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シーズン1
32.策略の剣舞
一方で、ユリドレはアジャール王子に剣術の稽古をつけていた。
中庭には広々とした訓練場が広がり、剣が交わる音が響き渡る。18歳になったアジャール王子はその身長と体格の成長こそ目覚ましいものの、剣術の腕前はまだ荒削りだった。彼の動きには、力任せで洗練されていない部分が残っており、それがユリドレの目に余計な未熟さとして映った。
「ユリドレ!どうだ、この一撃は!」
アジャール王子が力を込めた一太刀を振り下ろす。
ユリドレは軽々とそれを受け流し、冷静な声で答える。
「お見事です、殿下。」
その言葉にはわずかな皮肉が込められていたが、アジャール王子は気づかない。彼は剣を下ろし、息を整えながら自信たっぷりに笑みを浮かべた。
「さすが俺だな!どうだ、少しは上達してきただろう?」
「はい。以前よりも格段にお上手になられました。」
ユリドレは丁寧に応じながらも、心の中ではため息をついていた。王子の動きは見栄えこそ良くなってきたが、実戦ではまだ到底通用しない。ユリドレの瞳には、一瞬だけ冷たい光が宿る。
「殿下、今日はここまでにしましょう。」
ユリドレが木刀を収めながら言うと、アジャール王子は顔をしかめて反論する。
「えー!まだ全然足りないよ!」
「ゴールドキング公爵家で近々パーティーが開かれると伺っています。お怪我をされては大事な場に支障をきたします。」
「パーティーかぁ…。もしかしてメイシールも来るのか?」
ユリドレはその問いに少し間を置き、平然と答えた。
「公爵家で開かれるパーティーですので、妻も参加する予定です。」
アジャール王子の顔が急に明るくなり、声が弾む。
「じゃあさ、ダンスに誘ってもいいかな?俺、ダンスにはちょっと自信があるんだ!」
その言葉に、ユリドレの手が一瞬だけ止まる。そして、静かに、だがはっきりと告げた。
「妻は現在妊娠中です。ダンスはご無理だと思います。」
アジャール王子は顔をしかめ、不満げに木刀を地面に突き立てる。
「妊娠してたって別に踊れるだろ!それに、どうせお前らの結婚は政略結婚ってやつだろ?父上に頼んで何とかならないかなぁ。」
ユリドレの目が一瞬鋭く光る。しかし、口調はあくまで落ち着いていた。
「殿下、私たちの結婚は政略結婚ではありません。私がメイシールを見初めた結果、彼女もその想いを受け入れてくださったのです。」
「へぇ…。それでも、父上の命令があれば…。」
「さらに付け加えるならば、彼女は既に私の子を宿しています。これ以上の干渉はお控えください。」
アジャール王子は肩をすくめ、不満そうに顔をしかめる。
「なんだよ、結局あれもダメ、これもダメか。お前、けちくさいな!」
ユリドレは無表情を保ったまま、一歩前に進み出る。
「殿下、気分を変えるために一度城にお戻りになってはいかがでしょうか?もしそれでもまだ体を動かしたい場合、こちらに戻られる際は私が相手をいたします。」
その提案にアジャール王子はしばらく考えた後、渋々頷いた。
「まぁ、そこまで言うなら一度戻るか。」
王子は木刀を片手に、走るようにして王城へ向かっていった。その姿が完全に見えなくなるまで、ユリドレは動かなかった。彼が去った後、ユリドレは手に持っていた木刀をギュッと握りしめ、そのまま静かに地面に叩きつけた。木刀が割れ、乾いた音が訓練場に響く。
ユリドレは一瞬だけ鋭い息を吐き、冷ややかに呟いた。
「くだらない…。」
すると、不意に背後から飄々とした声が聞こえてきた。
「おやおや?ここにおられましたか。何をしていらっしゃるのですか?」
