60 / 128
シーズン1
60.ゼノとの奔走
ゼノとの絆を再確認したあの日から、俺たちは共に公爵家内で高い地位を築くために全力で奔走する日々を送ることになった。まだ10代半ばの少年であるにもかかわらず、俺とゼノはその若さを武器にして、誰も思いつかない大胆な行動を次々と仕掛けていった。
公爵家の庭園は早朝から忙しさに満ちていた。花々が朝露に濡れ、庭師たちが丁寧に手入れをしている。だが、俺たちの関心はそんな優雅な光景ではなかった。
「主、この計画書に目を通していただけますか。」
ゼノが朝一番に運んできたのは、貴族間の新しい取引に関する計画書だった。内容を一読すると、目を見張るほど緻密に練られた策略が記されている。
「なるほど、これなら貴族たちの間で影響力を拡大できるな。だが、この条文では相手に付け込まれる隙がある。ここをこう修正しろ。」
俺はゼノに指示を出しながら、自分の机に積まれた別の書類にも目を通した。
ゼノはすぐさま指示を理解し、計画書を手直しするために走る。彼の迅速で正確な動きに、俺は改めて信頼を深めた。
その日の午後、俺たちは公爵家の戦略会議に出席した。会議室の中は重厚な空気が漂い、議題を巡る緊張感が漂っている。俺とゼノが入室すると、参加者たちは一瞬だけ視線を向けてきた。まだ若い俺たちに対する懐疑的な目線は、日常茶飯事だった。
「では、次にレッドナイト家が新たに打ち出す貿易政策について、ユリドレ様、説明をお願いできますか?」
司会役の老執事が促す。
俺は席を立ち、冷静に口を開いた。
「現在の政策では、利益の多くが他家に流れている。この状況を改善するため、我々は輸送コストを削減し、レッドナイト家直轄の貿易ルートを開拓する必要があります。」
俺の言葉に一部の参加者がざわついたが、ゼノが静かに手を挙げ、追加の説明を行った。彼の理路整然とした説明と明確なデータに基づく主張に、会議室の空気は次第に和らいでいく。
「この案ならば、短期的にも長期的にも利益が見込めます。そして他家からの干渉を防ぐため、秘密裏に準備を進める必要があります。」
ゼノが話を締めくくると、議員たちは頷き合い、俺たちの案を採用することで合意した。
会議が終わると、ゼノと俺はその足で情報ギルドの隠れ家へ向かった。ギルドは、俺たちの計画を遂行するための情報収集と工作活動を行う重要な拠点だ。
「ユリドレ様、こちらが最新の報告書です。」
ギルドのリーダーが手渡してきた書類には、周辺諸国の貴族たちの動向が細かく記されていた。
「なるほど…。こいつらが俺たちの邪魔をする可能性が高いな。」
俺は報告書を読みながら、ゼノに視線を送る。
「対策は既に考えています。こちらのスパイを動かし、彼らの企みを牽制する手筈です。」
ゼノが淡々と説明する様子に、俺は内心で感嘆していた。ゼノはただの部下ではない。俺の右腕であり、何よりも信頼できるパートナーだ。
夜遅く、俺たちは変装をして街へと向かった。貴族としての地位を隠し、一般市民の目線で領地の実情を確かめるためだ。
街の賑わいの中で、ゼノは淡々と歩きながら周囲を観察している。俺も負けじと、屋台や店舗の様子を確認して回った。
「ユリドレ様、この通りは商業活動が活発ですが、一部の店主から貴族への不満が漏れています。」
ゼノが小声で耳打ちしてくる。
「なるほど…。明日、彼らの話を聞きに来よう。」
俺は頷き、次の視察場所へと足を向けた。
ゼノとの息の合った行動と、困難を乗り越えるための策略を練る日々が続く。俺たちはまだ未熟かもしれないが、この領地をより良いものにするため、そして公爵家の名声を高めるために、全力を尽くしていた。
夜が更け、城へ戻った俺たちは執務室に籠り、それぞれの仕事に取り掛かっていた。ゼノは書類を整理しながら、必要な情報を即座に俺に伝えてくれる。彼の的確なサポートのおかげで、仕事の効率は驚くほど上がっていた。
「主、こちらの案件ですが、急ぎで判断が必要です。」
ゼノが差し出してきたのは、近隣諸国からの商業協定の提案書だった。
俺は書類を受け取り、一読して内容を確認する。
「この条件なら問題ないが、ここを少し交渉して、我々に有利な形に持っていけ。」
「承知しました。」
ゼノはすぐに赤ペンを取り出し、修正案を書き込んでいく。その動きには無駄がなく、彼の成長ぶりに改めて感心する。
