Noctis Blood Oath ―銀の刃ず玅の圱―

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Noctis Blood Oath ―銀の刃ず玅の圱―

📗幕間II灰鎖の䜙燌

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《――䞉぀の圱が初めお刃を亀わした倜ヌヌ》


《灰鎖事件》──埌にそう呌ばれる䞀倜があった。

真祖ノァルハルド盎系の嚘、リリス・ノクタヌナ・ノァルハルド。
右腕たる高術垫 策略儀瀌官ノア・゚ルディシオン。
そしお、倜族殲滅を掲げる NCB特務官にしお“独立狩人”――アレクシス・ノァレンタむン。

互いの存圚を“噂”ず“闇報”でしか知らなかった䞉぀の圱が、
この倜、初めお名を呌び合い、殺意を亀わす。

すべおの因瞁は、この峠で軋み始めた。





倜族が人間圏での実隓や狩りの際に匵る魔力封鎖域──〈灰鎖〉。

その鎖が人間の手で初めお断ち切られた倜でもあった。


玉座の間は、い぀も通り静かだった。

癜銀の玉座に腰をかける真祖の圱は、埮動だにしない。

だが、その呚囲の空気だけが、凝固した血のように重かった。



「玉座の間に響いた䞀蚀が、䞉぀の圱の運呜を倉えた。」


「ノア。リリスを䌎っお峠ぞ向かえ」

䜎く、氷のように透き通った声が響く。

たった䞀蚀で、倧地が脈動するような圧が走った。


「〈灰鎖〉が砎られた。魔力封鎖の局そのものが裂かれたのだ。

原因を確かめよ──盎系の反応も、䜵せおな」


フヌドの男は膝を぀いたたた、頭を深く垂れる。

真祖の偎近にしお右腕、策略儀瀌官ノア・゚ルディシオン──その名にふさわしい、研ぎ柄たされた嚁容。


「埡意」

短い返答の䞭に、絶察の忠誠ず決意が蟌められおいた。


玉座の階段脇で、黒玅の倖套を優雅に揺らす圱が䞀぀。

真祖の盎系、リリス・ノクタヌナ・ノァルハルドが歩み出る。

血筋が違う。その存圚だけで分かる。

圌女は“劃”などではない──真祖が自ら認めた盎系の嚘。

生たれながらに倜の頂に䜍眮づけられた、遞ばれた血だ。


「父䞊。“灰鎖珟象”ずおっしゃいたしたわね」

リリスは指先で銀鎖の銖食りをなぞり、玉座を芋䞊げた。

「その痕跡を剥がしに行けず」

「そうだ」

真祖の声は淡々ずしおいるが、その奥には愉悊の気配がある。

「ただの掃陀では぀たらん。  行けば分かる」

 ノアは沈黙のたた頭を垂れ、その蚀葉の裏を枬った。

 芖線の端に、玉座の階段䞋ぞ投げ出された黒封の玙片が映る。

 先ほど真祖が指先で匟き、足元ぞ攟った䞀枚の闇報だ。

ノアの脳裏に、その文面がよみがえる。そこには数行だけ、簡玠にこう蚘されおいる。


《NCB特務官にしお独立狩人 アレクシス・ノァレンタむン
 倜族・人間を問わず、“灰鎖”珟象地点にお倚数の死者を䌎う介入を確認
  危険床極高 》

闇報の末尟に、真祖自らの筆で䞀行。

   ──この男、面癜い。

ノアは玙片を折りたたみながら思う。
真祖が“面癜い”ず蚀う時は、十䞭八九、誰かが死ぬ

 リリスがくすりず笑った。

 ほんの䞀瞬、出発前に鏡越しに自分を芋぀めた倜の静けさが蘇る。

 ――灰鎖を砎った存圚  どんな“倜”を芋せおくれるのかしらヌ

 黒薔薇の髪食りに觊れた自分の指先の感觊だけが、ただ生々しく残っおいた。

「なら、退屈はしないずいうこずね。  行きたしょう、ノア」

その声音には、嚘ずしおの誇りず、生たれながらの冷培さが宿っおいた。



倜の峠道。
濃霧が地圢ごず呑み蟌むように枊を巻き、芖界はほずんどない。


ここで鎖が断たれた。すべおの因瞁は、この峠から始たる


ノアの術匏が淡い青癜光を灯し、足䞋の地脈を照らす。

「  これは」

「ええ。死者の匂いが濃いわね」

リリスは、霧を嗅ぎ分けるように目を现めた。
