死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

15.パーティーに向けて

王宮で開かれるパーティーの招待状を受け取った日から、私たちの家はなんだか慌ただしくなってしまった。
「ドレスですね。奥様、もちろん、旦那様とお揃いのものにするのですよね?」

そう言い切ったのは、私の専属メイドのミレーヌだ。彼女はいつも冷静沈着で、まるで仕事をするためだけに生きているかのような人。でも私にはとても優しいので、そのギャップがなんだか面白い。

「えぇ!?お揃いですか?でも、そんなの恥ずかしいです!」
思わず顔が真っ赤になりながら声を上げると、ミレーヌはじっと私を見つめ、静かに頷いた。

「では、奥様が王宮で一人だけ旦那様と調和しない装いをするというのですね。」

「それは…それで目立っちゃう気が…。」

「では、お揃いですね。」

彼女の無表情な顔で完璧に押し切られた私は、内心ドキドキしながらも頷くしかなかった。

その日の午後、ユリドレと私、そしてミレーヌでドレスの仕立て屋に向かうことになった。移動中、ユリドレが私を膝に乗せてくれるのはいつものことだったけれど、今日は何だかその距離が妙に恥ずかしかった。

「メイ、どうしました?顔が赤いですよ。」

「べ、別に何でもありません!」

そう言って顔をそらすと、ユリドレが楽しそうに笑う。彼の笑顔は優しくて穏やかだけど、どこか子ども扱いされているような気がして悔しい。

仕立て屋に到着すると、店の中には豪華な布地や装飾品が並び、まるでおとぎ話の中に迷い込んだようだった。出迎えてくれた店主が、私たちを見てニコリと笑う。

「おやおや、今日はとびきり可愛らしいお客様ですね。それに旦那様も、素敵な装いで。」

「お揃いのドレスをお願いしたい。」
ユリドレがすかさずそう言うと、私はさらに恥ずかしくなった。

「お揃いって…本当に言っちゃうんですね。」

「当然でしょう。俺たちは夫婦ですから。」

さらりと答えるユリドレに、思わず顔が熱くなる。店主は微笑みながら、生地を広げ始めた。

「では、どのようなデザインにいたしましょうか?」

「メイに似合うものを。俺の衣装と調和するように。」

店主が次々と提案する中、ユリドレは真剣な顔で生地やデザインを選び始めた。その様子を見ていると、まるで戦略会議でもしているかのような迫力があった。

「この色は明るすぎます。メイの可愛らしさを引き立てつつ、気品を感じさせるものが必要です。」

「では、こちらの淡いブルーはいかがでしょう?」

「ふむ、悪くはないが、刺繍が派手すぎる。」

ユリドレが次々とダメ出しをするたび、店主は「ほほう」と感心しながらも少し冷や汗をかいているようだった。

「ねぇ、私の意見は…?」

「メイは可愛いから何でも似合います。ただ、俺が決めた方が、より完璧になる。」

「そ、そんな勝手な…!」

思わず抗議しようとしたが、その瞬間、ミレーヌが静かに口を開いた。

「奥様様、旦那様に任せてください。この方は本気で奥様のために最善を尽くしています。」

「そ、そういうものなの?」

「そういうものです。」

ミレーヌの冷静な説得力に押され、私は結局黙るしかなかった。そして完成したデザイン画を見て驚いた。淡いブルーを基調に、控えめな刺繍と流れるようなラインがとても美しいドレスだった。

「これは…すごく綺麗…。」

「当たり前でしょう。俺が選んだのですから。」

ユリドレが自信たっぷりに笑うと、私は何も言えなくなった。恥ずかしいけど、どこか嬉しい気持ちもあった。

「じゃあ、これで決まりですね!」

店主が明るい声でそう宣言すると、ユリドレが真剣な顔で頷いた。

「お願いします。期限内に完璧な仕上がりを期待しています。」

そして帰り道、ユリドレが満足そうに微笑む中、私はこっそりと彼の横顔を見た。

(こんなに真剣に私のために考えてくれるなんて…。ユリって、本当に優しいわね。)

