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16.とっておきの現実2
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「まあ、魔物の……?」
シルヴィアは目を丸くする。
マテウスは畳みかけるように言った。
「ああそうだ! あんたみたいな聖女さまには信じられないだろうな。地に埋もれる食物は受け入れても、さすがにこれは無理だろう。神に許された食物ではないからな」
「まあ……それは……」
シルヴィアは困惑したように呟く。
スカイラー教の教えでは、聖典に記された食物だけが、人が食べることを許されているとされ、それ以外の食物を食すのは神に背く行為だ。
地に埋もれる食物は、下賤なものとはされているが、神に許された食物である。
だが、魔物の肉は違う。魔物は、神が創造した生物ではない。
ゆえに、聖典に記されていないため、食べることは許されないのだ。
「スカイラー教では魔物の肉を食べることは許されないだろう? だがな……ここではそれが普通なんだよ。だからこの枯れ果てたクソみたいな場所で生きていけるんだよ」
そう吐き捨てるように言うマテウスを、シルヴィアはじっと見つめた。
「……マテウスさまは、魔物の肉がお好きなのですか?」
「いや、全然好きじゃねえよ。けど、ここでは生きるために食べなきゃいけないんだよ」
マテウスは顔をしかめる。
シルヴィアはしばらく考え込むように黙っていたが、やがてぽつりと呟いた。
「では、わたくしが腕によりをかけて調理いたしますわ」
「……は?」
意味がわからないといったように、マテウスは聞き返す。
シルヴィアはにっこりと微笑んで答えた。
「魔物の肉も、きっと調理次第で美味しくいただけますわ! わたくしにお任せください!」
そう言って、やる気に満ちた顔をしてみせる。
そんなシルヴィアを見て、マテウスは思わずといったように叫んだ。
「そうじゃないだろ!?」
「まあ、違うのですか? わたくしも、魔物の肉は少し硬くて筋張っていると感じましたわ。でも、きっと調理の仕方を工夫すれば、美味しくいただけるはずです」
「いや、美味しくいただこうとすんな! 魔物だぞ!? 魔物を食べるんだぞ!? あんた正気か!?」
「ええ、もちろんですわ」
シルヴィアは笑顔で答える。
マテウスは両手で頭を押さえた。
「ああ、もう……なんか頭痛くなってきた」
マテウスが呻くと、ダンが苦笑する。
「そんなマテウスさまに素敵なお知らせがございます。実は、シルヴィアさまはすでに魔物の肉を召し上がっていらっしゃいます」
「はあ!?」
マテウスは目を丸くしてシルヴィアを見た。
その視線を受け、シルヴィアはにこっと笑う。
「わたくし、こちらには昨日到着したものですから。夕食をごちそうになりましたの。魔物の肉は初めてでしたが、とても美味しかったですわ」
「もう食べてたのかよ! 本当にわけわかんねえなあんた!」
マテウスが叫ぶと、ダンも頷く。
「ええ、私も最初はシルヴィアさまを追い返すつもりで魔物の肉を出したのですが……。彼女はあっさり完食されましたよ。それで、この地にふさわしい方だと判断いたしました」
「マジかよ……」
マテウスは呆然と呟く。
シルヴィアはにこにこと微笑んでいた。
「はい、とても美味しかったですわ。でも、マテウスさまがお気に召さないのでしたら、もっと様々な調理法を考えてみますわね」
「こいつ、本当に聖女かよ……。天空神スカイラーも泣いてんぞ」
マテウスは疲れた顔で呟いた。
それに対し、シルヴィアは首を傾げる。
「まあ、そんな……。神はそんなことで泣くことはありませんわ。神はわたくしたちを見守ってくださるだけですもの」
「いや、だからそういう話じゃねえって……」
マテウスは頭を抱える。
「わたくしは時折、神託を授かりますけれど、神はいつも『汝の為したいように為すがよい』と仰せです。ですから、わたくしはわたくしの為したいようにいたしますわ」
そう言って、シルヴィアは微笑んだ。
マテウスはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開く。
「……それ、天空神じゃなくて邪神じゃね?」
マテウスはダンに視線を向ける。
すると、ダンが神妙に頷いた。
「ええ、私も同じことを思いました」
「……だよなあ?」
