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34p【久しぶりの雑談】

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翌日、朝起きてスマホを操作していると、黄金洞窟の報酬で30BP入っていた事に気付いた。
恐らく、開催期間全部回せば50BPくらいになってたのかな。
もう一生籠りたくないけど、あの強制ログアウトがなかったら40Pくらいはいってたかな。

コンコンとドアをノックされる音がして、急いでパジャマから普通の装備に戻して、ドアを開けると久しぶりにシンさんが朝食を持って立っていた。
「あ、えっと、お久しぶりですね。おはようございます。」
「ぷふっ。ずいぶんとオシャレな部屋になったね。何?そういう趣味?」とシンさんは僕の部屋を見渡す。
「ちっ違いますよ!えっと、シンカさんに一式買うように勧められて。」
「ふーん…通りで。ま、香は嫌いじゃないけどさ。」とシンさんは部屋に入って新調されたちゃんとしたテーブルの上に朝食をおいてくれた。
最近はずっとルゥさんが持ってきてくれてたから、急いで装備戻したけど、シンさんでなんかほっとした…。
「あの、なんかすみません。毎朝朝食用意してもらって。」
「え?気づいてる?日に日に魔力値上がってる事に。」
「あ、はい。料理のおかげですか?」
「そ。ヴァルプルギスの戦場前には幹部クラスになってもらう予定らしいからね。ルナ班って幹部クラスばっかりだし。外食は避けてね。」
「あ、はい。」むしろ外食を禁じられるなんて、でも美味しいからいいです。それに高価な装備もタダでもらってるし。涙を流しながら料理の味をかみしめる。
「もう100BPたまった?」
「いえ、あと微妙に7ポイント足りなくって。それに一回クエスト中に強制ログアウトしちゃって、それが失敗扱いになってしまったんですよね。」
「ふーん。罰イチか。」
「言い方がっ!?」
「そんな事より。気を付けなよ?君の噂、少しずつ色んな人の耳に入ってきてるからさ。」と頬杖をつきながら此方を見るシンさん。
「え…。噂?」
「ミルフィオレに春風のタクトを使いこなす凄い新人が現れたってさ。」
「そうですか。」こんな短期間でそんな噂が。
「あ、そういえば前から思ってたんですけど、ラートさんの班ってなんでいつも何も無しなんでしょうか?」
「え?あぁ。あの班は全部お金で…重課金者の班って言えばわかるかな?クエストは一部の物好きか手伝いでしかやらないだろうね。現実世界の金持ちの班。ゲームだからさ、お金でなんでもどうにかなっちゃうみたいだよ。」
「そうだったんですね。」
「でも、課金者も無課金者も平等になるように、クエストでの最上級武器は課金の武器と同じ威力がでるようにはなってるんだ。扱いにくいけどね。まぁ無課金者は罰を背負うリスクが高すぎるとだけ。」
「そうなんですね。何か訓練とかしてるわけじゃないのか。」
「してると思うけど、日課みたいにして対して公の場で告知する必要が無いんじゃないかな。ラート班には序列っていうものがあって、定期的に練習試合をして火力の順位を決めて切磋琢磨し合ってるってのは聞いたけど。特別にラートさんの戦闘動画みせてあげよっか。」
「え!?あるんですか?」
「重課金者のラートさんがルナに負けてミルフィオレに入る事になった試合ね。」
ホログラム画面がテーブルの中央に現れて、ラートさんとルナさんがアトランティスの門の前で睨みあい、試合開始のカウントダウンが0になるのを静かに待っていた。
カウントダウンが0になった瞬間ラートさんの背後に大天使のような先端が細い6枚の羽がある、大きな大きなロボットが現れて、光と共にラートさんがロボットに吸い込まれていった。どうやらロボットの中に入り込んだようだ。
羽の先端から強烈な光のビームが発射され、口からも虹色のビームが発射され、ルナさんを一点集中で攻める。
ルナさんは傘で防御するが防御しきれないようで避けようとしても避け切れず、そのまま体力を削られてしまってドラゴンになった。
ドラゴンとロボットは互角だったけど、ロボットは羽をもがれて、真ん中を割られた。
「え?こんなの…武器が壊れていくなんて…。」
「あ。知らないんだ。武器や防具には耐久度があってさ。各町に修理台があって、壊れても修理できるし耐久度減ってるなら修理しといた方がいいよ。ま、お金はとられるけどね。」
耐久値が減っていくと、こんな壊れるモーションになるのか。
ラートさんがロボットから追い出されてしまって別の武器で戦おうとするが、ルナさんの踏みつけによって負けてしまったようだ。
「こんなあっさり!?ズルじゃないですか!」
「そうだよ。じゃなきゃ、3000ちょっとの少数ギルドがヴァルプルギスの戦場で1位になれるわけないでしょ。」
「1位!?え?ここって1位なんですか?」
「まぁ、ずっと大手ギルドには勝てずにいてさ。ヴァルプルギスでランキング1位になったのはラートさんが入って班を作ってからかな。」
VTRの最後は突然ルナさんがショートしたのか元の姿に戻って終わっていた。
「…あれ?シンカさんが止めに入ったんじゃないんですね。」
「あぁ。うん。だってこの頃はまだ僕らいないから。主人の戦闘VTRは鍵のかかってるの以外は自由に閲覧できるんだ。」

てことは、千翠さんがルナさんを起こしてたのかな。
「ラートさん、あの武器いくらしたんでしょう。」
「1000万って言ってたかな?ゲーム的ににはまぁ凄いとは思うけど現実はどうなの?」
「超大金ですよ。ほいほいだせる金額じゃないです。」
「へぇ、興味深いや。」

朝食の後、シンさんとゆっくり現実世界のあれやこれやについて喋っていると昼になった。
「っと、もう昼か。ランチ行こっか。」とシンさんに提案されてついていく事にした。
ギルドハウスを出てアトランティスの城下町を歩いているとシンさんからパーティー招待がきた。
「ん?」
「さっきも言ったけど、君、狙われてるから。僕とPT組んどけば単体のパトルにはならないから。」
「え?そうなんですか?」
「ほんと知らない事多いよね。でも仕方ないか、今のパッチはパーティー組んでる時はパーティーでのバトルになるからね。まぁ、廃止予定らしいけど。タイマンに自信がない人はだいたいパーティー組んだりしてるよ。」
とりあえずパーティーに入った。
「このゲーム、覚える事が多すぎて大変ですね。」
「完全な初心者だったら楽だったのにね。チュートリアル学校からスタートするらしいから。」
「聞きました、良いですよね。僕の時はそんなのなかったのに。ただバトルとクエストするだけのゲームだったはずなのに。」

シンさんについて歩いていると、一軒の氷に包まれた見覚えのある古風な店にたどりついた。
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