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シーズン1
82.記憶の異変
時間を少し遡り…
竜巻がようやく収まり、船上に静けさが戻ってきた。僕は小さな体で辺りを見渡す。空はまだ曇りがちで、波は穏やかになりつつも時折激しくぶつかり合っている。子供たちや大人たちが怯えた顔をして船内の壁際に集まり、震えながら様子を伺っていた。
その中で一際目に留まったのは、父さんが意識を失い、甲板に倒れている姿だった。
(父さん…!)
僕は急いで彼の元へ駆け寄り、その顔を見つめる。冷たい水に濡れた父さんの顔は血の気が引いていて、一瞬恐怖が胸を締め付ける。だが、僕はすぐに頭を切り替えた。ここで怯えている場合じゃない。
「父さん、水を飲んだんだな…」
僕は小さな手で彼の顔を横に向け、短い腕を使って彼の胸を押した。お腹の中の水を吐き出させるよう、必死に手を動かす。
すると、父さんの口からゴホッという音と共に水が溢れ出し、その後呼吸が徐々に安定していった。その瞬間、胸の中の重い石が一つ取れたような気がした。
(よかった…。間に合った。)
「旦那様!」
ミレーヌがよろよろとした足取りで僕の側にやってきた。彼女の顔には疲労と安堵が入り混じっていて、でもその目は父さんの無事を確認しようと必死だった。
「父さんはとりあえず大丈夫だ。呼吸も安定している。」
僕は立ち上がり、濡れた服が体に張り付くのを気にしながらミレーヌに言った。
「メアルーシュ様…大丈夫ですか?怪我は…?」
彼女の声は心配で震えていた。
僕は彼女をしっかりと見つめると、もう一度父さんを確認してから静かに言った。
「僕のことより、ミレーヌは怪我をしてないか?」
その言葉を聞いた瞬間、ミレーヌの顔に混乱が走った。
「え…メアルーシュ様ですよね…?」
僕はその反応に小さくため息をつきながら頷いた。
「そうだ。僕だ。けど今、事情があって少しややこしいことになっている。」
僕はその場に腰を下ろし、軽く頭を振った。
「全く…こんな誕生日を迎えるなんて最悪だ。」
自嘲気味にそう呟いた僕を見て、ミレーヌは目を見開き、何かを理解したような表情を浮かべた。
「メアルーシュ様…一体どうして…?」
彼女の問いは至極当然だが、今はそれに答える時間も余裕もない。
「説明は後だよ、ミレーヌ。今はこの状況をどうにかしないと。」
そう言って僕は周囲に目を向けた。荒れていた波は徐々に収まり、船もなんとか浮かんでいる状態だったが、修理が必要な箇所は多いだろう。
(まずは…他の子供たちが安全かを確認しなきゃ。)
自分の中にある大人の記憶をフル稼働させながら、僕は次にすべきことを考えていた。ミレーヌもその異様な冷静さを感じ取ったのか、少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。
「とにかく、ここから安全な場所に移動しよう。父さんを運ぶのを手伝ってくれるか?」
僕は決意を込めた声でミレーヌに指示を出した。彼女は驚きと困惑の表情を浮かべていたが、それでも迷うことなく頷き、父さんを支えるために膝をついて彼の体を持ち上げようとした。
「メアルーシュ様、本当に大丈夫なんですか?その…こんな状況で飛ぶなんて…」
ミレーヌの声は震えていた。僕が3歳の体でありながら、冷静に指示を出し、さらに魔法を使おうとしている状況が信じられないのだろう。それでも、彼女の手は父さんを支える力を緩めることはなかった。
「ミレーヌ、僕のことを信じてくれ。今はこの状況を乗り越えることが最優先だ。」
僕の言葉に、彼女は一瞬目を伏せた後、深呼吸をして力強く頷いた。
「わかりました、坊ちゃま。全力でお手伝いします。」
その返事に、僕は安心しながらもすぐに次の行動へ移った。僕たちの時間は限られている。
「ありがとう、ミレーヌ。父さんをしっかり支えてくれ。僕の魔法で一旦王都の屋敷に飛ぶ。」
僕は短く説明すると、周囲に気配を感じて名前を呼び始めた。
「あぁ、そうだ。ベティ、ソロコッチ、それから…えっと…トリント、ミ…ミ…」
「ミシェルでございます、坊ちゃま。」
サッと僕の前に姿を現した女性が、控えめに名前を訂正してくれた。その静かで整った声に、僕は少し頬を赤らめた。
「すまん、ミシェル。君たちは船の中にいる母上を探して、父さんと僕の荷物も回収してくれ。それから全員を王都の屋敷へ運ぶんだ。僕は先にミレーヌと父さんを連れて行く。」
「はっ!」
彼らの声が揃い、僕の命令を承諾する。その瞬間、彼らは再び透明化し、気配だけを残して消えた。
