死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

114.信頼できる家族にだけの話

ルーの誕生日は、ちょうど王都にあるレッドナイト公爵邸の修繕が完了したタイミングだった。私たちは引っ越しの準備に追われ、屋敷中が慌ただしい空気に包まれていた。使用人たちが荷物を運び込み、家具を配置し直す音が響く中、私はルーの方を見やり、申し訳なさそうに声をかけた。

「ごめんね、ルー。誕生日なのに、こんなバタバタで……。」

ルーは私の言葉に一瞬だけ目を細めたが、すぐに軽く肩をすくめて微笑んだ。

「いいよ、母さん。別に気にしてないし。」

その答えが妙に落ち着いているのは、彼が人生3回目を生きる存在だからだろう。普段の子どもらしさとは違う大人びた言葉に、私は少しだけ複雑な気持ちになりながらも微笑み返した。

引っ越しが一段落し、ようやく屋敷の中が少し落ち着きを取り戻した頃、ユリが私とルーを呼び寄せた。

「ルー、ちょっと来い。お前の部屋を見せてやる。」

「僕の部屋?」

ルーは首を傾げながらユリに続いて階段を上がっていく。私もその後を追いかけた。彼の部屋があるとされる廊下にたどり着き、ユリが重厚な扉を開けると、中には――。

「……えっ?」

ルーは驚いたように目を見開き、その場に立ち尽くした。

部屋の中はまるで大人の書斎のようだった。壁一面の本棚には、歴史書や魔法の参考書がびっしりと並び、中央には豪華なデスクと椅子。窓際には深い色合いのソファとテーブルが置かれ、落ち着いた雰囲気が漂っている。

「どうだ?お前のために特別に準備した部屋だ。」

ユリが誇らしげに胸を張って言うと、ルーは困惑したような顔を浮かべながら部屋の中を見回した。

「これ……僕の部屋?なんか、すごく大人っぽいんだけど。」

ルーが不思議そうにデスクの上を触りながら呟く。その様子に、ユリはふっと笑みを浮かべた。

「人生3回目だろう?中身は大人なんだから、部屋もそれ相応にしてみた。」

その言葉に、ルーは一瞬だけムッとした表情を浮かべたが、すぐに苦笑を漏らした。

「まぁ……悪くないかも。」

照れ隠しなのか、そう言いながらソファに座り込む。座り心地を確かめるように少し体を揺らし、満足そうに頷いた。

「気に入ったか?」

ユリが尋ねると、ルーはそっけなく「うん」と答えたが、その目はどこか嬉しそうに輝いていた。

「それならよかった。」

ユリが安心したように微笑むと、私はルーに近寄り、その頭を優しく撫でた。

「お誕生日おめでとう、ルー。素敵なお兄ちゃんになってね。」
「母さん、それもちゃんとわかってるってば。」

ルーは少し照れくさそうに言いながらも、私の手を軽く押し返す。その反応が可愛らしくて、思わず笑ってしまった。

「さぁ、ルー。これからみんなでお祝いしよう。」
「でも、父さんも母さんも忙しいんじゃないの?」
「お前のためなら、忙しさなんて関係ないさ。」

ユリのその言葉に、ルーの表情がふっと柔らかくなり、静かに微笑んだ。

――――――――
――――――
夜になり、レッドナイト公爵邸の食堂には、家族が一堂に会した。豪華というよりは、温かみのあるささやかな飾り付けが施され、テーブルには色とりどりの料理とケーキが並んでいる。使用人たちの細やかな気遣いで用意されたその光景は、心がほっと和むものだった。

「さぁ、始めましょうか。」

ユリが軽く手を叩いて促すと、全員が席に着いた。私とユリ、そして愛しいユーフィリアを抱えた私の隣には、主役のルーが座る。その向かいには、ゼノと妊娠七ヶ月のミレーヌが並んでいた。ミレーヌは膨らんだお腹を優しく撫でながら微笑んでいる。