「お前、俺がいない間によくここまでやったな。」
俺が冗談交じりに言うと、ゼノはわずかに笑みを浮かべた。
「主の無茶な命令に慣れただけですよ。」
その軽口に、俺たちは同時に笑った。
それから数年が経ち、俺の地位は誰もが認めるものとなった。公爵家の権威を揺るぎないものにするために、ゼノと共に駆け抜けた年月だった。ゼノはその間、俺の右腕として、時に影武者として、すべてを捧げてくれた。
「これで最後だ。今日の決裁分を片付けたら休め。」
俺がそう言うと、ゼノは淡々とした表情のまま頷いた。しかし、その目にはわずかな疲労が滲んでいた。
ゼノの給料は今や公爵家内で最も高い。あいつの努力と忠誠に報いるためには、それが当然だった。だが、金だけでは彼が背負ってきた苦労や犠牲には到底見合わない。それを痛感するたび、俺は苛立ちともどかしさを覚えた。
「ゼノ、お前が俺の影であり続ける必要はない。」
俺がそう言うと、ゼノは一瞬だけ動きを止め、俺をじっと見つめた。
「その言葉は嬉しいですが、私は主の右腕として生きる覚悟を決めた身です。それに、影でいる方が居心地がいいのですよ。」
そう言って笑うゼノの表情は柔らかかったが、その笑顔の裏にあるものを俺は知っていた。
ミレーヌが初めて俺の前に現れた時、正直、彼女がゼノにどのような影響を与えるのか全く想像がつかなかった。だが、彼女の飾らない性格や、どこかちゃっかりした一面に触れるうちに、もしかするとゼノの堅物な性格に新しい風を吹き込む存在になれるのではないかと思い始めた。
ゼノを見ていると、どこか閉じられた空間に一人で立ち尽くしているように感じることがあった。彼は自分の未来について語ることも考えることもせず、ただ目の前の義務に集中しているだけだった。俺に尽くすことがすべてだと信じ、そのために自分の人生を犠牲にしているように見えた。
だからこそ、俺はゼノにミレーヌのことを考えてほしいと思った。彼女なら、ゼノの無言の闇に光を差し込むことができるかもしれないと期待していた。彼女の軽やかさや機知に富んだ性格が、ゼノの頑なさをほぐしてくれるのではないかと感じたのだ。
ゼノにとってのミレーヌの存在を考えるたび、俺はどこか期待と不安が入り混じる感情を覚えた。ゼノ自身は、そんなことを意識した様子もなく、淡々と自分の役割をこなしているだけだったが、それでも俺は彼の未来をもっと豊かにしたいという思いを強くしていった。
ミレーヌとゼノ。正反対ともいえる二人の存在が交わることで、ゼノの内側にある頑なさが少しでも和らげば、それだけでも意味がある。そんな考えが頭を巡る中で、俺は改めてゼノのこれからの人生について真剣に向き合おうと決意した。彼が抱える影を少しでも取り除き、彼自身が幸せを掴むための手助けをする。それが、俺にできる新たな役割だと感じたのだった。
語り終えた瞬間、隣から静かな寝息が聞こえてきた。視線を向けると、メイが穏やかな表情で眠りに落ちていた。いつの間にか彼女は俺の肩に頭を預け、優しく握り返していたはずの手も力を抜いている。
俺は微笑みながら、そっと彼女の髪に触れた。長い髪は柔らかく、月明かりに照らされて銀色に輝いているようだった。この静かな瞬間が、どれほど俺にとって特別なものかを改めて感じた。
彼女に自分の過去を語ることは、決して簡単なことではなかった。けれど、こうして話を聞いてくれる彼女がいることで、俺の中にある痛みや迷いが少しずつ癒されていくのを感じる。ゼノとの出会い、母上の残虐さ、俺たちの苦難。それらを隠さずに話すことで、少しだけ心が軽くなったような気がした。
「眠ってしまったか…。」
彼女が目を覚まさないように、小声でそう呟く。メイがどんな夢を見ているのかはわからないが、少しでも穏やかなものであることを願った。
俺は彼女の頭にそっとキスを落とし、彼女の温もりを感じながら目を閉じた。この一瞬が、俺にとって何よりも大切な安息だった。
公爵家の庭園は早朝から忙しさに満ちていた。花々が朝露に濡れ、庭師たちが丁寧に手入れをしている。だが、俺たちの関心はそんな優雅な光景ではなかった。
「主、この計画書に目を通していただけますか。」
ゼノが朝一番に運んできたのは、貴族間の新しい取引に関する計画書だった。内容を一読すると、目を見張るほど緻密に練られた策略が記されている。
