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シーズン1
117.逆らうことのできない露骨な罠
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数日後、ホワイトホスト王国の王宮で緊急の招集がかけられた。王宮の大広間に足を踏み入れると、厳かな雰囲気と張り詰めた空気に包まれた。豪奢なシャンデリアが高い天井から輝き、集まった貴族たちの間に低いささやき声が響いている。
ユリと私は招集に応じ、緊張した面持ちで広間の中に入った。ユフィとルーを家に残してきたことが心配だったが、今は目の前の異様な光景に気を奪われていた。
「何が起こったのかしら……」
私はユリの耳元に顔を寄せ、小声で囁いた。
ユリは険しい表情を浮かべながら、周囲を鋭い目つきで観察している。
「妙だ。俺たちに届いた手紙だけが『夫妻』と記載されていた。」
その言葉に、私は思わず立ち止まった。驚きと不安が胸をざわつかせる。周囲を見渡すと、大広間には男性の貴族たちがほとんどで、女性の姿はちらほらと見えるだけだった。夫婦そろって招集に応じたのは、どうやら私たちだけのようだ。
「本当に変ね……。」
私は唇を噛み、心の中で渦巻く疑念を抑えようとした。
ユリは私の不安を察したのか、そっと手を握ってくれた。その大きな手の温かさが、私の動揺を少し和らげた。
「何か企んでいる可能性がある。気を引き締めておくべきだ。」
低く冷静なユリの声に、私は頷くことで答えた。彼の落ち着いた態度に、いつものように安心感を覚える。
私たちは広間の一角に立ち、しばらく様子を窺った。貴族たちは集まりながらも、落ち着きがない。軽く顔を見合わせては、互いに囁き合っている。その中には不安の色を隠せない者、逆に笑みを浮かべて何かを企むような者も混じっていた。
「ユリ、この場に私たちが呼ばれた理由は何だと思う?」
私は彼に目を向けながら問いかけた。その問いにユリは短く息を吐き、目線だけで周囲を再度確認した。
「予想はつかない。だが…嫌な予感がする。」
ユリの目は、まるで全員を見透かすように鋭く光っていた。
私の胸には嫌な予感が広がる。これまでユリと一緒に数多くの困難を乗り越えてきたが、彼の言葉の端々に感じられる警戒心が、その予感を一層強めていく。
その時、王宮の衛兵が大広間の中央に進み出た。そして、響くような声で告げた。
「陛下がまもなくお越しになります。全員、静粛に。」
広間のざわめきが瞬く間に消え、代わりに張り詰めた沈黙が場を支配した。私は思わずユリの手を握り直し、その強さに自分を支えるようにした。
――何が起きようとしているのかしら……?
不安が頭の中を巡る中、ユリは静かに私の耳元で囁いた。
「大丈夫だ、メイ。俺がついている。」
その言葉に少しだけ気が楽になりながら、私は自分の呼吸を整え、大広間の奥に目を向けた。
大広間の扉が重々しく開かれる音が響き、全員の視線がその先に向けられた。王の側近が堂々と歩み入ると、その険しい表情が場の緊張を一層高めた。彼の姿勢には迷いのない力強さがあり、一言一言が重要な意味を持つと暗に伝えていた。
「本日、緊急の招集に応じていただき感謝します。」
側近は大きな声で言い放ち、集まった貴族たちを見渡した。その声が大広間に響き渡り、微かにざわついていた場が静まり返る。
「先日、隣国との国境付近で不審な動きが確認されました。これにより、我が国の安全が脅かされる可能性があると判断し、緊急に対策を講じる必要があります。」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸がざわめいた。背中に冷たいものが走り、知らず知らずのうちにユリの手を強く握っていた。ユリもまた眉をひそめ、険しい目で側近を見据えていた。
「不審な動きとは何ですかな?もっと具体的な話をして下さらないとわかりません。」
パープルポーン家の当主が低い声で質問した。その口調には苛立ちと疑念が混じっており、広間の空気をさらに緊迫させた。
側近は一瞬だけ言葉を詰まらせたが、すぐに深呼吸をして話を続けた。
