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-トラウマときっかけ-
三話
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「頼む、最後のページだけ写させてくれ!!」
「これ旅行のお土産ね~」
「今日さぁ、マジで寒すぎん?」
ざわざわとした教室の片隅で、俺は一人幸せを噛み締めていた。
自由って最高……!!
朔は1-A、俺は1-Dと物理的にも離れているから、校内であればそう簡単に手出しは出来ないだろう。……それにしても、昨日は本当に散々な目に遭った。
最初こそ耐えられると思った微弱な振動は、言い換えれば決定的な刺激になり得なかった。もどかしい甘さだけが腹の奥に溜まっていき、それでも射精に至ることはできないあのツラさ。
とうとう我慢できなくなってこっそり性器を扱こうとしたのだが、すぐに見抜かれ後ろ手に手錠をつけられてしまった。あれから今の今まで、結局一度も射精できてはいない。
ゴンッ
未だに疼く下肢を誤魔化すように、小さく呻いて机に頭を押し付けた。やめろ、余計なことを思い出すな。
「早く席に着きなさい! もう二限目始めるわよ」
鋭い声が聞こえたかと思うと、教室の扉が勢いよく開いた。一限目は始業式だったけど、二限目からは通常授業が詰まっている。流石は進学校と言うだけあって、冬休み明けでもお構いなしだ。
慌てて教科書とノートを取り出し、悶々としていた気持ちを引き締める。ただでさえ授業についていくだけで精一杯なのだから、今は勉強に集中しなければ。
―――――
ようやくホームルームが終わり、安堵と不安が混ざった溜め息を吐く。本来ならば真っ先に帰って復習をするのだが……
「こーちゃん、迎えに来たよ」
開きっぱなしの扉から、ふわふわとした栗色の髪が覗く。嬉しそうに目を細めたそいつは1-Dの教室に我が物顔で足を踏み入れた。
他クラスなんだから、普通はもっと躊躇するものじゃないだろうか。いつも人目を気にしている俺にとっては、よくわからない感覚だ。
「えっ、兎山くんが来てる!」
「嘘……! えー本当だ。もっと気合い入れて化粧すれば良かった~~」
「ねぇ、今迎えに来たって言わなかった? もしかして彼女!?」
今朝より何倍も騒がしくなった歓声(主に女子)に、思わず耳を塞ぎたくなる。
みんなして完璧な"兎山朔斗"に騙されてるんだ。こいつは顔がいいだけの腹黒レイプ魔で、尚且つ性癖の歪んだドS野郎なんだと今この場で叫んでやりたい。
でもそんな事は出来ないから、ただ目立たないように下を向いて、膝の上にある拳をぎゅっと握りしめた。
机や椅子の合間を縫って、朔はどんどん近づいてくる。やめろ、こっちに来るな。縮まっていく距離に反比例して、次第に息が荒くなる。まるで死刑宣告を待つ囚人の気分だった。
「こーちゃん、帰ろうか」
「…………っ」
「あれ? もしかして寝てる?」
そうだ、俺は寝てるんだ。だから諦めて帰ってくれ。寝ているにして呼吸が荒いし、肩や腕だって微かに震えてる。狸寝入りというにはあまりにお粗末なものだったが、例え一ミリでも信じてくれる可能性があるのなら、それに縋っていたかった。
「……うーん、寝てるならしょうがないか。折角こいび――」
「…ッ待て! 起きてる、起きた……、から」
「そう? 良かった」
にっこりと笑った顔に女子たちから再び歓声が上がる。こんな中で"恋人"なんて呼ばれた日には、阿鼻叫喚の地獄絵図まっしぐらだ。
「嵐山君って兎山君と友達なの?」
「えーそんな話聞いた事ないけど……」
「知り合いなのかな~、羨ましい」
ひそひそとした話し声。ハッとあたりを見渡せばいくつもの目、目、目――いつの間にか、クラス中の視線が朔斗と虎徹に向けられていた。
やめろ、そんな目で俺を見るな。チカチカと視界が瞬いて、あの時の映像と重なっていく。
(おれはやってない。ほんとなんだよ、信じてくれ)
言葉にならない音が喉を鳴らして、尋常ではない量の汗が体中からどばっと吹き出した。早くここから立ち去りたいと思っているのに、視界が何重にも滲んで、目の前にある鞄すら禄に掴めやしない。
諦めたように項垂れていると、ふいに通学鞄が宙に浮いて視界の端に消えていった。そのまま強い力に手を引かれ、教室の外へと連れ出される。
いつになく真剣な表情の朔斗と、半ば引き摺られるようにして歩いている虎徹。不思議な組み合わせに周囲の生徒たちは目を丸くしたものの、誰一人として声をかける者はいなかった。
「これ旅行のお土産ね~」
「今日さぁ、マジで寒すぎん?」
ざわざわとした教室の片隅で、俺は一人幸せを噛み締めていた。
自由って最高……!!
