聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ

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31.一緒に、幸せになりましょう3

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 やがて唇が離れると、マテウスは照れたように笑った。

「ははっ、なんだか恥ずかしいな」

「あら、どうしてですか?」

 シルヴィアが尋ねると、彼は少し困ったような表情を浮かべた。

「いや、こういうの初めてだからよ……」

「あら、意外ですわ。おモテになりそうなのに」

 シルヴィアが冗談めかして言うと、マテウスは少し拗ねたような表情になった。

「そりゃあ、寄ってくる女はいくらでもいるさ。娼婦から金はいらないから遊んでいけって誘われるくらいにはな」

「まあ、お受けにはならなかったのですか?」

 シルヴィアが問うと、マテウスは静かに首を横に振った。

「俺は屈強な連中しか側に置かないと言っただろ。女なんて、壊してしまいそうだからな。それより、あんたはどこか具合が悪くなっていないか?」

 マテウスは気遣うような口調で尋ねてくる。どうやら、シルヴィアの身を心配していたらしい。

「ええ、大丈夫ですわ。むしろ、なんだか元気になった気がします」

 シルヴィアは微笑んでみせると、マテウスの頬に軽く口づけをした。

「ほら、元気でしょう?」

「ったく、あんたは……」

 マテウスは苦笑いを浮かべながらも嬉しそうだった。

「……まさか、あんたとこんなことになっちまうなんてな。最初は、なんだこの頭のおかしい女はって思っていたんだがな……」

 マテウスはしみじみとした口調で言った。

「あら、では今はどう思われていますの?」

 シルヴィアが悪戯っぽく尋ねると、マテウスは少し考えるような仕草をしてから答えた。

「そうだな……今は、可愛いと思っているよ」

 マテウスの言葉に、シルヴィアの顔が熱くなる。

「もう……マテウスさまったら……」

 そんなシルヴィアの反応を楽しむかのように、彼はさらに言葉を続けた。

「それに、あんたは綺麗だと思う。こんな綺麗な女なんて初めて見たからな。正直、俺なんかが触れていい存在じゃないと思っている」

「そんなことありませんわ。マテウスさまは素敵ですわよ?」

 シルヴィアが言うと、マテウスは照れくさそうに笑った。

「ありがとう。でも、俺はあんたに釣り合わない男だよ」

「あら、そんなことはないと思いますけれど……」

 シルヴィアは不満そうな声で返すが、マテウスの表情は晴れなかった。

「……なあ、一つだけ聞かせてくれるか?」

「ええ、なんでしょう?」

 シルヴィアが首を傾げると、マテウスは静かに口を開いた。

「あんたは……本当に俺でいいのか? 俺と一緒にいることで、あんたを不幸にしちまうかもしれねえ。それでもいいのか?」

 マテウスは真剣な眼差しで問いかけてくる。
 その問いに対する答えは決まっていた。
 シルヴィアは大きく息を吸い込んで答える。

「愚問ですわ!」

 シルヴィアがきっぱりと答えると、マテウスは目を丸くした。
 そんな彼の顔を両手で包み込み、真っ直ぐに見つめ合う形になる。

「わたくしは、あなたが好きなんです! あなたのそばにいたいんです! あなたと一緒に歩んでいきたいんです! だから……」

 シルヴィアはそこまで言うと、マテウスの唇に自分のそれを重ねた。
 そしてゆっくりと顔を離すと、彼の目を見て言った。

「だから……一緒に、幸せになりましょう! マテウスさま!」

 シルヴィアの言葉に、マテウスは驚いたような表情を浮かべた。
 だがすぐに優しい笑顔になり、シルヴィアを抱き締める。

「ああ……そうだな」

 二人はしばらくの間、そのまま抱き合っていた。
 互いの体温を感じながら、心地良い沈黙が流れる。
 やがてどちらからともなく離れると、見つめ合ったまま微笑んだ。
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