「それは、何者かが領地内に侵入し、殺人が起きたという内容です。」
この一言で、大広間は一気にざわつき始めた。貴族たちは顔を見合わせ、小声でささやき合う。恐怖、不安、そして疑念が渦巻く。
そんな中、側近がユリを指名するように視線を向けた。ユリの手を握る私の指先に力が入るのを感じ、私の胸は強く鼓動した。
「レッドナイト公爵、あなたにはしばらく王宮にとどまり、護衛をお願いしたいと考えています。」
ユリは一瞬驚いたようだったが、すぐに冷静さを取り戻し、その鋭い目で側近を見据えた。そして、低く毅然とした声で答えた。
「承知しました。私が護衛としてお役に立てるなら、全力を尽くします。」
側近は満足そうに頷き、他の貴族たちにもそれぞれの役割を伝え始めた。その声が広間に響くたびに、緊張がさらに増していくようだった。
「皆様、それぞれの領地に戻り、警備体制を見直し、警戒を強化してください。また、不審な動きがあれば直ちに王宮に報告するようにしてください。」
貴族たちは頷きながら指示を受け、次々と退出を始めた。しかし、その一連の動きの中で、側近が私に向けて特別な視線を送っているのに気づいた。
そして、全員の退出がほぼ終わる頃、側近が私に近づいてきた。その冷たい笑みが、私の背筋をぞわりとさせた。
「メイシール様、しばらくの間、他の部屋でお待ちいただけますか?少しお話を伺いたいことがございますので。」
その言葉に、私は一瞬固まった。彼の言葉には礼儀正しい響きがあったが、どこか隠しきれない違和感を覚えた。
ユリがその場ですぐに私を見つめ、明らかに警戒している目で低く囁いた。
「メイ…行く必要はない。これは罠だ。」
「分かってるわ。でも、避けられない。」
私は息を整え、ユリを安心させるように微笑んだ。
「直ぐに連絡するわ。だから、心配しないで。」
ユリは唇を噛みながらも、私の手をしっかりと握りしめて、強く頷いた。その手から伝わる彼の緊張感が痛いほど感じられた。
「あぁ……。」
そう呟いた後、ユリは渋々私の手を離し、王の元へ向かうために足を踏み出した。私はその背中を見送りながら、自分の心の奥に湧き上がる不安を必死に抑えた。
――私は何としてでも、この状況を乗り越えなければならない。ユリとルー、ユフィのために。
そして、側近の案内に従い、私はその先の部屋へと足を踏み出した。
私は一度深呼吸をし、冷静さを装いながら側近に導かれるままに別の部屋へ向かった。廊下を歩く間、窓から差し込む光が薄暗い影を作り出し、その中で自分の足音が妙に大きく響いていた。胸の鼓動が速くなるのを感じながらも、それを悟られないように努めた。後ろをついてくる側近の視線が、鋭く私の背中を追っているのが分かった。
扉が開かれ、私は重厚な雰囲気の漂う別室へと足を踏み入れた。中は広々としていたが、装飾品も少なく、異様なまでに静まり返っている。扉が閉じられる音がやけに大きく響き、私の警戒心は一気に高まった。
「メイシール様、少しお話を伺いたいと思いまして。」
側近は冷たい笑みを浮かべながら、ゆっくりと私に近づいてきた。その目には明らかな悪意が宿っているのが見て取れた。
「随分と露骨な行動をなさいますのね。それで、いったい何の話をされるおつもりかしら?」
私は意識的に声を落ち着かせ、相手に隙を見せないよう努めた。だが、内心ではユリがいないこの状況に深い不安を抱いていた。
「ほんの少しだけお時間をいただければ、すぐに済みます。」
側近はにやりと笑いながら一歩近づいてきた。その一歩ごとに、私の警戒心は鋭さを増していった。
突然、彼の手が素早く動いた。咄嗟に避けようとしたが、次の瞬間、体中に雷のような衝撃が走った。全身が痺れ、力が抜けていく。思わず膝をつきそうになったが、それすらできず、足元から崩れるように倒れた。
「……っ!」
口を開こうとしても声が出ない。目の前が暗くなり、意識が遠のいていく。
《ユリ……ごめ……なさ……》
最後の力を振り絞り、私はユリへとテレパシーを送った。その言葉が届くことを願いながら、視界は完全に闇に飲み込まれた。
