死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

46.ミレーヌの死闘

真夜中、俺は眠っているメイと息子の側に透明なままでいると、窓の外に部下の姿を見た。部下は静かに立ち、不穏な雰囲気を漂わせていた。

窓辺に静かに近づき、部下が報告をするのを静かに待った。部下は口を動かさずに、手でサインを伝え、領境でミレーヌを捕らえたと報告した。

音を立てずに窓から外へ出ると、馬に乗り、領境へと急いだ。領境への道はあっという間に進んだ。

領境に到着すると、部下であり、ミレーヌの護衛につけていたトリントが彼女に手錠をはめて拘束していた。彼女の周りには、冷たい様子で部下たちが立っていた。

「ミレーヌ、俺の下につけ。」

俺の声は低く、冷徹そのものだった。だが、ミレーヌの目は怒りと覚悟で燃えていた。

「お断りします。私は身も心もメイシール様のものです。」

その言葉に、俺は小さな苛立ちを覚えた。忠誠心は買うが、相手を間違えている。その事実を彼女に叩き込まなければならない。

「トリント、拘束を解け。そしてお前たち、半径10メートル離れろ。」

部下たちは即座に命令に従い、ミレーヌの手錠が解かれた。だが、その瞬間、彼女の目に宿る光が鋭さを増した。これはただのメイドではない、戦闘訓練を積んだ女だと、俺は改めて確信した。

俺は鞘から剣を抜き、一歩踏み込んだ。その一撃はミレーヌの肩を狙ったが、彼女は帯からナイフを抜き、驚くべき反射神経で防いだ。金属がぶつかり合う甲高い音が夜の静寂を切り裂いた。

「ほう…。」

俺がそう言うと、ミレーヌは息を整え、ナイフを構え直した。その姿勢には一切の隙がなかった。

次の瞬間、俺は足元を狙った斬撃を放ったが、彼女は軽やかに後退し、その攻撃をかわした。そして、反撃の一手としてナイフを俺の顔に向けて投げてきた。鋭い風切り音が耳を掠める。だが、それを剣で払い落とすと同時に、俺は前に踏み込んだ。

「相当動けるな。」

「当然です。メイシール様を守るためですから。」

彼女の反撃は続いた。鋭く切り込むナイフの動きは予想以上に正確で、俺の剣に次々と火花を散らした。ミレーヌの技量は明らかに俺の部下たちよりも上だった。


俺はさらに攻撃を加速させた。上段からの鋭い斬撃を振り下ろし、ミレーヌはそれをナイフで受け流す。その瞬間、俺は剣を一回転させ、刃の腹で突きを繰り出した。だが、彼女は体をしなやかに反らしてそれを避け、すぐさま俺の脇腹を狙ってナイフを振り抜いてきた。

俺は後ろへ軽く跳躍して間合いを取り直す。だが、彼女の反応は速い。追いすがるように距離を詰め、床を蹴って俺の足元に向かって滑り込んできた。足払い狙いだと悟った俺はすぐに跳躍し、彼女の動きを見下ろす形で反撃の態勢を整えた。

空中で体をひねりながら剣を振り下ろすと、彼女は素早く転がって回避し、再び立ち上がる。その動きは俊敏かつ正確で、まるで長年鍛え上げられた戦士のようだ。

「それに…その髪。」

俺は剣を構え直しながら、彼女の髪をちらりと見る。闇の中でも不自然に揺れるその黒髪は、地毛とは思えない。

「地毛ではないな?貴族の出か?」

その言葉に、ミレーヌは一瞬だけ目を伏せたが、何も答えない。ただ、ナイフを構え直し、俺の次の攻撃に備えている。

「まぁいい…。俺の情報網を舐めるなよ。」

俺は冷笑を浮かべながら、剣を一気に振り抜いた。その一撃は風を巻き起こし、彼女のナイフを弾き飛ばす力があったが、彼女はナイフを手から離さない。そのまま剣を受け流しつつ、逆手に持ち替えたナイフで俺の喉元を狙ってきた。