朔は1-A、俺は1-Dと物理的にも離れているから、校内であればそう簡単に手出しは出来ないだろう。……それにしても、昨日は本当に散々な目に遭った。
最初こそ耐えられると思った微弱な振動は、言い換えれば決定的な刺激になり得なかった。もどかしい甘さだけが腹の奥に溜まっていき、それでも射精に至ることはできないあのツラさ。
とうとう我慢できなくなってこっそり性器を扱こうとしたのだが、すぐに見抜かれ後ろ手に手錠をつけられてしまった。あれから今の今まで、結局一度も射精できてはいない。
ゴンッ
未だに疼く下肢を誤魔化すように、小さく呻いて机に頭を押し付けた。やめろ、余計なことを思い出すな。
「早く席に着きなさい! もう二限目始めるわよ」
鋭い声が聞こえたかと思うと、教室の扉が勢いよく開いた。一限目は始業式だったけど、二限目からは通常授業が詰まっている。流石は進学校と言うだけあって、冬休み明けでもお構いなしだ。
慌てて教科書とノートを取り出し、悶々としていた気持ちを引き締める。ただでさえ授業についていくだけで精一杯なのだから、今は勉強に集中しなければ。
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ようやくホームルームが終わり、安堵と不安が混ざった溜め息を吐く。本来ならば真っ先に帰って復習をするのだが……
「こーちゃん、迎えに来たよ」
開きっぱなしの扉から、ふわふわとした栗色の髪が覗く。嬉しそうに目を細めたそいつは1-Dの教室に我が物顔で足を踏み入れた。
他クラスなんだから、普通はもっと躊躇するものじゃないだろうか。いつも人目を気にしている俺にとっては、よくわからない感覚だ。
「えっ、兎山くんが来てる!」
「嘘……! えー本当だ。もっと気合い入れて化粧すれば良かった~~」
「ねぇ、今迎えに来たって言わなかった? もしかして彼女!?」
今朝より何倍も騒がしくなった歓声(主に女子)に、思わず耳を塞ぎたくなる。
みんなして完璧な"兎山朔斗"に騙されてるんだ。こいつは顔がいいだけの腹黒レイプ魔で、尚且つ性癖の歪んだドS野郎なんだと今この場で叫んでやりたい。
でもそんな事は出来ないから、ただ目立たないように下を向いて、膝の上にある拳をぎゅっと握りしめた。
机や椅子の合間を縫って、朔はどんどん近づいてくる。やめろ、こっちに来るな。縮まっていく距離に反比例して、次第に息が荒くなる。まるで死刑宣告を待つ囚人の気分だった。
「こーちゃん、帰ろうか」
「…………っ」
「あれ? もしかして寝てる?」
そうだ、俺は寝てるんだ。だから諦めて帰ってくれ。寝ているにして呼吸が荒いし、肩や腕だって微かに震えてる。狸寝入りというにはあまりにお粗末なものだったが、例え一ミリでも信じてくれる可能性があるのなら、それに縋っていたかった。
「……うーん、寝てるならしょうがないか。折角こいび――」
「…ッ待て! 起きてる、起きた……、から」
「そう? 良かった」
にっこりと笑った顔に女子たちから再び歓声が上がる。こんな中で"恋人"なんて呼ばれた日には、阿鼻叫喚の地獄絵図まっしぐらだ。
「嵐山君って兎山君と友達なの?」
「えーそんな話聞いた事ないけど……」
「知り合いなのかな~、羨ましい」
ひそひそとした話し声。ハッとあたりを見渡せばいくつもの目、目、目――いつの間にか、クラス中の視線が朔斗と虎徹に向けられていた。
やめろ、そんな目で俺を見るな。チカチカと視界が瞬いて、あの時の映像と重なっていく。
(おれはやってない。ほんとなんだよ、信じてくれ)
言葉にならない音が喉を鳴らして、尋常ではない量の汗が体中からどばっと吹き出した。早くここから立ち去りたいと思っているのに、視界が何重にも滲んで、目の前にある鞄すら禄に掴めやしない。
諦めたように項垂れていると、ふいに通学鞄が宙に浮いて視界の端に消えていった。そのまま強い力に手を引かれ、教室の外へと連れ出される。
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