倒れた私の前で、側近は冷たく笑みを浮かべた。そのまま私の腕を掴むと、無造作に体を引きずり始める。床に響く鈍い音が、静寂に包まれた部屋に不気味に反響していた。
部屋の扉が静かに閉じられ、広間から完全に隔絶された空間に静寂が降りた。その沈黙の中で、私を連れ去る側近の足音だけが、冷たく響き渡った。
ユリと私は招集に応じ、緊張した面持ちで広間の中に入った。ユフィとルーを家に残してきたことが心配だったが、今は目の前の異様な光景に気を奪われていた。
「何が起こったのかしら……」
私はユリの耳元に顔を寄せ、小声で囁いた。
ユリは険しい表情を浮かべながら、周囲を鋭い目つきで観察している。
「妙だ。俺たちに届いた手紙だけが『夫妻』と記載されていた。」
その言葉に、私は思わず立ち止まった。驚きと不安が胸をざわつかせる。周囲を見渡すと、大広間には男性の貴族たちがほとんどで、女性の姿はちらほらと見えるだけだった。夫婦そろって招集に応じたのは、どうやら私たちだけのようだ。
「本当に変ね……。」
私は唇を噛み、心の中で渦巻く疑念を抑えようとした。
ユリは私の不安を察したのか、そっと手を握ってくれた。その大きな手の温かさが、私の動揺を少し和らげた。
「何か企んでいる可能性がある。気を引き締めておくべきだ。」
低く冷静なユリの声に、私は頷くことで答えた。彼の落ち着いた態度に、いつものように安心感を覚える。
私たちは広間の一角に立ち、しばらく様子を窺った。貴族たちは集まりながらも、落ち着きがない。軽く顔を見合わせては、互いに囁き合っている。その中には不安の色を隠せない者、逆に笑みを浮かべて何かを企むような者も混じっていた。
「ユリ、この場に私たちが呼ばれた理由は何だと思う?」
私は彼に目を向けながら問いかけた。その問いにユリは短く息を吐き、目線だけで周囲を再度確認した。
「予想はつかない。だが…嫌な予感がする。」
ユリの目は、まるで全員を見透かすように鋭く光っていた。
私の胸には嫌な予感が広がる。これまでユリと一緒に数多くの困難を乗り越えてきたが、彼の言葉の端々に感じられる警戒心が、その予感を一層強めていく。
その時、王宮の衛兵が大広間の中央に進み出た。そして、響くような声で告げた。
「陛下がまもなくお越しになります。全員、静粛に。」
広間のざわめきが瞬く間に消え、代わりに張り詰めた沈黙が場を支配した。私は思わずユリの手を握り直し、その強さに自分を支えるようにした。
――何が起きようとしているのかしら……?
不安が頭の中を巡る中、ユリは静かに私の耳元で囁いた。
「大丈夫だ、メイ。俺がついている。」
その言葉に少しだけ気が楽になりながら、私は自分の呼吸を整え、大広間の奥に目を向けた。
大広間の扉が重々しく開かれる音が響き、全員の視線がその先に向けられた。王の側近が堂々と歩み入ると、その険しい表情が場の緊張を一層高めた。彼の姿勢には迷いのない力強さがあり、一言一言が重要な意味を持つと暗に伝えていた。
「本日、緊急の招集に応じていただき感謝します。」
側近は大きな声で言い放ち、集まった貴族たちを見渡した。その声が大広間に響き渡り、微かにざわついていた場が静まり返る。
「先日、隣国との国境付近で不審な動きが確認されました。これにより、我が国の安全が脅かされる可能性があると判断し、緊急に対策を講じる必要があります。」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸がざわめいた。背中に冷たいものが走り、知らず知らずのうちにユリの手を強く握っていた。ユリもまた眉をひそめ、険しい目で側近を見据えていた。
「不審な動きとは何ですかな?もっと具体的な話をして下さらないとわかりません。」
パープルポーン家の当主が低い声で質問した。その口調には苛立ちと疑念が混じっており、広間の空気をさらに緊迫させた。
側近は一瞬だけ言葉を詰まらせたが、すぐに深呼吸をして話を続けた。
「それは、何者かが領地内に侵入し、殺人が起きたという内容です。」
この一言で、大広間は一気にざわつき始めた。貴族たちは顔を見合わせ、小声でささやき合う。恐怖、不安、そして疑念が渦巻く。
