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シーズン1
89.なんでもないのは何かある
夜、豪華な晩餐を楽しんだ後、私は急な吐き気に襲われた。テーブルに座ったまま、こみ上げてくる不快感に顔をしかめたが、他の人に気付かれないよう、そっと椅子を引いて立ち上がった。
「メイ、大丈夫ですか?」
隣に座っていたユリが、すぐに心配そうな声をかけてきた。彼の顔には真剣な表情が浮かんでいる。
「ええ、大丈夫。ただ少し疲れただけよ。すぐに戻るわ。」
私は微笑んで見せたが、足元が少しふらついているのを感じた。それを隠すようにして静かに部屋を後にする。
廊下を歩きながら、吐き気が収まるのを待ちつつ、頭の中で考えが巡った。
(この吐き気、もしや…。いや、そんなはずは…。でも…。)
不安と確信が入り混じり、胸の鼓動が速くなる。
部屋に戻ると、鏡の前に立ち、自分の顔をじっと見つめた。少し青白く、疲れた表情をしている。私はゆっくりと深呼吸を繰り返し、なんとか平静を取り戻そうとする。
(もしこれがつわりだとしたら、ユリに話すべきなの?でも今の彼は記憶を失っていて、22歳の頃の意識のまま。そんな状態で伝えても混乱させるだけ…。)
悩みながらも、吐き気が治まるのを待つことにした。
しばらくして気分が落ち着くと、私はユリの元へ戻った。彼はソファに座り、少し不安そうな顔で待っていた。
「ごめんなさいね。食べすぎちゃったみたい。」
私はわざと明るい声を出し、笑顔を作った。
「本当ですか?無理をしているのではありませんか?」
ユリの瞳には心配の色が浮かんでいる。
「本当よ。すぐに良くなるから心配しないで。」
私は軽く肩をすくめて見せた。それでもユリの視線は私を追い続けていたが、何とか納得してくれたようだった。
そのとき、廊下から小さな足音が聞こえてきた。振り返るとルーが現れ、真剣な表情で私を見上げている。
「母さん、ちょっといい?」
ルーの声に、ユリがすぐに立ち上がった。
「俺は先に部屋に戻りますね。」
彼はルーの表情から察したのか、私たちに一礼してそっと部屋を後にした。
ルーの部屋に入ると、彼はベッドの上に腰掛け、じっと私を見つめてきた。その視線に、私は少しだけ息を詰めた。
「母さん、もしかして、つわり?」
突然の言葉に、私は驚いて目を見開いた。
「どうしてそんなことを思うの?」
言葉を選びながら答えると、ルーは少し首をかしげながら答えた。
「母さん、顔色が悪かったし、何となくそんな感じがしたんだ。勘だけどね。」
その言葉には確信めいた響きがあった。
私は深呼吸し、ルーの真っ直ぐな目に負ける形で静かに頷いた。
「実は…そうかもしれない。でも、まだ確証がないし、ユリには内緒よ。今の彼には話せないわ。」
「わかった。父さんは僕が見ておくから、母さんは無理しないで。」
ルーは小さな手で私の手を握り、力強く言った。その優しさに、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「ありがとう、ルー。あなたがいてくれて、本当に心強いわ。」
「僕、母さんのためにできることは何でもやるから!」
彼の瞳には頼もしさが宿っていて、その成長に目頭が熱くなる。
「それと、母さん。魔法の練習をしたほうがいいよ。妊娠中って何があるか分からないし、魔法をちゃんと使えれば絶対役に立つから。」
彼の提案に驚きつつも、私はすぐに頷いた。
「分かったわ。教えてくれる?」
「もちろん!僕、結構魔法得意なんだから。」
ルーは少し得意げに笑い、それが微笑ましくて私は笑い返した。
「じゃあ、日程を組んでおくわね。今日はもう遅いから、ゆっくり休んで。」
「うん。おやすみなさい、母さん。」
「おやすみなさい、ルー。」
私はルーの部屋を出て、再びユリのもとへ向かった。背後で静かに閉まるドアの音を聞きながら、息子の頼もしさに胸が温かくなるのを感じた。彼がここまで支えになってくれるとは思っていなかった。今の私にとって、それが何よりの救いだった。
廊下を歩き、ユリが待つ寝室の扉を開けると、彼が部屋の入口近くに立っていて、すぐに私の顔を見て声をかけてきた。