「ほう、攻める気か。」

俺は身を翻しながら剣を振り、彼女のナイフを弾き返した。その勢いで彼女の足に一筋の切り傷を与える。ミレーヌの動きが一瞬鈍り、呼吸が荒くなる。

「分かるか?今お前の足は切れている。」

俺の言葉に、彼女は傷ついた足で踏みとどまり、再びナイフを構える。その姿勢には未だ闘志が宿っていたが、次の一手が俺の圧倒的な力で封じられることを、彼女自身も悟っているはずだ。

「うちのメイシール様を舐めないでください。」

ミレーヌはナイフを振り上げたまま、睨みつけるように俺に言い放つ。その声には微かな震えがあったが、覚悟が感じられた。

「私の情報が暴かれることはありません。」

その言葉に俺は小さく笑みを浮かべた。

「いいだろう、だが覚えておけ。俺を相手に秘密を守り通せる者などいない。」

俺は冷たく微笑みながら剣を構え直した。次はどこを切るか、それを決める余裕が自分にあるのを感じた。ミレーヌの動きには明らかな疲労が見えていた。反撃の余力がないと悟った俺は、余韻を楽しむかのように、一つずつ狙いを定めていく。

次に彼女の手首に浅い切り傷をつけ、ナイフを持つ力を削いだ。その刃が震え始めたのを見届けると、続けて腕、背中、と体に薄い傷を刻み込んだ。決して致命傷ではないが、じわじわと追い詰めるような傷。彼女の目に屈辱と痛みが混ざった色が浮かぶ。

「もう終わりだ。」

最後に剣先を鋭く翻し、彼女の首筋に刃を当てた。躊躇なく皮だけを薄く裂く。その瞬間、彼女の動きが完全に止まった。

「これで分かったか?」俺は静かに言葉を紡いだ。「お前は死んだ。」

ミレーヌはその場に跪き、目を閉じて深く息を吐き出した。その姿には、戦士としての誇りが崩れ去ったような儚さがあった。

「確かに、死んでしまいましたね…。」彼女の声は落ち着いており、敗北を受け入れた者特有の静けさがあった。「それで、どのようなご命令でしょうか。」

俺は剣を鞘に納め、冷たく頷いた。「話が分かる奴だ。それでこそ、メイの侍女に相応しい。時が来たら命令を下す。それまでここで待機していろ。」

「承知いたしました。」ミレーヌは感情を押し殺したまま、静かに頭を下げた。その姿に一抹の哀れさを感じながらも、俺は表情を変えない。

「トリント!」俺は部下を呼びつけた。「ミレーヌの手当をしろ。そしてしばらくの間、彼女の世話をしていろ。」

「かしこまりました。」トリントは淡々と応じ、ミレーヌに近づいて応急処置を始めた。彼は無言で手際よく、切り傷に包帯を巻いていく。

俺はその場を一瞥し、剣を再度確かめるように触れた後、背を向けた。夜風が髪をなびかせ、冷たい月明かりが足元を照らす。

「俺は戻る。」短く告げると、馬へと歩み寄った。

馬の首を軽く撫で、再びメイと息子の待つ家へ向かって走り出す。その道中、俺の心にはわずかな苛立ちと、深い悲しみが混ざり合っていた。ミレーヌの忠誠心は確かに本物だ。そのため、彼女がメイを守るために俺を敵視しているのも理解できる。しかし、それでもなお、メイを失うかもしれないという恐怖が胸を締め付ける。

家が見える距離まで戻ると、俺は馬を降り、再び透明化の魔法を発動させた。メイの窓からもれる灯りを見上げながら、俺の心は複雑な思いで満たされていた。

「メイ…。」

低く呟くその声は、届くことのない哀願のようだった。俺は静かに家の中へ入り、透明なまま再び彼女と息子の眠る寝室へと足を運んだ。その小さな安らぎの光景が、俺の胸の痛みをほんの少しだけ和らげてくれた。

――――心から…愛しています…メイ…。

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