死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

124.生誕パーティーの準備

私が行方不明になった件については、アジャール王子の即位により、その全貌が明るみに出た。
結果として、王の権威が働き、事態は急速に収束へと向かった。
実際には、私は自室に閉じこもっていただけなのだが、新王アジャールの権力と影響力が、この騒動を終わらせたのだった。

アジャール王子の即位により、私の行方不明騒動はあっさりと解決した。実際には私は自室に閉じこもっていただけなのだが、新王の権威のおかげで、あたかも壮大な陰謀が暴かれたかのように事態は収束した。

しかし、落ち着いたのも束の間。

「……うっ。」

朝から胃の奥がムカムカして気持ち悪い。まさかとは思いつつ、これが“つわり”であることに気付いた時、私はゆっくりとユリの方を振り向いた。

「……ユリ、あなた…やったわね?」

「え? 何がです?」

すっとぼけた顔のユリを睨んでいた、その時。

「父さぁぁぁぁん!!!」

突如として、すさまじい怒号が部屋に響き渡った。

振り向くと、ルーが鬼の形相でこちらを見つめ、プルプルと肩を震わせていた。まるで雷を纏うかのような勢いで、ルーの黄金の瞳がギラリと光る。

「母さんの生誕パーティーまで、あと半年しかないってのに!!!」

ユリの横にズカズカと歩み寄り、拳を握りしめながら仁王立ちするルー。その姿は幼いはずの彼が、まるで家長のような貫禄を持っていた。

「えーっと、ルー? そんなに怒らなくても……。」

「父上!! 何度言えばわかるんですか!! いい加減学習してください!! つわりが始まったら、母さんはしばらくまともに動けないんですよ!!」

「……はっ!?」

ユリがようやく事態の深刻さに気付き、固まった。

「そ、そうだったんですか…。」

「“そうだったんですか”じゃないですよ!! この半年は母さんにとって特別な時間なんです!! それを台無しにして、どう責任を取るつもりですか!? つわりが始まったってことは…いつの子なんですか!? ……あ! まさかディッケルの時の…!!父上!! 僕、あの時もちゃんと注意しましたよね!? もう本当に、学習してください!!」

「……。」

ユリは黙って汗をかきながらルーの迫力に押されている。

私は、さすがに怒るルーが可愛く思えて、つい笑ってしまった。

「ルー、そんなに怒らないで。ユリは悪気があったわけじゃないのよ?」

「いえ!! 悪気はなくても、結果的にやらかしてるんだから同じでしょう!!」

ルーはバンッと机を叩き、さらに畳みかける。

「もう……母さんの誕生パーティー、どうするつもりですか? 母さんが万全の状態じゃないと、何も楽しめないじゃないですか。」

「……はっ!!!」

ここでようやくユリは自分が“やらかした”ことを完全に理解したようだ。

「メイの生誕パーティーが……完璧にできなくなる……だと……?」

ユリの顔から血の気が引いていく。普段、冷静沈着な彼がここまで焦ることは珍しい。

「お、おいルー。母さんのために、俺は何をすればいい?」

「まず、父さんはしばらく母さんに近づかないことですね!! 余計な刺激は禁物です!!」

「そ、それは無理だ…!!」

「無理じゃありません!! むしろ、母さんに対して甘ったれた態度を控えるべきです!! なんなら、今後しばらく別室で寝たらどうですか!?」

「なっ……!!?」

ユリの表情が凍りつく。

「ルー、それはさすがに酷いわ…!」私は笑いながら彼をなだめた。「ユリが可哀想よ。」

「母さんは甘すぎます!! 父さんに少しは痛い目を見せないと、また同じことを繰り返しますよ!?」

「ルー、お前……そんなに俺を敵視していたのか……。」

「敵視っていうか、俺はただ、父さんが母さんに甘えすぎなのを何とかしたいだけです!! もう母さんの体のことも考えてくださいよ!!」

ルーの説教は続き、ユリはすっかり意気消沈していた。

「とにかく、母さんは今しばらく安静に!! 父さんはその間、何があっても我慢する!! いいですね!?」

「……はい……。」

しょんぼりと肩を落とし、完敗したユリを見て、私はお腹を抱えて笑った。

――――――――
――――――

時は少し進み、私の23歳の生誕パーティーが王都のレッドナイト公爵邸で開催されることになった。
生誕パーティーの準備もすっかり整い、夕暮れ時の穏やかな時間が邸内に流れている。