「メイ、何かありましたか?」
ユリの目は真剣そのもので、少し落ち着かない様子が伝わってくる。その不安そうな表情に、私は小さく微笑みを浮かべて答えた。
「大丈夫よ、ルーと少し話していただけ。」
私は努めて柔らかな声で言い、彼の不安を和らげようとした。
すると、ユリは少しだけ安心したように表情を緩め、私の手をそっと取った。
「それなら良かったです。ですが、少し疲れているように見えますね。」
そう言うと、ユリは私を優しく部屋の中へと誘導し、部屋の中央に置かれた柔らかいソファーへと導いた。彼は手を離さず、まるで支えるように私を座らせた。
「ここで少し休んでください。メイに無理をさせたくありませんから。」
ユリのその一言に、私は思わず心がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。
「ありがとう、ユリ。でも、本当に大丈夫よ。」
彼の心配に応えるように微笑んで見せたが、ユリは安心しきれない様子で私をじっと見つめていた。
彼は静かに隣に腰を下ろし、少し躊躇しながらも、そっと私の手を握り直した。その温もりに、思わず顔を伏せたくなるほどの安心感が広がった。
「メイ、本当に何もないのですね?」
彼の問いに、私は小さく頷きながら、彼の手を優しく握り返した。
「ええ、本当に何でもないわ。ルーの言葉に少し励まされたから、それで安心して戻ってきたの。」
私の返事に、ユリはようやく心からの微笑みを浮かべた。
「そうですか…。やっぱり、何を話していたかは教えてくださらないのですね。」
ユリの声がわずかに落ち込み、彼の肩が少し沈む。しゅんとしたその姿に、私は思わず胸が痛んだ。
「ええ!?違う違う!」
慌てて両手を振り、言葉を補った。
「ルーがね、魔法を学んだほうがいいって提案してくれたの。ほら、私のお母さんって魔法使いの家系らしくってね。私も学べば使えるみたい。」
「俺が同席しても構いませんか?」
ユリの目がキラリと光るように見えた。その申し出に私は少し戸惑いながら答える。
「え?いいと思うけど…見てるだけになっちゃうわよ?」
彼が何を考えているのかが分からず、様子を伺う。
その瞬間、ユリの表情に一瞬の驚きが走ったが、すぐにいつもの冷静な顔に戻った。彼は一歩前に進み、真剣な眼差しで私をじっと見つめる。
「構いません。俺の瞳はメイを映す為に存在していますから。」
言葉を聞いた瞬間、私の心臓がドキンと高鳴る。
(本当に記憶ないのよね!?どうして22歳がこんなこと言えるの!?なんだか久しぶりに胸がドキドキしちゃうじゃない。顔がカッコ良すぎるのよ!全くもう!)
ユリの手がそっと私の手に触れ、その温もりがじわりと伝わってくる。その優しい感触に、自然と私の指が彼の手を握り返していた。見上げたユリの瞳は、まるで何もかもを包み込むような深さを持っている。
「ユリが側にいてくれるなら、心強いわ。」
言葉が自然と口をついて出た。
ユリは微笑み、私をぐっと引き寄せると、そのまま優しく抱きしめてきた。彼の腕に包まれると、胸がじんわりと温かくなり、鼓動が早くなるのが分かった。
彼の呼吸が耳元に心地よく響き、その静かなリズムが安心感をもたらす。
「メイ、こうしていると、俺は何も怖くありません。」
ユリの低く柔らかな声が私の耳に届き、思わず胸が締め付けられる。彼の愛情が、記憶を失っている今も変わらずそこにあることを感じた。
「さぁ、もう、寝ましょう。」
抱きしめたまま囁く彼の声に、私は小さく頷いた。
「はい。」
ユリは私をそっと抱き上げ、ベッドへ向かった。彼の力強くも優しい抱き心地に、心がふわりと軽くなる。
ベッドに入ると、私たちは自然に寄り添い、肩が触れるほどの距離で横になった。ユリは少し緊張しているのか、私の髪を見つめながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返していた。
「メイ、あなたと一緒にいると、不思議と心が落ち着くんです。」
彼の言葉に、私はそっと微笑みを浮かべた。
「私もよ。ユリがいてくれると、すごく安心するの。」
