救世主として転生させられたが余計なスキルのせいで快適な異世界生活どころじゃない。良かれと思ってだろうがスキル解除するまで世界は救ってやらない

takaoka

文字の大きさ
2 / 45

2話 スキル開花

しおりを挟む
「・・・あ、あれ?この記憶。そ、そうだ俺はよく分からない老人に言われてこの世界に来たんだった」

10歳の誕生日の朝、突然甦る前世の記憶に戸惑う。それもそのはずだ。今までの10年の記憶とは別の記憶が急にどこからともなく現れたからだ。

しばらくどの記憶が前世かどうか混乱していたが徐々に落ち着きを取り戻す。そして自分がやるべきことを思い出す。

(そういえばあの老人世界を救ってくれと言っていたな。今までの生活ではそんな危機らしい危機はなかったがこれから起こるのか?)

信二は転生した後アンドレという名前で育てられた。アンドレとしての自我が芽生えたのは3歳頃だったがそれからの7年間彼の周りは平和そのものだった。

「それはそのうちわかるだろう。あの爺さんも言っていたしな。そういえばスキルも徐々に開花してくと言っていたが・・・これは今すぐという訳ではなさそうだな」

記憶を取り戻したアンドレはこれからのことについて計画を立てる。何せ世界を救うのだ。生半可な訓練では立ち向かえないだろう。そしてスキルの以外のことでどう自信を鍛えることができるのか、この世界の環境と前世の知識を総動員して計画書を作成した。

「とりあえずこれでいいだろう。後はスキル次第で計画を変更していけばいいかな」

思ったよりもページ数の少ない計画書になってしまったがまぁこんなものだろう。何せこの世界のことは知らないことの方が圧倒的に多いのだ。

書き終わった計画書を読み返しているとノック音が聞こえる。もうこんな時間か、続きは明日にしよう。

「ご飯よー」

俺の母親の声が家の中で響き渡る。扉を開けると既に母親はいなかったがご飯のいい香りがした。今日も美味しいご飯を期待できそうだ。

居間へと向かうと既に母親と父親は俺のことを待っていた。それを見て急いで着席する。

俺の着席後すぐに食事が始まる。匂いでなんとなく想像はできていたが今日は鶏の丸焼きとスープとパンだ。ものすごく豪華というわけではないが不満に感じたことはない。何不自由なく育ててくれる両親には感謝しかない。

暫くはいつもの食事という感じだったが急に母親であるエマが質問を投げかけてきた。

「部屋の中で何かぶつぶつと言っていたようだけど・・・何かあったの?」

部屋の外まで聞こえてたのか。と少々迂闊だったと反省するが問題は今ここでどう返すかである。急に前世の記憶が戻ったと言っても頭がおかしくなったと思われる可能性もあるし困ったが・・・

「どこかの御伽噺では魔王とかが世界の平和を脅かすようなお話があったけどこの辺りでも同じようなことってあるのかなぁって思ったの」

俺の発言にエマと父親であるティムはお互いのことを見たかと思うと大笑いした。笑い終えたティムは俺の方を見て

「いや、面白いことを言うね。確かにそういう話はあるけどこの世界は平和そのものだ。少なくとも今はね。遥か昔では争いの絶えない時代もあったらしいんだけど・・・あまり文献も残ってないから本当かは分からない。それに魔物は確かにいるが人の住む領域にいるものの強さは知れている」

ティムの発言は今までに俺がこの世界で得た知識と特に変わらない。どこを調べても同じだ。やはりこの世界は今は平和そのもので危機が訪れるとしたらこれからなのか。

いつ来るとも分からない危機を前に俺は両親に冒険者としての腕を磨きたいと言い、特訓の日々が始まった。

特訓が始まり、日々成長を感じれていたのだが・・・そんなある日事件は起こった。

「よし、今日はこれくらいにしておこう。毎日成長を感じれて嬉しいとは思うが程々にしないと怪我するからな。先に戻ってるから後片付けを頼む」

ティムからは主に剣術を学んでいる。彼は昔、冒険者をやっていたこともあって剣術の基本を一から教えてくれている。そのかわり、こうして稽古で使った剣の手入れ、訓練場の掃除などは全部俺がすることになっている。