ミレーヌはその一連の出来事を呆然と見つめていたが、すぐに顔を引き締め、父さんの肩を抱き直した。
「坊ちゃま、本当に飛べるんですか…?」
「信じてくれ。今は急がないと、父さんの体力が持たない。」
僕は深呼吸をして魔力を集中させ、空間を歪める準備を始めた。
「ミレーヌ、しっかり父さんの体を掴んでて。少し揺れるかもしれないけど、大丈夫だから。」
僕の声に彼女が不安げに頷いたのを確認し、魔法を発動させた。
周囲の空気が震え、風が渦を巻き始める。僕の小さな体から青白い光が溢れ出し、足元に魔法陣が浮かび上がった。その光が僕たちを包み込み、次の瞬間、目の前の景色が歪む。
感覚が一瞬途切れ、次に目にしたのは王都の屋敷だった。
薄明りの下で煌びやかな門と手入れの行き届いた庭園が広がっている。
「わぁ…これはもう瞬間移動でございますね。」
ミレーヌが驚きと感動が混ざった表情で呟いた。その声を聞いて、僕は少しだけ自信を持つことができた。
「さあ、父さんを屋敷の中に運び込もう。安全な場所で休ませて、治療を始める必要がある。」
僕はそのまま前を進み、屋敷の扉を開けた。
使用人たちがすぐに駆け寄り、父さんを支えながら治療室へと運んでいく。彼らの迅速な対応に感謝しつつ、僕はその場に立ち尽くし、ようやく一息ついた。
「メアルーシュ様、大変な状況でしたが、無事に戻ってこれて本当に良かったです。」
ミレーヌが安堵の表情を浮かべて言った。その声を聞きながら、僕は心の中で強く誓った。
(次は母さんだな…。)
しばらくすると、父さんが目を覚ましたという報告が届いた。心の奥底に広がっていた不安が一瞬で高まり、僕はミレーヌと一緒に急いで父さんの部屋に向かった。
部屋に入ると、父さんはベッドの上で頭を抱え、困惑した表情を浮かべていた。その姿は普段の冷静で威厳ある父さんとはまるで別人だった。
「父さん、大丈夫?」
僕は静かに声をかけ、ベッドのそばに駆け寄った。だが、父さんの反応は予想外だった。
「父さん?誰のことを言っている?」
その言葉に胸がぎゅっと締め付けられるような痛みを感じた。父さんの目には僕を見ているはずなのに、どこか焦点が定まっていないように見えた。
「旦那様、大丈夫でしょうか?」
ミレーヌも不安そうに父さんを見つめながら声をかけた。だが、それを聞いた父さんはさらに困惑し、眉間に深い皺を寄せた。
「お前たちは誰なんだ…。」
その言葉に、心の中で大きな衝撃が走る。僕は小さな拳を握りしめて、必死に落ち着こうとした。
「父さん、僕だよ。メアルーシュだ。」
僕はできるだけ落ち着いた声で言った。だが、父さんの表情は依然として険しく、まるで言葉の意味を理解できないかのようだった。
「メアルーシュ…聞いたことがあるような、ないような…」
父さんの口調は曖昧で、記憶の中を必死に探ろうとしているようだった。
僕はもう一度説明しようと口を開いたが、父さんの目は遠くを見つめたままで、こちらに意識が向いていないようだった。
「若旦那様、落ち着いてください。」
ミレーヌが一歩前に進み、柔らかい声で話しかける。「ここは王都のレッドナイト公爵邸です。私はミレーヌ、こちらは坊ちゃまのメアルーシュ様です。」
「レッドナイト公爵邸…ミレーヌ…メアルーシュ…」
父さんは繰り返すようにその名前を口にしたが、言葉には全く実感がこもっていなかった。彼の困惑した目を見ていると、胸の奥が痛くてたまらなかった。
僕は小さな手を父さんの手に重ねて、そっと握りしめた。
「父さん、落ち着いて。ここにいるのは家族だよ。何があったか覚えてる?」
父さんは一瞬だけ僕の顔を見つめたが、すぐに目を閉じて深く息を吐いた。
「頭が痛い…何も思い出せない…」
その言葉に、僕はどうすることもできない無力感に襲われた。強い父さんがこんなふうになるなんて…。でも、今は弱音を吐いている場合じゃない。僕がしっかりしなければならない。
父さんが微かに頷いてベッドに横たわるのを見て、僕はミレーヌに向き直った。
「ミレーヌ、父さんの様子があまりにもおかしい。記憶喪失かもしれない。」
「そうですね、メアルーシュ様。お医者様を呼んで詳しく診てもらったほうが良いでしょう。」
ミレーヌの表情も深刻さを増していた。
竜巻がようやく収まり、船上に静けさが戻ってきた。僕は小さな体で辺りを見渡す。空はまだ曇りがちで、波は穏やかになりつつも時折激しくぶつかり合っている。子供たちや大人たちが怯えた顔をして船内の壁際に集まり、震えながら様子を伺っていた。
その中で一際目に留まったのは、父さんが意識を失い、甲板に倒れている姿だった。
(父さん…!)