声の主は、騎士のケイだった。彼は飄々とした態度で近づいてくる。肩の力が抜けたような歩き方と、薄く浮かべた笑みが、どこか人を小馬鹿にしたような印象を与える男だった。
だが、彼の裏の顔は王宮から送り込まれたスパイであり、レッドナイト公爵家に潜入し、ユリドレを監視する任務を帯びていた。
「お前か。」
ユリドレは冷たい目を向けると、簡潔に答える。
「見ての通り、殿下に剣術の稽古をつけていた。」
「ふーん、そうですか。」
ケイは軽い調子で頷きながら、ちらりとユリドレを観察する。その目にはどこか探るような光が宿っていた。
「そういえば、奥様とは順調なようですねぇ。メイド達から聞きましたよ~。ベッドメイクを1日に3回…でしたっけ?」
その瞬間、ユリドレの目が鋭く細められる。言葉には出さずとも、空気が一変したのが分かるほどだった。
「その名を出すな。」
ユリドレは短く吐き捨てるように言い、視線を逸らす。
「虫唾が走る。気分が悪い。」
ケイはユリドレの機嫌が悪くなったのを確認しながら、心の中で薄く笑った。
(やっぱりな。やつにとってあの奥方は駒でしかないんだな。欲望を満たすだけの道具ってところか。)
ユリドレは苛立ちを隠すように剣帯を外すと、ケイに向かって放り投げた。
「俺も一度戻る。夕刻までここにいろ。殿下が戻ってきたら適当に相手をしてやってくれ。」
ケイは反射的に剣を受け取り、困惑した表情を浮かべる。
「え?これを渡されても…。」
ユリドレはその言葉に答えることなく、王城の方へと足早に去っていった。その背中には怒りを隠しきれないような硬さが見えた。
ケイはその姿を見送りながら、軽く剣を振ってみる。
「おーこわいこわい。」
彼はユリドレが本気で機嫌を損ねているように見えたことに満足し、愉快そうに笑う。
「そんなに煩わしいなら、俺が奥様をもらっちゃおうかな。」
そう呟いた次の瞬間、中庭に勢いよく駆け込んでくる足音が聞こえた。アジャール王子だ。
「おーい!ユリドレはどこだ!?」
「王子、先程王城へ戻られましたよ。」
ケイは剣を肩に担ぎながら答えた。
「えー!?訓練に付き合ってくれるんじゃなかったのかよ!」
アジャール王子は悔しそうに唇を尖らせる。
ケイはその様子を見て、肩をすくめながら提案する。
「私でよければお相手しますよ。」
「お!本当か!?」
王子の目が期待に輝いた。ケイは余裕の笑みを浮かべ、草むらに目を向ける。そこには先程ユリドレが使っていた木刀が落ちていたが、近づいて拾い上げるとバキバキに折れてしまっていることに気づく。
「これは使い物になりませんね…。王子、そちらの木刀をお貸しいただけますか?その代わり、こちらをお使いください。」
ケイはユリドレから渡された真剣を引き抜き、王子に差し出した。
「真剣!?いいのかよ!」
アジャール王子は驚きながらも、興味津々といった様子でそれを受け取る。
「もちろんです。」
ケイは笑みを浮かべたまま、王子が手にする真剣の輝きを見つめる。その目には油断のない光が宿っていた。
(まあ、王子の剣術の評価は、ただのちゃんばら程度…。)
ケイは自分が渡した真剣が本当に振るわれることのないよう、穏やかに見守りつつ、慎重に戦いの構えをとった。
「さあ、始めましょうか。王子。」
ケイは軽く木刀を振り、挑発するような笑みを浮かべた。アジャール王子も負けじと真剣を構え、張り切った声を上げる。
「行くぞ!」
その掛け声とともに、二人の稽古が始まった。ケイは余裕の表情を崩さず、王子の未熟な動きを巧みにかわしていく。一方で、真剣を手にした王子の目には初めて剣を握った時のような興奮が宿っていた。
