じ大学病院でね』って先生に言われて、気づく。あぁこれは夢だなって。前世の記憶を夢に見てるんだ。
前世ではなぜだか普通の人より石ができやすい体質だった僕。歯が痛いと思って歯医者に行ったら実は唾液の出る腺に石が出来てて手術することになったんだよね。あれはびっくりした。体質だからしょうがないって言われてたけどいつか尿管結石になったらどうしよう!って恐怖してたんだよねぇ。あれっておしっこで出ていくまでがすごく痛いんだって聞いて。トゲトゲの石がぼくのおちんちんの管の内壁ををゆっくりゆっくりざりざりと擦りながら移動するって想像するだけでどんな拷問!顎の石の時も痛かったけどおちんちん!無理。顔が自然と歪んじゃう。
「おやおや?フィル様悪い夢を見てらっしゃいますか?」
つんつんと誰かに頬をつつかれて重いまぶたをこじ開ける。視界に入るのは深くローブのフードを被った人影。
「カイ先生?」
そこにいたのはミカのお師匠の魔法使いのカイ先生だった。いつものようにザ魔法使いという灰色のローブを頭からまとって顔が影で見えづらい。先生は余計なもので気が散らないように視界を狭くしてるんだってミカが言ってた。あと魔法使いとしては顔を知られすぎるのは良くないって。
寝椅子から起き上がり先生を見上げる。下からだから顔がよく見える。とってもとっても腕のいい魔法使いである先生は限られた人としか繋がらないから顔を知っている人もごくわずか、すごく血色が悪くてぎょろりと大きな目をしているけれど特別美形でもブサイクでもない。グリム童話に出てくる魔法使いのおばあさんみたいに鷲鼻ってこともない。
「よく寝ていましたね。美味しく焼けたのでおすそ分けに来たんですよ」
そう言って差し出されたのは片手でもてるサイズの袋に入ったカイ先生の御手製の焼き菓子。開いた口から甘い香りが漂ってくる。前世のクッキーでいえばスノーボールみたいな一口大のお菓子。ころりと丸い形でふわふわの粉砂糖がたくさんまぶされていて口に含むと舌の上でほろりとくずれて消えてしまう僕の大好物。ちょっとの苦みと甘みとくちどけが独特の味。一口食べるとやめられない止まらないってフレーズがあるけど、まさにあれ。あっという間に食べてしまうからこの量だとミカにはあげられないかも。むむむ。隠れて食べちゃう?
悩んでいたのが顔に出ていたみたいでくふふと先生が笑った。
「フィル様はもっと大きくならないといけませんからね。こっちはミカに」
そう言って別の袋をテーブルに置き先生はに大きな目を細めて笑った。
「先生ありがとう!!」
人によってはにたりと表現しそうな笑顔だけど先生との付き合いも長い僕は何も思わない。前の僕は魔法使いってだけで怖いと本能的におびえていたけど今思えば常識人だ。なぐったりけったりとかされたこともしてるとこを見たこともないし。魔法使いの弟子の扱いなんて犬猫よりも酷いって言われるけどミカにもちゃんとお土産をくれるし別に悪い人じゃない、ちょっとお金にがめついだけで。うぅ、お金。そもそもあとどれくらい借金の残高が残ってるんだろう。
「ねぇ先生」
「僕の家が先生に借りてるお金ってあとどれくらいあるんですか?」
「おやおや?」
先生がその大きな目をぱちくりとさせた。前までの僕はお金のことなんて父上と母上が一生懸命働いて返してる、だから僕も大人になったら手伝う。なんて漠然とした感じでしか考えてなかった。そもそも計算がちゃんとできるか怪しいレベル。
でも前世の僕、理系特進コースに入るくらいは数字に強かったんだよね。だからはっきりとした金額がわかれば返済プランみたいなものをたてられるんじゃないかなって。アーノルト様がくれる金貨小袋いっぱいドーンじゃらら、やったー町でお菓子いっぱい買える!お洋服もあたらしくできる!みたいなふわふわどんぶり勘定だと将来アーノルト様がお金をくれなくなったら詰むじゃないか。今のままだと僕騎士にもなれなず文官にもなれなず路頭に迷う気がする。いや、確定!!
(だから明日から鉄の意志で勉強とかして貧乏下級貴族から脱出するんだ!)
「心配しなくてもフィル様が大人になったら返せる額ですよ。大丈夫」
カイ先生はまたにたりと笑って僕の頭を撫でた。うーんどう見ても悪役な笑顔。
「だからちゃんともっと大きくなってくださいね」
そう言われて思い出した。
(僕、エリカ様に命狙われてた!!)
