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4 ※やさしい夢から覚めた後
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夢の中で僕は誰かに優しくされていた。
え、っと。性的な意味で。
恥ずかしくって目を開けられないから誰かがどんな顔をしていたかはわからない。
でも相手がすごく楽しそうにしてたのはわかった。僕のことが大好きなんだろうなって伝わるくらい優しい指先。
「かわいい」
顔中に優しく落とされたキスでとろけて。
甘咬みされた首からじんわりとひろがる熱に体の奥がうずいて。
その熱を暴くように何かが僕の体の中へ侵入しようとして僕の息をとめさせた。
いやいやをする僕の頭を抱き込んで深く深く口づけしたその人は、僕の熱が高みにいたるまで手で愛してくれた。
「だいじょうぶだよ。上手だよ」
何かが体の奥に入ろうとする違和感に逃げ出そうとする僕の腰を抑え込んだその人に僕の熱を何度も何度も高みに連れて行かれた。もうこれ以上は無理、そう思った僕はその人の胸にすがってゆるしてを乞うた…それが夢の最後。
その誰かの声と香りがローウェルと同じだってことは夢の中の僕は最初から最後まで一生懸命無視していた。
夢の中でもローウェルに振られちゃったって分かってたから。夢に見てる相手がローウェルだと思うのが悲しすぎて。
振られたばっかりの相手にいやらしい夢見るって、ほんと、勘弁して…
☆☆☆
「なんだ、これ」
一人で寝たはずが寝起きに犬がいた昨晩。
犬と寝たはずが寝起きに人がいる今朝。
目覚めた僕の視界に飛び込んできたのは大好きなローウェルの寝顔だった。
パニックになりかけて叫び声を上げるのを必死にこらえる。
(な、な、な、な、なんで!!ローウェルが僕のベッドにいるの?な、なな、なんで腕枕?)
眼の前にいるのは僕の愛しいローウェルで。
長いまつげもいつか触れたいと思ってた唇もなぜか今、僕の目の前にあるわけなんだけど。
(あ、毛玉?毛玉を探しにきてそれで僕の部屋で寝ることになったり?)
想像力をフル回転させてありそうな状況を考え出す。
けど…腕枕をされた状況で視線を下げればいろいろな物が視界に入ってきて。
ローウェルの立派なローウェルくんとか。僕の僕くんとか…うん。うん。うん。
(どんな状況であれ、お互い素っ裸で寝るわけはないよな…)
冷静なツッコミを自分でして僕は真っ赤になった。
(ぼ、ぼ、ぼくとローウェル、はだかだ!!)
恥ずかしくなった僕はとりあえずローウェルに背中を向けた。
どう考えてもこの状況はよろしくない。
男同士とはいえ婚約者が同衾しているのを人に見られるのはまずい。
っていうか男同士が素っ裸で同衾しているのは婚約者であろうとなかろうとまずいでしょ?
(見られる前にごまかさなければ!!)
そうっとベッドから抜け出そうとした僕は背中からしっかりと抱きしめられた。
そのたくましい腕に抑え込まれて身動きが取れない。
「だれ?」
パニックになった僕は一番おかしな質問を口にした。
誰ってローウェル以外のわけがない。
「ローウェルだ」
律儀に答えてくれたローウェルは半分寝ている様子だ。
まだ眠そうなけだるげな声が少しかすれていてセクシーでドキドキさせられる。
「何してるの?」
「お前がないてたから。慰めた」
「あ、あ、ありがとう?」
「どういたしまして」
そういうとローウェルはもう一度僕をギュッと抱きしめた。
耳元でささやかれる声に僕はドキドキがとまらない。
「ちょ、ちょっと放してほしい」
「いやだ」
「いやだって」
「すぐ泣くから。俺がいないとお前は泣くからだめだ」
「泣いてないよ」
(嘘だけど)
精一杯の強がりでドキドキをごまかした。
「犬の前では素直なくせに」
「え?見てたの?」
「見てたよ。ベーベー泣いてた。それで俺のことが大好きだって。伝えてくれって泣いてたな」
「え、や、それは」
「伝わってるから、もう泣かないでくれ。俺もお前が好きだ。大好きだ」
「え?」
(好きだって?誰が?誰を?)
びっくりして僕の息が止まった。動けないでいるとくるりと向きを変えられた。
(至近距離がすぎる!!)
どこを見ればいいのかわからなくて僕はぎゅっと目を閉じた。
「かわいいな」
チュッと唇に何かが、何かが!!