圌女の魔力が霧ず觊れ、静かな震えが走る。

「倜族、人間  血の皮類が混ざっおいるわ。たるで“鎖に぀ながれた名が泣いおいる”みたい」

「報告の通りだな」
ノアは淡々ず返す。

この珟象の原因は䞀䜓──

刹那、空気がピンッず匕き裂かれた。
 ノアは即座に手をかざす。
 術匏陣が展開され、芋えない膜が二人を包んだ。
 次の瞬間、銀の閃光が膜に匟かれる。

霧の倩蓋から萜ちおきたのは、灰色の鎖──。
人の骚を軋たせるような音を立おる、死者の鎖。

「  早いわね、迎撃が」

リリスは埮笑すら浮かべおいた。

「埌ろ」

ノアの叫びず同時に、霧が裂ける。
黒いコヌトの裟を揺らし、䞀人の男が歩み出おきた。
刃が青癜く脈動しおいる。

《SEVERIN》──灰鎖を断ち切る、特異な高呚波刃。


この男の䞀歩が、倜族の千幎を裂く


ノアは即座に理解する。
闇報で、嫌ずいうほど芋た名。真祖さえ興味を瀺した男。

NCB所属 独立狩人 アレクシス・ノァレンタむン。

真祖から枡された報告曞で、嫌ずいうほど芋た名だ。

だが、こうしお察峙するのは初めおだった。
ノアは䜎く吐き出す。

「  なるほど。峠を荒らした“灰鎖の刃”っおのは、お前のこずか」

男は返答しない。
ただ、その芖線がノアの肩越しに向けられる。

リリス。真祖の嚘。

その存圚を芋た瞬間、アレクシスの瞳に明確な“殺意”が灯った。

「  《リリス・ノァレンティナ》か。噂の倜族の女──」

リリスの睫毛が、わずかに揺れる。
けれど、衚情はほずんど倉わらない。
ただ静かに、圌の呌び方を正した。

「その名も、気に入っおはいるのだけれど――」

霧がわずかに逆巻く。
空気の密床が、䞀段深く沈む。

「本圓の名は、《リリス・ノクタヌナ・ノァルハルド》よ」

その䞀蚀が萜ちた瞬間、“䞖界”が小さく反応した。
峠を包む濃霧が、䞀拍遅れお震え、砕けた灰鎖の残骞が、かすかに鳎る。

〈灰鎖〉に刻たれおいた“倜の芏栌”そのものが、名を聞かされおざわめいたかのようだった。

アレクシスの背骚に、冷たいものが走る。

  ノァルハルド。盎系䞭の盎系  真祖の“本家”そのもの  

喉が䞀瞬だけ、也く。それでも、刃先は䞋がらない。

ノアだけは、埮動だにしなかった。
真祖の右腕にずっお、その名は最初から“前提”に過ぎない。

リリスは薄く笑う。

「でも、いいわ《ノァレンティナ》で。あなたたち人間には、その方が呌びやすいでしょ “通り名”の方が」

アレクシスは短く息を吐き、刃を握り盎した。

「  軜く名乗るには、重すぎる名だな」

リリスは肩をすくめるように埮笑む。

「名を知るのはいいこずよ。けれど──わたしが“あなた”を知る䟡倀は、ただ芋えおこないわ」

「そうか」

アレクシスの声は、さらに冷えた。

「なら、ここで刻んでやる。──“お前たち倜族がどれほど憎たれおいるか”を」

その蚀葉ず同時に、霧が爆ぜ、戊堎が“割れた”。

アレクシスの初動は、ほずんど芖認できなかった。

《SEVERIN》から散る青癜い光が匧を描き、ノアの防埡膜に觊れた瞬間、膜党䜓が悲鳎のように軋む。

「  ッ」

ノアが術笊を䞀枚、空間ぞ叩き぀ける。
円陣が即座に展開し、空気が固圢化したように重くなった。

アレクシスが螏み蟌み、刃を振り䞋ろす。
刃ず術匏陣がぶ぀かった瞬間──

蜟音。

霧が吹き飛ぶだけでなく、地面に刻たれた岩肌が円圢に波打ち、浮き䞊がる。

「  本気で殺しに来おいるな」

ノアが䜎く蚀った。

「圓然だ」

アレクシスの声は凍お぀いおいる。

「倜族は、すべお殺す。──特に、真祖に連なる者は䞀人残らず党員な」

ノアの目が现くなる。

「我らが血族を穢す者め。貎様䞀人の死で枅められるず思うな」

次の瞬間、ノアは十指を空䞭に走らせた。
術匏列が十重に展開する。
耇雑な幟䜕孊暡様が霧䞭に浮かび、空間そのものが“抌し぀ぶされる”ように歪んだ。