でも、優しさと過保護は紙一重だと思う。次のパーティーまで、どうなることやら…。

パーティーが近づくにつれ、ユリドレから突然告げられたのは「マナーの再確認」だった。

「メイ、王宮での振る舞いには気を配らねばなりません。俺たちの立場にふさわしい行動を心掛けてください。」

それは耳に痛い話だったが、正論ではある。私はなんとか普段の行動を公爵家のマナーに合わせていたつもりだったが、ユリドレが「再確認」という言葉を使った時点で、何か足りていないことは明白だ。

「そ、そうですね。気をつけます。」

そう答えたものの、どこか居心地の悪さを感じた。普段から私は、自分が王妃時代に身につけた王族式のマナーを隠すのに必死で、自然と動きが固くなってしまうことが多い。もしそれが露呈すれば、過去の秘密が明るみに出る可能性もあった。

翌日、ユリドレとミレーヌによる徹底的なマナー特訓が始まった。最初の課題は食事の所作だった。

「メイ、フォークをもう少し手前に持って。それでは王族式だ。」

ユリドレが注意深い視線を向けてくる。私は慌ててフォークを持ち直した。

「え、えっと、こうですか?」

「違います。こうするんです。」

彼は自分の手を私の手に重ね、正しい位置を教えてくれる。その手は温かく優しいけれど、どこか固い感情が込められているような気がした。

「メイ、もう少し練習が必要ですね。次はナプキンの使い方を確認しましょう。」

ミレーヌが冷静に指示を出し、私は彼女の動きを真似しながら懸命に練習を続けた。だが、少し気を抜くと、つい王族式の動きが出てしまう。

「それだ!」

ユリドレが鋭く声を上げ、私はびくっと肩を震わせた。彼の目には嫉妬と探るような光が浮かんでいる。

「メイ、もしかして…王族式のマナーを誰かから習ったのですか?」

その質問に、私は息を呑んだ。

「い、いえ!そんなことはありません!ただ、たまたま本で読んだだけで…!」

ユリドレの視線が私を貫くようで、目を合わせるのが怖かった。だが彼は、ふっと息を吐いてその場を収めるように小さく笑った。

「そうですか。それなら良いんです。ただ…本当にアジャール殿下と何か…」

彼は途中で口を閉じたが、その視線からは明らかに嫉妬がにじみ出ていた。

「そんなことありません!」

私は必死に否定しながら顔を赤くする。それを見たユリドレが、少しだけ目を細めて苦笑した。

「すみません、つい気になってしまいました。俺の悪い癖です。」

その言葉には謝罪の気持ちが込められているようだったが、私には少し胸が痛かった。

マナー訓練はさらに続き、私は歩き方や挨拶の仕方まで徹底的に直された。

「メイ、肩の力を抜いて。あなたは王族ではありません、公爵夫人なのです。」

ユリドレのその言葉に、胸がずきんと痛む。彼が知らずに私の過去に触れていることが、どうしようもなく苦しかった。

「分かりました…。気をつけます。」

小さく答えながら、私は王族式の動きを必死に隠し、彼の指示に従った。ミレーヌも私の変化に気づいている様子だったが、特に何も言わず、淡々と訓練を進めてくれた。

「これで一通り完了ですね。」

夕方になるころ、ようやく訓練が終わり、ユリドレが満足そうに頷いた。

「メイ、良く頑張りました。これで堂々と王宮に出席できますね。」


ユリドレは満足そうに微笑みながらそう言った。その笑顔には確かに安堵が浮かんでいたが、目の奥にはまだ何かを押し隠しているような陰りがあった。私が「ありがとうございます」と小さく答えた瞬間、彼が一歩私に近づいてきた。

「ただ……メイ…。」

ユリの声が低く、いつもより少し掠れている。その声色に一瞬だけ心臓が高鳴った。
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