そんな中、側近がユリを指名するように視線を向けた。ユリの手を握る私の指先に力が入るのを感じ、私の胸は強く鼓動した。
「レッドナイト公爵、あなたにはしばらく王宮にとどまり、護衛をお願いしたいと考えています。」
ユリは一瞬驚いたようだったが、すぐに冷静さを取り戻し、その鋭い目で側近を見据えた。そして、低く毅然とした声で答えた。
「承知しました。私が護衛としてお役に立てるなら、全力を尽くします。」
側近は満足そうに頷き、他の貴族たちにもそれぞれの役割を伝え始めた。その声が広間に響くたびに、緊張がさらに増していくようだった。
「皆様、それぞれの領地に戻り、警備体制を見直し、警戒を強化してください。また、不審な動きがあれば直ちに王宮に報告するようにしてください。」
貴族たちは頷きながら指示を受け、次々と退出を始めた。しかし、その一連の動きの中で、側近が私に向けて特別な視線を送っているのに気づいた。
そして、全員の退出がほぼ終わる頃、側近が私に近づいてきた。その冷たい笑みが、私の背筋をぞわりとさせた。
「メイシール様、しばらくの間、他の部屋でお待ちいただけますか?少しお話を伺いたいことがございますので。」
その言葉に、私は一瞬固まった。彼の言葉には礼儀正しい響きがあったが、どこか隠しきれない違和感を覚えた。
ユリがその場ですぐに私を見つめ、明らかに警戒している目で低く囁いた。
「メイ…行く必要はない。これは罠だ。」
「分かってるわ。でも、避けられない。」
私は息を整え、ユリを安心させるように微笑んだ。
「直ぐに連絡するわ。だから、心配しないで。」
ユリは唇を噛みながらも、私の手をしっかりと握りしめて、強く頷いた。その手から伝わる彼の緊張感が痛いほど感じられた。
「あぁ……。」
そう呟いた後、ユリは渋々私の手を離し、王の元へ向かうために足を踏み出した。私はその背中を見送りながら、自分の心の奥に湧き上がる不安を必死に抑えた。
――私は何としてでも、この状況を乗り越えなければならない。ユリとルー、ユフィのために。
そして、側近の案内に従い、私はその先の部屋へと足を踏み出した。
私は一度深呼吸をし、冷静さを装いながら側近に導かれるままに別の部屋へ向かった。廊下を歩く間、窓から差し込む光が薄暗い影を作り出し、その中で自分の足音が妙に大きく響いていた。胸の鼓動が速くなるのを感じながらも、それを悟られないように努めた。後ろをついてくる側近の視線が、鋭く私の背中を追っているのが分かった。
扉が開かれ、私は重厚な雰囲気の漂う別室へと足を踏み入れた。中は広々としていたが、装飾品も少なく、異様なまでに静まり返っている。扉が閉じられる音がやけに大きく響き、私の警戒心は一気に高まった。
「メイシール様、少しお話を伺いたいと思いまして。」
側近は冷たい笑みを浮かべながら、ゆっくりと私に近づいてきた。その目には明らかな悪意が宿っているのが見て取れた。
「随分と露骨な行動をなさいますのね。それで、いったい何の話をされるおつもりかしら?」
私は意識的に声を落ち着かせ、相手に隙を見せないよう努めた。だが、内心ではユリがいないこの状況に深い不安を抱いていた。
「ほんの少しだけお時間をいただければ、すぐに済みます。」
側近はにやりと笑いながら一歩近づいてきた。その一歩ごとに、私の警戒心は鋭さを増していった。
突然、彼の手が素早く動いた。咄嗟に避けようとしたが、次の瞬間、体中に雷のような衝撃が走った。全身が痺れ、力が抜けていく。思わず膝をつきそうになったが、それすらできず、足元から崩れるように倒れた。
「……っ!」
口を開こうとしても声が出ない。目の前が暗くなり、意識が遠のいていく。
《ユリ……ごめ……なさ……》
最後の力を振り絞り、私はユリへとテレパシーを送った。その言葉が届くことを願いながら、視界は完全に闇に飲み込まれた。
倒れた私の前で、側近は冷たく笑みを浮かべた。そのまま私の腕を掴むと、無造作に体を引きずり始める。床に響く鈍い音が、静寂に包まれた部屋に不気味に反響していた。
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