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第二十八話【攻略不可能ですわぁ~~~~~~~~~!!!!】
翌日、エルメラルダとヒスイは朝からのんびり城下町でデートをして、その後夕陽が綺麗で城下町が一望できるという事でエルナザール城最上階の大きな時計が設置されている場所に来ていた。
「わぁ!!すごーーい!!とっても綺麗!!」と風を受けながら幻想的な城下町を眺めるエルメラルダ。
「エル、聞いて下さい。自分は・・・今とても幸せなんです。」と言って、エルメラルダが今にも落ちそうで不安だったので安全なところまで体を押すヒスイ。
「うん?私はも幸せだよ?」とヒスイの気持ちを汲んで壁に手をついて落ちませんよとアピールするエルメラルダ。
「自分は、生まれた頃から・・・しっかりと自我がありまして、母上の思惑やら何やらを全て知ってしまいました。ですから、自分がどれだけ頑張ったところで何も芽生えるものはないと、血縁者が穏便に心穏やかに過ごせるなら自分という存在は適当に生きて適当に死ねばいいとさえ・・・幼少期の頃に考えていました。ですが、まず影と出会いました。エルと出会うまでの間生きてこられたのは影の存在です。」とヒスイは薄っすらと笑う。
「あの万能な影さん?」とキョトンとした顔をするエルメラルダ。
「嬉しいですね。万能と言ってもらえるのは。」と言ってチラリとエルメラルダの後ろにつく影を見るヒスイ。
「不思議よね。影さんってはっきりと姿が見えないっていうか…声も不思議な感じで・・・とっても身近な感じなのに頭の中で誰か特定しようとしたらスーッて消されていくの。」とエルメラルダは目をグッと凝らして影を見る。
するとヒスイがエルメラルダの顔を持って自分の方へ向ける。
「今は・・・自分だけを見て下さい。エルと出会って、未来を想像してしまったんです。・・・・・・幸せな未来を。毎日、毎日どうすればエルを幸せにしてあげられるのか考えました。考えて考えて考えて・・・考えた結果。ここでどれだけエルに尽くしても心の底からエルを幸せにしてあげる事ができないと判断しました。」とヒスイはとても切なげな顔をする。
「え?…私幸せだよ!?十分すぎるくらいに、いっぱいヒスイに色々してもらってるし…私の生きてきた中で今が一番幸せだよ!?」と少し焦るエルメラルダ。
「弟さんの事、心配してますよね。」
「それはっ。・・・・・・もうどうする事もできない過去だよ。」とエルメラルダは少し視線を逸らす。
「どうにかできるとしたら?」
「え?」
「聖属性は自分に都合良く運命を動かすといった特性がある属性です。エルと一緒に過ごしているうちに自分も使えるようになりました。それから・・・どうやって次元を移動するのかも…祖先に聞いてみたりと今日の為に色々と聞いて動いて、それから完成させちゃいました。」とヒスイは手に金色の光を灯す。
「待ってヒスイ・・・何をする気?」と困惑するエルメラルダ。
「エルを・・・エルの全てを自分は幸せにします。」と言ってヒスイはエルメラルダにゆっくり近づいてキスをする。そしてチラリと影をみた。ヒスイは唇を離すと影に向かって「怒るなよ。今日くらい。」と低い声で呟いた。
「え?」とエルメラルダ。
何もないよと言わんばかりにニコリと笑うヒスイ。
「聖女の存在のせいで、自分も心からエルを愛せないというのも問題点ですね。体が聖女に会いたいと疼くんです。本当に王族というのは奴隷以外の何者でもないですね。やっぱり決行するなら今日ですね。」
「待って、ヒスイ何をする気?確かに弟の事は気になるけど、まさか私を元の世界に戻すつもり?もしかして、聖女の力に・・・押し負けてるの?」と不安な顔をするエルメラルダ。