僕は急いで彼の元へ駆け寄り、その顔を見つめる。冷たい水に濡れた父さんの顔は血の気が引いていて、一瞬恐怖が胸を締め付ける。だが、僕はすぐに頭を切り替えた。ここで怯えている場合じゃない。
「父さん、水を飲んだんだな…」
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すると、父さんの口からゴホッという音と共に水が溢れ出し、その後呼吸が徐々に安定していった。その瞬間、胸の中の重い石が一つ取れたような気がした。
(よかった…。間に合った。)
「旦那様!」
ミレーヌがよろよろとした足取りで僕の側にやってきた。彼女の顔には疲労と安堵が入り混じっていて、でもその目は父さんの無事を確認しようと必死だった。
「父さんはとりあえず大丈夫だ。呼吸も安定している。」
僕は立ち上がり、濡れた服が体に張り付くのを気にしながらミレーヌに言った。
「メアルーシュ様…大丈夫ですか?怪我は…?」
彼女の声は心配で震えていた。
僕は彼女をしっかりと見つめると、もう一度父さんを確認してから静かに言った。
「僕のことより、ミレーヌは怪我をしてないか?」
その言葉を聞いた瞬間、ミレーヌの顔に混乱が走った。
「え…メアルーシュ様ですよね…?」
僕はその反応に小さくため息をつきながら頷いた。
「そうだ。僕だ。けど今、事情があって少しややこしいことになっている。」
僕はその場に腰を下ろし、軽く頭を振った。
「全く…こんな誕生日を迎えるなんて最悪だ。」
自嘲気味にそう呟いた僕を見て、ミレーヌは目を見開き、何かを理解したような表情を浮かべた。
「メアルーシュ様…一体どうして…?」
彼女の問いは至極当然だが、今はそれに答える時間も余裕もない。
「説明は後だよ、ミレーヌ。今はこの状況をどうにかしないと。」
そう言って僕は周囲に目を向けた。荒れていた波は徐々に収まり、船もなんとか浮かんでいる状態だったが、修理が必要な箇所は多いだろう。
(まずは…他の子供たちが安全かを確認しなきゃ。)
自分の中にある大人の記憶をフル稼働させながら、僕は次にすべきことを考えていた。ミレーヌもその異様な冷静さを感じ取ったのか、少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。
「とにかく、ここから安全な場所に移動しよう。父さんを運ぶのを手伝ってくれるか?」
僕は決意を込めた声でミレーヌに指示を出した。彼女は驚きと困惑の表情を浮かべていたが、それでも迷うことなく頷き、父さんを支えるために膝をついて彼の体を持ち上げようとした。
「メアルーシュ様、本当に大丈夫なんですか?その…こんな状況で飛ぶなんて…」
ミレーヌの声は震えていた。僕が3歳の体でありながら、冷静に指示を出し、さらに魔法を使おうとしている状況が信じられないのだろう。それでも、彼女の手は父さんを支える力を緩めることはなかった。
「ミレーヌ、僕のことを信じてくれ。今はこの状況を乗り越えることが最優先だ。」
僕の言葉に、彼女は一瞬目を伏せた後、深呼吸をして力強く頷いた。
「わかりました、坊ちゃま。全力でお手伝いします。」
その返事に、僕は安心しながらもすぐに次の行動へ移った。僕たちの時間は限られている。
「ありがとう、ミレーヌ。父さんをしっかり支えてくれ。僕の魔法で一旦王都の屋敷に飛ぶ。」
僕は短く説明すると、周囲に気配を感じて名前を呼び始めた。
「あぁ、そうだ。ベティ、ソロコッチ、それから…えっと…トリント、ミ…ミ…」
「ミシェルでございます、坊ちゃま。」
サッと僕の前に姿を現した女性が、控えめに名前を訂正してくれた。その静かで整った声に、僕は少し頬を赤らめた。
「すまん、ミシェル。君たちは船の中にいる母上を探して、父さんと僕の荷物も回収してくれ。それから全員を王都の屋敷へ運ぶんだ。僕は先にミレーヌと父さんを連れて行く。」
「はっ!」
彼らの声が揃い、僕の命令を承諾する。その瞬間、彼らは再び透明化し、気配だけを残して消えた。
ミレーヌはその一連の出来事を呆然と見つめていたが、すぐに顔を引き締め、父さんの肩を抱き直した。