「──《黒環重圧陣》」

霧が重力を垯び、倧気が突然、千倍の重さで抌し寄せる。

普通の人間なら、膝が砕け、内臓が抌し朰れるほどの圧力。

だが、アレクシスは動きを止めなかった。
むしろ、歪んだ空間を螏み蟌むようにしお さらに深く、ノアぞず迫る。

「  やはり。噂通り“壊れた化け物”だな」

ノアは也いた声で呟いた。

アレクシスは嘲笑すら芋せず、ただ刃を振り䞊げる。

「倜に生たれた者は、倜ごず党員、俺の刃に沈む」

その刃が、降り䞋ろされた。空間が悲鳎を䞊げる。
ノアは玙䞀重で回避しながら、手印を組んだ。

「《血鎖・束瞛陣》──閉じよ」

 地面から赀黒い鎖が無数に噎き䞊がり、アレクシスの足元ぞ収束しおいく。
 鎖の䞀぀䞀぀に、死者の名が刻たれおいた。動けば動くほど、魂の重さが身䜓に絡み぀く。

だが──
アレクシスの刃が振るわれた瞬間、鎖の束が䞀斉に切断される。

斬り口が赀く発光し、霧の䞭に線を描くように光の残滓が浮かぶ。
ノアの術匏でさえ、この男の“斬る”ずいう䞀点における集䞭力には抗しきれない。

「ノア、少し埌ろが雑だわ」

リリスの声が響いた。
䞊品で、堎違いなほど冷静。

「抑えなさい、ノア。ずどめは、わたしが刺すわ」

「  承知した、リリス様」

アレクシスの刃が再びノアの防埡膜を裂こうずした瞬間。

 颚が逆巻いた。

 リリスの黒玅の髪が、倧きく揺れる。


血が歌う。――わたしは、倜の頂に生たれた者


「少しだけ──静かになりなさい」

 囁くような声。だが、それは呜什だった。呚囲の霧が、䞀息で吞い蟌たれるように消えた。
 代わりに、リリスの足元から深玅の光がじわりず滲み出す。

 倧地に散った血のしずくが、逆流するように集たり、圌女の右手に向かっお现い筋を描いお走った。

 スゥヌッず。

 圌女の掌に、䞀本の现い刃が圢を成す。

 血が凝固したような、深玅の半透明の剣――《血刃》。

 巊手には、血が现い線ずなっお䌞び、空䞭で鞭ぞず倉じる。

 赀黒い光の垯が、しなやかに揺れながらその身の呚囲を巡る――《血鞭》。

「真祖の嚘を前に、刃䞀振りで螏み蟌むなんお  」

 リリスは血刃を軜く傟け、アレクシスを芋据えた。

「あなた、ほんずうに身の皋を知らないのね」

 アレクシスは答えない。

 ただ、圌女の“歊噚”を䞀瞥だけで蚈り、足の向きず距離を修正した。

右手の刃  刺突ず切断。巊手の鞭は牜制ず拘束  か

 その芖線の動きに、ノア・゚ルディシオンは薄く目を现める。

芋おいる。  魔力の“質”ではなく、“運び”を

 ノアの術匏がただ空䞭に残っおいる。淡い血の王様が揺らぐ、その“わずかなリズム”さえ、アレクシスは芋逃しおいない。

リリスが、䞀歩だけ前に出た。足音はしない。
しかしその䞀歩で、空気の重さが明確に倉わった。

「䞀族の憎しみを背負っおる぀もり滑皜だわ、アレクシス・ノァレンタむン」

名を呌んだ瞬間、闇が茂る。
圌女の足元から、黒薔薇の茚が瞊に䌞び䞊がった。

「──《黒薔薇の咎》」

 地面が深玅の線で裂け、その割れ目から黒い棘が点々ず姿を珟す。

 それはただ乱雑に䌞びるのではなく、たるで最短距離を蚈算したかのように

 アレクシスの足の軌道をぎたりず塞ぐ圢で立ち䞊んだ。

 螏み蟌めば、脚を裂かれる。
 飛べば、着地の先が眠になる。
 芖線を切れば、その隙はそのたた死ぞ盎結する。

 「笑わせる」

アレクシスの口元が、わずかに歪んだ。

「なら芋せおやる。人間䞀人が、真祖の嚘の銖を掻き切れるっおこずをな」

 䞀瞬、空気の振動が消えた。

 ノアが息を呑む。

   “ここ”だ

 アレクシスは、黒薔薇の茚を“避けお”はいない。棘の間を抜けるのでもない。

 斬っおいる。

 斬線が芋えないたた、茚の列に䞀本の“溝”が走った。
 わずかに遅れお、黒薔薇の棘が音もなく厩れ萜ちる。

 闇そのものを、䞀本の線で切断しおいるのだ。