「今!」
キス、された?わけが分からなくてローウェルを見つめると甘く微笑まれた。
「もっと?」
そういうとローウェルが僕の唇に彼の唇を重ねてきた。
やわやわと優しく食まれるその感触に昨日の夢が蘇る。
ごまかしようのないくらい僕の僕が反応する。
これはまずい。
「や、まって、まって」
必死にローウェルを押しのける。
だって、こんなの、悲しすぎるよ。
好きな人からされる施しのキス。
僕のこと好きだなんて、これもきっと王族としての義務を果たすための優しい嘘。
(やだ、涙がでそうだよ)
「こ、婚約、破棄してほしいんでしょ?僕、大丈夫だよ!」
精一杯強がって伝えたらキョトンとされた。
その顔が子供っぽくて見たことない表情に僕の胸がまたキュンってした。
(やっぱり、すきだなぁ)
「誰と?」
「僕とローウェル」
「なんで?」
「昨日、僕と結婚しても幸せになれないって、そう思ったから逃げたんでしょ?」
「あぁ、それか」
「そう。僕は大丈夫だから。一人で頑張るから。ローウェルは国に帰っていいんだよ」
大丈夫なわけない、そんなの僕が一番わかってる。犬を抱きしめて泣いてたのを見られてたなら説得力の欠片もない。でも、ちゃんと言わなくちゃ。無理して僕にキスなんかしなくていいんだって。
少し気まずそうに視線を泳がせたローウェルは僕をぎゅっと抱きしめた。
彼の胸に顔を押し付けられた僕の耳には彼の鼓動がすごく早いのが伝わってきた。
「昨日逃げたのは悪かった。あれはちょっと訳があって。あの場には人が多すぎたから」
「え?」
「お前に出されたのが毒薬だと思ってちょっと動揺した。もう用済みだってことかなって」
「どうしてそんな?」
「お前に新しい婚約者の話が出ていること、知ってたから」
「それは、僕の態度のせいで、ごめんなさい」
「いや、俺のせい…違うな。お前が可愛すぎるのが悪いんだから、やっぱりお前のせいだな」
「どういう意味?」
「人の気も知らないで。お前に触れられるたびに理性を総動員してた俺が可哀そうだ」
「ご、ごめんなさい」
良くわからないけどローウェルに僕が敵うわけがない。とりあえず白旗をあげる。惚れた弱みってやつだ。
「お前が男だって俺は知ってた」
「え?」
「許嫁になる前兄たちと一緒にこの国へ来たことがある。その時木の棒を振り回して庭をかけているお前と会った」
「え?」
「蜂に追いかけられて池に飛び込んだお前を助けたのは俺だ」
「あ?」
「濡れたままでは風邪をひくと兄がお前を裸にした」
「え?」
たしかに子供の頃やんちゃだった僕は庭で蜂に追いかけられて池に飛び込んだ記憶がある。
あの時複数人に世話をやかれた覚えがある、それでその後客人に迷惑をかけたと怒られておやつ抜きだと言われてへそを曲げたんだ。
え?えっと、つまり。
・・・
かぁっと頬が熱くなる。
そもそも僕が男だって分かってて一緒にいてくれたの?
(じゃあ、ほんとうに僕のこと好き?)
「その時はお前がこの国の王子だなんて知らなかった。兄も俺も親切心で助けたんだから」
「あ、ありがとう」
「次の日に顔合わせで茶会が開かれたときお前はドレスを着せられて、ぶすくれて俺たちのことなんて見もしなかった」
「それは失礼しました」
「可愛かった」
「え?」
「婚約の話が来た時、上の兄か俺が相手になるということだったから俺がお前の相手になると父に願った」
「え?」
「だから、ずっと好きだったんだ。お前が嫌なら昨日のようなことはもうしない。お前が嫌じゃないならそばに置いてほしい」
そっと僕の手をすくって見つめてくるローウェルの視線に昨日の熱を思い出す。
つまり、あれは、夢じゃなくて!!
パクパクと口だけが動いて声が出ない。
(あんな、恥ずかしいこと、本当に?)