(王子はまだ18で戦争経験もない。遊んでやる程度で十分だな。)
中庭には広々とした訓練場が広がり、剣が交わる音が響き渡る。18歳になったアジャール王子はその身長と体格の成長こそ目覚ましいものの、剣術の腕前はまだ荒削りだった。彼の動きには、力任せで洗練されていない部分が残っており、それがユリドレの目に余計な未熟さとして映った。
「ユリドレ!どうだ、この一撃は!」
アジャール王子が力を込めた一太刀を振り下ろす。
ユリドレは軽々とそれを受け流し、冷静な声で答える。
「お見事です、殿下。」
その言葉にはわずかな皮肉が込められていたが、アジャール王子は気づかない。彼は剣を下ろし、息を整えながら自信たっぷりに笑みを浮かべた。
「さすが俺だな!どうだ、少しは上達してきただろう?」
「はい。以前よりも格段にお上手になられました。」
ユリドレは丁寧に応じながらも、心の中ではため息をついていた。王子の動きは見栄えこそ良くなってきたが、実戦ではまだ到底通用しない。ユリドレの瞳には、一瞬だけ冷たい光が宿る。
「殿下、今日はここまでにしましょう。」
ユリドレが木刀を収めながら言うと、アジャール王子は顔をしかめて反論する。
「えー!まだ全然足りないよ!」
「ゴールドキング公爵家で近々パーティーが開かれると伺っています。お怪我をされては大事な場に支障をきたします。」
「パーティーかぁ…。もしかしてメイシールも来るのか?」
ユリドレはその問いに少し間を置き、平然と答えた。
「公爵家で開かれるパーティーですので、妻も参加する予定です。」
アジャール王子の顔が急に明るくなり、声が弾む。
「じゃあさ、ダンスに誘ってもいいかな?俺、ダンスにはちょっと自信があるんだ!」
その言葉に、ユリドレの手が一瞬だけ止まる。そして、静かに、だがはっきりと告げた。
「妻は現在妊娠中です。ダンスはご無理だと思います。」
アジャール王子は顔をしかめ、不満げに木刀を地面に突き立てる。
「妊娠してたって別に踊れるだろ!それに、どうせお前らの結婚は政略結婚ってやつだろ?父上に頼んで何とかならないかなぁ。」
ユリドレの目が一瞬鋭く光る。しかし、口調はあくまで落ち着いていた。
「殿下、私たちの結婚は政略結婚ではありません。私がメイシールを見初めた結果、彼女もその想いを受け入れてくださったのです。」
「へぇ…。それでも、父上の命令があれば…。」
「さらに付け加えるならば、彼女は既に私の子を宿しています。これ以上の干渉はお控えください。」
アジャール王子は肩をすくめ、不満そうに顔をしかめる。
「なんだよ、結局あれもダメ、これもダメか。お前、けちくさいな!」
ユリドレは無表情を保ったまま、一歩前に進み出る。
「殿下、気分を変えるために一度城にお戻りになってはいかがでしょうか?もしそれでもまだ体を動かしたい場合、こちらに戻られる際は私が相手をいたします。」
その提案にアジャール王子はしばらく考えた後、渋々頷いた。
「まぁ、そこまで言うなら一度戻るか。」
王子は木刀を片手に、走るようにして王城へ向かっていった。その姿が完全に見えなくなるまで、ユリドレは動かなかった。彼が去った後、ユリドレは手に持っていた木刀をギュッと握りしめ、そのまま静かに地面に叩きつけた。木刀が割れ、乾いた音が訓練場に響く。
ユリドレは一瞬だけ鋭い息を吐き、冷ややかに呟いた。
「くだらない…。」
すると、不意に背後から飄々とした声が聞こえてきた。
「おやおや?ここにおられましたか。何をしていらっしゃるのですか?」
声の主は、騎士のケイだった。彼は飄々とした態度で近づいてくる。肩の力が抜けたような歩き方と、薄く浮かべた笑みが、どこか人を小馬鹿にしたような印象を与える男だった。
