死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

90.魔法訓練開始!

数日後、やっと書類処理や船上パーティーの後処理が片付き、ようやくルーと一緒に魔法の訓練をする時間が取れた。その日は静かな午前中で、窓から差し込む柔らかな陽光が訓練室を包んでいた。

「母さん、なんで父さんもいるのさ。」

ルーが少し呆れたような表情で尋ねると、ユリは何も言わずニコリと微笑むだけだった。

「あはは…離れたくないみたい。」

私が困ったように言うと、ルーは小さな溜息をついた。3歳児が大人顔負けの仕草を見せるのが、なんとも異様で可笑しくて、私は思わず笑いそうになった。

「まぁいいや。」

ルーは仕方ないというように首を振り直し、真剣な目で私を見上げた。

「まずは基本からね。母さん、手を広げて目を閉じて。魔力を感じてみて。」

私は言われた通り、両手を広げてゆっくりと目を閉じた。手のひらを上に向け、軽く握りしめるように力を抜く。

「母さん、深呼吸して。息を深く吸って、ゆっくり吐いて。魔力が手のひらに集まる感覚を掴んでみて。」

ルーの落ち着いた声が、まるで風のささやきのように私の耳に響く。

私は息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出すことを繰り返した。やがて、手のひらにじんわりとした温かさが広がり始めた。微細なエネルギーの波が、肌の表面を撫でるように感じられる。

「そう、それでいいよ、母さん。その感覚を逃さないで。」

ルーの声には少し興奮が混ざっていて、私をさらに集中させる。

「うん…なんだか、不思議な感じ。」

初めて体感するこの感覚に、私は驚きと喜びを感じながら答えた。

「次は、その魔力を形にするイメージをしてみて。例えば、小さな光の玉を作るとか。」

ルーは自分の手を軽く広げて見せながら、言葉に説得力を持たせている。

「光の玉ね…。」

私はイメージを集中させた。頭の中で、小さな光の粒が集まり、ゆっくりと輝く玉へと形作られる様子を思い描いた。その瞬間、手のひらの温かさが強まり、微かな光が現れた。

「できた…!」

私が驚きとともに呟くと、手のひらの上に小さな光の玉がぽっと浮かび上がった。光は部屋全体を優しく照らし出し、柔らかい輝きが私たちを包み込む。

「流石だね。やっぱり僕の母さんだ。」

ルーは目を輝かせながら嬉しそうに笑った。その姿が誇らしくて、私は少し照れながらも微笑み返した。

「わぁ。これが魔法…。」

ユリも驚いたように目を見開いていたが、すぐに優しい微笑みを浮かべて言った。「素晴らしいです、メイ。」

その言葉に、私の胸はさらに温かくなった。自分が少しずつ魔法を扱えるようになっていることが、信じられないほど嬉しい。

「母さん、僕たちの扱う魔法はイメージが具現化すると思えばいいよ。だから扱いには気を付けて。」

ルーは急に真剣な顔になり、私に注意を促した。

「回帰前の人生で僕はお婆ちゃんに厳しく言われたんだ。」

「お婆ちゃんに…?お婆ちゃんって…私のお母さん?」

私は驚きながら聞き返した。

「うん。その時は、直接会って教えることができないから、テレパシーを使って教わったんだ。」
「そうなのね。扱いに気を付けて…か。」

その日の訓練を終えた私たちは、笑顔を浮かべながら部屋を後にした。少し疲れたけれど、魔法を使えるようになった達成感が胸を満たしていた。

自室に戻り、湯浴みを終えてバスローブを纏い、髪を軽く拭きながら部屋を出ると、ソファに座るユリの姿が目に入った。彼はどこか穏やかな表情で私を見つめていた。その目は優しく、まるで私を包み込むような柔らかさがあった。

「メイ、こっちに来て。」
ユリが手を軽く挙げて私を呼ぶ。

「何?」
私は少し不思議に思いながらも、彼の元へ歩み寄った。ユリは私が近づくのを見届けると、自分の膝を軽く叩きながら微笑んだ。

「ここに座ってください。」
「え?…ここに?」
「はい、お願いします。」

少し戸惑いながらも、彼の膝にそっと腰を下ろした。彼の手が自然と私の腰に回り、軽く支えてくれる。その腕の力強さと温もりに、何故かホッとする自分がいた。

「メイ、今日は魔法の訓練、お疲れ様でした。」
「ありがとう。ルーがとても熱心で、思ったより大変だったわ。」
そう言うと、ユリは小さく笑みを浮かべた。

「ルーは確かにしっかり者ですね。だけど、メイの頑張りも素晴らしかったと思いますよ。」

彼の優しい言葉に、私の心がふっと軽くなった。ユリは背中に回した手でそっと撫でるように触れ、もう片方の手で私の髪を優しく整える。

「メイの頑張りを見て、俺ももっとしっかりしないといけないと感じました。」
「そんな、ユリは十分頼りになるわよ。」

ユリは私の髪に顔を寄せ、深く息を吸い込むようにして静かに目を閉じた。その仕草があまりに自然で、けれどもどこか親密すぎて、私は思わずドキリとしてしまった。

「今の俺の知識は乏しいですが、『魔法の扱いに気を付けて』というお婆様の教えには俺も完全に同意です。この国は、全てが嘘で塗り固められている部分がありますから。」

ユリの声は真剣だった。その言葉の意味を理解しきれないまま、私は不思議そうに問い返した。

「嘘で塗り固められてるって…どういうこと?」
「ホワイトホスト王国は鎖国しているため、外の世界の情報が入ってきません。そのため、異国の特殊能力がこの国でどのように作用するのか、予測できないことが多いのです。メイが魔法を学ぶことには賛成です。でも、慎重に扱うことが本当に重要です。」

ユリは私をじっと見つめ、その瞳に確かな思いを宿していた。私を心配する気持ちが痛いほど伝わり、胸が少し締め付けられるようだった。

「分かったわ、ユリ。あなたがそう言うなら、私も気を付ける。」

そう返すと、ユリはふっと優しく微笑み、再び私の髪を撫でた。その手の動きはとても穏やかで、まるで私を安心させようとしているかのようだった。

「ありがとう、メイ。俺にとって、あなたの安全が何より大切です。」

その言葉に、私の胸が温かさで満たされた。彼の優しさと真剣さに触れ、私は改めてユリの存在に支えられていることを実感した。

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか。」
ユリが私の腰を軽く抱えながら言う。

「そうね。」
私は小さく頷くと、ユリがそっと立ち上がり、私をそのまま抱き上げた。驚いて小さく声を上げると、彼は楽しそうに微笑んでベッドへ向かう。

「こうして一緒にいられる時間が、俺には何より幸せなんです。」

その言葉に、私は何も言えず、ただユリの肩に頭を預けた。彼の温もりと優しい声に包まれながら、私はそっと目を閉じた。
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