死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

文字の大きさ
20 / 128
シーズン1

20.夫婦だから、恥ずかしさも分かち合おう

「最近、俺だけ恥ずかしい思いをしているので、どうせなら一緒に恥ずかしいことをしましょう。夫婦ですし。」

ユリの言葉に、私の頭が一瞬真っ白になった。驚きと動揺で、顔が一気に赤く染まる。彼の意図が全く掴めないまま、私は口をパクパクと開けたり閉じたりしてしまう。まるで金魚や鯉のような自分の様子に、自分でも情けなくなる。

「は、はず…え?」

言葉にならない声を漏らすと、ユリがふっと笑みを浮かべ、私の耳元に唇を寄せて囁いた。

「難しい顔はいけません。気取られてしまいます。」

その低い声が耳に触れた瞬間、体中がカァッと熱くなる。意味が分からないけれど、意味が分かるような…。ユリが一瞬だけ満足げに微笑むのを見て、私は思わず目を逸らしてしまう。

「…っ!!」

反論しようとした瞬間、ユリが私を抱き上げた。その動きは自然で軽やかで、まるで私が羽毛のように軽いものにでもなったかのようだった。

「ユリ!待って…どこへ行くの!?」

「もちろん、バスルームです。」

ユリの余裕たっぷりの声に、私の抵抗はあっさりと打ち砕かれる。彼の腕の中で身じろぎするものの、彼の力強い腕がそれを許さない。気づけば、私たちは部屋に設置された広々としたバスルームに入っていた。

脱衣所にはしっかりとした仕切りがあり、そこに隠れるようにしてユリは私を下ろした。その仕切りのおかげで、着替える姿を見られる心配はない。だが、それでも心臓の高鳴りは収まらない。

「バスローブが用意されています。メイ、これに着替えてください。」

ユリの声は穏やかだが、その裏にはどこか楽しげな響きが混じっている。私は手渡されたバスローブを受け取り、仕切りの向こうで素早く着替えた。

着替えを終え、浴室へと足を踏み入れると、そこには広々とした空間が広がっていた。壁や床には滑りにくい大理石が敷かれ、天井からは温かな照明が柔らかい光を放っている。中央には大きな浴槽があり、その周りにはくつろげる竹製の家具が配置されていた。

「浴室なのにベッドまで置いてあるの…?」

驚きの声を上げると、ユリが笑みを浮かべながら火の能力を使って浴槽のお湯の温度を調整していた。その指先に宿る炎が、冷たい水を瞬時に適温へと変えていく様子は、どこか幻想的で美しかった。

「この部屋は、メイが一番リラックスできるように改装したんですよ。ほら、濡れても大丈夫な竹製のベッドもその一環です。」

彼の言葉に、私は少し呆れたような顔をしながらも、その心遣いに感謝の気持ちを抱く。だが、そのベッドの存在が何かを暗示しているようで、心がざわつく。

「そんなにじっと見ていると、俺が悪いことを企んでいるように思われますよ。」

ユリが少しだけからかうように言いながら私の手を取り、そっと浴槽の縁に座らせた。彼の目には悪戯っぽい光が宿り、その視線が私をじっと捉えて離さない。

「安心してください。ただ一緒にリラックスしたいだけですから。」

その言葉を信じたいけれど、どこか言葉の端々に含まれる謎のニュアンスに不安が募る。ユリはバスローブの襟元を少しだけ緩めると、私の肩を軽く撫でながら微笑んだ。

「浸かりますか?」

ユリが浴槽を指差して尋ねる。温かな蒸気が立ち上る浴室で、彼の声がやけに響いて聞こえた。

「浸かりません。」

私がきっぱり答えると、ユリは少しだけ口角を上げて笑い、ため息交じりに呟いた。

「では、こちらで。」

彼は突然私を抱き上げ、そのまま竹製のベッドの上に私をそっと座らせた。ふかふかのクッションが体を受け止め、驚きで心臓が跳ねる。

「あの…誰にも見えないとは思いますけど…。何を…?」

恥ずかしさで顔が熱くなり、目を逸らしながら問いかける。ユリは私の膝の上に自分の膝を重ね、まるで私を守るように身を寄せた。

「俺は俺のしたいようにしてるだけです。アナタに見せるこの顔こそが真実ですから。それに、お互いもう全て知り尽くしているに等しい仲ではないですか。そんなに恥ずかしがっていては体が持ちませんよ?」

ユリの目はまっすぐ私を見据え、その表情は柔らかいながらもどこか情熱的だった。その瞳に見つめられると、胸が締め付けられるような気持ちになり、返す言葉が見つからない。

