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シーズン1
87.いつから私を知っているの?
翌朝、朝食を終えた後、ユリは早速私に近寄り、甘えたような目で見つめてきた。
「メイ、少し膝に乗ってもらってもいいですか?」
「え、膝に?」
何を言い出すのかと驚いたが、彼の目は真剣だった。仕方なく「少しだけよ」と言って彼の膝に腰掛けた。
ユリは私を抱きしめ、嬉しそうに微笑んだ。
「メイ、本当に愛おしい…。」
「ちょっと、朝から何なの?」
私は笑って軽く彼をたしなめたが、ユリはますます抱きしめる力を強めた。
「メイ、こうしているだけで俺は満たされます。でも、それだけでは足りません。」
「足りてるから!ほら、もう十分じゃない?」
私は慌てて逃げようとしたが、ユリは離してくれない。はたから見れば完全にイチャイチャしているようにしか見えない状況だった。
「ユリ、いい加減にして。朝からこんなことしてたら何も進まないわよ!」
「メイに触れているだけで、俺は幸せなのです。」
「だから、今は無理しなくていいってば!」
私は彼の顔を覗き込みながら軽く頬を叩いた。ユリは顔を赤らめつつも、まだ少し不満そうだ。
その時、ノックの音と共にゼノが部屋に入ってきた。
「奥様、失礼します。」
ゼノは私を見るなり真剣な表情になり、すぐに話を切り出した。
「奥様、船上パーティーでの件ですが、エメロッサ子爵夫人があなたを船から突き落としたことは見逃せません。」
ゼノの言葉に、ユリがピクリと反応した。
「そうね、ゼノはどう対応するつもりなの?」
ゼノは冷静な口調で続けた。
「まず、彼女の行動は重大な犯罪です。王都の裁判所に正式に訴えるべきです。証人としての証言を確保し、法的手続きを進めます。」
「それが一番良い方法かしら…」
「はい。ただし、彼女の影響力や背後にいる支持者についても警戒が必要です。徹底的に調査し、彼女の力を封じるための準備を進めます。私がその全てを指揮しますので、ご安心ください。」
その冷静な態度に、私は思わず微笑んだ。
「ありがとう、ゼノ。信頼しているわ。」
「私の務めです。奥様と主、そしてルー坊ちゃまの安全が最優先です。」
ゼノの言葉を聞いて少し安心したが、ユリが再び口を開いた。
「ゼノ、その件はお前に任せた。もう下がっていい。」
ゼノは一礼し、静かに部屋を後にした。
ゼノが出て行った後、ユリがぽつりと呟いた。
「メイ、どうして俺にも相談してくれなかったのです?突き落とされたのでしょう?」
「え?だって、記憶喪失になったばかりで、今も自分のこと22歳くらいだと思っているんでしょう?ゼノに任せたほうが確実じゃない?」
ユリは眉をひそめ、少し拗ねたように言った。
「でも、それでは俺はメイのお荷物ということになるのでは?」
「荷物なんかじゃないわよ。」
私は彼の手を取り、優しく握りしめた。
「むしろゼノに任せておけば、こうしてユリと二人でいられるじゃない?」
ユリは顔を赤らめながら、小さく頷いた。
「…まぁ、そう…ですね。」
「ユリ、ほんとに不思議な人ね。いったい、いつから私を好きだったのかしら。」
その言葉に、ユリはさらにぎゅっと私を抱きしめた。彼の体温が伝わり、私は自然と微笑んだ。こんな状況でも彼が隣にいてくれることが、何よりも心強かった。
私はユリの顔をじっと見つめながら、彼の心の奥深くにある優しさと強さを感じ取っていた。彼の行動や言葉の裏には、いつも計り知れないほどの愛情が隠れている。ユリは、真実が人を傷つけるなら、その真実を伏せてまで人々を守ろうとする。そんな彼の生き方は、私にとって尊くて愛おしい。
彼の愛情の形はいつも一途で、純粋だ。そして、それが私を時折苦しくさせることもある。彼が記憶を失った今でも、彼の行動や言葉の一つひとつが、私への深い思いを表しているのだと感じる。
ユリは自分の幸せを犠牲にしてでも、私を守ろうとする。それが彼の生き方であり、彼の愛の形なのだろう。私はそんなユリの愛を受け止めつつも、ふとした瞬間に胸が痛む。彼の想いに応えられているだろうか、私は彼を幸せにできているのだろうかと考えると、自然と息が詰まるような気持ちになる。
記憶を失っている状況下でさえ、ユリは変わらず私を守ろうとし、愛してくれる。その姿は変わらない。だからこそ、私は絶対に考えてはいけない。ユリがいつから私を好きになったのか、その疑問に答えを求めてはいけないのだと思う。
私は心を切り替え、ユリの膝に乗りながらも目の前に広げた便箋に目を落とした。頭の中にある混乱を整理しながら、シルバークイーン侯爵への手紙を書く準備を始める。