「なるほど、これなら貴族たちの間で影響力を拡大できるな。だが、この条文では相手に付け込まれる隙がある。ここをこう修正しろ。」
俺はゼノに指示を出しながら、自分の机に積まれた別の書類にも目を通した。
ゼノはすぐさま指示を理解し、計画書を手直しするために走る。彼の迅速で正確な動きに、俺は改めて信頼を深めた。
その日の午後、俺たちは公爵家の戦略会議に出席した。会議室の中は重厚な空気が漂い、議題を巡る緊張感が漂っている。俺とゼノが入室すると、参加者たちは一瞬だけ視線を向けてきた。まだ若い俺たちに対する懐疑的な目線は、日常茶飯事だった。
「では、次にレッドナイト家が新たに打ち出す貿易政策について、ユリドレ様、説明をお願いできますか?」
司会役の老執事が促す。
俺は席を立ち、冷静に口を開いた。
「現在の政策では、利益の多くが他家に流れている。この状況を改善するため、我々は輸送コストを削減し、レッドナイト家直轄の貿易ルートを開拓する必要があります。」
俺の言葉に一部の参加者がざわついたが、ゼノが静かに手を挙げ、追加の説明を行った。彼の理路整然とした説明と明確なデータに基づく主張に、会議室の空気は次第に和らいでいく。
「この案ならば、短期的にも長期的にも利益が見込めます。そして他家からの干渉を防ぐため、秘密裏に準備を進める必要があります。」
ゼノが話を締めくくると、議員たちは頷き合い、俺たちの案を採用することで合意した。
会議が終わると、ゼノと俺はその足で情報ギルドの隠れ家へ向かった。ギルドは、俺たちの計画を遂行するための情報収集と工作活動を行う重要な拠点だ。
「ユリドレ様、こちらが最新の報告書です。」
ギルドのリーダーが手渡してきた書類には、周辺諸国の貴族たちの動向が細かく記されていた。
「なるほど…。こいつらが俺たちの邪魔をする可能性が高いな。」
俺は報告書を読みながら、ゼノに視線を送る。
「対策は既に考えています。こちらのスパイを動かし、彼らの企みを牽制する手筈です。」
ゼノが淡々と説明する様子に、俺は内心で感嘆していた。ゼノはただの部下ではない。俺の右腕であり、何よりも信頼できるパートナーだ。
夜遅く、俺たちは変装をして街へと向かった。貴族としての地位を隠し、一般市民の目線で領地の実情を確かめるためだ。
街の賑わいの中で、ゼノは淡々と歩きながら周囲を観察している。俺も負けじと、屋台や店舗の様子を確認して回った。
「ユリドレ様、この通りは商業活動が活発ですが、一部の店主から貴族への不満が漏れています。」
ゼノが小声で耳打ちしてくる。
「なるほど…。明日、彼らの話を聞きに来よう。」
俺は頷き、次の視察場所へと足を向けた。
ゼノとの息の合った行動と、困難を乗り越えるための策略を練る日々が続く。俺たちはまだ未熟かもしれないが、この領地をより良いものにするため、そして公爵家の名声を高めるために、全力を尽くしていた。
夜が更け、城へ戻った俺たちは執務室に籠り、それぞれの仕事に取り掛かっていた。ゼノは書類を整理しながら、必要な情報を即座に俺に伝えてくれる。彼の的確なサポートのおかげで、仕事の効率は驚くほど上がっていた。
「主、こちらの案件ですが、急ぎで判断が必要です。」
ゼノが差し出してきたのは、近隣諸国からの商業協定の提案書だった。
俺は書類を受け取り、一読して内容を確認する。
「この条件なら問題ないが、ここを少し交渉して、我々に有利な形に持っていけ。」
「承知しました。」
ゼノはすぐに赤ペンを取り出し、修正案を書き込んでいく。その動きには無駄がなく、彼の成長ぶりに改めて感心する。
「お前、俺がいない間によくここまでやったな。」
俺が冗談交じりに言うと、ゼノはわずかに笑みを浮かべた。
「主の無茶な命令に慣れただけですよ。」
その軽口に、俺たちは同時に笑った。
それから数年が経ち、俺の地位は誰もが認めるものとなった。公爵家の権威を揺るぎないものにするために、ゼノと共に駆け抜けた年月だった。ゼノはその間、俺の右腕として、時に影武者として、すべてを捧げてくれた。
「これで最後だ。今日の決裁分を片付けたら休め。」
俺がそう言うと、ゼノは淡々とした表情のまま頷いた。しかし、その目にはわずかな疲労が滲んでいた。