「今日も疲れたな。父さんは俺のことをちゃんと見ていてくれて丁度いいところで切り上げてくれる。流石としか言えないな」

父親に関心しつつ、掃除をしていたのだが、突如身体に違和感を感じた。どこか痛めたか?と思ったがどうやら違う。何か新しい世界が開けてくるような不思議な感じに包まれた。

(もしかしてスキルが開花したのか?)

徐々に違和感は収まっていき、何事もなかったかのように静かな訓練場に1人立ち尽くしていた。

「と、とりあえずスキルを調べてみないと・・・でもどうやって?」

まだこの世界に来てからスキルのことについては詳しくは勉強していない。ある程度経験を積むとスキルに目覚めることがある、程度の知識しかない。とりあえず両親に聞いてみよう。そう思って駆け出そうとしたとき、どこからともなく声が聞こえてきた。

『スキルについてですね。私の方から説明します。おっと自己紹介が遅れましたね。私は貴方のスキル並列思考によって生み出された。もう一人の貴方とでも言うべきでしょうか』

『私は神より貴方に授けられたスキルであるため通常の並列思考とは異なり、貴方が知らない事でもこの世界の知識を持っていることがあります。但し、全てを知っているわけではないので悪しからず』

おぉ、随分と便利なものをくれたものだと感心し、並列思考に話を続けるように伝える。

『ではスキルについてですね?貴方の持っているスキルは3つです。1つ目は並列思考。これは先程説明したので割愛します。2つ目は感覚強化。これは簡単に言うと一時的に五感の機能をあげることができるものです。使うと多少の疲労感に襲われますが訓練次第で強化は可能です。そして最後は疲労回復、これは言うまでもありませんね。他の人よりも疲労の回復が早くなります』

「なるほど、とても参考になった。2つのスキルについても今使うことはできるか?」

『はい、感覚強化は心の中で使うと意識すれば自動的に発動されます。そして疲労回復のスキルは常に発動しているタイプなので特に気にする必要はありません。ちなみに並列思考のスキルも同様です』

「なるほど、じゃあ試してみよう」

(感覚強化!)

心の中で意識すると途端に周囲の景色が何か違って見えるような気がした。外から聞こえてくる虫の鳴き声、地面に転がっている石ころの形、そして周囲の風の流れ、遠くから微かに香る晩御飯の匂い。普段なら感じ取れないものを感じ取れる不思議な感覚に包まれた。

感動して周囲から情報を得ようと歩き回ろうとしたがそこでスキルが切れたのかいつも通りの景色に戻り、疲労感に襲われる。元々稽古で疲れていたこともあって少しふらついてしまった。

『どうでしたか?上手くいったようには見えましたが』

「あぁ、すごい。こんなスキルをくれた神には感謝しないとな」

『それはなによりです』

「ところで、お前は俺の考えていることもわかるんだよな?」

『そうですが・・・何か問題でも?』

「お前は俺から生まれたものかもしれないが俺から切り離された時点で別人みたいなもんだ。正直気持ちが悪い。俺が許可した時しか俺からの情報は受け取れないようにしてくれ。同様に俺がスキルを使っている時だけこうやって応答してくれ」

並列思考はすぐに言い返してこなかった。何か問題でもあるのだろうか?

『先ほども言いましたがこのスキルは常時発動タイプです。貴方の命令にはなるべく従いますがその命令には従うことができません』

そういえばそんなことさっき言っていた・・・え?これこのままなの?

「なんとかならないの?」

『無理です。これからよろしくお願いします』

訓練場に「なんでだよおおおおおおおおお」と悲痛の声が響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

処理中です...