  魔力を、斬った  

 リリスの睫毛が、わずかに震えた。
 その䞀瞬で十分だった。
 アレクシスは、既に目の前にいた。
 距離が朰れる。

 リリスの闇の膜が、自動的に前ぞ䌞びる――角床を倉え、斬撃を“滑らせる”防埡。

 だが、今回は違った。

 《SEVERIN》の軌道が、膜の“継ぎ目”をなぞるように走る。硬さず厚さが僅かに倉わるポむントを、正確に突いお。

 「そこだ」

 䜎い声ずずもに、闇の膜が割れた。鋭い冷気が、銖筋を撫でる。

 刃は、喉元䞀センチ手前で止たった――のではない。リリスが、土台ごず身䜓を“埌ろぞ滑らせた”のだ。

 圌女の喉に、䞀本の赀い線が描かれる。
 现い線。だが、その䜍眮はあたりに正確だった。

 ノアの術笊が、ぱきりず音を立おる。

  今の避け方がなければ、リリス様は――

 リリスは喉に觊れない。觊れれば、自分が“どれほど危険だったか”認めるこずになるからだ。

「  危うく、“真祖の嚘”の名折れになるずころだったわ」

そう蚀い぀぀も、声の奥に、かすかな愉悊が混じる。

「人間にここたで迫られたのは、初めおよ」

「次は、その線で終わらせない」

アレクシスの瞳には、炎ではなく氷が宿っおいる。

 蚈算された殺意。

 頭の䞭には、既に次の䞀手、その先の殺し筋たで描かれおいる。

 ノアが、手を䞊げた。

「遊びが過ぎたす、リリス様」

 空に、血の線が広がる。それは幟重にも重なり合い、立䜓的な術匏陣を構成しおいく。

「《千鎖・封絶陣》」

 地面から立ち䞊る鎖。空䞭から垂れ䞋がる鎖。

 アレクシスを䞭心に、球状の檻が圢を成し始める。ただ閉じ蟌めるのではない。迫る速床ず角床が、消耗ず切断を前提ずしおいる。

本気ではない  それでも、これだけの密床か

アレクシスは䞀瞬だけ目を閉じ、呌吞を敎えた。

 鎖の“揺れ方”が、違う。
 ノアの術は完璧だが、展開の瞬間だけは別だ。各環が重なり合っお安定する前に、どうしおも生じる â€œã‚ãšã‹ãªæ³¢â€ã€‚

   そこだな

 アレクシスは足を䞀歩螏み出した。螏み出しながら、斬る。

 青癜い匧が、半球をなぞるように走った。同時に、鎖の䞀本がアレクシスの頬を掠める。

 だが、圌は気にしない。

 血飛沫が霧に溶けるよりも早く、鎖の網の䞀列だけがたずめお断ち切られた。

 そこは、術匏の“負荷が集䞭しおいない範囲”だった。ノアですら、䞀瞬認識に遅れたほどの“匱い蟺”。

 アレクシスは、その现い解攟区間だけを䜿っお、䞀気に前ぞ螏み抜いた。

「  そこを突いおくるか、人間」

 ノアが、初めお䜎く呟く。冷静な瞳の奥に、わずかながら“興味”の光が宿っおいた。

「ノア。手を出さないで」

 リリスが、血鞭をふわりず振る。闇ず血が混ざった鞭が、空䞭に軌跡を描いた。

 「  これはわたしの遊びよ。このたた匕き䞋がるなんお──わたしの矜持が蚱さないわ」

 血鞭が鳎る。

 アレクシスの腕を狙った䞀撃は、剣を振るうための筋肉を正確に狙い柄たした角床で迫った。

 アレクシスは半歩退き、SEVERINの腹で鞭を受ける。

 普通なら、そのたた絡め取られるはずだ。しかし、圌は“受け流した”。

 鞭の軌道を僅かにずらすように刃を滑らせ、反察方向ぞず受け流す。

 リリスの目が现くなる。

「あなた、読みがいいわね」

「お前が“読みやすい”だけだ」

 蚀葉ず同時に、再び螏み蟌む。今床は、リリスも匕かない。

 血刃ずSEVERINが、真っ向からぶ぀かる。

 䞀瞬の閃光。

 火花ではない。飛び散ったのは、霧ず闇だった。
 斬撃ず魔力が、互いを削り合う。

 リリスはしなやかな足さばきで角床を倉え、アレクシスは䞀ミリ単䜍で自分の間合いを維持する。

 血刃が、アレクシスの胞元を掠める。

 SEVERINが、リリスの黒髪を数本だけ切り萜ずす。

 どちらも、臎呜には䞀歩届かない。

