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いじめていたのは僕だった。

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町立北中学の3年生、東風は毎日、鏡を見ながら自分を憎んでいた。彼の瞳は、過去の過ちの影が浮かんでいた。

中学1年生のとき、彼はクラスの浅葉をいじめていた。その理由は、浅葉がいつも1人で本を読んでいることや、授業に熱心なこと。しかし、その真の理由は、東風自身が自分の孤独や劣等感から逃れるためだった。

ある日、浅葉が学校に来なくなった。東風は、他の生徒たちと共に、その事実を冷ややかな目で見ていた。しかし、心の中では、自分が彼の心を傷つけたことを痛感していた。

それから数ヵ月後、東風は浅葉と再会することとなった。それは、町の図書館でのことだった。浅葉は、変わらず一人で本を読んでいた。彼の目には、かつての楽しい日々の記憶や悲しみが浮かんでいた。

東風は勇気を振り絞り、彼のところに近づいた。そして、深く頭を下げ、「ごめんなさい」と謝罪した。浅葉は驚きの表情を見せながらも、温かい目で彼を見つめた。

「ありがとう。」浅葉の言葉は、東風の心を満たしていった。二人は、それからというもの、図書館での読書を共有し始めた。

やがて、東風は浅葉から多くのことを学んだ。本の楽しさ、学びの大切さ、そして人との繋がりの深さ。彼は、いじめの過ちを犯した過去を背負いながらも、新しい人生の扉を開いていった。

中学卒業の日、東風は卒業式のスピーチで、自分の過去の過ちと、浅葉との出会いを共有した。彼の言葉は、多くの生徒たちの心を打った。

「いじめていたのは僕だった。しかし、それを乗り越え、新しい自分を見つけることができた。それは、浅葉との出会いがあったからこそだ。」
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