だが、彼の裏の顔は王宮から送り込まれたスパイであり、レッドナイト公爵家に潜入し、ユリドレを監視する任務を帯びていた。
「お前か。」
ユリドレは冷たい目を向けると、簡潔に答える。
「見ての通り、殿下に剣術の稽古をつけていた。」
「ふーん、そうですか。」
ケイは軽い調子で頷きながら、ちらりとユリドレを観察する。その目にはどこか探るような光が宿っていた。
「そういえば、奥様とは順調なようですねぇ。メイド達から聞きましたよ~。ベッドメイクを1日に3回…でしたっけ?」
その瞬間、ユリドレの目が鋭く細められる。言葉には出さずとも、空気が一変したのが分かるほどだった。
「その名を出すな。」
ユリドレは短く吐き捨てるように言い、視線を逸らす。
「虫唾が走る。気分が悪い。」
ケイはユリドレの機嫌が悪くなったのを確認しながら、心の中で薄く笑った。
(やっぱりな。やつにとってあの奥方は駒でしかないんだな。欲望を満たすだけの道具ってところか。)
ユリドレは苛立ちを隠すように剣帯を外すと、ケイに向かって放り投げた。
「俺も一度戻る。夕刻までここにいろ。殿下が戻ってきたら適当に相手をしてやってくれ。」
ケイは反射的に剣を受け取り、困惑した表情を浮かべる。
「え?これを渡されても…。」
ユリドレはその言葉に答えることなく、王城の方へと足早に去っていった。その背中には怒りを隠しきれないような硬さが見えた。
ケイはその姿を見送りながら、軽く剣を振ってみる。
「おーこわいこわい。」
彼はユリドレが本気で機嫌を損ねているように見えたことに満足し、愉快そうに笑う。
「そんなに煩わしいなら、俺が奥様をもらっちゃおうかな。」
そう呟いた次の瞬間、中庭に勢いよく駆け込んでくる足音が聞こえた。アジャール王子だ。
「おーい!ユリドレはどこだ!?」
「王子、先程王城へ戻られましたよ。」
ケイは剣を肩に担ぎながら答えた。
「えー!?訓練に付き合ってくれるんじゃなかったのかよ!」
アジャール王子は悔しそうに唇を尖らせる。
ケイはその様子を見て、肩をすくめながら提案する。
「私でよければお相手しますよ。」
「お!本当か!?」
王子の目が期待に輝いた。ケイは余裕の笑みを浮かべ、草むらに目を向ける。そこには先程ユリドレが使っていた木刀が落ちていたが、近づいて拾い上げるとバキバキに折れてしまっていることに気づく。
「これは使い物になりませんね…。王子、そちらの木刀をお貸しいただけますか?その代わり、こちらをお使いください。」
ケイはユリドレから渡された真剣を引き抜き、王子に差し出した。
「真剣!?いいのかよ!」
アジャール王子は驚きながらも、興味津々といった様子でそれを受け取る。
「もちろんです。」
ケイは笑みを浮かべたまま、王子が手にする真剣の輝きを見つめる。その目には油断のない光が宿っていた。
(まあ、王子の剣術の評価は、ただのちゃんばら程度…。)
ケイは自分が渡した真剣が本当に振るわれることのないよう、穏やかに見守りつつ、慎重に戦いの構えをとった。
「さあ、始めましょうか。王子。」
ケイは軽く木刀を振り、挑発するような笑みを浮かべた。アジャール王子も負けじと真剣を構え、張り切った声を上げる。
「行くぞ!」
その掛け声とともに、二人の稽古が始まった。ケイは余裕の表情を崩さず、王子の未熟な動きを巧みにかわしていく。一方で、真剣を手にした王子の目には初めて剣を握った時のような興奮が宿っていた。
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