大きな窓からは広大な庭園が見え、柔らかなオレンジ色の光が部屋の中を優しく包んでいた。
こんなにも静かで、穏やかな夜は久しぶりだ。
事件に巻き込まれることが多かった私にとって、社交を含む正式な生誕パーティーを迎えるのはこれが初めてなのだから。

「メイ、動きすぎですよ。」

ユリが穏やかに微笑みながら、私の手を取り、そっとソファへ誘導した。
私は素直に腰を下ろし、お腹に手を添えながら息をつく。

「はーい。」

軽く返事をしながら、じんわりとした疲れを感じる。

「いよいよ明日ですね。」

ユリが私の隣に座りながら、自然に私の肩を抱き寄せた。
窓の外を眺めながら、私は静かに呟く。

「私って、世間的には"すぐ行方不明になる人"ですから、きっと注目の的でしょうね。」

ユリは冗談めかして言うが、その言葉の裏には本気で心配する気持ちが含まれているのが分かる。

「それだけじゃないわよ。」

私はクスッと笑いながら、ユリの肩に頭を預けた。

「自分の生誕パーティーで妊娠している人なんて、ほとんどいないんじゃないかしら?」

「……っ!」

ユリの腕が一瞬ピクッと動いたかと思うと、少し赤くなった顔を逸らしながら咳払いをする。

「す、すみません…。あの日は、その……セーブできずに…。」

「……セーブ?」

「そ、その……メイが日に日に成長して魅力的になっていくので、耐えられなくて……。」

ユリが困ったように眉を下げながら、珍しくしどろもどろに言い訳をする。
私は思わず吹き出しそうになった。

「ふふっ。可愛いわね、ユリ。」

からかうように囁くと、ユリはますます顔を赤くし、視線を泳がせる。
彼がこういう反応をするのはとても珍しくて、なんだか愛おしくなる。

「本当に嬉しい?」

私はわざと真剣な表情を作って、ユリを覗き込んだ。

「……もちろんです。」

ユリはゆっくりと深呼吸をし、真っ直ぐに私を見つめ返す。

「最近になって……俺の父上が"馬鹿のふりをして仕事を全て放棄し、母上と領地に引きこもる理由"が分かってしまいました。」

「え?」

「昔は、公爵の地位を必死に追いかけていましたが……最近では、そんなものを手にしてもメイと過ごす時間の方がずっと価値があると気づいてしまったんです。」

私は驚きつつも、その言葉の意味を理解して胸が温かくなった。
彼の言葉には計り知れない愛情が込められている。

「……そんなに?」

「そんなに、です。」

ユリは淡々と、しかしどこか照れたように肩をすくめた。
その表情には穏やかな微笑みが浮かんでいて、私はつい微笑み返す。

「でも、まだ33歳でしょ?」

「もう33ですよ。」

「でも、子供はたくさん作る気でしょ?」

「可能な限り。」

即答したユリの真剣な顔に、私は堪えきれずに吹き出してしまった。

「もう……ユリったら……!」

「本気ですよ。できれば二桁くらいは欲しいですね。」

「えぇ!? それはちょっと考えさせて……!」

私は驚きつつも、彼の言葉に幸せを感じながら、ユリの胸にそっと身を寄せた。
こうして穏やかな時間を過ごせることが、何よりの幸せなのだから。
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