私は小さく返事をしながら、そっと彼の手を握った。その温もりを感じながら、まどろみの中に落ちていく。
その夜、互いに寄り添い、守られている安心感の中で、穏やかな眠りについたのだった。
「メイ、大丈夫ですか?」
隣に座っていたユリが、すぐに心配そうな声をかけてきた。彼の顔には真剣な表情が浮かんでいる。
「ええ、大丈夫。ただ少し疲れただけよ。すぐに戻るわ。」
私は微笑んで見せたが、足元が少しふらついているのを感じた。それを隠すようにして静かに部屋を後にする。
廊下を歩きながら、吐き気が収まるのを待ちつつ、頭の中で考えが巡った。
(この吐き気、もしや…。いや、そんなはずは…。でも…。)
不安と確信が入り混じり、胸の鼓動が速くなる。
部屋に戻ると、鏡の前に立ち、自分の顔をじっと見つめた。少し青白く、疲れた表情をしている。私はゆっくりと深呼吸を繰り返し、なんとか平静を取り戻そうとする。
(もしこれがつわりだとしたら、ユリに話すべきなの?でも今の彼は記憶を失っていて、22歳の頃の意識のまま。そんな状態で伝えても混乱させるだけ…。)
悩みながらも、吐き気が治まるのを待つことにした。
しばらくして気分が落ち着くと、私はユリの元へ戻った。彼はソファに座り、少し不安そうな顔で待っていた。
「ごめんなさいね。食べすぎちゃったみたい。」
私はわざと明るい声を出し、笑顔を作った。
「本当ですか?無理をしているのではありませんか?」
ユリの瞳には心配の色が浮かんでいる。
「本当よ。すぐに良くなるから心配しないで。」
私は軽く肩をすくめて見せた。それでもユリの視線は私を追い続けていたが、何とか納得してくれたようだった。
そのとき、廊下から小さな足音が聞こえてきた。振り返るとルーが現れ、真剣な表情で私を見上げている。
「母さん、ちょっといい?」
ルーの声に、ユリがすぐに立ち上がった。
「俺は先に部屋に戻りますね。」
彼はルーの表情から察したのか、私たちに一礼してそっと部屋を後にした。
ルーの部屋に入ると、彼はベッドの上に腰掛け、じっと私を見つめてきた。その視線に、私は少しだけ息を詰めた。
「母さん、もしかして、つわり?」
突然の言葉に、私は驚いて目を見開いた。
「どうしてそんなことを思うの?」
言葉を選びながら答えると、ルーは少し首をかしげながら答えた。
「母さん、顔色が悪かったし、何となくそんな感じがしたんだ。勘だけどね。」
その言葉には確信めいた響きがあった。
私は深呼吸し、ルーの真っ直ぐな目に負ける形で静かに頷いた。
「実は…そうかもしれない。でも、まだ確証がないし、ユリには内緒よ。今の彼には話せないわ。」
「わかった。父さんは僕が見ておくから、母さんは無理しないで。」
ルーは小さな手で私の手を握り、力強く言った。その優しさに、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「ありがとう、ルー。あなたがいてくれて、本当に心強いわ。」
「僕、母さんのためにできることは何でもやるから!」
彼の瞳には頼もしさが宿っていて、その成長に目頭が熱くなる。
「それと、母さん。魔法の練習をしたほうがいいよ。妊娠中って何があるか分からないし、魔法をちゃんと使えれば絶対役に立つから。」
彼の提案に驚きつつも、私はすぐに頷いた。
「分かったわ。教えてくれる?」
「もちろん!僕、結構魔法得意なんだから。」
ルーは少し得意げに笑い、それが微笑ましくて私は笑い返した。
「じゃあ、日程を組んでおくわね。今日はもう遅いから、ゆっくり休んで。」
「うん。おやすみなさい、母さん。」
「おやすみなさい、ルー。」
私はルーの部屋を出て、再びユリのもとへ向かった。背後で静かに閉まるドアの音を聞きながら、息子の頼もしさに胸が温かくなるのを感じた。彼がここまで支えになってくれるとは思っていなかった。今の私にとって、それが何よりの救いだった。
廊下を歩き、ユリが待つ寝室の扉を開けると、彼が部屋の入口近くに立っていて、すぐに私の顔を見て声をかけてきた。
「メイ、何かありましたか?」
ユリの目は真剣そのもので、少し落ち着かない様子が伝わってくる。その不安そうな表情に、私は小さく微笑みを浮かべて答えた。
