31 / 48
第2部 継承
EP30 見学体験
しおりを挟む
数日後、ユイはヒロトに連れられ、合唱団の練習場として使用している小ホールにやって来た。
ヒロトへの警戒心も消え、ロレン先生のところへ運んでくれたことがきっかけになった。
(彼は自己中なところがある。でも、それに気づいて努力を始めた前向きな人)
ただ見ているだけではつまらないからと、渡された一枚の楽譜。
楽し気に声を出すメンバーを見て、メンバーが連れている動物型AIたちを見て。
ユイはその目を輝かせる。
「一緒にどうだい?」
「この歌流行ったよね。知ってる?」
「歌っているうちに覚えるさ」
メンバーに誘われて、ユイは少しずつ声を出していく。
この歌は学生の頃よくレイラと歌った流行歌。歌詞もメロディーも分かる。
でものびのび歌うのは少し恥ずかしくもある。
ただ歌うこと自体は、好きな部類だと思う。
「あんた、良い声だねえ」
「レミちゃん、良い子拾ってきたね」
ヒロトが押しの強い女性メンバーたちに「今日は見学に来てるだけだから無理させないで!」と
止めにかかる。
ユイは大丈夫、と言う意味を込めてヒロトに微笑む。
それが伝わったのかヒロトは頷く。
「私……高い音はちょっと心配で……」
「ちょっとしたコツがあるんだよ。いいかい、ここの跳躍は上の音を目指すだけじゃなくて、上から声をひょいと引っ張るようにするんだ」
女性がユイの前で歌って見せる。
きれいな旋律が辺りを包む。
「あ、そうか!……押し上げちゃダメなんだ」
ユイもつられて声を出す。
「今のは……?」
「筋がいいねぇ! ただ、次の歌詞を見てごらん、ここで場面が変わるから……。次はね……」
気さくで優しくて、ちょっとだけお節介なところもある女性陣と。
穏やかで陽気な男性陣。
マシューの周りにもなぜか動物型AIドールが集まっている。波長が合うとかあるのだろうか。
動物の集会のようで微笑ましい。
アットホームな合唱団だ。
それでいて皆で歌い出せば、声が一本の清流のように空間を流れていくのだ。
ホールで味わった風景が変わるような感覚は、間違いじゃない。
時々マシューと目が合う。
『大丈夫だ』
そう言われているようで、その安心感がユイの背中を押す。
「やっていけそう?」
気を使って声を掛けるレミに、ユイは。
「歌うって、こんなに楽しいことだったんですね」
と笑顔で答える。
それがユイの答えだった。
「ようこそ合唱団“アルゼリス”へ!」
歓迎の拍手を受けてユイはこの日、歌の世界に足を踏み入れた。
ユイの携帯端末には、新しい連絡先が登録される。
“ヒロト・セナ・リーシェン”
”レミ・イナ・ロレン”
数日たってからその連絡リストには。
合唱団”アルゼリス”の団長の連絡先や、トオルの連絡先などが登録された。
ヒロトへの警戒心も消え、ロレン先生のところへ運んでくれたことがきっかけになった。
(彼は自己中なところがある。でも、それに気づいて努力を始めた前向きな人)
ただ見ているだけではつまらないからと、渡された一枚の楽譜。
楽し気に声を出すメンバーを見て、メンバーが連れている動物型AIたちを見て。
ユイはその目を輝かせる。
「一緒にどうだい?」
「この歌流行ったよね。知ってる?」
「歌っているうちに覚えるさ」
メンバーに誘われて、ユイは少しずつ声を出していく。
この歌は学生の頃よくレイラと歌った流行歌。歌詞もメロディーも分かる。
でものびのび歌うのは少し恥ずかしくもある。
ただ歌うこと自体は、好きな部類だと思う。
「あんた、良い声だねえ」
「レミちゃん、良い子拾ってきたね」
ヒロトが押しの強い女性メンバーたちに「今日は見学に来てるだけだから無理させないで!」と
止めにかかる。
ユイは大丈夫、と言う意味を込めてヒロトに微笑む。
それが伝わったのかヒロトは頷く。
「私……高い音はちょっと心配で……」
「ちょっとしたコツがあるんだよ。いいかい、ここの跳躍は上の音を目指すだけじゃなくて、上から声をひょいと引っ張るようにするんだ」
女性がユイの前で歌って見せる。
きれいな旋律が辺りを包む。
「あ、そうか!……押し上げちゃダメなんだ」
ユイもつられて声を出す。
「今のは……?」
「筋がいいねぇ! ただ、次の歌詞を見てごらん、ここで場面が変わるから……。次はね……」
気さくで優しくて、ちょっとだけお節介なところもある女性陣と。
穏やかで陽気な男性陣。
マシューの周りにもなぜか動物型AIドールが集まっている。波長が合うとかあるのだろうか。
動物の集会のようで微笑ましい。
アットホームな合唱団だ。
それでいて皆で歌い出せば、声が一本の清流のように空間を流れていくのだ。
ホールで味わった風景が変わるような感覚は、間違いじゃない。
時々マシューと目が合う。
『大丈夫だ』
そう言われているようで、その安心感がユイの背中を押す。
「やっていけそう?」
気を使って声を掛けるレミに、ユイは。
「歌うって、こんなに楽しいことだったんですね」
と笑顔で答える。
それがユイの答えだった。
「ようこそ合唱団“アルゼリス”へ!」
歓迎の拍手を受けてユイはこの日、歌の世界に足を踏み入れた。
ユイの携帯端末には、新しい連絡先が登録される。
“ヒロト・セナ・リーシェン”
”レミ・イナ・ロレン”
数日たってからその連絡リストには。
合唱団”アルゼリス”の団長の連絡先や、トオルの連絡先などが登録された。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる