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過去の精算
※七話
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「ねぇ、まだかな」
退屈そうな声。伸ばされた手が、何の前触れもなく胸の尖りに爪を立てる。ギリギリと音すら聞こえてきそうなほどの力に慌てて腕を引き剥がそうにも、うまく力が入らない。生ぬるい液体が内腿を伝った。
「い、……ったい、!」
「ごめんごめん、あんまり遅いから寝てるのかなって。……せっかく綺麗な色だったのに赤くなっちゃったね」
ぬろり。弄られすぎたせいで熱をもち、ジンジンと痛むその場所を、ぬるついた感覚が包み込む。気まぐれのようにやわく歯を当てられる度、妙にぞわぞわとして落ち着かない気分になった。
腰に手を回されているせいで逃げられず、それならばと頭を掴んで引き離そうにも、仕置きとばかりに強く噛みつかれてしまえば、それまでのこと。
「……ん、っ、……~~ふ、は、ァ」
「ひもひいい?」
「ぁ! っ歯ァ、立てるな……!」
「ほら見て、真っ赤になっちゃって簡単につまめる。……ああでも、桜木くんはちょっと強めに齧られた方が好きみたいかな」
かりっ。散々弄られ、赤く腫れ上がった部分に容赦なく歯が当てられる。痛みか、快感か、それすら判別もつかないまま背中が勝手に仰け反った。なんとか膝立ちで耐えていた足から、ついにかくりと力が抜ける。
「……~~~~ぁ"……ッ、が!!」
「あーあ、入っちゃった」
他人事見たいな呟きが耳に届く。けれど今はそれすらどうでもいい。
一気に、それも自重のせいか先ほどより深く入ってしまったせいで、呼吸すらも苦しくて仕方ない。息を吸うたびに腹の奥の異物を意識してしまうから、はっはっと荒い呼吸を繰り返した。
「動くよ」
「ぁ"っ、ぅ、あ、ァ……っ」
「苦しい? ははっ、薄っぺらいお腹が膨らんでる」
「……~~ぅ"……ッ、」
腹をさすっていた手がそのままぐうっと力を増し、外側から確かめるように押してくる。
「ん~、どこだったかな」
下から突き上げてくる動きは、次第に何かを探るような動きへと変わっていった。
「──~~~~ッひぁ"……!、?」
途端に走る、痛みにも似た感覚。薄い口元が弧を描いた。
「ここ気持ちいいでしょ。さっき教えた前立腺」
「し……っらない、知らない……!」
「知らない? じゃあ何回でも教えてあげるから今日で覚えて」
「ぅ"ぁ……~~っ、! あ"……っ、も、ゃ、やだ……!」
ひとたび押されてしまえば、体は呆気なく札束とシーツの中へ沈んだ。中に入ったままの熱がぐり、と狙ったように弱い場所ばかりを押しつぶす。
足はぴんと伸び切って勝手に痙攣を繰り返し、熱を帯びた肉壁を擦られる辛さに体は自然と逃げを打った。
「ほーら逃げないの」
「ぁ~……ッ! ぃっ、許し……っ、~~!」
「沢山して気持ちいいこと覚えようね」
「ひっ、ごめんなさい! ぁ"……っ、ぅ、逃げない! も、……逃げない、から、~~……ぅぁ"っ!」
けれどすぐに引き戻され、仕置きとばかりに奥を深く穿たれる。可動域の限界まで広げられた関節がギリギリと軋んで痛みを生んだ。
体の奥深くを抉られる感覚に背筋を反らし、肉壁を擦られるたび走る甘い痺れにわけもわからないまま謝罪ばかりを繰り返す。
何が正しいのか、間違っているのかなんて今この瞬間はどうだっていい。ただこの暴挙が終わってくれたらそれでよかった。
「ふふっ、変な桜木くん。僕は別に怒ってないよ」
薄い唇が白々しい言葉を吐いて弧を描く。きっと目の前にあるのはこの世で一番信用してはいけない笑顔だろう。慰めるかのように唇が優しくまなじりに触れた。
「ただ一緒に気持ちよくなりたいだけだから」
「ぁ"っ、……? っ、ひ、ぁ、あっ、ぁ──ッ、ァ──……ッ!!」
「あ、落ちちゃった。仕方ないなぁ……──起きて、ねぇ、起きろって!」
ガクガクと容赦なく揺さぶられ意識が飛ぶ。けれどその度に叩き起こされ、逃げることもできずにまた限界を迎えて同じことの繰り返し。こんなもの俺が知ってるセックスじゃない。拷問だ。
「はっ、ナカ熱くてどろっどろだ」
「ぃ……っ、ぅ、あ"、ァ、あ────……ッ!」
「そろそろ出すよ。ねぇ、桜木くん」
上擦った声。目の前の体にしがみついて、けれど爪を突き立てるような気力もなく、ずるっと汗で滑り落ちた右手はそのまま。強く腰を掴まれ、奥に熱いものを感じていた。
「好きだよ」