深呼吸をしてペンを手に取ると、手紙の内容を考え始めた。どんな言葉で書き出せば良いのだろう?パーティーでの混乱の中、何が起こったのかを正確に伝えるべきだろうか。それとも、エメロッサ子爵夫人の行動について慎重に触れるべきだろうか。
手元のペンが震えないよう、私は何度も深呼吸を繰り返した。ユリとゼノ、ルー、そして私たちの未来を守るためには、この手紙が重要だと分かっている。だからこそ、冷静に、そして慎重に言葉を紡ぐ必要がある。
―――――――
拝啓 シルバークイーン侯爵様
先日の船上パーティーでは大変お世話になりました。
まずは、私が船上でエメロッサ子爵夫人に突き落とされ、修練島へ流された件についてご報告いたします。護衛騎士ゼノと共に自力で王都まで戻りましたが、その間、何の報告もできず、ご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
また、その際に夫ユリドレが魔力の乱れによる記憶喪失になってしまいました。現在、医師の見解では一ヶ月ほどで記憶が戻るとされておりますが、今後のことが不安です。
そちらも大変な状況かと存じますが、侯爵家の皆様のご健康とご安全をお祈り申し上げます。もしも何かお手伝いできることがあれば、どうぞお知らせください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
メイシール・レッドナイト
―――――――
手紙を書き終え、深いため息をついた瞬間、心の中にわずかな空虚感が広がった。ユリが記憶を失っている間、家族を守る責任は私にかかっている。侯爵への報告もその一環だ。封筒に封をし終えたところで、部屋の静けさの中、ユリの膝の上に乗りっぱなしなことに気付いて、振り向き、ユリの顔を覗き込む。その目には何か言葉にしがたい深い憂いが宿っていた。彼の表情は、いつもの無邪気さや堂々とした雰囲気とは違い、どこか切なく、儚げなものだった。
「メイはやはり…苦労なさって生きてきたのですね…。」
突然のその言葉に、私はペンを握りしめたまま、凍りついたように動けなくなった。驚きと戸惑いが一気に胸を満たす。記憶を失っているはずの彼が、どうしてそんなことを言うのだろう?まるで私の過去を全て知っているかのような、優しくも痛みを伴った声だった。
「ユリ…?」私は静かに彼を見つめた。
ユリは困ったように微笑んだが、その目の奥には深い秘密が潜んでいるように見えた。それは、全てを知っている者だけが持つような目だった。
「メイ、俺の記憶は確かに一部失われています。でも、どうしてか分からないけれど、あなたがとても多くの苦労をしてきたこと、そしてその苦労を乗り越えてきたことを感じるんです。」
その言葉に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。私は思わず立ち上がり、ユリを抱きしめた。
「でも…どうしてそんなことを…?」
「それは俺にも分からないんです。ただ、メイのことを考えると、頭の中に浮かんでくるんです。悲しい出来事や、あなたが泣いている姿が…。」
ユリの声が少し震えた。彼は視線を落としながらも、言葉を絞り出すように続けた。
「それでも…俺はメイを守りたい。どんなことがあっても、アナタを悲しませるわけにはいかないんです。」
彼の声には強い決意が込められていて、その真剣な言葉に私の心は大きく揺さぶられた。記憶を失っているはずの彼が、全てを知っているかのように語るその姿に、胸の奥から不思議な感情がこみ上げてくる。
「ユリ、本当にあなたは…」
「俺はメイを守るためにここにいます。それだけは信じてください。」
その言葉を聞いた瞬間、私の中にあった小さな不信感や疑念は、すっと溶けていくようだった。ユリの目には揺るぎない愛情と信念が宿っていた。彼が全てを知っているのか、それとも何かを隠しているのかは分からないけれど、彼の気持ちが偽物ではないことだけは確信できた。
私は自分の中でそっと思った。これ以上、彼の行動や言葉の裏を探ろうとしてはいけない。彼は私のために嘘をつき続けているのかもしれない。でも、それは私を傷つけたくないからであり、私を幸せな場所に閉じ込めておきたいからだ。そう、ユリはいつだってそうしてきた。
「分かったわ、ユリ。」私は少し笑みを浮かべながら答えた。「あなたを信じるわ。」
ユリの顔に安堵の色が広がり、その表情が一瞬柔らかくなる。その後、彼は微かに照れくさそうに微笑み、私をそっと抱き寄せた。
「ありがとう、メイ。」
彼の腕の中で、私は一瞬だけ目を閉じた。彼の体温と穏やかな呼吸を感じながら、これから何が待ち受けているのか分からないけれど、今だけはこの瞬間に身を委ねてもいいと思えた。
