死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

72.華やかな会場での波乱

エメロッサ子爵夫人は、社交界の華とも評される美しい女性だった。その端整な顔立ちと優雅な振る舞いは見る者を圧倒するが、その一方で、誰よりも目立とうとする気持ちが強い女性でもあった。そして今日は、私が目立たないよう一計を案じていたことは明白だった。

ユリのおかげで、その計略を見抜くことができた私は、事前に正しいドレスコードを知り、華やかなピンクのドレスでお茶会に参加する準備を整えていた。

お茶会の会場は、花々が咲き誇る美しい庭園だった。ピンクのドレスを纏った貴婦人たちが優雅に歩き回り、テーブルには色とりどりのティーセットとデザートが並んでいる。その中に私も自然に溶け込むように振る舞い、挨拶を交わしていた。

透明化の能力を使ったユリは、少し離れた位置で常に私の動向を見守っていた。彼の安心感が私に自信を与えてくれる。

エメロッサ子爵夫人が私に気づいた瞬間、その顔に驚きが一瞬浮かぶ。だが、彼女はすぐに表情を整え、優雅な笑みを浮かべながら近づいてきた。

「まあ、レッドナイト公爵夫人。ごきげんよう。」
彼女はまるで絵画のように完璧なお辞儀をしてみせた。

「ごきげんよう、エメロッサ子爵夫人。本日はお招きいただきありがとうございます。」
私は笑顔で応じたが、その胸中は冷静だった。彼女の次の言葉を予想しながら、心の中で身構える。

夫人はその美しい瞳を少しだけ細め、微笑みながらわざとらしく問いかけてきた。

「まあ、レッドナイト公爵夫人。素晴らしいピンクのドレスですね。ですが…どうしても気になってしまって。招待状に書かれていたドレスコードを、うっかり間違えてしまったのではなくて?」

その声には柔らかな調子を保ちながらも、明らかに棘が混じっている。周囲にいた貴婦人たちの視線が一斉にこちらに集まり、一瞬の静寂が広がった。私は内心で夫人の意図を察しつつ、冷静に微笑みを浮かべて返答した。

「実は、昨夜夫が招待状を再確認してくれたんです。念のため確認したところ、ドレスコードがピンクであることが分かりまして。おかげでこうして皆様と同じように参加できましたの。本当に幸運でした。」

その言葉に、エメロッサ子爵夫人の表情が微かに引きつる。その目に一瞬だけ動揺が浮かんだが、すぐに優雅な笑みを取り繕った。

「あら、それは良かったですわ。実は少し心配していたんですの。レッドナイト公爵夫人だけ、なぜかブルーと記載された招待状をお送りしてしまったのではないかと。ほら、私たちの小さなミスが原因で、貴方が目立ってしまうようなことがあったら、申し訳ないですものね。」

その声のトーンは、柔らかくもどこか皮肉めいており、意図的な挑発が感じられた。周囲にいた貴婦人たちもその言葉を聞きながら、小声で囁き合っている。

私はその意図を冷静に受け止め、微笑みを崩さずに答えた。

「お気遣いありがとうございます。ですが、おかげで夫が細やかに確認してくれましたので、何も問題ありませんでしたわ。むしろ、こうして皆様と同じ装いで楽しめることを、とても嬉しく思っています。」

私の返答に、エメロッサ子爵夫人は一瞬だけ視線を外した。周囲の空気が少し変わり、緊張感の中に微かなざわめきが漂う。だが私は、余裕の微笑みを絶やさず、その場の雰囲気を乗り越えていった。

会場の至る所で繰り広げられる会話の中にも、見えない火花が散っているのを感じた。どの貴婦人も優雅な顔の裏に計算を隠している。私もその流れに溶け込みつつ、視線を緩めることなく周囲を観察していた。

エメロッサ子爵夫人が準備したティータイムは確かに見事だった。美しく盛り付けられたケーキや、香り高い紅茶が並ぶテーブルは一見和やかな場を演出している。だが、その場の雰囲気にはどこか冷たい緊張感が漂っていた。

「夫人、あちらのテーブルでは新作のハーブティーが振る舞われておりますのよ。」
一人の貴婦人がそう声をかけてくる。だが、その視線が向けられる先には、どこか罠の香りが漂う気がした。

「ありがとう、後ほど伺わせていただきますわ。」
私は丁寧に礼を述べながらも、ユリの気配を感じて内心安堵した。

このお茶会、ただ華やかに見えるだけではない。策謀が渦巻くこの場で、私は果たしてどう振る舞うべきなのか――そんな思いが胸をよぎった。

お茶会が進むにつれて、シルバークイーン家のご令嬢が私に近づいてきた。彼女はきらびやかなドレスを纏い、笑顔で話しかけてきた。

「レッドナイト公爵夫人、あなたのドレスは本当に美しいわね。どちらのデザイナーかしら?」

その声には好奇心と羨望が混じっているように感じた。私は柔らかな笑みを浮かべて答えた。

「王族御用達のデザイナーにオーダーメイドしていただきましたの。」

「まあ、それは素晴らしいですわ!」

その場にいた他のご令嬢たちもその話に興味を持ったようで、私のドレスに視線を注いだ。細やかな刺繍と光を受けてきらめく宝石装飾が注目を集めたのだろう。

その様子を見ていたエメロッサ子爵夫人は、少し険しい目つきでこちらを睨みつけていた。やがて、まるで会話の流れを断ち切るように、夫人が割り込んできた。

「レッドナイト公爵夫人、お噂はかねがね伺っておりますわ。確か、あなたは18歳で結婚され、さらに子供もお産みになられたのですよね?」

その言葉にはほんのりとした軽蔑と皮肉が込められているのを感じたが、私は動揺を見せず、微笑みながら答えた。

「はい、そうです。若くして家族を持つことができ、とても幸せに思っています。」

その瞬間、隣に座っていた別の貴婦人が口を挟んできた。彼女は少し興味深げな様子で、目を輝かせながら尋ねてきた。

「でも、どうしてそんなに早く結婚なさったのですか?何か特別な理由でもあったのでしょう?」

その問いには、私がまだ若いことへの疑念や意図的な挑発が含まれているように感じた。私は一瞬考えるふりをしてから、穏やかに返答した。

「そうですね。家族の事情もありましたし、それに何より、夫であるユリドレと一緒にいることが私にとっての幸せだからです。」

私が言い終えると、再びエメロッサ子爵夫人が口を開いた。今度はさらに嫌味を含んだ声色で。

「まあ、確かにレッドナイト公爵様は魅力的な方ですものね。ところで、夫を魅了するために何か特別な手を使われたのではなくて?」

周囲の貴婦人たちが微かに含み笑いを漏らしながら、私の反応を待っているのがわかった。その場の空気が少し張り詰める中、私はゆっくりと顔を上げ、彼女の目をしっかりと見据えた。

「互いに理解し合い、自然と惹かれ合いましたの。特別な手を使ったわけではありません。ただ、これが真実の愛というものです。」

私の声は穏やかで、しかし力強かった。その言葉に一瞬だけ沈黙が広がり、周囲の視線が私に集まる。エメロッサ子爵夫人は言葉を失ったように口を閉じ、微笑みながらもそれ以上何も言えなかった。

その場に漂う緊張が徐々に解けると、私は再びにこやかに微笑み、用意されていたティーカップを手に取った。花の香りが漂う紅茶を一口飲み、私は再び会話に溶け込むように場を和らげた。
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