「坊ちゃま、本当に飛べるんですか…?」
「信じてくれ。今は急がないと、父さんの体力が持たない。」
僕は深呼吸をして魔力を集中させ、空間を歪める準備を始めた。
「ミレーヌ、しっかり父さんの体を掴んでて。少し揺れるかもしれないけど、大丈夫だから。」
僕の声に彼女が不安げに頷いたのを確認し、魔法を発動させた。
周囲の空気が震え、風が渦を巻き始める。僕の小さな体から青白い光が溢れ出し、足元に魔法陣が浮かび上がった。その光が僕たちを包み込み、次の瞬間、目の前の景色が歪む。
感覚が一瞬途切れ、次に目にしたのは王都の屋敷だった。
薄明りの下で煌びやかな門と手入れの行き届いた庭園が広がっている。
「わぁ…これはもう瞬間移動でございますね。」
ミレーヌが驚きと感動が混ざった表情で呟いた。その声を聞いて、僕は少しだけ自信を持つことができた。
「さあ、父さんを屋敷の中に運び込もう。安全な場所で休ませて、治療を始める必要がある。」
僕はそのまま前を進み、屋敷の扉を開けた。
使用人たちがすぐに駆け寄り、父さんを支えながら治療室へと運んでいく。彼らの迅速な対応に感謝しつつ、僕はその場に立ち尽くし、ようやく一息ついた。
「メアルーシュ様、大変な状況でしたが、無事に戻ってこれて本当に良かったです。」
ミレーヌが安堵の表情を浮かべて言った。その声を聞きながら、僕は心の中で強く誓った。
(次は母さんだな…。)
しばらくすると、父さんが目を覚ましたという報告が届いた。心の奥底に広がっていた不安が一瞬で高まり、僕はミレーヌと一緒に急いで父さんの部屋に向かった。
部屋に入ると、父さんはベッドの上で頭を抱え、困惑した表情を浮かべていた。その姿は普段の冷静で威厳ある父さんとはまるで別人だった。
「父さん、大丈夫?」
僕は静かに声をかけ、ベッドのそばに駆け寄った。だが、父さんの反応は予想外だった。
「父さん?誰のことを言っている?」
その言葉に胸がぎゅっと締め付けられるような痛みを感じた。父さんの目には僕を見ているはずなのに、どこか焦点が定まっていないように見えた。
「旦那様、大丈夫でしょうか?」
ミレーヌも不安そうに父さんを見つめながら声をかけた。だが、それを聞いた父さんはさらに困惑し、眉間に深い皺を寄せた。
「お前たちは誰なんだ…。」
その言葉に、心の中で大きな衝撃が走る。僕は小さな拳を握りしめて、必死に落ち着こうとした。
「父さん、僕だよ。メアルーシュだ。」
僕はできるだけ落ち着いた声で言った。だが、父さんの表情は依然として険しく、まるで言葉の意味を理解できないかのようだった。
「メアルーシュ…聞いたことがあるような、ないような…」
父さんの口調は曖昧で、記憶の中を必死に探ろうとしているようだった。
僕はもう一度説明しようと口を開いたが、父さんの目は遠くを見つめたままで、こちらに意識が向いていないようだった。
「若旦那様、落ち着いてください。」
ミレーヌが一歩前に進み、柔らかい声で話しかける。「ここは王都のレッドナイト公爵邸です。私はミレーヌ、こちらは坊ちゃまのメアルーシュ様です。」
「レッドナイト公爵邸…ミレーヌ…メアルーシュ…」
父さんは繰り返すようにその名前を口にしたが、言葉には全く実感がこもっていなかった。彼の困惑した目を見ていると、胸の奥が痛くてたまらなかった。
僕は小さな手を父さんの手に重ねて、そっと握りしめた。
「父さん、落ち着いて。ここにいるのは家族だよ。何があったか覚えてる?」
父さんは一瞬だけ僕の顔を見つめたが、すぐに目を閉じて深く息を吐いた。
「頭が痛い…何も思い出せない…」
その言葉に、僕はどうすることもできない無力感に襲われた。強い父さんがこんなふうになるなんて…。でも、今は弱音を吐いている場合じゃない。僕がしっかりしなければならない。
父さんが微かに頷いてベッドに横たわるのを見て、僕はミレーヌに向き直った。
「ミレーヌ、父さんの様子があまりにもおかしい。記憶喪失かもしれない。」
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