そして心の中で静かに誓った。ユリがどんな秘密を抱えていようと、彼が私を守るために選んだ道を尊重しようと。
「メイ、少し膝に乗ってもらってもいいですか?」
「え、膝に?」
何を言い出すのかと驚いたが、彼の目は真剣だった。仕方なく「少しだけよ」と言って彼の膝に腰掛けた。
ユリは私を抱きしめ、嬉しそうに微笑んだ。
「メイ、本当に愛おしい…。」
「ちょっと、朝から何なの?」
私は笑って軽く彼をたしなめたが、ユリはますます抱きしめる力を強めた。
「メイ、こうしているだけで俺は満たされます。でも、それだけでは足りません。」
「足りてるから!ほら、もう十分じゃない?」
私は慌てて逃げようとしたが、ユリは離してくれない。はたから見れば完全にイチャイチャしているようにしか見えない状況だった。
「ユリ、いい加減にして。朝からこんなことしてたら何も進まないわよ!」
「メイに触れているだけで、俺は幸せなのです。」
「だから、今は無理しなくていいってば!」
私は彼の顔を覗き込みながら軽く頬を叩いた。ユリは顔を赤らめつつも、まだ少し不満そうだ。
その時、ノックの音と共にゼノが部屋に入ってきた。
「奥様、失礼します。」
ゼノは私を見るなり真剣な表情になり、すぐに話を切り出した。
「奥様、船上パーティーでの件ですが、エメロッサ子爵夫人があなたを船から突き落としたことは見逃せません。」
ゼノの言葉に、ユリがピクリと反応した。
「そうね、ゼノはどう対応するつもりなの?」
ゼノは冷静な口調で続けた。
「まず、彼女の行動は重大な犯罪です。王都の裁判所に正式に訴えるべきです。証人としての証言を確保し、法的手続きを進めます。」
「それが一番良い方法かしら…」
「はい。ただし、彼女の影響力や背後にいる支持者についても警戒が必要です。徹底的に調査し、彼女の力を封じるための準備を進めます。私がその全てを指揮しますので、ご安心ください。」
その冷静な態度に、私は思わず微笑んだ。
「ありがとう、ゼノ。信頼しているわ。」
「私の務めです。奥様と主、そしてルー坊ちゃまの安全が最優先です。」
ゼノの言葉を聞いて少し安心したが、ユリが再び口を開いた。
「ゼノ、その件はお前に任せた。もう下がっていい。」
ゼノは一礼し、静かに部屋を後にした。
ゼノが出て行った後、ユリがぽつりと呟いた。
「メイ、どうして俺にも相談してくれなかったのです?突き落とされたのでしょう?」
「え?だって、記憶喪失になったばかりで、今も自分のこと22歳くらいだと思っているんでしょう?ゼノに任せたほうが確実じゃない?」
ユリは眉をひそめ、少し拗ねたように言った。
「でも、それでは俺はメイのお荷物ということになるのでは?」
「荷物なんかじゃないわよ。」
私は彼の手を取り、優しく握りしめた。
「むしろゼノに任せておけば、こうしてユリと二人でいられるじゃない?」
ユリは顔を赤らめながら、小さく頷いた。
「…まぁ、そう…ですね。」
「ユリ、ほんとに不思議な人ね。いったい、いつから私を好きだったのかしら。」
その言葉に、ユリはさらにぎゅっと私を抱きしめた。彼の体温が伝わり、私は自然と微笑んだ。こんな状況でも彼が隣にいてくれることが、何よりも心強かった。
私はユリの顔をじっと見つめながら、彼の心の奥深くにある優しさと強さを感じ取っていた。彼の行動や言葉の裏には、いつも計り知れないほどの愛情が隠れている。ユリは、真実が人を傷つけるなら、その真実を伏せてまで人々を守ろうとする。そんな彼の生き方は、私にとって尊くて愛おしい。
彼の愛情の形はいつも一途で、純粋だ。そして、それが私を時折苦しくさせることもある。彼が記憶を失った今でも、彼の行動や言葉の一つひとつが、私への深い思いを表しているのだと感じる。
ユリは自分の幸せを犠牲にしてでも、私を守ろうとする。それが彼の生き方であり、彼の愛の形なのだろう。私はそんなユリの愛を受け止めつつも、ふとした瞬間に胸が痛む。彼の想いに応えられているだろうか、私は彼を幸せにできているのだろうかと考えると、自然と息が詰まるような気持ちになる。
記憶を失っている状況下でさえ、ユリは変わらず私を守ろうとし、愛してくれる。その姿は変わらない。だからこそ、私は絶対に考えてはいけない。ユリがいつから私を好きになったのか、その疑問に答えを求めてはいけないのだと思う。
私は心を切り替え、ユリの膝に乗りながらも目の前に広げた便箋に目を落とした。頭の中にある混乱を整理しながら、シルバークイーン侯爵への手紙を書く準備を始める。
深呼吸をしてペンを手に取ると、手紙の内容を考え始めた。どんな言葉で書き出せば良いのだろう?パーティーでの混乱の中、何が起こったのかを正確に伝えるべきだろうか。それとも、エメロッサ子爵夫人の行動について慎重に触れるべきだろうか。