なんて、聞きたくもない。薄れゆく意識の中、それはそれは嬉しそうに笑う顔が憎らしくて、そこでぐるんと暗闇に落ちた。
退屈そうな声。伸ばされた手が、何の前触れもなく胸の尖りに爪を立てる。ギリギリと音すら聞こえてきそうなほどの力に慌てて腕を引き剥がそうにも、うまく力が入らない。生ぬるい液体が内腿を伝った。
「い、……ったい、!」
「ごめんごめん、あんまり遅いから寝てるのかなって。……せっかく綺麗な色だったのに赤くなっちゃったね」
ぬろり。弄られすぎたせいで熱をもち、ジンジンと痛むその場所を、ぬるついた感覚が包み込む。気まぐれのようにやわく歯を当てられる度、妙にぞわぞわとして落ち着かない気分になった。
腰に手を回されているせいで逃げられず、それならばと頭を掴んで引き離そうにも、仕置きとばかりに強く噛みつかれてしまえば、それまでのこと。
「……ん、っ、……~~ふ、は、ァ」
「ひもひいい?」
「ぁ! っ歯ァ、立てるな……!」
「ほら見て、真っ赤になっちゃって簡単につまめる。……ああでも、桜木くんはちょっと強めに齧られた方が好きみたいかな」
かりっ。散々弄られ、赤く腫れ上がった部分に容赦なく歯が当てられる。痛みか、快感か、それすら判別もつかないまま背中が勝手に仰け反った。なんとか膝立ちで耐えていた足から、ついにかくりと力が抜ける。
「……~~~~ぁ"……ッ、が!!」
「あーあ、入っちゃった」
他人事見たいな呟きが耳に届く。けれど今はそれすらどうでもいい。
一気に、それも自重のせいか先ほどより深く入ってしまったせいで、呼吸すらも苦しくて仕方ない。息を吸うたびに腹の奥の異物を意識してしまうから、はっはっと荒い呼吸を繰り返した。
「動くよ」
「ぁ"っ、ぅ、あ、ァ……っ」
「苦しい? ははっ、薄っぺらいお腹が膨らんでる」
「……~~ぅ"……ッ、」
腹をさすっていた手がそのままぐうっと力を増し、外側から確かめるように押してくる。
「ん~、どこだったかな」
下から突き上げてくる動きは、次第に何かを探るような動きへと変わっていった。
「──~~~~ッひぁ"……!、?」
途端に走る、痛みにも似た感覚。薄い口元が弧を描いた。
「ここ気持ちいいでしょ。さっき教えた前立腺」
「し……っらない、知らない……!」
「知らない? じゃあ何回でも教えてあげるから今日で覚えて」
「ぅ"ぁ……~~っ、! あ"……っ、も、ゃ、やだ……!」
ひとたび押されてしまえば、体は呆気なく札束とシーツの中へ沈んだ。中に入ったままの熱がぐり、と狙ったように弱い場所ばかりを押しつぶす。
足はぴんと伸び切って勝手に痙攣を繰り返し、熱を帯びた肉壁を擦られる辛さに体は自然と逃げを打った。
「ほーら逃げないの」
「ぁ~……ッ! ぃっ、許し……っ、~~!」
「沢山して気持ちいいこと覚えようね」
「ひっ、ごめんなさい! ぁ"……っ、ぅ、逃げない! も、……逃げない、から、~~……ぅぁ"っ!」
けれどすぐに引き戻され、仕置きとばかりに奥を深く穿たれる。可動域の限界まで広げられた関節がギリギリと軋んで痛みを生んだ。
体の奥深くを抉られる感覚に背筋を反らし、肉壁を擦られるたび走る甘い痺れにわけもわからないまま謝罪ばかりを繰り返す。
何が正しいのか、間違っているのかなんて今この瞬間はどうだっていい。ただこの暴挙が終わってくれたらそれでよかった。
「ふふっ、変な桜木くん。僕は別に怒ってないよ」
薄い唇が白々しい言葉を吐いて弧を描く。きっと目の前にあるのはこの世で一番信用してはいけない笑顔だろう。慰めるかのように唇が優しくまなじりに触れた。
「ただ一緒に気持ちよくなりたいだけだから」
「ぁ"っ、……? っ、ひ、ぁ、あっ、ぁ──ッ、ァ──……ッ!!」
「あ、落ちちゃった。仕方ないなぁ……──起きて、ねぇ、起きろって!」
ガクガクと容赦なく揺さぶられ意識が飛ぶ。けれどその度に叩き起こされ、逃げることもできずにまた限界を迎えて同じことの繰り返し。こんなもの俺が知ってるセックスじゃない。拷問だ。
「はっ、ナカ熱くてどろっどろだ」
「ぃ……っ、ぅ、あ"、ァ、あ────……ッ!」
「そろそろ出すよ。ねぇ、桜木くん」
上擦った声。目の前の体にしがみついて、けれど爪を突き立てるような気力もなく、ずるっと汗で滑り落ちた右手はそのまま。強く腰を掴まれ、奥に熱いものを感じていた。
「好きだよ」
なんて、聞きたくもない。薄れゆく意識の中、それはそれは嬉しそうに笑う顔が憎らしくて、そこでぐるんと暗闇に落ちた。
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