死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

69.引っ越し準備

「どうしました?メイ。」

私は頭を抱えて叫んだ。
「ユリに不愛想な演技させるの忘れてた!」

ユリは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに苦笑を浮かべた。
「あっ、確かに今回は忘れてましたね。」

「どうしよう!絶対また変な噂が広まるわ!ユリが私にデレデレしすぎだとか、私がユリを手玉に取ってるとか!」
パニックになる私を見て、ユリは肩をすくめながら穏やかな声で言った。

「まぁ、今回は人も多かったですし、転落事故からの復帰という背景もありますから、大丈夫でしょう。むしろ、少し親密な様子を見せた方が話題性もあるかもしれません。」

「それ、絶対プラスにはならないやつじゃない!」
私はぷるぷると肩を震わせながら抗議したが、ユリはどこ吹く風といった様子で微笑みを浮かべていた。

「メイ、そんなに心配しないでください。次回からはしっかり不愛想な演技をしますから。」
ユリは私の肩に手を置き、やんわりとなだめる。

「次回とか言ってる場合じゃないのよ!今回も大事だったのに…!」
「それなら次回、もっと大々的に不愛想に振る舞えばいいだけです。」
ユリは少しも動じずに淡々と言い切った。

その冷静さに逆に力が抜けてしまい、私は思わず笑ってしまった。
「もう、ユリって本当にマイペースなんだから。」

「そうですか?俺はいつもメイを最優先で考えていますよ。」
そう言って、彼は私の手を取り軽く握りしめた。

「まぁいいわ。次回こそはちゃんと不愛想に演技してもらうからね!」
私は拳を握りしめながら宣言した。

「もちろんです。次回の俺の不愛想さをお楽しみに。」
ユリがいたずらっぽく笑うのを見て、私もつられて笑ってしまう。

「とりあえず、今日はもう忘れましょう。」
「そうね。ユリの言う通り、切り替えないと。」

馬車に乗り込み、窓から外の景色を見ながら、私はユリの隣でそっと微笑んだ。


―――――――――
―――――――

ゴールドキング公爵領での二泊三日の旅行が終わり、私とユリは無事にレッドナイト公爵領へと戻ってきた。豪華で賑やかなパーティーから一転して、見慣れた屋敷の落ち着いた空気に包まれると、ほっと胸をなでおろす思いがした。けれども、そんな安堵も束の間、私たちはすぐに現実に引き戻された。

王都からの招待状や連絡が次々と届いており、これからの社交場への参加が避けられない状況にあった。特に、ルーの未来を考えた時、私たちの家系の立場を強化するためには、王都の社交界での地位を確立することが急務だった。そのため、拠点をしばらく王都に移さなければならないという結論に至ったのだ。

ユリは王都での生活に必要な手続きをすぐに始め、使用人たちに指示を出していった。一方で、私は移住に必要なものをリストアップしながら、荷物の整理に追われた。王都に移るとなると、私やユリだけでなく、ルーの生活環境や教育の準備も必要になる。彼の遊び道具や衣類、本や学習道具、さらには王都での生活に備えた医療用品まで、細々としたものが山のようにあった。

ミレーヌが手にリストを持ち、きびきびとした動きで確認しながら尋ねてきた。
「メアルーシュ様のおもちゃと服は全部持っていきますか?」

その問いに、私は少し考えた後で答えた。
「いや、一部だけでいいわ。王都での生活が安定するまでは、必要最低限のものだけで十分よ。」

メアルーシュはまだ小さいから、王都でも新しい環境にすぐ順応してくれるだろう。私はリストに目を落としながら、必要な項目に一つずつチェックを入れていった。

ゼノはその横で、運搬の手配を淡々と進めていた。荷物の量を見て、彼は効率的にいくつかの馬車を手配し、それぞれの荷物を適切に分けるプランを立てているようだった。その計画性と手際の良さに、私は改めて感心した。

一方で、ユリは書斎で招待状と向き合いながら、机に積み上がった書類の山に取り組んでいた。私が様子を見に行くと、彼の眉間には深いシワが寄っていた。

「メイ、そちらは順調ですか?」
ユリは手を止めて私に目を向けた。

「えぇ。ミレーヌもゼノも手際がよくて助かるわ。でも、ユリ、何をそんなに悩んでるの?」
私が問いかけると、ユリは手元の招待状を見せながらため息をついた。

「全て断ってしまいたいと思うほど、悪意のある招待状ばかりです。」

彼が持つ招待状の封筒には、微妙に嫌味なデザインや書き方が施されている。それを見て私も少し苛立ちを覚えたが、苦笑しながら答えた。
「…って、私宛のじゃない!勝手に返事書かないでよ。」

ユリは一瞬困ったような表情を浮かべた後、真剣な顔で言った。
「妻を守るのは夫の務めです。」

その言葉に、私は彼の不器用な優しさを感じて心が温かくなったけれど、同時に少し笑いが込み上げた。
「出れるものは出ておかないと、私が若いからって、どんどん舐められていくわ。出ましょう。」

ユリは眉をひそめたが、私をじっと見つめてから言った。
「しかし…。」

「側にいてくれるんでしょ?」
私がそう問いかけると、彼は一瞬だけ驚いたような表情をしたが、すぐに口元を緩めて力強く頷いた。
「もちろんです!!」

「なら、恐いものなしじゃない。ね?」
私の笑顔に、ユリは少し気まずそうに視線を逸らしながらも「はい…。」と答えた。その姿が何だか愛おしくて、私は彼の隣に腰を下ろした。

「ほら、書類の処理手伝うから、機嫌治して。」
そう言いながら、私は彼の手元から一部の書類を取り、整理を手伝い始めた。

彼と並んで作業を進めるうちに、少しずつ彼の顔が穏やかになっていくのを感じた。ユリの優しさと責任感は、いつだって私を支えてくれる。その一方で、彼が重荷を背負いすぎないよう、私も少しでも力になりたいと思ったのだった。

「そういえば、シリルお兄様はどうするのかしら?」
荷物の整理をしながら、ふと私は尋ねた。

ユリは一瞬手を止め、穏やかに微笑みながら答えた。
「ん?兄君はここに残るはずですよ。俺の妹の面倒を見て下さるそうです。それが兄君にとっての最善であり、癒しになると思います。」

その答えに私は少し首を傾げた。
「…よくわからないけど、そうよね。子供って大変だけど、癒されるわよね。」
メアルーシュの無邪気な笑顔や小さな仕草を思い浮かべながら、自然と微笑んでしまった。

ユリの表情にも柔らかな笑みが浮かんでいた。しかし、その微笑みにはどこか奥深い意味が隠されているように感じた。何か企んでいるような気配を察しつつも、私はあえて追及しなかった。

「ユリがシリルお兄様のこともちゃんと考えてくれているのはわかるわ。だから信じてみようと思うの。」
私がそう告げると、ユリは静かに頷いた。

こうして、私たちは準備を整え、新たな生活の拠点となる王都へと旅立つ準備を進めた。
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