「安心して下さい。エルは明日も明後日も・・・いえ、この先ずっと、自分の手で全力で幸せにします。何も不安に思う事もありません。ただ・・・どうしてもこれだけは、エルの近くで、ここでやらないと成功しないんです。エルを心の底から幸せにする為にも、心の底からエルだけを愛する為にも。だから協力してください。」とヒスイは微笑んでエルメラルダからゆっくり離れる。
「何を協力すればいいの?」と不安気にヒスイをみつめるエルメラルダ。
「ただ、そこにいるだけで良いです。」
一方その頃、聖女カオリは何とかティファニールの手から逃れていた。
引きちぎったカーテンを結び繋いだものを垂らして、それを伝いなんとか1階の城の前に着地する事ができた。
(全くどうなってるのよ。第一王子は意識不明で約1年寝たきり、推しのダリは顔面に酷い火傷でとダリなのかどうなのかわかんないし、オミドーだってつるつるのハゲになってたし…本当にここはウルコクの世界なの?色々いないし、色々足りないんだけど…。)
「何処へ行くのかな?」と聖女の耳元で囁くティファニール。
「きゃあああああ!!!」と叫んで迷路のような庭園の中を走って逃げる聖女。
「あっはっはっ。俺の可愛い妻は今日も元気そうだなぁ。俺は足も早いけど、可愛い可愛い君に合わせてあげるよ。」と言ってゆっくり歩きだすティファニール。
聖女は庭園内を抜けて何とか城内に戻ろうとする。
「ハァ・・・ハァ・・・こうなったら・・・せめて超最難関攻略不可能な第四王子の攻略チャレンジだけでも・・・」とゲスイ笑みを浮かべて城に入ろうとした時。
ドサッ・・・グベチャッ・・・
とても酷い音と共に血飛沫が上がり、聖女の頬に血がついた。
「は?」と目が点になる聖女。床には体が殆ど潰れている第四王子。そこから血がドクドクと溢れ出す。
「何よ…どうなって…。」と言って王子が落ちて来たであろう上を見上げれば人影が見えた。
聖女の頭の中に浮かんだのは【BADEND】だった。
「ヒスイーーーー!!!!」とエルメラルダの叫び声が響いた。
・・・・・・・・
エル、自分は・・・生きる意味を見つけたんです。エルと出会って・・・全てものに色がついて、初めて心から楽しいと、嬉しいと、悲しいと、不安と、怒りと、焦りと、幸せと・・・すべての感情を感じる事ができました。
エルは時々寝ていると「ノルマが・・・。」「残業が・・・。」「支払いが・・・。」「学費が・・・。」と寝言を言って魘されているんです。
それは前世での事ですよね?追い詰められているんですよね?エルは自分が幸せだと思う度に、弟さんの顔がチラついているんでしょう?そういうのバレバレなんです。
自分は結構前から考えていましたよ。前世をどうにかしないと今のエルは心の底から笑えないんだろうなって。
まぁ、しばらくはこのままでも良いかと思っていましたけど、聖女が現れて、母上がいた時以上に強く感情を引き寄せられて、自我をしっかり保つ事が厳しくなってしまい早々に・・・死ぬことにしました。
エルを心から愛したいからです。愛したいから死にます。聖女が近くにいてくれたおかげで、とても楽に死ねます。愛しすぎて死ぬことを体が拒んでいましたからね。
ほら・・・もう体から魂が離れました。不思議な光景ですね。あれだけ血を流していたのに体が光の粒になって消えていっています。
・・・・・
「ヒスイ、いくのか?」とアナスタリアの声だ。光となったヒスイだがふり返ればアナスタリアと金髪のエルメラルダがいた。二人は仲良さそうに寄り添っていた。
「なんだ。見つけれてるじゃないですか。」と返すヒスイ。
「ヒスイ様・・・。」と金髪のエルメラルダ。
「時期に聖女の力が解除されます。もう戻っても大丈夫ですよ。お二人とも。」とヒスイ。
「ありがとう。ヒスイ。気を付けてな。」とアナスタリアは笑う。
「では、さようなら。」と言ってヒスイは光となって消えてしまった。
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