「嫌か?」
(いやじゃない、いやじゃないけど、言葉が出てこない)
「嫌なら止めてくれ。じゃないともう、我慢ができない」
そう言って深く口付けされた僕は声どころかそれからしばらく息もできなくされたんだけど…
その後モフモフ毛玉の正体に僕が気づくまでローウェルにされたことはちょっと僕の口からは言えない。
ローウェルから聞かされた過度のストレスが犬化を引き起こす不思議な小国の王家の秘密は僕の性別と同じく我が国のトップシークレットになった。
お互いの秘密を共有した僕らは今日も仲良く過ごしている。
ただひとつ『待て』のしつけが出来ないっていうのが僕の悩みだったりするけど…
え、っと。性的な意味で。
恥ずかしくって目を開けられないから誰かがどんな顔をしていたかはわからない。
でも相手がすごく楽しそうにしてたのはわかった。僕のことが大好きなんだろうなって伝わるくらい優しい指先。
「かわいい」
顔中に優しく落とされたキスでとろけて。
甘咬みされた首からじんわりとひろがる熱に体の奥がうずいて。
その熱を暴くように何かが僕の体の中へ侵入しようとして僕の息をとめさせた。
いやいやをする僕の頭を抱き込んで深く深く口づけしたその人は、僕の熱が高みにいたるまで手で愛してくれた。
「だいじょうぶだよ。上手だよ」
何かが体の奥に入ろうとする違和感に逃げ出そうとする僕の腰を抑え込んだその人に僕の熱を何度も何度も高みに連れて行かれた。もうこれ以上は無理、そう思った僕はその人の胸にすがってゆるしてを乞うた…それが夢の最後。
その誰かの声と香りがローウェルと同じだってことは夢の中の僕は最初から最後まで一生懸命無視していた。
夢の中でもローウェルに振られちゃったって分かってたから。夢に見てる相手がローウェルだと思うのが悲しすぎて。
振られたばっかりの相手にいやらしい夢見るって、ほんと、勘弁して…
☆☆☆
「なんだ、これ」
一人で寝たはずが寝起きに犬がいた昨晩。
犬と寝たはずが寝起きに人がいる今朝。
目覚めた僕の視界に飛び込んできたのは大好きなローウェルの寝顔だった。
パニックになりかけて叫び声を上げるのを必死にこらえる。
(な、な、な、な、なんで!!ローウェルが僕のベッドにいるの?な、なな、なんで腕枕?)
眼の前にいるのは僕の愛しいローウェルで。
長いまつげもいつか触れたいと思ってた唇もなぜか今、僕の目の前にあるわけなんだけど。
(あ、毛玉?毛玉を探しにきてそれで僕の部屋で寝ることになったり?)
想像力をフル回転させてありそうな状況を考え出す。
けど…腕枕をされた状況で視線を下げればいろいろな物が視界に入ってきて。
ローウェルの立派なローウェルくんとか。僕の僕くんとか…うん。うん。うん。
(どんな状況であれ、お互い素っ裸で寝るわけはないよな…)
冷静なツッコミを自分でして僕は真っ赤になった。
(ぼ、ぼ、ぼくとローウェル、はだかだ!!)
恥ずかしくなった僕はとりあえずローウェルに背中を向けた。
どう考えてもこの状況はよろしくない。
男同士とはいえ婚約者が同衾しているのを人に見られるのはまずい。
っていうか男同士が素っ裸で同衾しているのは婚約者であろうとなかろうとまずいでしょ?
(見られる前にごまかさなければ!!)
そうっとベッドから抜け出そうとした僕は背中からしっかりと抱きしめられた。
そのたくましい腕に抑え込まれて身動きが取れない。
「だれ?」
パニックになった僕は一番おかしな質問を口にした。
誰ってローウェル以外のわけがない。
「ローウェルだ」
律儀に答えてくれたローウェルは半分寝ている様子だ。
まだ眠そうなけだるげな声が少しかすれていてセクシーでドキドキさせられる。
「何してるの?」
「お前がないてたから。慰めた」
「あ、あ、ありがとう?」
「どういたしまして」
そういうとローウェルはもう一度僕をギュッと抱きしめた。
耳元でささやかれる声に僕はドキドキがとまらない。
「ちょ、ちょっと放してほしい」
「いやだ」
「いやだって」
「すぐ泣くから。俺がいないとお前は泣くからだめだ」
「泣いてないよ」
(嘘だけど)
精一杯の強がりでドキドキをごまかした。
「犬の前では素直なくせに」
「え?見てたの?」
「見てたよ。ベーベー泣いてた。それで俺のことが大好きだって。伝えてくれって泣いてたな」
「え、や、それは」
「伝わってるから、もう泣かないでくれ。俺もお前が好きだ。大好きだ」
「え?」
(好きだって?誰が?誰を?)
びっくりして僕の息が止まった。動けないでいるとくるりと向きを変えられた。
(至近距離がすぎる!!)
どこを見ればいいのかわからなくて僕はぎゅっと目を閉じた。
「かわいいな」
チュッと唇に何かが、何かが!!