「う…。」

思わず漏れた声に、ユリの笑みが少し深まる。その瞬間、私はこの時間がただの甘いひとときではないことに気付いた。

―メイシールが公爵家にきて間もない頃の、とある夜―

ベッドの上でユリは私を見下ろし、まるで舞台俳優のように演技じみた声で宣言する。

「では、始めましょうか。」

その瞬間、部屋中の空気が緊張感を孕んだ。ユリは事前に使用人を全て下がらせ、今この部屋には私たち二人きりだった。彼が私の上に覆いかぶさり、ゆっくりと顔を近づける。

「あの…本当に、また房事を…?」

私の不安げな声を遮るように、ユリの唇が私の唇に触れた。その動きは柔らかくも確固としていて、彼の決意が伝わってくる。

妊娠中なのに大丈夫なのだろうかと頭をよぎるが、彼はキス以上のことをしてこない。その優しいリズムに徐々に緊張が解け、私も彼の唇に応えるようになっていく。

――だが、しばらくすると、ユリの視線が鋭く窓の方を睨んだ。

「監視の目がついています。どうやら、俺たちが単純に性行為をしていると思わせる必要がありそうです。」

彼の声には苛立ちが混じっている。その視線の先には窓の外、暗闇の中に微かに浮かぶ魔法の目があった。

「どうして…?そういえば、何人か王城勤めの騎士がここにいましたけど、それが関係しているのですか?」

私の言葉に、ユリは一瞬目を見開き、険しい顔つきで私を見つめる。

「なんだと?…それは本当ですか?」

「はい。最初の人生で王宮に滞在する機会が多かったので、だいたいの顔は覚えています。古い人も、この先、入隊する方も。」

その答えを聞いたユリの表情がますます険しくなる。彼は私を敷いたまま、突然腕立て伏せを始めた。その動きは力強く、窓の外から見ればまるで熱のこもった房事の最中のように見えるだろう。

「困りましたね。まさか王がそこまでしているとは。よほどレッドナイト公爵家が気に入らないようですね。」

「そのようですね。」

ユリの息遣いが少しずつ荒くなり、その吐息が私の耳元にかかる。私は両手で顔を隠しながら、小さな声で訴えた。

「あの…さすがに恥ずかしいです。」

その言葉に、ユリの顔が一瞬だけ赤くなった。

「俺も…結構恥ずかしいです。ですが、あなたの体に負担をかけたくないのです。」

彼の耳まで赤く染まった顔を指の隙間から見て、私は思わず笑いそうになった。彼が本当に照れていることに気づき、その姿を愛おしく感じる。

(彼だけが頑張っているなんて、ちょっと可哀想…。)

そう思った私は、小さく息を吸い込み、提案をすることを決意した。彼と一緒にこの状況を乗り切るために。

「ユリ…疲れたらまたキスでもして下さい。」

愛情を沢山注いでくれていた彼を長い期間恐がり、拒絶した罪悪感が少しあった。しかし、彼が私にしてくれることは本当の愛情から来ているものだと今では確信できたため、心を許すことにした。

(そうよ。キスでも何でもこいだわ!夫婦なんだから!!)

「メイ。気持ちは嬉しいですけど…その、あまり誘惑しないで下さい。本当にアナタの体に負担をかけたくなります。話し合いどころではなくなります。」

彼は何かを我慢しているかのような辛そうな顔を浮かべながら腕立て伏せの速度をあげていた。次第に彼の体から汗が滴り落ち、美しい筋肉がバスローブの間からチラリチラリと見え隠れし、私の心臓がバクバクと高鳴ってしまう。

―――そうだった。忘れてはいけない。この人が本当に私のことを愛してくれている可能性が高いということを。愛するに至ったきっかけがイマイチわからないので100%信じることはできないけれど、彼に殺されないということだけは確かなはず。

あまり刺激しないように、気を付けてあげないと‥‥。

感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

お兄様はやさしく笑って、逃げ道だけをなくしていく

星乃和花
恋愛
縁談に悩む子爵令嬢リゼットが助けを求めたのは、名門侯爵家の長男アルフレッド。 穏やかでやさしく、理想のお兄様のような彼は、「君のことは僕が見ている」と甘く手を差し伸べてくれる。 送り迎え、花や手紙、完璧なエスコート。 守られているだけのはずが、気づけば周囲には「彼女はもうノースウェル侯爵家のもの」という空気ができあがっていて――。 ふわふわ優しいのに、実はかなり策略家。 やさしく逃げ道をなくしてくるお兄様系ヒーローに、恋愛に疎い令嬢がじわじわ囲い落とされていく、甘くて幸せな溺愛ラブストーリー。 ――「待つよ」と言いながら、外堀はきっちり埋めてくる―― (完結済ー本編10話+後日談2話)

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。