死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

10.暴かれた陰謀、家族に潜む危険な真実

目を覚ますと、見慣れているようでどこか違和感のある天井が広がっていた。昨夜の記憶がぼんやりと蘇る中、横を見るとユリドレが穏やかな表情で眠っている。柔らかな朝の光が彼の美しい顔立ちを優しく照らし、その微笑みに胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになった。

しかし、その静かな時間は長くは続かなかった。私が小さく身じろぎをすると、彼が薄く目を開け、少し驚いたような声で言った。

起きてますね。」

「…また?」

その言葉に違和感を覚える間もなく、彼は一瞬で血相を変え、素早く布団を跳ねのけて私の足首を掴んだ。その動きに思わず驚いて身体を引き、何が起こったのか理解するのに数秒を要した。ユリドレの視線は私の足首の青白く光るタトゥーに注がれていた。そこには、新たに青白く光る紋章が一つ増えている。私の足首にある紋章は5つになり、それは鎖にようなって見えた。つまり今、六度目の人生を生きている。

「これ…増えてる…?」

自分の足首を見下ろし、私は目を見開いた。昨夜は確かに、昼食を一緒に取ったあと、夜までベッドで甘い時間を過ごして眠ったはずだった。なのにどうして、また回帰してしまったのだろうか?それも、たった一日後に。

「どこから回帰しましたか?」

ユリドレが険しい表情で問いかける。彼の声には冷静さが保たれていたが、そこには確かな緊張も含まれていた。

「待ってください…今がいつなのか、ちゃんと把握しないと。」

動揺しながらも、私は記憶を整理しようと必死になった。彼は私の動揺を察したのか、一瞬手を止めて待っていてくれる。

「昨日、結婚して初夜を迎えましたよね?だから、今日は、メイがここへ来てから、初めての朝のはず。でも…メイは、先程、  と言っていました…。」

その事実が自分の中で繋がると、全身に冷たい汗が流れるような感覚がした。

「もしかして、寝ている間に誰かに殺されたんじゃないかしら。」

「そんなはずはありません。」

ユリドレの返答は力強く、彼の目には焦りの色が浮かんでいる。

「俺が隣で寝ていて気づかないなんてことはあり得ません。昨日、結婚した次の日、つまり、今日はどのように過ごしましたか?」

「えっと…朝にユリのご両親と朝食を取った後、お昼まで一緒に書類処理をして…その後は、その…ベッドで…。」

最後の言葉を口にするのが恥ずかしくて、視線をそらす。ユリドレは軽くうなずきながら、真剣に話を聞いていた。

「なるほど。では、十ヶ月後に進んだときの結婚した次の日は、どんな様子でしたか?」

「確か…部屋の隅で布団にくるまって怯えていた気がします。」

「ということは、俺の両親と食事をしていなかったのですね?」

「はい…会ったこともありませんでした。」

ユリドレは眉を寄せながら、静かに考え込むようにしていた。そして、少ししてから視線を私に戻す。

「もし犯人が俺に気づかれずに寝室に忍び込み、あなたを殺害できたとしたら、透明化の能力を使う以外には考えられません。となると、疑わしいのは俺の母でしょう。」

「そ、そんな!まさか、お母様が…?」

「可能性の一つです。ただ、もっと根本的な理由があるのかもしれません。とりあえず、今日は昨日と全く同じように過ごしてください。少なくとも夜までは安全だと思います。それに…」

「それに?」

ユリドレは少し笑みを浮かべながら続けた。

「未来の俺だけ、メイとベッドで過ごすなんてズルいです。」

その言葉に、私は顔が熱くなるのを感じ、返す言葉を見つけられなかった。ただ、その笑顔に少しだけ救われたような気がした。

―――――――――
―――――

これまでの回帰は、異なる経験を積むという点で面白さもあったけれど、さすがに1日で回帰してしまうのは堪える。同じ書類を二度も処理し、さらにユリにベッドで愛される(take2)なんて、これには心身ともに疲れてしまう。

ユリは母親を犯人だと疑っていたけれど、そんなに簡単に母親を疑えるものなのだろうか。

床下収納に隠れるよう言われ、私は少し驚きながらその中に身を潜めた。意外なことに、その床下は驚くほど快適だった。ふかふかの布団が用意されており、その柔らかさに包まれると安心感がじわじわと体中に広がっていく。