手元のペンが震えないよう、私は何度も深呼吸を繰り返した。ユリとゼノ、ルー、そして私たちの未来を守るためには、この手紙が重要だと分かっている。だからこそ、冷静に、そして慎重に言葉を紡ぐ必要がある。
―――――――
拝啓 シルバークイーン侯爵様
先日の船上パーティーでは大変お世話になりました。
まずは、私が船上でエメロッサ子爵夫人に突き落とされ、修練島へ流された件についてご報告いたします。護衛騎士ゼノと共に自力で王都まで戻りましたが、その間、何の報告もできず、ご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
また、その際に夫ユリドレが魔力の乱れによる記憶喪失になってしまいました。現在、医師の見解では一ヶ月ほどで記憶が戻るとされておりますが、今後のことが不安です。
そちらも大変な状況かと存じますが、侯爵家の皆様のご健康とご安全をお祈り申し上げます。もしも何かお手伝いできることがあれば、どうぞお知らせください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
メイシール・レッドナイト
―――――――
手紙を書き終え、深いため息をついた瞬間、心の中にわずかな空虚感が広がった。ユリが記憶を失っている間、家族を守る責任は私にかかっている。侯爵への報告もその一環だ。封筒に封をし終えたところで、部屋の静けさの中、ユリの膝の上に乗りっぱなしなことに気付いて、振り向き、ユリの顔を覗き込む。その目には何か言葉にしがたい深い憂いが宿っていた。彼の表情は、いつもの無邪気さや堂々とした雰囲気とは違い、どこか切なく、儚げなものだった。
「メイはやはり…苦労なさって生きてきたのですね…。」
突然のその言葉に、私はペンを握りしめたまま、凍りついたように動けなくなった。驚きと戸惑いが一気に胸を満たす。記憶を失っているはずの彼が、どうしてそんなことを言うのだろう?まるで私の過去を全て知っているかのような、優しくも痛みを伴った声だった。
「ユリ…?」私は静かに彼を見つめた。
ユリは困ったように微笑んだが、その目の奥には深い秘密が潜んでいるように見えた。それは、全てを知っている者だけが持つような目だった。
「メイ、俺の記憶は確かに一部失われています。でも、どうしてか分からないけれど、あなたがとても多くの苦労をしてきたこと、そしてその苦労を乗り越えてきたことを感じるんです。」
その言葉に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。私は思わず立ち上がり、ユリを抱きしめた。
「でも…どうしてそんなことを…?」
「それは俺にも分からないんです。ただ、メイのことを考えると、頭の中に浮かんでくるんです。悲しい出来事や、あなたが泣いている姿が…。」
ユリの声が少し震えた。彼は視線を落としながらも、言葉を絞り出すように続けた。
「それでも…俺はメイを守りたい。どんなことがあっても、アナタを悲しませるわけにはいかないんです。」
彼の声には強い決意が込められていて、その真剣な言葉に私の心は大きく揺さぶられた。記憶を失っているはずの彼が、全てを知っているかのように語るその姿に、胸の奥から不思議な感情がこみ上げてくる。
「ユリ、本当にあなたは…」
「俺はメイを守るためにここにいます。それだけは信じてください。」
その言葉を聞いた瞬間、私の中にあった小さな不信感や疑念は、すっと溶けていくようだった。ユリの目には揺るぎない愛情と信念が宿っていた。彼が全てを知っているのか、それとも何かを隠しているのかは分からないけれど、彼の気持ちが偽物ではないことだけは確信できた。
私は自分の中でそっと思った。これ以上、彼の行動や言葉の裏を探ろうとしてはいけない。彼は私のために嘘をつき続けているのかもしれない。でも、それは私を傷つけたくないからであり、私を幸せな場所に閉じ込めておきたいからだ。そう、ユリはいつだってそうしてきた。
「分かったわ、ユリ。」私は少し笑みを浮かべながら答えた。「あなたを信じるわ。」
ユリの顔に安堵の色が広がり、その表情が一瞬柔らかくなる。その後、彼は微かに照れくさそうに微笑み、私をそっと抱き寄せた。
「ありがとう、メイ。」
彼の腕の中で、私は一瞬だけ目を閉じた。彼の体温と穏やかな呼吸を感じながら、これから何が待ち受けているのか分からないけれど、今だけはこの瞬間に身を委ねてもいいと思えた。
そして心の中で静かに誓った。ユリがどんな秘密を抱えていようと、彼が私を守るために選んだ道を尊重しようと。
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