「大丈夫よ、ルーと少し話していただけ。」
私は努めて柔らかな声で言い、彼の不安を和らげようとした。
すると、ユリは少しだけ安心したように表情を緩め、私の手をそっと取った。
「それなら良かったです。ですが、少し疲れているように見えますね。」
そう言うと、ユリは私を優しく部屋の中へと誘導し、部屋の中央に置かれた柔らかいソファーへと導いた。彼は手を離さず、まるで支えるように私を座らせた。
「ここで少し休んでください。メイに無理をさせたくありませんから。」
ユリのその一言に、私は思わず心がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。
「ありがとう、ユリ。でも、本当に大丈夫よ。」
彼の心配に応えるように微笑んで見せたが、ユリは安心しきれない様子で私をじっと見つめていた。
彼は静かに隣に腰を下ろし、少し躊躇しながらも、そっと私の手を握り直した。その温もりに、思わず顔を伏せたくなるほどの安心感が広がった。
「メイ、本当に何もないのですね?」
彼の問いに、私は小さく頷きながら、彼の手を優しく握り返した。
「ええ、本当に何でもないわ。ルーの言葉に少し励まされたから、それで安心して戻ってきたの。」
私の返事に、ユリはようやく心からの微笑みを浮かべた。
「そうですか…。やっぱり、何を話していたかは教えてくださらないのですね。」
ユリの声がわずかに落ち込み、彼の肩が少し沈む。しゅんとしたその姿に、私は思わず胸が痛んだ。
「ええ!?違う違う!」
慌てて両手を振り、言葉を補った。
「ルーがね、魔法を学んだほうがいいって提案してくれたの。ほら、私のお母さんって魔法使いの家系らしくってね。私も学べば使えるみたい。」
「俺が同席しても構いませんか?」
ユリの目がキラリと光るように見えた。その申し出に私は少し戸惑いながら答える。
「え?いいと思うけど…見てるだけになっちゃうわよ?」
彼が何を考えているのかが分からず、様子を伺う。
その瞬間、ユリの表情に一瞬の驚きが走ったが、すぐにいつもの冷静な顔に戻った。彼は一歩前に進み、真剣な眼差しで私をじっと見つめる。
「構いません。俺の瞳はメイを映す為に存在していますから。」
言葉を聞いた瞬間、私の心臓がドキンと高鳴る。
(本当に記憶ないのよね!?どうして22歳がこんなこと言えるの!?なんだか久しぶりに胸がドキドキしちゃうじゃない。顔がカッコ良すぎるのよ!全くもう!)
ユリの手がそっと私の手に触れ、その温もりがじわりと伝わってくる。その優しい感触に、自然と私の指が彼の手を握り返していた。見上げたユリの瞳は、まるで何もかもを包み込むような深さを持っている。
「ユリが側にいてくれるなら、心強いわ。」
言葉が自然と口をついて出た。
ユリは微笑み、私をぐっと引き寄せると、そのまま優しく抱きしめてきた。彼の腕に包まれると、胸がじんわりと温かくなり、鼓動が早くなるのが分かった。
彼の呼吸が耳元に心地よく響き、その静かなリズムが安心感をもたらす。
「メイ、こうしていると、俺は何も怖くありません。」
ユリの低く柔らかな声が私の耳に届き、思わず胸が締め付けられる。彼の愛情が、記憶を失っている今も変わらずそこにあることを感じた。
「さぁ、もう、寝ましょう。」
抱きしめたまま囁く彼の声に、私は小さく頷いた。
「はい。」
ユリは私をそっと抱き上げ、ベッドへ向かった。彼の力強くも優しい抱き心地に、心がふわりと軽くなる。
ベッドに入ると、私たちは自然に寄り添い、肩が触れるほどの距離で横になった。ユリは少し緊張しているのか、私の髪を見つめながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返していた。
「メイ、あなたと一緒にいると、不思議と心が落ち着くんです。」
彼の言葉に、私はそっと微笑みを浮かべた。
「私もよ。ユリがいてくれると、すごく安心するの。」
私は小さく返事をしながら、そっと彼の手を握った。その温もりを感じながら、まどろみの中に落ちていく。
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