 届かせないようにしおいる  

 ノアは、術匏を維持しながら二人を芋おいた。

 リリスは“遊んでいる”ようでいお、アレクシスの斬撃の速床ず軌道を本気で蚈り始めおいる。

 䞀方、アレクシスは、リリスの闇の密床ず防埡膜の角床を、戊いながら“解析”しおいた。

 亀錯するたびに、互いの“次の䞀手”の粟床が䞊がっおいく。

 均衡。

 だが、その均衡はあたりに现い。

 このたたでは――

 ノアが、指先に力を蟌めた、その時だった。

 倜の地脈が震えた。

 峠のあちこちで、厩れた鎖が赀く発光する。
〈灰鎖珟象〉の栞が、限界を迎え぀぀あった。

 「  たずい」

 ノアの声ず同時に、足元の倧地が唞る。

 リリスずアレクシスの間で、霧の奥がひずきわ匷く茝いた。

 ノアが咄嗟に術匏を倉圢させる。

 「リリス様、離れおください」

 だが、二人ずも止たらない。
 リリスの血鞭が再びしなる。
 アレクシスの斬撃が、それを正確に切り裂く。

 解き攟たれた血が空䞭で爆ぜ、现かな玅い粒子ずなっお二人の間に散った。

 その玅の向こうで、二人の芖線がぶ぀かる。

 「次は倖さないわ」

 「先に斬るのは、俺だ」

 螏み蟌む。同時だった。

 アレクシスのSEVERINが、再びリリスの喉元を狙う。その軌道はさっきよりも鋭く、速い。

 リリスの血刃が、アレクシスの胞の䞭心線をなぞるように走る。

 互いに、“急所”しか芋おいない。

 ノアは、その䞭間に、最埌の術匏を叩き぀けた。

「――《双環・衝断結界》」


青ず玅、そしお術匏の癜。䞉぀の圱が、歎史を軋たせた


 䞉぀の力が亀錯した。

 刹那、光も音も、党おが䞀床“朰れた”。

 霧が吹き飛び、倜の山々が露わになる。

 峠の朚々が揺れ、地面の裂け目が䞀斉に光り、
 そしお――
 䞍自然な静寂が蚪れた。

 リリスは立っおいた。喉元には、先ほどより深い玅の線。
 もしノアの結界が半瞬遅れおいれば、そのたた切り萜ずされおいたであろう角床だ。

 アレクシスも、立っおいた。胞元には、深くはないが、心臓ぞ斜めに走る斬線。
 あず䞀歩螏み蟌みが深ければ、自らの呜が尜きおいたであろう䜍眮。

 ノアは、軜く息を吐いた。掌の䞭で、術匏の残滓がぱきりず割れお消える。

   互いに、殺せる䜍眮たで届いおいる

 この倜は、どちらが欠けおもおかしくなかった。ただ、ノアがそうさせなかっただけだ。

 「  今倜はここたでにしおあげるわ」

 リリスが喉元の血を拭うこずなく、アレクシスを冷ややかに芋䞋ろした。

 「ここで決着を぀けるべきか迷ったのだけれど  そうね、あなたは、もう少し“熟させた方が面癜そう”だわ」

 「逃げるのか」

 「違うわ、アレクシス・ノァレンタむン」

 リリスは、ゆっくりず背を向ける。

 「あなたを殺すのは、“もっず盞応しい倜”にしようず決めたのよ」

 アレクシスは、远わなかった。

臎呜には至っおいない。だが、身䜓の芯たで疲劎がたずわり぀いおいる。

 ノアが、リリスの偎に立぀。その暪顔には、ただ䜙力が残っおいた。

この皋床  わたしはただ“本気”ではない。それでも――

 圌は䞀床だけ、アレクシスを振り返る。

 真祖が「面癜い」ず曞き添えられた理由は、確かにあった

 「行くわよ、ノア」

 「埡意」

 二人は霧の残滓の䞭ぞ消えおいく。

 残されたアレクシスは、自分の胞元の傷ぞ䞀床だけ芖線を萜ずし、すぐに錻で笑った。

 「  互角、か」

 喉の奥で、䜎く笑う。

 「真祖の嚘も、真祖の右腕も  たずめお、い぀か斬る」

 その倜、䞉぀の圱は初めお互角に刃を亀わした。
 そしお決着を先送りにしたたた、《灰鎖事件》ずいう名だけを、峠に残しおいった。


――幕間II å®Œâ€•―

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