「今!」
キス、された?わけが分からなくてローウェルを見つめると甘く微笑まれた。
「もっと?」
そういうとローウェルが僕の唇に彼の唇を重ねてきた。
やわやわと優しく食まれるその感触に昨日の夢が蘇る。
ごまかしようのないくらい僕の僕が反応する。
これはまずい。
「や、まって、まって」
必死にローウェルを押しのける。
だって、こんなの、悲しすぎるよ。
好きな人からされる施しのキス。
僕のこと好きだなんて、これもきっと王族としての義務を果たすための優しい嘘。
(やだ、涙がでそうだよ)
「こ、婚約、破棄してほしいんでしょ?僕、大丈夫だよ!」
精一杯強がって伝えたらキョトンとされた。
その顔が子供っぽくて見たことない表情に僕の胸がまたキュンってした。
(やっぱり、すきだなぁ)
「誰と?」
「僕とローウェル」
「なんで?」
「昨日、僕と結婚しても幸せになれないって、そう思ったから逃げたんでしょ?」
「あぁ、それか」
「そう。僕は大丈夫だから。一人で頑張るから。ローウェルは国に帰っていいんだよ」
大丈夫なわけない、そんなの僕が一番わかってる。犬を抱きしめて泣いてたのを見られてたなら説得力の欠片もない。でも、ちゃんと言わなくちゃ。無理して僕にキスなんかしなくていいんだって。
少し気まずそうに視線を泳がせたローウェルは僕をぎゅっと抱きしめた。
彼の胸に顔を押し付けられた僕の耳には彼の鼓動がすごく早いのが伝わってきた。
「昨日逃げたのは悪かった。あれはちょっと訳があって。あの場には人が多すぎたから」
「え?」
「お前に出されたのが毒薬だと思ってちょっと動揺した。もう用済みだってことかなって」
「どうしてそんな?」
「お前に新しい婚約者の話が出ていること、知ってたから」
「それは、僕の態度のせいで、ごめんなさい」
「いや、俺のせい…違うな。お前が可愛すぎるのが悪いんだから、やっぱりお前のせいだな」
「どういう意味?」
「人の気も知らないで。お前に触れられるたびに理性を総動員してた俺が可哀そうだ」
「ご、ごめんなさい」
良くわからないけどローウェルに僕が敵うわけがない。とりあえず白旗をあげる。惚れた弱みってやつだ。
「お前が男だって俺は知ってた」
「え?」
「許嫁になる前兄たちと一緒にこの国へ来たことがある。その時木の棒を振り回して庭をかけているお前と会った」
「え?」
「蜂に追いかけられて池に飛び込んだお前を助けたのは俺だ」
「あ?」
「濡れたままでは風邪をひくと兄がお前を裸にした」
「え?」
たしかに子供の頃やんちゃだった僕は庭で蜂に追いかけられて池に飛び込んだ記憶がある。
あの時複数人に世話をやかれた覚えがある、それでその後客人に迷惑をかけたと怒られておやつ抜きだと言われてへそを曲げたんだ。
え?えっと、つまり。
・・・
かぁっと頬が熱くなる。
そもそも僕が男だって分かってて一緒にいてくれたの?
(じゃあ、ほんとうに僕のこと好き?)
「その時はお前がこの国の王子だなんて知らなかった。兄も俺も親切心で助けたんだから」
「あ、ありがとう」
「次の日に顔合わせで茶会が開かれたときお前はドレスを着せられて、ぶすくれて俺たちのことなんて見もしなかった」
「それは失礼しました」
「可愛かった」
「え?」
「婚約の話が来た時、上の兄か俺が相手になるということだったから俺がお前の相手になると父に願った」
「え?」
「だから、ずっと好きだったんだ。お前が嫌なら昨日のようなことはもうしない。お前が嫌じゃないならそばに置いてほしい」
そっと僕の手をすくって見つめてくるローウェルの視線に昨日の熱を思い出す。
つまり、あれは、夢じゃなくて!!
パクパクと口だけが動いて声が出ない。
(あんな、恥ずかしいこと、本当に?)
「嫌か?」
(いやじゃない、いやじゃないけど、言葉が出てこない)
「嫌なら止めてくれ。じゃないともう、我慢ができない」
そう言って深く口付けされた僕は声どころかそれからしばらく息もできなくされたんだけど…
その後モフモフ毛玉の正体に僕が気づくまでローウェルにされたことはちょっと僕の口からは言えない。
ローウェルから聞かされた過度のストレスが犬化を引き起こす不思議な小国の王家の秘密は僕の性別と同じく我が国のトップシークレットになった。
お互いの秘密を共有した僕らは今日も仲良く過ごしている。
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