ゼノの給料は今や公爵家内で最も高い。あいつの努力と忠誠に報いるためには、それが当然だった。だが、金だけでは彼が背負ってきた苦労や犠牲には到底見合わない。それを痛感するたび、俺は苛立ちともどかしさを覚えた。
「ゼノ、お前が俺の影であり続ける必要はない。」
俺がそう言うと、ゼノは一瞬だけ動きを止め、俺をじっと見つめた。
「その言葉は嬉しいですが、私は主の右腕として生きる覚悟を決めた身です。それに、影でいる方が居心地がいいのですよ。」
そう言って笑うゼノの表情は柔らかかったが、その笑顔の裏にあるものを俺は知っていた。
ミレーヌが初めて俺の前に現れた時、正直、彼女がゼノにどのような影響を与えるのか全く想像がつかなかった。だが、彼女の飾らない性格や、どこかちゃっかりした一面に触れるうちに、もしかするとゼノの堅物な性格に新しい風を吹き込む存在になれるのではないかと思い始めた。
ゼノを見ていると、どこか閉じられた空間に一人で立ち尽くしているように感じることがあった。彼は自分の未来について語ることも考えることもせず、ただ目の前の義務に集中しているだけだった。俺に尽くすことがすべてだと信じ、そのために自分の人生を犠牲にしているように見えた。
だからこそ、俺はゼノにミレーヌのことを考えてほしいと思った。彼女なら、ゼノの無言の闇に光を差し込むことができるかもしれないと期待していた。彼女の軽やかさや機知に富んだ性格が、ゼノの頑なさをほぐしてくれるのではないかと感じたのだ。
ゼノにとってのミレーヌの存在を考えるたび、俺はどこか期待と不安が入り混じる感情を覚えた。ゼノ自身は、そんなことを意識した様子もなく、淡々と自分の役割をこなしているだけだったが、それでも俺は彼の未来をもっと豊かにしたいという思いを強くしていった。
ミレーヌとゼノ。正反対ともいえる二人の存在が交わることで、ゼノの内側にある頑なさが少しでも和らげば、それだけでも意味がある。そんな考えが頭を巡る中で、俺は改めてゼノのこれからの人生について真剣に向き合おうと決意した。彼が抱える影を少しでも取り除き、彼自身が幸せを掴むための手助けをする。それが、俺にできる新たな役割だと感じたのだった。
語り終えた瞬間、隣から静かな寝息が聞こえてきた。視線を向けると、メイが穏やかな表情で眠りに落ちていた。いつの間にか彼女は俺の肩に頭を預け、優しく握り返していたはずの手も力を抜いている。
俺は微笑みながら、そっと彼女の髪に触れた。長い髪は柔らかく、月明かりに照らされて銀色に輝いているようだった。この静かな瞬間が、どれほど俺にとって特別なものかを改めて感じた。
彼女に自分の過去を語ることは、決して簡単なことではなかった。けれど、こうして話を聞いてくれる彼女がいることで、俺の中にある痛みや迷いが少しずつ癒されていくのを感じる。ゼノとの出会い、母上の残虐さ、俺たちの苦難。それらを隠さずに話すことで、少しだけ心が軽くなったような気がした。
「眠ってしまったか…。」
彼女が目を覚まさないように、小声でそう呟く。メイがどんな夢を見ているのかはわからないが、少しでも穏やかなものであることを願った。
俺は彼女の頭にそっとキスを落とし、彼女の温もりを感じながら目を閉じた。この一瞬が、俺にとって何よりも大切な安息だった。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
お兄様はやさしく笑って、逃げ道だけをなくしていく
星乃和花
恋愛
縁談に悩む子爵令嬢リゼットが助けを求めたのは、名門侯爵家の長男アルフレッド。
穏やかでやさしく、理想のお兄様のような彼は、「君のことは僕が見ている」と甘く手を差し伸べてくれる。
送り迎え、花や手紙、完璧なエスコート。
守られているだけのはずが、気づけば周囲には「彼女はもうノースウェル侯爵家のもの」という空気ができあがっていて――。
ふわふわ優しいのに、実はかなり策略家。
やさしく逃げ道をなくしてくるお兄様系ヒーローに、恋愛に疎い令嬢がじわじわ囲い落とされていく、甘くて幸せな溺愛ラブストーリー。
――「待つよ」と言いながら、外堀はきっちり埋めてくる――
(完結済ー本編10話+後日談2話)
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。