槙島源太郎の『まあ週刊ユーモア短編集』

槙島源太郎

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第4作 全自動白髪染機開発顛末記

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「昨今、自分を甘やかし過ぎている風潮がある。

やたら自分の長所を伸ばせとか、自分を褒めろとかの話が多過ぎる。

それでは本来の成長と満足は得られない。

臭いところに蓋をしているだけだ!

本気で自分の苦手なことや嫌いなことを克服することこそ人生への挑戦だ!

来年2049年こそ、自分の短所を克服する一年にするのです!短所克服だぁー!」


泉屋和喜夫は、理髪店を開業したものの、自分のほんとうのやりたい事がみつからずに毎日単調な仕事を続けていた。

ある日ふと、店内でBGMとして流れているラジオから今国民に大人気の京都の濁水寺の幸手同寸導師からの力強いメッセージを聞いて、思わず鋏を止めた。

「なるほど!俺は長所も無ければ、短所もそれほど自覚していなかった。

きっとだからほんとにやりたいことがみつからないんだ!」

一瞬止めた鋏を動かし、髪を切り始めながら、

「長所と短所か、、、短所、短所、やるべきことを見つけて命かけてみたいなあ」とつぶやいた。


髪を切られている常連客の四ツ井純朋も幸手同寸導師の話を聞いていた。

「泉屋さんは、こうして理髪店を開業していて立派じゃないの!俺なんか、財閥企業の孫会社でさ、上は全部子会社から天下りだよ。先なんてないんだよ。」

「いや~、財閥系なんて僕は逆立ちしても入れませんからめちゃ裏山しいです!」

「嘘つけよ!今たぶん羨ましいじゃなくて、裏山って思ってたろ?^ ^」

「え!わかっちゃいましたか?^ ^」

なんかこの二人は相性が良くてボケとツッコミがうまくいく。


「第一さ、理髪店はさ、必ず髪が伸びる商売じゃない?無くならないよな?この仕事。

それにこれだけ車が自動運転になっても散髪は全自動ってなかなか難しいしね。そう言えば、この前韓国で全自動散髪機を開発したヨムソン電子の社員がテスト中に耳がちょん切れたらしいね!」


「機械は無理だと思いますよ。散髪中、寝て船漕いでる人もいますからね。

でもねこの商売、発展ってないんすよ。地道にやるだけなんで。

昔修行時代に付いて習ってた先輩にも仕事の未来とか余計なこと考えるな!終わったあとのビールを楽しみにしてろ!って良く言われて納得してましたよ。」

「ようはさ、それが長所であり、短所なわけだな?」

四ツ井純朋は、自分のことを考えながらも言葉では泉屋和喜夫にいい答えをだそうとしていた。


「四ツ井さん、はい、いかがですか?鏡見ますか?」

「終わった?見る見る。あー!やっぱり俺すごいなあ、白髪が。恥ずかしいなあ髪切ってから帰るの。」

「そうですか?夜だし、誰も見てないですよ^ ^」

「白髪はこの2049年でも無くなる薬ないんだよね。なんとか簡単に染める方法ないかな。面倒なんだよね。」

泉屋は、四ツ井純友の帰りがけの言葉が妙に頭に残っていた。


「そうか、白髪染か。白髪染が簡単にできる方法が有ればいいんだな!」


泉屋は、幸手同寸導師の教えである「短所を克服せよ!」と言う言葉に強い影響を受けていた。

「よーし、俺は全財産を叩いてでも世の中の白髪で困っている人を無くしてやるぞ!」

それからと言うもの、泉屋は機械工学のAIをジャパナットで購入し、自動白髪染機の開発に取り組んだ。

そして、5年後ついに理髪店も倒産し、全財産を叩いて、それでも足りずに借金して全自動白髪染システムが完成した。

頭を袋に包み込んで、中に白髪染を噴霧するアイデアだった。

「ようやく、完成したぞ!!ついにやった!世界初の全自動白髪染機が出来た!

それにしても危なかった。もう金も借りられずに、これで完成しなかったら俺は終わってたよ!

それに、俺はついに短所を克服したんだ。目標を決めてやり抜いた!幸手同寸導師のおかげだ!」


その時だった。

倒産した店から持ってきたラジオから幸手同寸導師の力みなぎる声が聞こえてきた。

「長所を伸ばすことこそ、今の時代は必要です!
短所なんか気にすることはない!

例えば白髪なんかあってもいいじゃないか!白髪のどこが悪いんだ?何も悪くないし、むしろかっこいいじゃ無いか!短所を気にするなぁー!」

中高年に絶大な人気を誇る幸手同寸導師の影響力は凄まじかった。

その日を境に、街のドラックストアから白髪染は売れなくなったのだ。

そして、製造販売委託契約先に頼んでいた財閥系企業の四ツ井純朋から電話が入った。

「残念だけど、親会社からの指示であの話は白紙に戻して欲しい。もう誰も白髪染する人はいないらしいから」

全財産を失った泉屋和喜夫は、もう覚悟を決めていた。

マイナスからの再スタートをすることを。

「さってどうすんだろ、こらから俺」
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