そう言って、二人はシルヴィアをまじまじと見つめる。
シルヴィアは不思議そうに首を傾げたのだった。
シルヴィアは目を丸くする。
マテウスは畳みかけるように言った。
「ああそうだ! あんたみたいな聖女さまには信じられないだろうな。地に埋もれる食物は受け入れても、さすがにこれは無理だろう。神に許された食物ではないからな」
「まあ……それは……」
シルヴィアは困惑したように呟く。
スカイラー教の教えでは、聖典に記された食物だけが、人が食べることを許されているとされ、それ以外の食物を食すのは神に背く行為だ。
地に埋もれる食物は、下賤なものとはされているが、神に許された食物である。
だが、魔物の肉は違う。魔物は、神が創造した生物ではない。
ゆえに、聖典に記されていないため、食べることは許されないのだ。
「スカイラー教では魔物の肉を食べることは許されないだろう? だがな……ここではそれが普通なんだよ。だからこの枯れ果てたクソみたいな場所で生きていけるんだよ」
そう吐き捨てるように言うマテウスを、シルヴィアはじっと見つめた。
「……マテウスさまは、魔物の肉がお好きなのですか?」
「いや、全然好きじゃねえよ。けど、ここでは生きるために食べなきゃいけないんだよ」
マテウスは顔をしかめる。
シルヴィアはしばらく考え込むように黙っていたが、やがてぽつりと呟いた。
「では、わたくしが腕によりをかけて調理いたしますわ」
「……は?」
意味がわからないといったように、マテウスは聞き返す。
シルヴィアはにっこりと微笑んで答えた。
「魔物の肉も、きっと調理次第で美味しくいただけますわ! わたくしにお任せください!」
そう言って、やる気に満ちた顔をしてみせる。
そんなシルヴィアを見て、マテウスは思わずといったように叫んだ。
「そうじゃないだろ!?」
「まあ、違うのですか? わたくしも、魔物の肉は少し硬くて筋張っていると感じましたわ。でも、きっと調理の仕方を工夫すれば、美味しくいただけるはずです」
「いや、美味しくいただこうとすんな! 魔物だぞ!? 魔物を食べるんだぞ!? あんた正気か!?」
「ええ、もちろんですわ」
シルヴィアは笑顔で答える。
マテウスは両手で頭を押さえた。
「ああ、もう……なんか頭痛くなってきた」
マテウスが呻くと、ダンが苦笑する。
「そんなマテウスさまに素敵なお知らせがございます。実は、シルヴィアさまはすでに魔物の肉を召し上がっていらっしゃいます」
「はあ!?」
マテウスは目を丸くしてシルヴィアを見た。
その視線を受け、シルヴィアはにこっと笑う。
「わたくし、こちらには昨日到着したものですから。夕食をごちそうになりましたの。魔物の肉は初めてでしたが、とても美味しかったですわ」
「もう食べてたのかよ! 本当にわけわかんねえなあんた!」
マテウスが叫ぶと、ダンも頷く。
「ええ、私も最初はシルヴィアさまを追い返すつもりで魔物の肉を出したのですが……。彼女はあっさり完食されましたよ。それで、この地にふさわしい方だと判断いたしました」
「マジかよ……」
マテウスは呆然と呟く。
シルヴィアはにこにこと微笑んでいた。
「はい、とても美味しかったですわ。でも、マテウスさまがお気に召さないのでしたら、もっと様々な調理法を考えてみますわね」
「こいつ、本当に聖女かよ……。天空神スカイラーも泣いてんぞ」
マテウスは疲れた顔で呟いた。
それに対し、シルヴィアは首を傾げる。
「まあ、そんな……。神はそんなことで泣くことはありませんわ。神はわたくしたちを見守ってくださるだけですもの」
「いや、だからそういう話じゃねえって……」
マテウスは頭を抱える。
「わたくしは時折、神託を授かりますけれど、神はいつも『汝の為したいように為すがよい』と仰せです。ですから、わたくしはわたくしの為したいようにいたしますわ」
そう言って、シルヴィアは微笑んだ。
マテウスはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開く。
「……それ、天空神じゃなくて邪神じゃね?」
マテウスはダンに視線を向ける。
すると、ダンが神妙に頷いた。
「ええ、私も同じことを思いました」
「……だよなあ?」
そう言って、二人はシルヴィアをまじまじと見つめる。
シルヴィアは不思議そうに首を傾げたのだった。
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