眠りに落ちそうになっていたとき、ふと微かな床の軋む音が耳に届いた。はっとして目を覚まし、周囲を警戒する。床板の下に身を潜めているのに、この音はなぜか近く感じた。

「ナイフなんて持って、どういうつもりですか?母上。」

ユリの低い声が静かに響く。その瞬間、背筋が凍った。

「...っ!?ユリドレ。」

お義母様が犯人だとわかった瞬間、心臓が激しく高鳴った。私の頭の中には、もし彼女が本気でユリを傷つけようとしているのならどうしようという恐怖が渦巻いていた。

「チッ。」

お義母様が舌打ちする音が聞こえた。

「俺のメイを殺そうとしましたね?抱きしめていた人形の首が切れています。」

その言葉を聞き、頭の中に過去の出来事がフラッシュバックする。過去の恐怖が再び胸を支配し、息苦しさを感じた。

――私はまた首を斬られて死んでしまうの?

「そうよ…。アンタは私がお腹を痛めて産んだのよ!?殺してしまったら、あの時の苦労が何だったのか分からないじゃない。それ以外でアンタを苦しめる方法はこれしかないと思ったのよ。」

その声には、明らかに歪んだ怒りと悲しみが混じっていた。

「だ、そうですよ。父上。」

ユリの言葉と共に、重い足音が部屋に響く。ズシズシと力強く響くその音が、さらに私の緊張感を高めた。

「ミランダ…君は何てことを考えているんだ。」

お義父様の落ち着いた声が聞こえた。その声は低く、しかし明確に非難の色を含んでいた。

「アナタ!?どうして…。」

「はぁ…。メイシールさんには感謝しなければならんな。ミランダ、来い。」

「い、嫌よ!!離して!!!」

床が激しく軋む音が響き渡る。私の胸は恐怖で締め付けられ、動くことができなかった。

音が止まり、部屋に静寂が戻った後、床下の扉が静かに開かれた。そこにはユリが立っていて、優しく手を差し伸べてくる。

「メイ、顔が真っ青だ。」

彼は私をそっと引き上げ、使用人にあたたかいミルクを持ってくるよう指示した。

「すみません。もう少し配慮すべきでした。そして、俺の母が本当に申し訳ありませんでした。」

ユリのその言葉に、私は首を横に振った。

「いえ…。私が来てしまったせいで、ユリとお義母様の関係を拗らせてしまったんですよね。」

「それは違います。俺と母は既に拗れていました。昔から、俺が大切にしているものを奪ったり壊したりするのが好きだったのです。だから、俺は友人を作ることもできなかった。」

その告白に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

「そんなっ…。」

「俺が何かを大切にすると、彼女はそれを破壊する。それが繰り返されるうちに、俺は物への執着心をなくしてしまった。そして、人と心を通わせることが恐ろしくなった。」

「ユリ…。」

ミルクが運ばれてきた。ユリは一口試飲し、温かいカップを私に差し出す。その行為に、彼の深い思いやりを感じた。私はミルクを一口飲み、少しだけ気持ちが落ち着いた。

「本当は…俺はメイといる資格なんてないんです。俺のせいで、君を二度も死なせてしまった。なのに、縛り付けてしまう。」

ユリの目に一筋の涙が浮かび、そのまま頬を伝って落ちた。

「縛り付けたのは私の方です。私は自由が欲しいからとユリを利用して、既成事実を作った。卑怯な手を使って今ここにいるんです。」

「それは俺が黙認したことです。」

「それでも、もし失敗しても私は回帰して、またユリを攻略しようと奔走したでしょう。もうユリと結婚した後に回帰している以上、私がユリを手放すことはありません。まさか、あれだけのことをして私を手放す気ですか?」

彼に安心してもらおうと、私は優しく微笑んだ。

「...無理ですね。俺はもう、メイなしでは生きられない。」

ユリはミルクのカップを置き、私をそっと押し倒した。

「ユリ…。」

「はい…。」

「流石に眠いです…。」

「あっ、俺としたことが。またメイの体に負担をかけるところでした。」

ユリは深呼吸してから私の隣に横になり、そっと手を握った。その手の温もりが、私の不安を溶かしていくようだった。

「ユリ、明日か明後日には私の実家へ行きませんか?」

「そうですね。ぜひ明日にしましょう。メイの大切な家族ですから。」

その穏やかな夜の中で、私はユリの温かな抱擁に包まれ、安らかな眠りに落ちていった。


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