「ルー、今日はあなたが主役よ。」

私はルーの頭を軽く撫でながら言った。彼は少し照れくさそうに目を逸らしながらも、ちらりと私とユリを見上げた。

「……4歳になったよ。でも、中身はもうおじさんだけどね。」

ルーは小声でひねくれたように呟き、すぐにそっぽを向く。その言葉に、ユリが一瞬きょとんとした後、吹き出して笑い始めた。

「ははっ!おじさんって、お前まだ4歳だろう?」

ユリが笑いながらそう言うと、ルーはムッとした顔をしながらも、「でも中身はね……」とさらに小声で反論する。その様子があまりにも可愛らしくて、私も思わず笑いを堪えきれなかった。

「ルー、そんなこと言わないの。今日はあなたの誕生日なんだから、もっと素直に喜びなさい。」

私が微笑みながらそう言うと、ルーは少しだけ肩をすくめ、「……わかったよ」と短く返事をした。

「さあ、乾杯をしましょう。」

ユリがグラスを手に取り、全員を促す。私たちはそれぞれのグラスを持ち、軽く掲げた。私の腕の中ではユーフィリアが小さな手をバタつかせ、まるで自分も乾杯に参加したいかのようだった。

「ルーの4歳と、家族の新しい門出に――乾杯!」

ユリが高らかに声を上げると、全員が笑顔で「乾杯!」と応えた。グラスが軽くぶつかり合い、その音が食堂に優しく響いた。


「それにしても、坊ちゃま。4歳になったあなたがこれからどう活躍してくれるのか、私は、とても楽しみです。」

ゼノが穏やかな口調でそう言うと、ルーはふっと笑い、得意げに胸を張ってみせた。

「ま、僕がいればこの家も安泰だね。」

その堂々とした仕草に、一瞬の静寂の後、全員が笑い声を上げた。子どもらしい自信と、内面の成熟が入り混じったルーの様子に、家族全員がどこか愛おしさを感じていた。

しばらくの間、和やかな会話が続いた後、私はちらりとユリの顔を見て頷いた。ここで話すべきだ、と彼も考えていることが、その目から読み取れた。私は一度深呼吸をし、ゼノとミレーヌに向き直った。

「ゼノ、ミレーヌ。今日は少しだけ真面目なお話をさせてください。」

私の言葉に、二人の表情が引き締まった。ミレーヌは穏やかな目で私を見つめ、ゼノは軽く頷いて、真剣な態度で聞く準備を整えた。

「実は……ブルービショップ家には、少し特殊な能力が代々受け継がれています。」

私は一瞬ためらったが、ユリが私の手をそっと握り、背中を押してくれた。それで気持ちが落ち着き、続けることができた。

「その能力は……他殺されると回帰する、というものです。要するに、殺された時点から、人生がやり直されるんです。」

部屋には一瞬、重い沈黙が訪れた。ゼノとミレーヌは目を見開き、互いに顔を見合わせる。ミレーヌが静かに口を開いた。

「私は……実は少し存じておりました。メデュール様から……ほんの少しだけお聞きしていましたので。」

「お母様……!」

その言葉に私は思わず声を上げた。ミレーヌの表情は申し訳なさそうで、しかしどこか微笑みを浮かべている。

「私はメデュール様に、個人的にお仕えすることが多く、その時に少しお話を伺って……でも、まさかそれが本当のことだとは思いませんでした。」

「お母様……私が何度聞いても、いつも茶化して何も教えてくれなかったのよ。」

私は少しだけ怒ったように声を荒げると、ミレーヌは控えめに肩をすくめて微笑んだ。

「メデュール様なりの考えがあったのではないでしょうか。奥様のことを心配しつつも、強くあってほしいと思っていらしたのでは?」

その言葉に、私は心の中で母の顔を思い浮かべた。彼女が私を思いやりながら、いつも独特な形で接してきたことを思い出し、少し胸が温かくなった。

一方、ゼノは目を細め、静かにルーと私を見つめていた。

「……確かに、奥様やルー坊ちゃまの知識や口調には、幼違和感がございました。しかし、これほどの秘密が隠されているとは……。」

ゼノの声には驚きとともに深い敬意が滲んでいた。ユリが静かに口を開く。

「この話をする相手は、ゼノとミレーヌ、お前たちだけだ。他の誰にも、このことを漏らすわけにはいかない。」

ユリの言葉に、二人は深く頷いた。ミレーヌの手は自然とお腹に添えられ、その眼差しには母としての決意が感じられた。
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