明日からの学園生活、大丈夫なんだろうか?
前世ではなぜだか普通の人より石ができやすい体質だった僕。歯が痛いと思って歯医者に行ったら実は唾液の出る腺に石が出来てて手術することになったんだよね。あれはびっくりした。体質だからしょうがないって言われてたけどいつか尿管結石になったらどうしよう!って恐怖してたんだよねぇ。あれっておしっこで出ていくまでがすごく痛いんだって聞いて。トゲトゲの石がぼくのおちんちんの管の内壁ををゆっくりゆっくりざりざりと擦りながら移動するって想像するだけでどんな拷問!顎の石の時も痛かったけどおちんちん!無理。顔が自然と歪んじゃう。
「おやおや?フィル様悪い夢を見てらっしゃいますか?」
つんつんと誰かに頬をつつかれて重いまぶたをこじ開ける。視界に入るのは深くローブのフードを被った人影。
「カイ先生?」
そこにいたのはミカのお師匠の魔法使いのカイ先生だった。いつものようにザ魔法使いという灰色のローブを頭からまとって顔が影で見えづらい。先生は余計なもので気が散らないように視界を狭くしてるんだってミカが言ってた。あと魔法使いとしては顔を知られすぎるのは良くないって。
寝椅子から起き上がり先生を見上げる。下からだから顔がよく見える。とってもとっても腕のいい魔法使いである先生は限られた人としか繋がらないから顔を知っている人もごくわずか、すごく血色が悪くてぎょろりと大きな目をしているけれど特別美形でもブサイクでもない。グリム童話に出てくる魔法使いのおばあさんみたいに鷲鼻ってこともない。
「よく寝ていましたね。美味しく焼けたのでおすそ分けに来たんですよ」
そう言って差し出されたのは片手でもてるサイズの袋に入ったカイ先生の御手製の焼き菓子。開いた口から甘い香りが漂ってくる。前世のクッキーでいえばスノーボールみたいな一口大のお菓子。ころりと丸い形でふわふわの粉砂糖がたくさんまぶされていて口に含むと舌の上でほろりとくずれて消えてしまう僕の大好物。ちょっとの苦みと甘みとくちどけが独特の味。一口食べるとやめられない止まらないってフレーズがあるけど、まさにあれ。あっという間に食べてしまうからこの量だとミカにはあげられないかも。むむむ。隠れて食べちゃう?
悩んでいたのが顔に出ていたみたいでくふふと先生が笑った。
「フィル様はもっと大きくならないといけませんからね。こっちはミカに」
そう言って別の袋をテーブルに置き先生はに大きな目を細めて笑った。
「先生ありがとう!!」
人によってはにたりと表現しそうな笑顔だけど先生との付き合いも長い僕は何も思わない。前の僕は魔法使いってだけで怖いと本能的におびえていたけど今思えば常識人だ。なぐったりけったりとかされたこともしてるとこを見たこともないし。魔法使いの弟子の扱いなんて犬猫よりも酷いって言われるけどミカにもちゃんとお土産をくれるし別に悪い人じゃない、ちょっとお金にがめついだけで。うぅ、お金。そもそもあとどれくらい借金の残高が残ってるんだろう。
「ねぇ先生」
「僕の家が先生に借りてるお金ってあとどれくらいあるんですか?」
「おやおや?」
先生がその大きな目をぱちくりとさせた。前までの僕はお金のことなんて父上と母上が一生懸命働いて返してる、だから僕も大人になったら手伝う。なんて漠然とした感じでしか考えてなかった。そもそも計算がちゃんとできるか怪しいレベル。
でも前世の僕、理系特進コースに入るくらいは数字に強かったんだよね。だからはっきりとした金額がわかれば返済プランみたいなものをたてられるんじゃないかなって。アーノルト様がくれる金貨小袋いっぱいドーンじゃらら、やったー町でお菓子いっぱい買える!お洋服もあたらしくできる!みたいなふわふわどんぶり勘定だと将来アーノルト様がお金をくれなくなったら詰むじゃないか。今のままだと僕騎士にもなれなず文官にもなれなず路頭に迷う気がする。いや、確定!!
(だから明日から鉄の意志で勉強とかして貧乏下級貴族から脱出するんだ!)
「心配しなくてもフィル様が大人になったら返せる額ですよ。大丈夫」
カイ先生はまたにたりと笑って僕の頭を撫でた。うーんどう見ても悪役な笑顔。
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